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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百八十七話 ハロウィン その2.5

 盛大にスタートしたイベントで俺達子供チームが最初にやったことは『一刻も早くこの場を離れる』だった。


 どうせ手っ取り早くお菓子を奪い取ってやろうと広範囲攻撃を仕掛けるバカが現れるからだ。


 もちろんそれはルール違反だけど、白熱した試合の最中に周囲を巻き込む事故が起こるのは仕方のない事だろうし、余程じゃなければお咎めもないはず。


 ヒカリ達も同意見だったので俺は小さな体を活かした機動力で少し離れた本屋まで一目散に駆けだした。


 そして予想通り、さきほどまで俺達が居た空間から竜巻が発生した。


 ただ無差別ではなく特定の人間だけを巻き上げているので、あれほどの魔術を完全にコントロールできる人物、つまりはルナマリアの仕業で間違いないだろう。


「あれとどう戦うかが問題だな」


「え!? ル、ルルル、ルークさん、まさか戦うおつもりですの!?」


「いやルークあれは無理だよ。あんな大規模魔術と対抗しようなんて思っちゃいけないなぁ~」


 アリスとファイが俺の正気を疑うような顔で止めてくるけど、あれと真正面からぶつかるつもりなどさらさら無い。


 どういう戦い方なら勝てるかって話だ。


 でも会場で彼女達に会った時からずっと考えてたけど全然思いつかなかった。


「まぁアイツ等は他の連中に任せて、俺達は確実に勝てる戦法で行こう」


「「「確実?」」」


「ルーク、戦いに絶対なんて無いんだよ?」


 だからなんで全員が武力や戦闘力で考えるかな・・・・。


 仕方ない!


 ここは賢いワタクシめが画期的な案を説明しよう。


「まずお菓子を楽しみにしてる同年代の子供は除外するだろ?」


「「うん」」


「つまり俺達が狙えるのは大人って事になる。

 大人、それは汗水たらして労働してる人の事だ」


「「うん」」


「俺はロア商会出資者の息子、アリスやファイは貴族の子供だ。

 つまり・・・・権力、使おうぜ」


「「「酷い作戦だ(ですわ)」」」


 俺の提案した必勝法には批難殺到である。


 この悪知恵に対して『悪どい』ぐらいならまだしも、人でなし、鬼、悪魔、性格歪んでる、などの罵倒をされ続けた。


 ・・・・お前等、覚えてろよ。



「流石にこの方法でポイントまでは取らないって。

 ハロウィンは『トリック・オア・トリート』、お菓子くれって言うイベントなんだから、大人が知り合いの子供にお菓子をあげるぐらい普通、普通」


 勝負の方法は至ってシンプル!


 顔見知りの使用人や従業員に声を掛けて「あれ? 戦っちゃうんだ? ふぅ~ん」って言うだけ!!


 相手の戦闘意欲と退路を同時に塞ぐ完璧な勝ち戦よっ!



「あっ、ルーク、あの人は製造業で働いてるよ」


「よっしゃ! あの~、ちょっと良いですか?」


 こうして連戦連勝を重ねる俺達は夕方までお菓子を乱獲したのであった。



「えっ!? ちょ、ちょっとタイムタイム!」


「え~?」


「『え~』じゃない! そこは正々堂々勝負する所じゃないのか!?」


「なんで相手に有利な条件でやらないといけないんだよ。勝率高い方を選ぶに決まってんだろ」


 中にはこうやって粘る奴等も居たけど結局は落ちたし。




「フェッフェッフェ・・・・坊や達、このお菓子を返してほしければポイントを渡しな。その手に持っているお菓子はワシのイリュージョンで生み出した幻よ」


「わたくしの闇の波動でアナタのお菓子は既にこの手の中ですわ」


 順調に稼ぐ俺達の前に懐かしい特売荒らしの剛腕達が立ちはだかった。


 でも俺のお菓子は取られていない。


 いつの間にか少女2人が臨戦態勢なのでファイはシィが、俺はヒカリがガードしたんだろう。


「え!? あ、あら・・・・先ほどまで確かにお菓子を持っていましたのに!」


 彼らのターゲットはアリスだ。


 誰からも守ってもらえなかった彼女だけがイリュージョンだか闇の波動だかで取られたらしい。


「フェッフェッフェ。裏ルール『直接ポイントを奪い取る』じゃ!

 お主らは菓子を持っていない、よってポイントをやり取りする事になる。この菓子を返してほしければ・・・・わかっておるな?」


「抵抗するなら可哀そうですがその子のお菓子は闇に消える事になりますわね」


 大人げなく本気で脅しに掛かってくる剛腕達。


 子供相手に止めてやれよ。ほら、アリスが泣きそうじゃないか。


「どうする? わたしがやろうか?」


 ヒカリなら勝てるようだけど、もし闇の波動(?)が本物なら多少なりともアリスのお菓子は消されてしまうし、逆に俺達の分を取られる可能性もある。


「まぁそんな物騒な事をしなくてもここは俺に任せておけ、穏便に片付けてやろう」


 その様子をヒカリとファイは心配そうに見ていて、アリスは自分のために頑張ってくれる王子様扱いで夢見る乙女目をしている。シィは興味なさげだ。


「フェッフェッフェ! 面白い事を言う! やれるものならやってみるがいい!」


「わたくしも舐められたものですわ。闇こそ正義、闇こそ最強!」


 ビシッとカッコイイポーズを決めた老婆と貴族風マダムが俺と対峙する。


 さぁ聞くがいい! 絶対順守の神の言葉を!


「あの、毎回特売日に店内で暴れてますよね? 知り合いに店長や幹部が居るので言いつけますよ?

 それと無理矢理お菓子を奪うのはルール違反ですし、倫理的に見ても子供を脅すのはどうかと・・・・運営スタッフに通報しましょうか?」


「「スイマセンでした」」


 先ほどまで威勢の良かった剛腕達は綺麗な土下座をして奪ったお菓子を差し出してきた。


 フハハハッ、見たか君達。


 言葉こそ正義! 話し合いこそジャスティス!


 逆にお菓子を恐喝・・・・いやいや詫びとして貰えてラッキーだったな。


「こんなの王子様じゃなくてただの詐欺師ですわよね?

 華麗な剣技で戦って欲しかったですわ」




 夕食時になると辺りに居る人の顔も見えづらいのでこの戦法が使えなくなり、お腹も空いたので解散になった。


「大量、大量! お菓子を全部出せって無理を言わなきゃ結構素直に渡してくれるもんだな!」


 最初に横暴な事を言って相手を怯ませてから妥協案を提示するという交渉術を使った俺は見事な成果を残した。


 お菓子を全部取られたらポイント消費しなければならないけど、少しでも残っていたら盾として使えるので諦めがつくらしい。


「まぁ妥当な所だよね。ただ明日からは使えないよ?」


 そうなのだ。


 ヒカリの言う通り明日からは平日なので俺は学校に行かなければならないし、今日カツアゲ・・・・おっほん! 快くお菓子をくれた従業員も仕事なのである。


「ぶっちゃけクラスメイトに自慢出来れば満足だし、これ以上稼ぐ必要ないさ。

 ヒカリが戦いたいって言うならやってくればいいけど、俺はお菓子食べながら傍観してるよ」


 流石に俺以上の荒稼ぎをした子供は居ないはず。


 つまり俺のハロウィンはここで終わったのだ。


 あとはニーナにでもポイントをやって機嫌取りするかな。



「ただいま~」


 俺とヒカリがそんなやり取りをしていたら、同じ参加者であるアリシア姉も夕食前に帰って来た。


 彼女の腕の中には大量のお菓子が!


 もしかしたら俺以上に持っているかもしれない。


 ど、どうやってこんなに稼いだ? 実はヨシュアレンジャーの中に大貴族が混じっていたのか?


 ・・・・いや違うな。全員従業員の子供か孤児院出身者で間違いない。


 なら一体どんな方法で?


 俺達とは違うやり方なんだろうけど、アリシア姉ならではの魔法で挑戦者を一掃したりしたのか?



 わざわざ袋まで用意して大量のお菓子を持ち帰った姿に恐れおののく俺を見てアリシア姉が説明してくれた。


「・・・・・・も、もらったのよ」


 その顔は激戦を制した晴れやかさなど皆無の悲し気な表情だった。


 どうやら不本意な手段で手に入れたお菓子らしい。


 あまり詳しく聞かないのが弟心と言うやつだろう。


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