閑話 下着協奏曲 前編
もはや恒例となっているエロティック&ギャグ回です。
本編には関係な・・・・くは無いんですが、現代社会で使われている下着が広まったとだけ認識してもらえれば飛ばしてもらって構いません。
食堂での祝賀会を終えた俺は、戦利品(盗撮写真)を眺めながら『とある』疑問を抱いていた。
それは『本当にこのパンツのままで良いのか?』というもの。
下着はブルマやカボチャパンツ、水着は魔獣の皮製と言った代用品はあるんだけど、現代社会に慣れ親しんでしまった俺が将来アレな展開になった時にそれで興奮できるのか不安になったのだ。
実際写真を見てても尻尾を隠した瞬間に魅力半減・・・・いやただの紙切れとしか思えなかった。
乳マイスターの父さん、尻マイスターなマリクに尋ねても特に不満はないと言ってたけど本当にそうか? 自分を偽っているだけなんじゃないか?
そう考えた俺は2人に『試しにコレを女性に着てもらって濡らしてみ』と言って即席で作った下着(サラシ製のブラジャーとTバック)を手渡した。
それから数日後。
「ルーク・・・・僕は間違ってたよ。あんな世界もあったんだね」
「見えそうで見えない、だけど濡らせば濡らすほど透けていき、男を興奮させてやまない衣装!
水が足りなくなった時、店の迷惑も考えず叫びそうになったぜ。いや俺にテクニックがあれば・・・・濡れさえすれば・・・・・・」
なにやら2人して子供の俺に自らの性体験を切実に語り出した。
マリクは大人向けの店なのでギリギリセーフだけど、父さんは確実に母さんとの情事だから聞いてて気まずい。
これで弟妹が出来たとか言われたらどうしよう。
いやマリクもアウトか。彼の言う水気が自前なのか、課金アイテムなのか、特定の条件下で溢れてくるアレなのかは子供の俺にはわからない。
そんな俺の心など知る由もない2人は声高らかに宣言した。
「「作ろうか、下着!」」
かくしてロア商会出資者であるオルブライト家男性陣の総意により、『ブラジャー&パンティ販売計画』がスタートする事となる。
レオ兄? きっと賛成してくれるはずだから聞く必要はないな。
まずは俺達が取り掛かったのは素材の選定。
「いいですか! これらは女性の胸やお尻を優しく包み込む素材でなければ商品にはなりません!
だからと言って外側の手触りを蔑ろにしたら我々男性が楽しめなくなる!!
内はふんわり、外はサラフワ。加工が簡単で安く手に入る。そんな素材が必要なのです!」
「どれだ・・・・どれがいい? やわらか草? いや・・・・ふんわり草か!?」
「パンティの方はもっと簡単だろうと高を括っていた自分が恥ずかしい。サラサラでフワフワな手触り、ただそれだけのはずなのに・・・・くそっ、思いつかん!」
俺達は連日連夜、秘密の会議を開いて素材を厳選していった。
そんな事をしていたら不思議に思う家族もいるわけで。
「ねぇアリシアちゃん。ルーク達は最近何してるの?」
「さぁ? 父さんとマリクも一緒に居なくなるのよね」
「どうせまたロクでもない話をしてるんでしょ。男なんて馬鹿ばっかりなんだから。特にウチは」
自分のためであることは否定しないけど、君らも喜ぶ物を作ろうとしてるんだよ。
楽しみにしてろよ!
そうして1週間が過ぎ、俺達はついに理想の素材を見つけ出したのだ!
ブラジャーの素材は『ふんわり草』と『魔獣の皮』に決まった。
カップ部分に使う『ふんわり草』は以前トイレの紙としても使用されていた物で、その弾力と肌触りから胸を優しく包み込んでくれる。
今まではこれを布で直接巻き付けるか、服に縫い付ける衣類と一体の下着だった。
しかしそれでは形が崩れてしまう!
それを解決したのが魔獣の皮。
水着にも使われている海洋魔獣で、色々と素材を研究していたら以前アクアで海水浴した時に着た水着がナイロンに近いものだと判明。
オルブライト家で水着開発も同時進行していたので当然あってしかるべき品である。
父さんが態々アクアから取り寄せてたなんて事は断じてない。
で、その皮をカップ以外のベルトやストラップ部分にすることで付け心地を限りなく現代のブラに近づける事が出来る・・・・はず。
ここで1つの疑問が浮かんだ。
皮のツルツルした手触りのブラジャーで男は満足なのか?
否! 断じて否っ!
むろんそれを解決するために加工する時にひと手間かけた。
この魔獣の皮。魔力を込めて魚の鱗を取るように刃物でガリガリ削ったら毛のように逆立ってビックリするぐらい手触りがフワフワになったのである。
もちろんそんじょそこらの刃物では歯が立たないので、俺達が使ったのはユキに無理言って作らせたアダマンタイト製。下着づくりのためだけの特注品だ。
同じことをしてみたら別の木の皮でも似た現象が起こったので、なんと2種類の商品化が可能になった。
今から試作品の完成が楽しみである。
次にパンティ。
こちらは蚕の繭から加工したシルクと綿を合成した素材を採用した。
厳密に言えば蚕っぽい魔獣『モリー』が生み出す糸なんだけど、蚕を探していたらベーさんが管理する山のダンジョンにそれらしい魔獣が生息していたのだ。
生息って言うかジョセフィーヌさんやホネカワの同僚(?)らしい。
名前は『アラクネ』、見たことは無いけどたぶん蜘蛛だ。だからシルクってか蜘蛛の糸だ。
んでそのシルク(ってことにする)が見つかった事に喜んだ俺は早速ベーさんを通じて交渉し、定期的に入手することが可能となった。
これについては何も言う必要がないだろう。
ゴム自体は存在していたので、後はフロントとバックの型を作って、繋ぎでクロッチを付ければ完成。
前後をわかりやすくするためにワンポイントのリボンを付けても良いし、ローレグ、ハイレグ、ローライズ、スキャンティー、Tバック、サニタリー、ジュニア等など提案する予定である。
重要なのはこれを作る職人達。
話し合いには父さんが参加するので頑張ってもらわなければならない。
「アラン頼んだぞ! 何が何でもTバックは作ってくれよ!」
「ああ・・・・ああっ!! 必ずやり遂げてみせる!」
漢と漢の熱い握手、そしてエロスが交じり合った瞬間である。
肝心の製作者についても話しておこう。
大量生産するにために手先の器用な女性達が作るんだけど、いくら出資者のオルブライト家が下着作りをやりたいと言ってもそう簡単に通る訳もない。
金銭の問題ではなく、価値をわかってもらえなければ女性達の間で普及しないのだ。
ならば、と言う事で試作品をフィーネに作ってもらい、ブラ&パンティを広める事でロア商会内部から声を上げるように仕向けた。
フィーネには隠す必要がないので、誰よりも詳しい俺が製造過程を事細かに指導する。
「ルーク様、ここはこうですか?」
「違う違う! フィーネは何もわかってない! ブラジャーはただの胸当てじゃない、胸を包み込む優しさが大事なんだ!!」
「・・・・はぁ」
「繋ぎ目も極力見せない様に! ホックは2段階で調整できるように! 優しく、可愛く、そしてエロく!!」
「・・・・・・・・・・はぁ」
「自分が大きいからって全部フルカップにするな! 小さい人用に3/4カップ、1/2カップがなきゃ商品にならないだろ!
この皮は魔力を込めたら固く出来るんだからワイヤー入りと無しの両方が作れるはずなんだ! 胸が綺麗に見えるかどうかが決まる大事な部分なんだぞ!? わかってるのか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・はい」
「AAからGカップまで8サイズ。自分に合う最高のブラジャーを選んでもらえるか、全てはフィーネに掛かってるんだ!! 漢の夢が詰まってるんだっ!!!」
「・・・・が、頑張ります」
「おう頑張れ! ひと縫い入魂っ! いや乳魂!!」
「ひ、ひと縫い・・・・にゅうこん・・・・?」
こうしてフィーネへの指導は熾烈を極めた。
全ては最高の下着のために!
そして待ちに待った努力の結晶である世界初のブラジャーとパンティが完成した。
もちろん発案者の俺を初めとして父さんやマリクも大喜びだ。
「な、なんて神々しいデザインなんだ! ルーク、よくやったよ」
「あぁ、いつまでも触っていたくなる手触りだ。こ、これを自分の女に着られた日にゃ・・・・もう・・・・っ!」
アンタ等ベタベタ触るのは良いけど、絶対汚すなよ。
「さて・・・・大変喜ばしい事だけど、試作品があっても完成ではない。何故かわかるかな?」
「「愚問っ! 着る人が居てこその下着なのだから!」」
「正解だ! じゃあ早速行ってみようか! ミュージックスタート!!」
『~~~♪』
俺の合図とともに、どこからともなく軽快なBGMが流れてくる。
そして下着を身に付けた女性達が・・・・。
入ってこない。
「あのぉ、ユキさん? 話が違うんですけど・・・・。
ここで下着姿の女性達が入って来るはずじゃ?」
「一応ロア商会従業員に声は掛けたんですけど、皆さん『こんなエッチな物を着るのは嫌だ』と断られましたよ~。
あ、精霊さん達ありがとうございました~」
ユキがお礼を言うとBGMが止まった。
どうやら風の精霊が奏でてくれていたらしい。道理で楽器っぽくない音だとは思った。
そんな事よりロア商会従業員だっ!
愛社精神の無い連中め・・・・新商品のモニターぐらいやってくれて良いじゃないか!
日用品や食べ物は率先して奪っていくクセに、こういう時だけ断りやがって。
「まぁほぼ全裸の姿をアランさんやマリクさんに見られるって言うのが主な原因でみたいですね~」
何人かはユキの誘いを断る時に、ちゃんとその理由を告げていたらしい。
・・・・父さんとマリク?
・・・・・・それだけ?
「ほほぉ~? つまり俺1人なら問題ないと?
・・・・じゃそう言う事で」
「「そ、そんな馬鹿な!?」」
父さん達が『あり得ない』とで言いたそうな顔をしている、ってか言ってるけど新商品のためにここは諦めてくれ。
ブラ&パンティを世に送り出すためにな!
つーわけで、俺1人で新しい下着を身に付けた女性達の姿を調査したいと思います。
入念に! 穴のあくほど!
次回へ続く!