表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
295/1657

閑話 11月23日

 学園祭が終わり、次なるイベントに向けて休息期間に入った俺は、ふとカレンダーを見て気付いた。


 明日は11月23日。


 それは誰かの誕生日とか記念日ではない。


 まぁ盛り上がる訳でもないし、大々的なイベントにしようとも思わないけど、個人的にやっておきたい行事ではあったので俺は1人、準備のために外出することにした。


 目的地は・・・・草原と花屋だ!


 最近ヨシュアには色々な所から貿易品が来るようになってるので、俺の必要としている物もきっと揃えられるだろう。




 その翌日。


 俺は昼食を取っていた家族へ日頃の感謝を伝えた。


「いつもありがとう! 今日は困ったことがあったら俺に言いつけてくれ! 家事、庭掃除、魔道具開発、何でもござれだ!

 なにせ勤労感謝の日だからな!」 


「「「きんろうかんしゃ?」」」


「そう! 今日は家族や仲の良い人達に日頃お世話になってる気持ちを伝えるための特別な日なんだよ! 特に仕事してる人は労おう!」


 当然ながらそう言う風習はない世界なので、たまには良い事をしようと思った俺はこの11月23日を選んだのである。


 今日は感謝の気持ちとして皆にプレゼントを用意したんだ。



 説明もそこそこに、昨日急いで用意した花を1人1人に渡していった。


「まずフィーネな」


「!?」


「何故驚く? フィーネも働いてくれてるじゃないか。別に親だけに渡すとは言ってないぞ。

 いつも傍で尽くしてくれてありがとう。ロア商会の方もご苦労様。

 喜んでくれるかわからないけど、フィーネに合う花を探してきたから受け取ってくれ」


「ルーク様からのプレゼントを喜ばない生命体は全宇宙のどこにも存在しません。

 ・・・・綺麗な花ですね、大切に育てて世界中をこの花で埋め尽くしましょう。

 踏めば地獄行き、枯らせば極刑、水やりしないと死刑ですね」


 重い・・・・愛が重いよ、フィーネさん。


 軽い気持ちで用意したんだけど、世界の命運を分けるぐらいの重要な選択だったのかもしれない。


「そ、そうか・・・・ありがとう。フィーネには『これ』な。

 『ルピナス』、花言葉は『いつも幸せ』『あなたは私の安らぎ』」


「!!!」


 まぁ他にも『貪欲』って花言葉があるけど言わなくてもいいだろう。


 顔を真っ赤にして受け取ったフィーネはいつまでもその場で固まっていた。


(告白・・・・今、私はルーク様から告白されましたか?

 私が傍に居ると幸せで、安らぐと。一生傍に居たいと。良き妻として片時も離れてほしくないと! ウフ、ウフフフフフ)



 動かなくなったフィーネは置いておくことにして、次に移ろうとした俺にアリシア姉が話し掛けてきた。


「へぇ~、その花ってそんな意味があるのね。初めて知ったわ」


「そりゃ今俺が考えたんだから知らなくて当然だ」


 一時期ハマっていた花言葉探しがこんなところで役に立つとは思わなかった。


 似てる花ってだけで勝手につけたけど別に良いよな。


 感謝する気持ちが大切なのだ。




 俺が次に取り出したのは白い小さな花。


「ユキには『エーデルワイス』な」


「ほほぉ~、白い花ですね~。私にピッタリですー!」


 受け取ったユキはその花を一切揺らすことなくワッショイし始めた。


 素直に感情を表現するのはコイツの数少ない魅力の1つだな。


 おそらく魔術で何かしてるんだろうけど、打ち上げる度にバッサバッサと鳴るのは茎だけで、それもどうやっても折れないはずだ。


「だろ? 一目見た瞬間にユキを想像してからな」


「これにもフィーネさんみたいな素敵な花言葉はあるんですか~?

 『可憐』ですかね~?

 『清楚』ですかね~?

 『アナタを愛する』とかだったらどうしましょー!」


「もちろんある! 花言葉は『おっちょこちょい』『お邪魔者』だ」


「!?」


「うそうそ、本当は『大切な思い出』『勇気』だよ」


「むしろ、『!?』です~。熱でもあるんですか~?」


 なんだよ、俺が真剣に良い事したらダメだってか!?


 ボケなきゃダメだってか!?


 それからしばらくお互いを罵り合ったけど、その間ずっとユキは大切そうにエーデルワイスを抱きかかえてくれていたので、俺は返せとは言わなかった。




 っと、さっきからフィーネ達を羨ましそうに見てる母さんのことも忘れてないから安心してくれ。


「母さんには『カタバミ』。花言葉は『輝く心』『母のやさしさ』

 花瓶に入れて玄関にでも置いてくれ」


「ルーク・・・・」


 名前を呼ばれ、そのまま無言で抱きしめられた。


 まさに母の優しさだな。



「父さんには『ガジュマル』ね。花言葉は『健康』。

 小さいからプランターで育てやすいと思う」


「ありがとう」


 いつまでも元気で居てくれよ、大黒柱さん。



「エルには『カランコエ』、花言葉は『たくさんの小さな思い出』『あなたを守る』。

 小さいけど丈夫だから育てやすいと思う」


「ルーク様!」


 フィーネと一緒に生まれた時からお世話になってる大切な人だからな。


 最近出番無いけど・・・・。


 犬耳を触らせないからだぞ!



「マリクは『サボテン』、花言葉は『燃える心』『暖かい心』

 サボテン枯らすほどのマヌケは一生結婚出来ないと思え」


「お、おう・・・・」


 独身貴族を満喫してるかと思いきや、実は結構気にしてるのかもしれない。


 冷や汗を流しながら受け取ったマリクは、その後、日当たり良い場所を聞きまわっていた。



 さて、オルブライト家はこれで全員だな。


 アリシア姉やヒカリが羨ましがったけど、君らは勤労してないからまだあげない。


 ヒカリはメイドをしているけど、俺の事を友達として守ったりしてくれるだけで仕事って訳じゃないからな。もちろん無給、ってかお小遣いをあげているぐらいだぞ。


 今回は勤労感謝なのだ。




 次は猫の手食堂に行ってみよう。


 昼過ぎの空いてる時間を見つけ、俺は彼女達にオルブライト家でやったのと同じ説明をした。


 そして同じようにビックリされた・・・・やっぱり俺が良い事をしようとするのが変なのだろうか?


 年中好青年のつもりなんだけどなぁ。


 おっと、食堂が忙しくなる前に渡しておかないと。


「ニーナは『ジャスミン』な。花言葉は『愛らしさ』『愛想のよい』

 この花に負けない様にもっと愛想よくしろよ」


「愛・・・・照れる」


 全く表情が動かないニーナだけど、その言葉を信じるなら喜んでいるのだろう。


 そう言うところを治していけ。



「ユチは『ポピー』、花言葉は『陽気で優しい』『恋の予感』

 いつまでも変わらない君で居てくれ。そしてもっと獣人要素を強めて俺を恋に落としてくれ!」


「あ・・・・ありがとう。でもニーナが睨んでるから別の花が良かったなぁ」


 最近彼女の語尾が『ニャ』になる時があるのを俺は知っている。


 新ヒロインとして名乗り出てもいいんですよ?



「リリ達は全員でこれだ。『ユズ』、花言葉は『健康美』『汚れなき人』。

 これからも食堂を切り盛りしていってくれよ!」


「健康で頑張るニャ!」

「汚れなき・・・・バレないように頑張ります」

「ありがとうにゃ」


 トリーが抜けたのは痛いけど、彼女以外は結婚しても食堂で働くと言ってくれているから皆が居る限りここは安泰だ。


 全員が結婚出来そうにないとは口が裂けても言えないけど・・・・。


 本当にユチが先に結婚するんじゃないかって思ってるよ。



 その後も俺は親しくしている大人達に花やプランターを配っていった。


 どいつもこいつも驚きやがって!


 ルナマリアなんか渡した菊を探知魔術で入念に調べやがったんだぞ!?


 折角『高貴』『高潔』って彼女にピッタリなのを選んだのに、もう二度とやるもんか!



 そんな散々だけど楽しい勤労感謝の日。


 ちなみにこの『勤労感謝の日』

 本来は「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」という全ての物への感謝の日だったりします。仕事だったり、作物だったり、家族だったり、友人だったりですね。

 さらに元をたどれば五穀豊穣を感謝して神にお供え物をする収穫祭らしいです。


 ただ今回は一般的に認知されている『働く人を労い感謝する日』と言う話で執筆しました。


 出来れば11月23日に投稿したかったんですが、物語は10月末のハロウィン真っ最中だったので現実世界とのズレは仕方ないと諦めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ