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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百八十一話 2学期

 楽しかった夏休みも終わり、今日から2学期!


 まだまだ学校が楽しみな俺は1か月ぶりとなる通学路を浮かれ気分で最初の100mだけスキップで移動し、案外疲れる事を知って速足に変更して通学した。


 普段使わない筋肉を使った事から来る足の震えを抑えつつ、こうして無事教室で久しぶりにファイ達と再会を果たしたのである。


「ヘイ、ブラザー! 久しぶりじゃねぇか」


「やぁ親友! 君は全然変わらないねぇ」


「わたしくもブラザーに含まれているのでしょうか? 女性ならばシスターでは? いいえ、この場合のシスターは神事に関わる女性を表すのではなく、姉妹でもなくスラング的な意味合いで・・・・わかりませんわ」


 ファイはノリ良く挨拶を返し、アリスは真面目に考えて頭から煙を出している。


 彼女はもっと感覚で動くべきだ。じゃないと俺と話してて、いや生きていて疲れるだろうに。


 真正面から向き合おうとするアリスとは反対に、俺を無視してるそこの2人はもっと興味を持つべきだぞ。


 なぁ、シィ! ヒカリ!


「はいはい、そうだね。ゴメンね」

「ファイ様が嬉しそうで何よりですの」


 ・・・・いつか泣かす。


 ただ俺がファイの友達であることは認めているらしく、シィの言葉の裏にある信頼を感じれたから許してやろう。


 あと親友面して寄って来たエース達から宿題見せてとお願いされたので丁重にお断りしてやった・・・・と見せかけて10分だけ貸してやった。


 俺は今、友との再会で喜びに満ちているから寛大なのだ。



「やっぱり友達と会えるのは嬉しいね!」


「だよな!」


「旅行中もずっとルーク達の話をしてたんだよ」


「俺もだ!」


「夏休みが終わるのが待ち遠しかったですわ」


「それはないわぁ・・・・」


「わたくしだけ!?」


 友達と会うのを楽しみにしていたのはファイ達も同じだったようで、アリスに至ってはむしろ早く休み終わらないかな~と思っていたほどらしい。


 まぁ誰からも共感を得られなくて1人ショボ~ンとする羽目になったけどな。


 だって友達が地元に居ないからって別の友達を作る機会も多いんだから、休日は長ければ長い方が良いだろ?


 ヨシュア中央まで出掛けたヒカリが試しにアリスの家に立ち寄ってみたら結構前に帰って来てたらしくて遊んだって言ってたし、1か月間ずっと居ないわけじゃないんだから帰って来てから土産の交換をするのも良いだろう。


 だから君の意見には賛成しかねる。



 2学期が始まる前に俺とアリスの間に溝が出来てしまった。


 ・・・・な、何にしても楽しい学生生活の再開だ!



 それぞれ土産話はあるだろうけどそれは追々話すとして、今は何よりもホットな話題があるじゃないか。


 そう、宿題である。


 始業式前の教室では俺の予想通り、最終日まで遊び呆けて結局間に合わなかったバカ共が友達のを見せてもらって必死に書き写している。


 長期休み後の恒例行事だな。


 しかも間違い方が同じで丸写しなのがバレて先生から怒られるってまでがテンプレ。


 所詮は子供。そこまで気が回るようになるのは高学年になってからだろう。


 だからこそ俺も10分と言う短時間しか貸さなかったわけだが。


 ってか入学してから最初の長期休暇なんだから宿題ぐらいは自分でやって来いよ、やってみると結構楽しいもんだぞ。


「ジー・・・・」


 はいはい、そんな目をしなくても言いますよ。俺もヒカリ大先生に教えてもらわなかったら忘れてましたよ。


 あのバカ共、ABDトリオと同じですよ。



「いやぁ、最終日に自由研究の存在を知らされて焦った焦った」


 別に恥ずかしい事でもないので、俺は自虐ついでにファイ達に昨日あった事を告白した。


 皆の自由研究も聞いてみたかったし丁度いいか。


「ルークはボクに負けない様に必死で宿題してたからね~。ちなみに間に合ったのかい?」


「おうよ。完璧な研究発表ができるぜ」


 これから生徒達による発表をするらしいのでクラスメイトがどんな研究をしたのか結構楽しみだ。


 その前に君達の研究成果を見せてくれたまえ。


 ちなみにファイとの宿題スピード勝負は俺の圧勝だった。


 何せ教師の話を聞かずに黙々とやってたからな!


「ルークさんはどのような事をされたのですか? わたくしはお父様について回ったヨシュアの皆様の仕事風景を描きましたわ」


 ・・・・おや?


「ボクは親戚の居るパズールに行ったときに、そこの特産品『砂粘土』でドラゴンを作ったよ」


「私はそれを作っているファイ様の似顔絵を描きましたの」


 ・・・・おやおや?


 なんか俺の思ってる自由研究と程度が違うと言うか・・・・。


 周りを見渡すとクラスメイト達はアリスやファイと同じく『立体表現出来ていない絵』や『どこが口かわからない工作』を大事そうに抱えている。


「なぁヒカリ。研究って『研ぎ澄まして』『究める』って事だよな? 考察からの実験や観察や調査を通して物事についての事実を深く追求する過程だよな?」


「ルークの言ってるのは『研究』であって『自由研究』じゃないよ。

 わたし達1年生なんだよ? なんで社会人基準で話してるの?」


 オゥ・・・・。


 いつも「子供だから良いよね」とか言ってるのに、肝心なところで6歳児であることを忘れていた。


 そりゃ普通の子供は料理作った事を感想文にするだけで成分変化とか調べないし、ましてやそれをまとめて料理人すら感嘆する本を作ったりしないよな。


 フィーネの教育を受けている努力家なヒカリに合わせた結果、俺も十分天才の域に足を踏み入れてしまっていた。


 もちろん1年生ならって条件付きだけど。


「今から感想文にしていいッスか?」


「勿体ないし、時間も無いからダメ。ほら先生来たよ」



 残念ながらクラスメイト全員に驚かれる凄い発表をする羽目になってしまいましたよ。


 珍しい形の石を見せびらかしたり、旅行先の特産物の感想を言ってる中で突然糖分やタンパク質どうこう言い始めたらこうなりますよね。


 しかも成分についても細かな説明を入れてるから子供でもわかりやすい仕様。


 担任から「知り合いの料理人に自慢するからコピーさせて欲しい」ってお願いされましたよ。


 いくら「助言しかしてない、俺は情報をまとめただけだ」って言い訳しても、わかりやすく表にしたり解明されていなかった成分を書いている時点で売れるレベルだと褒められてしまった。


 学会に発表するとか言い出した時は流石に全力で止めたけど、それすらも謙遜する天才児だと称されてヨシュア学校の先生方からの内申点が凄い事になった。


 高学年になったら生徒への調理指導をお願いしたいと言われたので丁重にお断りしましたけどね。



「『武のヒカリ』『知のルーク』って有名になれて良かったね。お揃いだよ」


「俺の・・・・俺の平穏がぁ~」


 数日後には文武両道のコンビとして1年生の間で話題の人物になりました。


 レシピを参考に龍菓子を作った連中が感動して広めたみたいだから布教活動は成功したけど、それに比例してレシピ考案者として俺の知名度も上がったよ。


 アリシア姉の後を継ぐのは俺達みたいです。


 周囲に合わせるって大事だね。身近な1人だけを参考にすると痛い目に遭うよ。


 みんなも気を付けよう!



 あ、もちろんロア商店や猫の手食堂、銭湯での龍菓子の売上げは上々だった。


 近々ドラゴンフルーツを安全に確保する手段について会議が行われるとか。


 食生活が豊かになるって良い事だよね。


 ・・・・俺の名前さえ出なければ。

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