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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百九十一話 ハロウィン その4.5

 ハロウィン開催の1週間前。


 俺は準備を進めながらより多くの参加者が来てくれるよう、盛り上がるイベントに必要な物を色々考えていた。


 考えて、考えて、考え抜いて・・・・真理に行きついた。


 ぶっちゃけ『金』と『希少品』っしょ?


 どれだけ裕福だろうと、どれだけ世界中の珍しい物を持っていようと、楽しい思いをしてそれ等が貰えるってんなら誰もが欲するだろう。


 ましてやそれが落とした銅貨1枚ですら血眼になって探す人だったり、ここでしか手に入らないような品だったりした日には・・・・。


 つまり俺が用意する物は世界に1つしかない魔道具。


 それは人々を魅了する賞品だ!


 しかも今回が初イベントなのでファーストインパクトが重要になってくる。


 これが成功して盛り上がれば来年からはエリアを拡大、もしかしたらヨシュア全域とかで開催出来るかもしれないのだ。


 そのための第一歩となる今回は誰もが欲しがる物を用意しなければならなかった。


 誰もが欲しがる物。


 それは生活が便利になる魔道具だ!!



「って考えたからカメラ用意してみたんだけど、どうだろう?」


 このカメラ。以前、映像として記録したい出来事があったのでその頃から試行錯誤していた物なんだけど、何故か映像よりも先に静止画像の方が出来上がってしまった。


 試作品にも関わらず相当なクオリティなので優勝賞品としても申し分ないはずだ。



 はい!


 突然ですがやって来ました、ルーク先生による久しぶりの解説コーナー!


 このカメラの大部分を占めるのはレンズ。


 その素材としてメデューサの目がオススメだと言われ、さらに近場に良い人が居ると言うので取って来てもらって試したところ見事に空間切り取りが可能となったのである。


 光の屈折率とか無関係な精霊でも姿を見せてもらえたら映るし、フィーネの高速移動すらもバッチリ映る。


 要は本当にその瞬間の空間がそのまま絵になるって事。


 理屈としては目の水晶体を溶接して魔力回路を結合させた1枚の巨大なレンズを作り出し、その周りに彫った魔法陣でメデューサの目を発動させてカメラの内部で疑似石化状態を作り出すって感じだ。


 それを魔力伝導率の良い樹木から作った専用の紙に念写する事で現像出来るこのカメラ、大量生産は出来ないけど数量限定で少しづつ販売していく予定です。


 見た目は人の頭ぐらいある箱でゴテゴテしてるけど使いやすいはずだ。


 何よりその場で現像出来るのが嬉しいよね。


 ・・・・1分ほど掛かるけど。


 でも! その間ずっと止まってなきゃいけないって訳じゃないんだから、魔力があるとは言え世界初のカメラなら上出来だろ!?


 用紙を入れて魔力を込めつつ魔法陣を起動するだけ!


 まぁなんて素晴らしい商品なんでしょう!!


 優勝者やったね!



 俺としては危険な魔道具でもないから賞品にすることに納得しているので、一応確認の意味で主催者のフィーネ達に聞いてみたと言うわけである。


 で、カメラどうでしょう?


「良いんじゃないですか~。どうせルークさんの関係者が優勝するでしょうし、後々量産された時の宣伝にもなりますからね~」


「そうですね。武力ならルナマリア、知力なら猫の手食堂が勝つでしょう。

 ロア商会会長としての意見を言わせてもらえば、このカメラは十分イベントを締めくくるに相応しい物だと思いますよ」


 まぁ俺もユチ辺りが悪だくみして優勝掻っ攫うと予想してるよ。


 カメラで使う用紙は当分の間ロア商店でしか販売しないから近場の人しか買えないし、ここで突然名も知らない部外者が出てくるとも考えにくいからな。


 2人からも許可が出たのでカメラは特注の魔道具って事にして優勝者に渡される事になった。




 そんな俺の予想通りカメラは猫の手食堂チームに渡った。


「やっぱり画像を残す技術って世界初なのか?」


 閉会式だけ見に来た俺とヒカリは周囲の盛り上がりに圧倒されていた。


 ゴテゴテした見た目からきっと凄い魔道具だと想像した参加者達は歓声を上げ、カメラの使い方を説明されてさらに過熱したのだ。


 この反応を見るに待望の技術らしい。


「わたしも詳しくは知らないけどそうだと思うよ。

 絵はどれだけ似せても完璧に一致するわけじゃないし完成までに時間も掛かるから、それが一瞬で残せるようになるのは革命なんじゃない?

 きっと新聞記者とか研究者が欲しがるよ」


 もしかしたら彼女も気付いてるかもしれないけど、瞬間記録ってエロ方面においては最強の力を発揮するので男共は内心咽び泣いている事だろう。


 静止画だけでこの盛り上がりなら映像だとどんな事になるのか、ちょっと怖い・・・・。



 こうして本日2番目の盛り上がりを見せたハロウィンは終わった。


 1番目は結果発表ね。


 あと仮装賞の『カボチャ1年分』と『カボチャ調理魔道具』は、おじいちゃんおばあちゃんと一緒にオバケの格好をした幼女チームに渡された。


 まぁ見ててホッコリしましたよ。これで美味しいお菓子作ってもらいな。



 俺としては今から食堂で祝賀会でもやってやりたいけど、どうせ同じことを考えたロア商会の人間とか、カメラ見たさに集まる人が大勢居るだろうから落ち着いてからにしよう。


 だって今日明日と休日なんだからそうとしか考えられないじゃんな?




「シャッターチャンス!」

「チェキ、だニャ!」


 あれから2日後の食堂定休日。


 ハロウィン優勝者達を祝福しに来た俺は入店直後、突然カメラで撮られた。


 ユキ経由で由緒正しき撮影合図は「はい、チーズ」か「1+1=2」のどちらかだと教えたんだけど、勝手に自分達で新しい挨拶を考えたらしい。


 顔の横に手を持っていけば小顔になり、「チェキ」と言えば語尾が『キ』なので笑顔も作れ、合図としても盛り上がりとしても申し分ない言葉。


 さらにピースサインで可愛さアピールも出来て隙が無い。


 異世界とは言え流石の女子力である。


 カメラ自体も気に入ってくれてるみたいで何よりだけど、気に入り過ぎてハイテンションが鬱陶しくもあった。


 大体無断で撮影するんじゃない、詫びとして尻尾をモフモフさせろ。



 『ジー』と言う撮影音が鳴りやむことなく盛り上がるリリ達の近くでは平常運転のニーナが棒立ちしている。


「ニーナは普通なんだな?」


「・・・・あんな恥ずかしいポーズはしない」


 と右手を左右に振って否定するけど、その指先が2本立っていたのを俺は見逃さなかった。


 その手を顔の横に持っていけば今リリ達がやっているのと同じ見事な『チェキ!』ポーズの完成だ。


 机の上に広がった写真の数々から察するに、たぶんユチから「これが可愛い」と指導されて散々撮影した名残だろう。


 それを感じさせないように振舞っているけどシッカリ根付いてるニーナは異世界初のクーデレギャルである。


 あ、ニーナが『チェキ!』してるやつ見っけ。


 楽しそうで何より。


 ・・・・これコピー出来ますか? あ、無理? じゃあ下さい。



「お姉ちゃんもルークも一緒にやろうよ! チェキ!」


「ほらほらニーナも昨日まであんなにノリノリだったじゃん! チェキ!!」


「おいおい次から俺を撮る時は報酬先払いで頼むぜ。チェキ!」


「・・・・ちぇき」


 この様子ならハロウィンはきっと来年からも盛り上がるだろう。


 その時は賞品をここまで豪華にするつもりはないけど、お菓子と少しの賞金があれば十分楽しめるさ。


 イベントってそう言うもんだろ?


 若人の間で何やら流行っているそうで。

 まぁそれとは無関係ですが、ハイテンションな少年少女がピースサインする時ってそういう掛け声しそうなので使わせてもらいました。

 チェキ!

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