表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
296/1657

百九十八話 クリスマス1

 12月と言えば苦しみます・・・・じゃない!


 クリスマス!!


 一部の人にとっては『苦しみます』も間違いではないけど、それを含めて冬の大イベントと言えるだろう。


 俺? 過去は振り返らない主義なもんで記憶にございません。


 大体アルディアでは違うイベントにすればいいじゃないか。誰だよカップル専用イベントみたいにしやがったヤツは。その日に恋人が居ないってだけでどいつもこいつも憐れむような目をしやがって。365日の内の1日ってだけだろ。そんなの同情クソ喰らえだ。1人でネトゲやってる方が楽しいし。稼ぎイベントやってくれるし。あ~あ、そこで差が出るんだよな~。残念ですねー!


 ・・・・うん、思い出して苛立ったわけじゃないよ? 記憶にないもん。


 それはさて置き、ヨシュアでもクリスマスやります!



 ただしそのためには1つ重大な問題を解決しなければならない。


 これまでのイベントと違ってクリスマスは誰かの誕生を祝う日。


 つまり、盛大に祝われる人物が必要なのだ。


 俺達が勝手に作ってもいいけど、どうせなら王様とか伝説の人物とかを祝ってあげたいし、そっちの方が世間に浸透しやすいだろう。


 それこそイエスさんみたいな年号にされるぐらい有名な人が関係してないと何の日だかわからなくなりそう。


 そう考えた俺は早速いつものようにフィーネとユキを集めて会議を開き、ご長寿・・・・おっほん! 物知りな2人にそんな超が付くぐらいの有名人が居るのか尋ねてみた。


「12月のイベントは『クリスマス』って言う生誕祭をやりたいんだけど、2人は12月後半で誰か有名人の誕生日を知らないか?

 なんちゃら王国の建国とか、第何次世界大戦が終結した日とか、誰もが喜ぶような記念日なら何でも良いけど、出来れば誕生日で」


「申し訳ありません。流石に誕生日までは・・・・」


「私はそもそも有名な人を知らないです~。

 お友達は皆さん凄い人達なんですけど目立ちたがらないですからね~」


 しかし物知り博士のフィーネも、世界中を旅していたユキも思いつかないと言う。


 一応ユキから聞いた歴史書にも載ってないようなマイナーな王国の建国日が該当するから最悪それにするけど・・・・いまいち盛り上がりに欠けるんだよなぁ。


 生まれた日を祝う文化もなかったから仕方ないけど、どうしたものか。



「じゃあ私の誕生日にしましょうよ~」



 悩む俺にユキがそう提案した。


 普段はバカでマヨラーでお調子者で何考えてるのかわからないギャグ要素満載のヤツだけど、彼女は精霊王。


『誰もがお世話になっている精霊に日頃の感謝をして、さらにはその王の生誕を祝うイベント』


 たしかに最高の宣伝文句だ。


 でも・・・・。


「誕生日をそんな適当に決めていいのか? 今回は身内だけの祝い事じゃないんだぞ?

 ほらその内、学者とかが『実は精霊王は夏に生まれていました』とか言い出しそうじゃん」


 後々クリスマスを根底から覆されるような何らかの証拠が見つかって台無しにされたら元も子もないのだ。


 ほら折角覚えた歴史の年号が「実は違いました~」って突然変わったりするじゃん。


 しかし俺からの不安視する声にもユキは想定済みと言うかのように笑顔を絶やさない。


「ノープログレムです~。私の誕生日にケチ付けるような人には昔ながらの知り合い達と文句を言ってやりますよ~。

 『研究が何だ、証拠が何だ、こちとら1000年以上前からその日が誕生日じゃい』って。1000年単位で生きる人間なんてそう居ないでしょうから証拠不十分で敗訴決定です~。

 その点わたくし精霊王のユキさんならそのくらい余裕で生きてますし、別の人に世代交代しても精霊王には変わりないのでお祝い出来ますよ~。

 それに寒い日に生まれたのは間違いないですからね~」


「じゃそれでいこうか」


 本人が良いなら、こちらとしては願っても無い申し出だ。


 物凄く重要な情報だった気がするけど、とにかくそんな感じでクリスマス開催します。




 さて、目的が決まったら次はイベント内容だな。


 まぁこちらに関しては既に考えてある。問題は1つだって言ったろ。


 イベント好きな精霊王への日頃の感謝として精一杯盛り上げるのだ。


 『氷』をイメージした美味しいクリスマスケーキを食べ。

 『地』をイメージしたチキンを食べ。

 『水』をイメージした酒を飲み。

 『風』をイメージした歌を歌い。

 『火』をイメージした暖炉の前で浮かれ騒ぎ。

 『闇』となる暗い部屋で眠る。


 こうして精霊の基本属性を押さえていれば大義名分は立つし、祝われるユキもクリスマスケーキを雪っぽくデコレーションすれば文句ないだろう。


 『地=チキン』はちょっと強引かもしれないから大地に生息している動物なら何でも良い事にするけど、精霊王を満足させるマヨネーズ料理『チキン南蛮』と『七面鳥の丸焼き』を定番にするつもりだから正式な祝い方としては鶏肉だ。


 で、サンタクロースと名乗る精霊王が『1年間良い子にしてたら皆を見守っている精霊からご褒美が貰えるよ』っていうメッセージを込めて子供達にプレゼントを渡す。


 実際は深夜特別営業のロア商店で格安セールをしてご両親に買ってもらうのだ。


 これは素晴らしい家族向けイベントになるな!


 早速準備を進めよう!!



「そうでしょうか?」

「ちょっと待ったー!」



 俺がフィーネ達にイベント内容を発表すると、ハロウィン、学園祭に次ぐ3度目にして初の反論があった。


 それは・・・・・・。


 クリスマスを恋人達の日にした方が良い、と言う俺にとって耐えがたい残酷無慈悲な提案だった。


 2人は自分の考えるクリスマスについて、こう語る。


「家族はもちろんですが、どちらかと言えば冬は仲の良い男女が寒さに震えながら身を寄せ合っているイメージがあります。

 クリスマスに食べる特別なケーキや、特別なパーティは愛する男女で行うべきかと」


「ですです~。まさに待望のカップル専用イベントじゃないですか~」


 現に寒くなって来てからイチャつく連中が増えたらしく、聞いても居ないのにユキがその目撃証言を始めてしまう。


「今日も外を歩いてるカップルが、

『僕のコートのポケットに手を入れて』

『あっ、温かいね。私、冷え症だから助かるぅ』

『女性は心が温かいほど手が冷たくなるんだって。そんな君の手を温めるのが僕の役目さ(キラァン!)』

 ってイチャイチャしてました~」


 ブチブチブチっ!!


 あぁぁ・・・・キレちまったよ・・・・。


 プッツンだ・・・・・・・・。


 堪忍袋の緒がな!


「そんな臭いセリフを言うバカはどこのどいつだ!?」


「さぁ? 1時間に1回ぐらい聞きますよ~」


「くそったれがぁああああぁぁーーーーーっ!!!」


 ヨシュアは乱れている。


 幸せな生活や平穏な日常と、バカップル量産は違うだろ?


 平和ボケならいくらでもしてていいけど、公然猥褻は非モテ連中の精神を破壊するからダメだ。


 ニート時代に夜の公園でキスしてたカップルを何度殴ろうと思った事か・・・・。


「あ、乱れついでに宿屋でクリスマス限定の夫婦やカップル割引をしたらお客さん増えそうですね~。寒い日は部屋でイチャコラに限りますので食事は精のつく特別メニューをご用意しましょう~。

 時間があるならそのまま年越しまで泊まってもらって、帰った頃にはハローベイビーです~」


「そ、そこまで露骨にする事はないと思いますが・・・・初雪の中でのデートなども乙なものですね。

 雪・・・・白・・・・『ホワイトクリスマス』とでも名付けましょう」


 俺が思い出に浸っているとフィーネ達だけで次々と話を進めていた。


 い、いかん・・・・っ!


 家族のため、さらには俺の誕生日のために提案したクリスマスが、物凄い勢いで恋人達の日になろうとしている!


 このままでは非モテ男子達による暴動が起きてしまうぞ。


 血のバレンタインに続く惨劇の幕開けだ。


 そうならないためにも、ここは俺が頑張らなければ!



「いやいやいやいや。ちょっと待て、ちょっと待て。

 子供達の夢、サンタさんが見てるんだぞ? 性が乱れる事をしちゃいけないと思うんだ」


「性・・・・精霊・・・・聖霊・・・・・・ハッ! 性なる、いえ『聖なる夜』ですねー! 神聖な日ですねー! ホーリーナイトですねーっ!!

 白い精霊王だけに!!!」


「うっさいわ! 子供が必ず一度は通る道をわざわざ開拓するんじゃない!!」


「イエス! フロンティア!!」


 ダメだ・・・・バカが止まらない・・・・。


 どうしよう。どうすればカップル達の邪魔が出来るんだ。


 誰か教えてくれ。


「無理に邪魔する必要もないと思いますが。

 私達も楽しいクリスマスを過ごせば良いではありませんか」


「それは・・・そうだけどさ。

 でも幸せそうなカップルを見ると無性にイライラするんだ。一刻も早くその繋いだ手を引き離さないと我慢できなくなる、邪魔しなければならない、そういう宿命を背負ってるんだよ」


「そんな人は竜に蹴られて死んじゃいますよ~。

 好きな人と仲良く過ごせるのは良い事じゃないですか~」


 ユキが言ったのは『馬に蹴られて』の類義語として、より凶暴な竜を当てはめたことわざなんだろうな。


 馬と並んで生活に欠かせない乗り物として使われているから生まれた言葉・・・・竜?


 おやおや、そう言えばウチにも1匹居るじゃありませんか。


 つまりクロは恋人達の、バカップルの味方をするんだな? そうなんだな?


 俺の脳内では、路上でキスするバカップルを背にしたクロが「ここは俺に任せてキスしな!」と言って立ちはだかる光景が浮かんでいた。


 ユルスマジ・・・・。




 俺は暗黒オーラ全開で部屋を飛び出し、クロが寝ている小屋にやってきた。


 どうせあれ以上話してても会議は進まない。


 それより今はクロをぶちのめす方が優先だ。


 君には何の罪も無いが、他の竜が俺達の邪魔をするって言うんだから仕方ないのさ。


 いずれはお前も邪魔者になる。


「リア充の味方・・・・死スベシ」


「グル!?」


 突然俺から殺意を向けられたクロが震えて飛び起きたがもう遅い。


 貴様は俺の逆鱗に触れた!


「やめなさい」


「は、放せ! アリシア姉!

 コイツは、コイツは俺達の崇高な使命を邪魔する悪しき竜だ!!」


 しかし俺の拳が届く前にアリシア姉によって止められ、さらには敵軍までやってきてしまう。


「いつにも増してルークさんが殺気立ってますね~。

 でもクリスマスが始まれば今以上に面白くなりそうなので、今は一旦落ち着きましょうか~」


「ルーク様、クロに八つ当たりしても世に蔓延る恋人達が別れる事はありませんよ」


 若干フィーネも腹立たしそうにしているけど、それにしたってどいつもこいつも幸せな人を素直に祝えと言うんだ。


 訳がわからないだろ?


「・・・・グゥ」


 クロが震えたのは寒さから来るものだったらしく、俺のセリフを適当に聞き流して再び横になって寝始めた。


 皆・・・・すまない・・・・俺に力が足りないばかりに・・・・。


 もし目の前でイチャつこうとするバカップルと止めようとして竜に蹴られたら俺のせいにしてくれてかまわないからな。



 その後、


「じゃあ世界中の古龍を全滅させられたら非モテ男子の勝利って事で~」


 と言うユキによって俺の復讐は始まる前に終わりを告げた。


 そんなの絶対無理じゃんかよ・・・・。


 『クリスマス=チキン』はどこぞのタッキーさんの策略だと思います。

 そんな風習、日本だけです。

 あの時期に海外に行った事のある人ならわかるはず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ