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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百八十話 夏休みあるある

 龍菓子を生み出した事で楽しかった神獣アルテミスとの生活は終わりを告げた。


 生産ラインを確認した彼女は布教活動を頑張ると言って王都に居るイブの下に帰ったのだ。


 と、同時に夏休み最終日である。


 まるで龍菓子を1日や2日で作ったみたいに思うかもしれないけど、ドライフルーツやジャムの下ごしらえだけで1日掛かるし、煮るのだって30分作業なのだ。


 そんな感じの試作品を沢山作ってたらそりゃあ長期休暇も無くなりますって。


 完成までに3週間掛かりましたよ。


 面白い古龍と友達になれたのはいいけど、一度しかない6歳の夏休みの後半は家で料理するだけで終わったのだった・・・・。


 旅先で様々な出会いをしたリア充から一転、試行錯誤と言う名の引きこもり生活。前半と後半の落差が凄い。


 でも料理してる間もそれはそれで楽しかったし、総合的に考えたら充実した夏休みだったのかな?


「わたしは楽しかったよ」

「私もです~」

「私は・・・・もう少しルーク様と遊びたかったですが、王都での4日間は楽しかったです」


 皆も楽しめたようだし、俺も言うほど不満はないので2学期もこんな日々が過ごせたらいいな。



「ところでルーク様、夏休みの宿題は終わったのですか?」



 これから始まる新しい学生生活に思いを馳せていた俺は、フィーネの何気ない一言によって現実に連れ戻された。


 学生にとって長期休みとは自由であると同時に膨大な宿題のせいで束縛されるものなのである。


 しかし俺は違う!


「ふっ・・・・俺が最終日まで『夏休みの友』を残すような人間に見えるか?

 そんなのとっくに終わってるに決まってるじゃないか!」


 中身はオッサンなこの俺が学生の3割が陥るような事態になることはないのだよ。


 むしろファイ達と終業式前にどこまで進められるか競争したぐらいだ。


 交流試合の応援に行ってなかったら1年生の中で最速で終わらせてた自信あるね。


「・・・・んん~~・・・・ん~?」


 その話を聞いたフィーネは「良かったです」と安堵の表情を浮かべているけど、ヒカリは悩まし気な顔で何かを思い出そうとしている。


 そしてほとんど一緒に過ごしていた夏休みを思い返し、『絶対にそうだ』と言う結論に至ったヒカリが恐る恐る確認してきた。



「自由研究、してないよね?」



 ・・・・はい?


 何すかそれ?


「宿題って教師が出したやつだけじゃないの? あの分厚い本だけなんじゃ」


「それと長期休みを使って学んだことを発表する『自由研究』があるってクリス先生言ってたよ。

 どうせファイ君に負けない様に必死だったから聞いてなかったんでしょ?」


 はい、その通りです。ホームルームの時も隠れて宿題してて話を聞いてませんでした。


 自由研究あるみたいです。



「なんて事だ。この俺がそんな時間の掛かりそうな物を見逃していたとは・・・・」


「まだ昼間なんだから今からやれば間に合うよ、頑張ろう。

 わたしは『猫の手食堂の仕事内容』か『空中浮遊の秘訣』のどっちにしようか迷ったけど、結局皆が興味ありそうな食堂の方にしたよ」


 やはりと言うか話題を出したヒカリは終わっていた。


 裏切者め。


 そこは終わってなくて俺と一緒に悩むとか、共同制作に出来る研究内容にするべきだろうが。


 ん? 共同製作?


「・・・・食堂の料理を考えたのは俺だから実質俺の自由研究も終わってるようなもんか?」


「終わってないよ。これを共同発表にするなら料理の作り方を書かないと。

 あと料理の発想がどこから出たのか聞かれると思うけど良いの?」


「ダメだな」


 って事で今から自由研究やります。




 転生者だとバレず、天才的な美少年だとも思われない1日で終わらせられる子供らしい自由研究。


 なんだろう?


「美少年じゃないので転生者の方だけで大丈夫ですよ~」


 ユキが何か言ってるけど聞こえない。


 何しようかなぁ~。


「美少ね「何に! しようかなー!!」・・・・あくまで自分は美形だと言い張るわけですね~?

 知り合った誰もが『死んだ魚のような目』と例えるにも関わらず、レックスさんのような理想的な王子様だと自画自賛するわけですね~?」


 引き合いに出してきたイブのお兄さんは絵に描いたような王子様。流石にそれは卑怯だ。


 上の上であるあの人とは比べ物にならないけど、俺だって容姿にはそこそこ自信がある。


「え? まさかアンタ自分がモテる容姿してると思ってんの?」

「母親として言いたくないけどルークはカッコよくないわよ」

「・・・・ルーク様の容姿は普通ですよ」


 と、その場に居た全員が寄ってたかって否定してきた。


 なんだよ、なんだよ、みんなして。


 フィーネだけは味方だと思ってたのに、憐れむような口調で俺の勘違いを正すみたいに言いやがって。


 中の上ぐらいあるわ!


 ・・・・普通より上って考えたら美少年だよな?



 しかしここまで価値観が食い違っては白黒ハッキリ付けなければなるまい。


「上等だ! なら俺の自由研究は男子コンテスト! 略して男コンだ!

 ヨシュアでモテる人物を調べてやろうじゃないか」


「成人男性であるアランさんやサイさんを巻き込んだらド下ネタですね~。きっと立派な男コンになりますよ~」


 何言ってるのかわかりません。


 立派じゃなくて『素敵な』とか『楽しい』ですよね?


 ・・・・素敵もアウトか。


 俺達のやり取りを聞いた耳年増なフィーネは顔を赤らめ、母さんは「あの野郎ぉ」と父さんが居る書斎を睨み、ヒカリとアリシア姉は意味がわからないって顔をしている。


 それを見たユキが「面白い事を思いついた」とニタニタしながら純真無垢な少女達を汚そうとしたので止めて、例の変身魔術を掛けてもらい、氷魔術で写真も作ってもらって調査開始。


 方法は至ってシンプル。


 別人に変身した俺が通行人の女性達に写真を見せて『モテそう』と思う人に票を入れるだけ。


 知り合いの中で誰が一番のイケメンでモテモテか思い知るがいい!



 まぁ結果は言わなくていいだろう。


 俺が別の自由研究に取り組むと言う事だけ伝えておく。




「なんかもう面倒くさくなってきた。俺のアドバイスからみっちゃんが考えた事にして龍菓子を発表するのでいんじゃね?」


 3時間にも及ぶ調査をして心身ともに疲れ切った俺は最も手っ取り早い方法を提案した。


「まぁ無難だよね。新商品を広める意味でも」


 丁度レシピを書いた紙もある事だし、これと少量の実物を学校に持っていけば終わりだな。


 ちょっと頑張って『ドラゴンフルーツの使い道』みたいな図を作っても面白いかもしれない。


 この食材と合わせたらこういう味になって不味いとか、こういう調理方法をしたらそんな風に味が変化したとか。



 ・・・・やり始めたらハマってしまい、気が付いたら夏休み丸々費やした『龍菓子誕生までの軌跡』みたいなの出来ました。


 それをユキ経由で聞いたみっちゃんが龍菓子の布教も兼ねて自費出版したいと言い出したとか。


 どう解釈したのかわからないけど感動して涙が止まらなかったらしいです。

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