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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百九十五話 学園祭4

 あっ、という間に学園祭当日だぁぁぁああああぁぁーーーーっ!


 今日明日は盛り上がろうぜぇぇぇえええーーーーっっ!!!!



 ・・・・・・はい、一旦落ち着こうか。


 イベントが始まる直前ってこんな感じになるよね。



 俺達学生は出し物の最終チェックをするため早朝から学校に来ている。


「やっぱりお客さんにはこっちに並んでもらった方が良いんじゃない!?」

「おーい! 俺の衣装どこだよ!?」

「あっ! スープ溢した!」


 何もかもが初めてなのでテンヤワンヤしてるけど皆楽しそうだ。


 でもトラブルだけは無いように頼むぞ。


 そんな慌ただしく動く学生達を見つめる無数の目・・・・。


 そう! 学園祭を楽しみにしているのは何も学生だけじゃない。


 門の外にはハロウィンの時以上に大勢の人々が群がっていたのだ。


 安全なイベントとは言え争い事であるハロウィンと違って、こっちはただのお祭り。ましてや自分の子供や孫がやっているんだから当然こうなる事は予想していた。


 子供の活躍を一目見ようと集まった人が知り合いを呼び、その人だかりがさらに人を呼ぶ。


 もはやヨシュアの全人口より多いかもしれない!


 ・・・・は言い過ぎか。でも多い。


 開催までまだ時間あるのに何で俺達より早く来てるかなぁ・・・・。


 準備を通じて仲良くなった先輩達に話を聞くと、『学校まで送ってもらった』と言うわけではなく、大人達は楽しみ過ぎて彼らより早く家を出たそうだ。


 子供かっ!




 そんな落ち着きのない周りの連中とは違い、完璧な仕上がりの俺達『魔獣肉屋』は静かに食材の到着を待っていた。


 いやゴメン嘘。


 めっちゃテンション上がってて無意味に校庭を走り回りたい気分だし、獣人の女子が目の前を通り過ぎる度に『ガタッ!』と立ち上がってしまう。


「それはいつも通りだよね」


 ・・・・・・・・と言うヒカリの尻尾も世話しなくブラブラ揺れている。


 とにかく皆、楽しみで仕方がないのだ。


 そこへ調達担当のユキが転移して現れた。


「いや~、盛り上がってますね~。緊張してますね~。楽しみですね~」


「おっ、来たな。ドラゴンどうだった? 良いの手に入ったか?」


「もちのろんです~。ちゃんと骨付き肉として食べやすい大きさのドラゴンを仕留めてきましたよ~。

 それ以外にも美味しそうな魔獣肉を手に入れてきた有能な私を褒めたたえるのです~」


「「「ユキさん、あざっス!」」」


 皆が声を揃えてお礼を言う中、俺は逆に不安になっていた。


 コイツが・・・・役立っている!?


 それはつまりこの後に何かしら失態を犯してオチを付けるって事。


 一応この場はお礼を言っておくけど、その分バカやった時は怒るからな?



 何はともあれドラゴンの肉が手に入った。


 一般的に知られているサイズだと大きすぎて『冒険者っぽく豪快に肉に噛り付く』という店のコンセプトから外れてしまうので、手に持てるぐらいの骨のドラゴンって事で要望を出していた。


 美味しくて、調理しやすいく、丁度いい大きさの、骨付き肉の、ドラゴン。


 その全てを満たす食材が今ここに!


「ちょっと! 『切り応えがある』も忘れないでよ!?」


 はいはい、わかってますよお姉様。


 俺達の店が客寄せの目玉としているのが巨大ドラゴンを切り裂く実演販売なのだ。


 模擬店の場所争いに勝てたから良かったものの、切り分けるスペースが確保出来なかったらどうするつもりだったのか・・・・。



 そんな事を話しているとユキが巨大な肉を空間から取り出した。


「じゃじゃ~ん! これが私イチオシのグリーンドラゴンですー!」


「「「うぉぉおおおおおおっ!!」」」


 その瞬間クラス中、いや周りに居た他の学生も歓声を上げた。


 皮は綺麗に剥がれ、血抜きもされ、体長3mと小さいけど、その姿はまごう事なきドラゴン!


 初めて間近で見るドラゴンにテンションが上がらない訳なかった。


 あ、転移とか空間とかは誰も気にしていない。ユキはそういうヤツだと皆が無理矢理納得しているのだ。


 これ2日で無くなるのか? 余っても困りはしないけど、俺はどれだけ焼けば良いんだ?



「いや~、朝から良い仕事しましたぜ~」

「捌いたのはわたし達」


 関係者なので学生と同じく一足お先に校内に入ったユチとニーナが自慢気に話し掛けてきた。


 彼女達が早起きしてここまで下ごしらえをしてくれたのだ。


 準備期間中の話になるけど、切り分け組であるアリシア姉達は料理組以上にやることがなかったので、当日いきなりドラゴンを切る事に不安があった彼女達は猫の手食堂まで見学に行って捌く練習をしてたりする。


 フィーネ達の気まぐれで時々ドラゴン肉が出てくる食堂では、突然の『ドラゴンフェア』が開催されて客はドラゴンの肉が大量に食べられた。


 そこでドラゴンの希少価値が下がると思いきや、「ヨシュアが凄い」と有名になっただけだったので、俺達の店に影響はないだろう。


 まぁマンガ肉として出したわけじゃないし、いつも以上に混雑してたから食べれたとしても1,2回だろうからな。


 とにかくヨシュアは空前のドラゴンブームである。




 学園祭開始まであまり時間がないので、俺はドラゴンに群がる学生達を押しのけて早速準備に入った。


「じゃあ焼き始めようか。アリシア姉よろしく」


「任せなさい! グフフ・・・・剣じゃなくて包丁なのが残念だけど、何なら生きてないのも残念だけど。

 そいやぁぁああああっ!!」


 食堂で使われているアダマンタイト製の肉切り包丁を借りたアリシア姉がブツブツ言いながら勢いよくドラゴンを切り始めた。


 今使っているのが唯一ドラゴンを切れる包丁なので、よくある討伐風景のような真っ二つにはせず、計画立てて切り刻んでいくため結構な割合で千切りや角切りなど地味な光景が目に入るけど『ドラゴンを切る』って行為に本人が満足してるので良しだろう。


 ちなみに食堂で実験してみたらヒカリの爪でも条件付きで切る事に成功したけど、この包丁ほど綺麗じゃなかったし骨は無理だった。


 しかも模擬店みたいな人目のつく場所でやっていい行為じゃないので今日は大人しく交代要員として待機している。実際は休憩時間なんだけど校内をうろつくより、切るのを見ていた方が楽しいらしい。


 切り分けには相当な魔力と腕力を使うのだ。



 そんな事より調理、調理。


 切った肉が次々と運ばれて来るので俺達も仕事に取り掛かった。


「ルーク君、窯の火入れは終わってるよ!」

「ルーク君、薄切りした肉は焼き始めて良いの!?」

「ルーク君! 地面じゃなかったら3秒ルール適用あり!?」


 ったく、どいつもこいつも1年生を頼るんじゃない。


 普通の料理ならいざ知らず、魔獣肉なんて料理した事のない彼らに率先してコツを教えた俺も悪いけど、だからって困ったら全部聞くのは間違ってると思うぞ。


 まぁ時間もないからやるけど。


「骨付き肉は焼けるまで時間が掛かるから最優先で! 下味は濃い目に!」


「おう!」


「逆に薄切りは一瞬で焼けるから注文されてから目の前で焼いた方が売れる!」


「はい!」


「貴重な食材だから落としても汚れを振り払えば売って良し! ドラゴン以外の肉はこっちで食べてくれ!」


「は~い」


「売り子をする女子達は獣耳を着用!」


「「「・・・・・・」」」


「う、売る時にドラゴンの骨は回収すると伝える事! 『ギルド職員に監視されてるから持ち帰らないでください』って必ず言うように!」


「「「はい!」」」


 なんでだろう・・・・皆が頑なにカチューシャを付けてくれない。


 流れって大事にするべきじゃん。今そういう空気だったじゃん。さっきまで威勢よく返事してたじゃん。


 隙あらば付けさせようとする俺を全員が無視するようになったのはいつの頃からだろう。


 ほら今も俺の周りだけポッカリ空いてる。


「いい加減諦めなよ」


「・・・・もうちょっと頑張ってみるよ。

 売上対策とか、祭りムードでテンション上がったりして急に付けてくれるかもしれないから」


「この調子だとそんな事も無いと思うけどね」


「だな」



 はい、学園祭開始と同時に物凄い行列出来ました。


 もしカチューシャを付けようと思ってもそんな余裕ないです。


 そりゃ歩いてて突然ドラゴンの肉が目に入ったら気になりますよね。

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