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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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二百一話 クリスマス4

 12月25日。


 何故かイブは早朝に帰ってしまったので、用意したプレゼントはユキに届けてもらう事にして一安心・・・・とはならない。


 それと同じぐらい驚くべき事があったのだ。


 と言うかイブには悪いけど今はそっちの方が重要。



「で・・・・プレゼントが無いってどういう事よ?」


 そう、クリスマスプレゼントが貰えなかったんだ!


 俺は昨日まで散々『クリスマスの朝、起きたら枕元に大きな包みが!』ってのが定番だって説明したよな?


 商店で夜遅くまで特売してるって言ったよな?


 ならなんで無い?



 朝起きて部屋に何もなかったことに絶望した俺は、普段通り朝食を取っている母さんに問いかけた。


「え? プレゼントって今日用意するんじゃないの? てっきりクリスマスはその夜が本番だとばかり」


 なんと母さんは単純に渡す日を1日間違えていたらしく、悪びれた様子は一切なかった。


 くっ・・・・たしかにイヴか当日、どっちにプレゼントを用意するか迷う人も居るけど、まさかウチの両親がそうだったとは・・・・。


 しかも俺が口に出してしまった事によってプレゼントを渡す雰囲気ではなくなってしまったではないか。


 さらにヒカリの「私は大丈夫だよ」と言う大人発言で完全にお流れに。


 極めつけは、どうしても欲しい物があると勘違いした母さんが、「じゃあこれで買ってきなさい」と、現金を渡してきた。


 そうじゃない・・・・そうじゃないんだよ・・・・。


 結果は同じかも知れないけど、こういうイベントって過程が重要だったりするんだよ。



「ちなみにルーク様は何と書かれたのですか?」


 朝食の最中ずっとしょぼくれていた俺を気遣ってフィーネが声を掛けてくれた。


 もしかしたら用意してくれるつもりなのかも知れないけど、これは親じゃないと絶対無理なものなんだ・・・・。


 けど見せる。


「これだ」


「・・・・エリーナ様が日にちを間違えられて良かったですね」


 そう言ってフィーネは『狐耳の妹』と書かれた紙をグシャっと握りつぶした。


 この数秒後、開かれた彼女の手の中には魔術でも使ったのか塵1つ残っていなかった。


 そんなに変かな?


 それからと言うもの、ことある毎にヒカリが「わたしの方が1週間お姉さんだよ」と年上アピールをするようになったけど理由はわからない。


 1つだけわかることは『俺へのプレゼントは無くなった』という辛い現実があるって事。



 でも落胆するのはまだ早い!


 俺には誕生日が待っているのだ!!



「ルーク様、本当に街のツリーは見ないのですか?」

「頑張ったんですよ~。見ましょうよ~」


「NO」


 フィーネ達は朝から俺を街に連れ出そうとするけど、カップルだらけの空間を歩きたくないので断り続けている。


 大体なんで休みの日に外に出なくちゃいけないんだ。


 実際、彼女達がツリーの飾り付けをしている間にも相当な数のカップルがイチャイチャしていたらしいので、今はデートの待ち合わせ場所兼デートスポットになっていることだろう。


 ってか、さっきまでツリーに居た精霊からの情報によると、そうなってるみたいだ。


 それ見た事か! お前等が恋人の日にするから悪いんだぞ!




「さあっ! この素晴らしき世界に祝福を!! 精霊王の生誕祭に彩りを!!」


 昨日イブともやったけど、やっぱりクリスマスにはパーティするべきだろうと言う俺の意見によって昼からオルブライト家でも開催することにした。


 その合図をユキが行うと、それまで辺りをフワフワ漂っていた精霊達が一斉に輝き始める。


 精霊王の居るヨシュアほどじゃないにしろ、おそらく世界中で同じような事が起きているはずだ。


 彼らは今日の深夜までこの調子で人々を盛り上げてくれるのだろう。


 ただこれだけでは終わらない。


「ユキ、やっちまいな」


「クックック・・・・火の精霊よ、震えるがいい!

 雪やコンコン!!」


 庭に出たユキが両手を狐の形にして天に掲げると、空は晴れ渡っているのに突然雪が降り始めた。


 ホワイトクリスマスである。


 普段無視されていると言う雪の精霊が1週間前の約束通り仕事をしたらしい。


「ルーク良いの? 恋人達がムーディな雰囲気になっちゃうけど」


「・・・・仕方ないんだ。雪の精霊王を祝うパーティだから雪を目立たせてやらないとダメなんだよ」


 ヒカリに事情を説明した俺は、血の涙を流しながらいつまでも静かに空から降る雪を見つめていた。


 その一粒が俺の頬にあたり、血の涙を拭ってくれる。


 気遣ってくれるのか、ありがとう・・・・君達のために世界中の非リア充が吐血する羽目になるんだよ。


「いやぁ、雪は良いですねー。テンション上がりますねー!」


「ルーク様が感傷に浸っておられるので我々は家に戻っていましょう」


「ねぇお母さん。ルークを病院に連れて行かなくていいの?」


「まぁ男の子ならこういう事もあるんじゃない? 付き合う前、アランにも似たような時期があったし」


 酷い言われようである。


 雪が積もる前に俺も早く家に入ろう。



 それから俺達はパーティをした。


 リバーシで敗者となったアリシア姉にユキのモノマネをさせたり、大富豪で革命返しを決めてユキを叫ばせたり、大人達全員で飲み比べをして父さんが倒れたり、その他にも色々あった。


 飲み比べの後、酔っ払った連中による暴露大会が始まってしまい、俺が純粋無垢なヒカリとアリシア姉を部屋から連れ出したのは言うまでもない。


 アンタ等の赤裸々な初体験の話とか誰得なんだよ・・・・。



 大人達の酔いが醒めると時刻は夕飯時。


 今度はクリスマス料理を堪能しつつ、楽しいお喋りの時間だ。


 父親のアレな話をギリギリ聞いてしまったアリシア姉が両親に質問して気まずい空気になったのは俺のせいじゃない。


 話題転換としてフィーネが振ってくれたトリー出産の朗報すらも下ネタにしか聞こえなかった。


 とっくに適齢期を過ぎたエルとマリクが「結婚か・・・・」と黄昏ていたけど、食堂の連中共々頑張ってもらいたいものだな。


 大体10年やそこら遅れたからなんだって言うんだ。


 フィーネやルナマリア、ベーさん達がどれだけ晩婚だと思ってる!


 ぶっちゃけ人間に換算したらお前等より全然年上・・・・おっと脳内で警笛が鳴ったのでこの話題はここまでにしよう。


「「「賢明ね(ですね)」」」


「・・・・(ボソっ)ヒカリ、俺、声に出してた?」


「ううん、何にも」


 この場に居るフィーネとユキ以外の声も聞こえた気がするけど、『そう言う連中だから』と納得しておくことにする。


 知らぬが仏ってね。




 そして夜になった。


(さて、ここまでの流れは完璧だ。

 後はさり気なく俺の誕生日をアピールすれば、きっと祝ってくれるはず・・・・)


「そう言えば少し前はヒカリの誕生日だったわね。ルークの誕生日も近いわ」


(キ、キターーーー!!! 母さんナイスだ!)


 まるで俺の考えを読み取ったようなタイミングでその話題に触れてもらえた。


 俺は喜びを周囲に悟られないように心の中で万歳三唱を始める。


(これなら全くワザとらしくないぞぉ。誕生祝いはもう目前。勝ち確だ)


 しかし誕生日の事を話題に出されたヒカリは、感心なさ気に一言「そうだね」と言うと神経衰弱の方に意識を向けてしまう。


 他の皆も興味無さそうな顔してる。


 たぶんトランプに夢中なんだろうけど、もうちょっと盛り上がってくれないと折角の話題がお流れになりそうだ。


 ほらほら、皆大好きルークさんの誕生パーティの話ですよー。


「そう言えばそうだったわね」

「最近イベント続きだったから忘れかけてたよ」


 誕生日の事を口に出してくれた母さんとは違い、アリシア姉と父さんは俺の生まれた記念すべき日を覚えていないと言い出したではないか。


 もちろんその視線はテーブルに並べられたトランプだけを見ていて、こちらを向く事はない。


 薄情者どもめ!


 だが君達と違い、腹を痛めて産んでくれた母親は可愛い我が子を祝ってくれるのだ!


「じゃあルークの誕生日は・・・・」


 母さんが俺の方を見て待望だったその言葉を紡ぎだす。


 来るぞ・・・・来るぞ・・・・・・パーティタイムが始まるぞ。




「クリスマスと一緒で良いわね」




 ・・・・・・・・・。


 ・・・・。


「え?」



 イブはクリスマス終了、ルークは誕生日終了のお知らせです。

 イベントを始めた時点から決まっていました。残念!


 正式には『雪やこんこ』ですが、雰囲気重視のユキの掛け声に意味はありません。

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