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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百八十九話 ハロウィン その3.5

「いやぁ~、俺とアリシア姉だけでこんなにお菓子もらっちゃってさぁ~」


 ハロウィン2日目の平日。


 学校に大量のお菓子を持って来た俺はクラスメイト達に見せびらかして自慢していた。


「ぐっ・・・・負けた~」

「俺、全部のポイント引き換えたけどこれより全然少ない!」

「ちょっと頂戴」


 俺と同じく獲得した戦利品を自慢するために持って来た奴も大勢居たけど比べるまでも無い。


 その程度で大量と言うなんて所詮は雑魚よ。


 見るがいい! この袋から零れるお菓子の山を!


 と言っても何も無意味な自慢がしたいわけじゃなくて、もしかしたらまだ知らない連中も居るかもしれないから『こんなに楽しいイベントだ』と宣伝したかったのだ。


 現に、机一杯に積み上げられたお菓子を見てクラスメイト達が涎を垂らして羨ましそうにしているし、子供が無料だと知らないヤツも結構居た。


 ほぉ~ら、欲しいだろぉ~?

 食べたいだろぉぉ~~?

 今日の放課後に参加登録したくなるだろぉ~?


「諸君も頑張ってくれたまえよ」


 イベントを広めることが目的な俺は、お菓子を見せびらかすだけ見せびらかしてカバンの中にしまった。


 え? 自慢もしたかったですが何か?



「7割アリシアちゃんのだけどね」


 そんな俺を見たヒカリが、てっきりプレゼントするものだと思っていたと驚き、呆れながら注意してきた。


「だから『俺とアリシア姉』って言ってんじゃん。実際フィーネに聞いた話じゃ子供の中では俺達が断トツだったらしいし」


 ハロウィン期間中は審判に回ると言っていたフィーネとユキは、どうやってるのか知らないけどポイント以外にお菓子の量まで計算していた。


 その途中結果を聞いたらチームとは言え俺とアリシア姉が3位と大差をつけて稼いでいたのだ。


 まぁ勝敗には一切関係ないけど子供達の中ではヒーロー扱いされるので悪い気はしない。



 当然だけど持って来たお菓子は教師に没収された。


 それを見越して『皆に配ってください』と言う手紙を袋の中に忍ばせていたので、きっとどこかで喜んでくれる子供達が居るはずだ。


 ハロウィンマークのお菓子だからこれも布教活動の一環である。


 来年からも同じ事やるつもりだ。


 ・・・・入手方法は変えるけど。




 一通り自慢し終えた後、俺はチームメイト達とハロウィンについて話し合いをしていた。


 ずばり、このままお菓子の乱獲を続けるのかどうかだ。


 俺としてはもう皆に付き合うぐらいの気持ちでいるからどっちでも良いし、ヒカリも昨日一日で戦うべき相手が居ないと判明したから遊ぶつもりみたいだ。


 ちなみに傭兵らしき人に勝負を挑んで勝っていた。


 子供だと油断したのもあろうだろうし、負けてもお菓子を取られるだけって言うお祭りムードのせいもあっただろうけどフルボッコだったなぁ・・・・。


 仲間の応援が来て騒ぎになる前に逃げたけど。


 そんな事より今後についてだったな。


「どうしようか? 皆は今日も商店街に行くのかい?」


「わたくし・・・・あの後、心が痛くなって使用人に謝りましたわ」


「もちろんボクもさ。同じ戦法は使わないよ。

 だから普通のルールで参加するのかを確認しようと思ってね」


 なんかアリス達が俺が悪者みたいに言ってる。


 そんな言い方されると反則行為でもしてる気になるじゃないか。


「みたいじゃなくて、そう言ってるんだよ」


「バ、バカなっ!? 平和的な交渉をして、ルールに則った勝負をして何が悪い!?

 そんな事言うならお菓子返せ! 自分達だって喜んで食ってたじゃないか!」


「「それはそれ、これはこれ(ですわ)」」


 これだから子供ってヤツは・・・・。


 感情で話すんじゃなくて理論立てて説明して欲しいものだ。


 争うことなく話し合いによって解決策を模索する事の何がいけないんだろう?


「ルークのは話し合いじゃなくて一方的な搾取だからだよ」


 ・・・・力なき子供が頭を使って平和的に解決させる事の何が悪いんだろう?


「『権力』って名前の力があるからだよ」


 ・・・・・・う、生まれ持った力を使って何が悪いんだろう?


「じゃあルークは自由研究でイケメンじゃない事が判明したけど許せるんだね?

 カッコいい人だけがモテて、ルークみたいな人は女性から見向きもされない世界を」


 否! 断じて否っ!!


 思い通りにならない世の中が間違ってる。


「結局そこに行きつくんだね・・・・」


 上手くいかない時って誰だってそう思うだろ?



 結局、人ってやつは感情で生きる生き物なのだ。


 よしっ、上手くまとまったな。




 話し合った結果、ファイ達が「公式ルールで参加してみたい」と言うので放課後に少しだけ通行人と勝負してみたけど実力、運、知識、全てにおいて連敗してお菓子を搾り取られてしまった。


 唯一ヒカリが勝ち星を稼いでくれたからポイントに影響はなかったけど、所持していた防壁となるお菓子は全て無くなったのだ。


 まぁこの辺が潮時だろう。


 そもそも子供が本気で挑んだとしてもどうにかなるイベントでもなかった。


 家に貯め込んだお菓子で満足するとしよう。


「じゃあ俺は知り合いにポイントあげてくるけど・・・・皆はどうする?」


「ボクもお菓子をくれた使用人にお詫びとして全ポイント渡すよ。買ったと思えば後腐れもないだろうし、社会が垣間見えて十分楽しんだからね」


「そうですわね。わたくし達にはポイントよりもお菓子の方が嬉しいですわ。お友達と交換する楽しみはこれから始まりますのよ!

 それにそろそろお夕食の時間ですから帰らなくてはいけませんの」


 家に残ったお菓子を使って子供ならではのイベントを始めようと企む2人は満面の笑みを浮かべて帰っていき、その後をいつもの表情のシィが追いかける。


 ちょっと悲しそうだったのは主であるファイにいい所を見せられなかったのが原因だろう。


「わたしの意見を取らないでよ」


 ・・・・同じ女であるヒカリ談だ。


 俺からは全くそんな風には見えませんでしたけどね。




「ニャーッハッハッハ! ニャーーッハッハ!!

 笑いが止まらんニャ! ガッポガポだニャー!」


「優勝だぁー! 優勝はもらったぁーっ!!」


 猫の手食堂にやってきた俺とヒカリを出迎えたのは、いつもの『いらっしゃいませ』と言う挨拶ではなく爆笑する猫人族であった。

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