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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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閑話 神様と遊ぼう

 夏休み返上で龍菓子を作り始めた俺は、忙しい中でなんとか時間を見つけて神様に会うために神殿へとやって来た。


 ここに来るのもなんだかんだで3週間ぶりだ。


 顔見知りになったシスターさん達から「久しぶりねぇ~」と可愛がられつつ当たり障りのない挨拶をして、俺は大広間にある長椅子の定位置に座り精神世界へ意識を飛ばす。


 さも当たり前のようにやってるけど神殿で目を瞑るだけで良いのだから、何の努力も信仰もしていない俺に出来て、毎日通っている信者に出来ないのは悪い気がする。


 まぁその代わりと言っちゃなんだけど神様からもらった知識で世界を豊かにしている・・・・と思う。


 俺自身は遊びに来てるだけですけどね。



 そんな事を考えつつ、ゆっくり目を開くと精神世界に到着していた。


 そこには3週間前と変わらず真っ白な空間で神様が1人静かに座っている。


 いや違うと言えば違う・・・・。


 いつもはこちらを向いて歓迎してくれるのに、今日は俺に背を向けて何もない空間をジッと見つめているのだ。


 これまでも同じような事はあったけど、その時は必ずテレビゲームをしていたり本を読んでいたりと暇つぶしに没頭していた。


 しかし今はそれすら無い。


 少し不審ではあるけど、まぁそんな気分な時もあるだろうと思った俺はいつも通りの挨拶をした。


「お元気でした?」


「プイッ」


 ・・・・不機嫌そうだ。


 ただ俺が原因ってことは無いだろうから別件で嫌な事でもあったのだろう。そんな時は友達との息抜きに限る。


 だからこそ俺は普段通りに話を続ける事にした。


「俺、この前まで旅行してたんですよ。ここにもお土産を持って来れれば良かったんですけど、なにせ別世界ですから無理でした」


「・・・・プイッ」


 しかしいくら話し掛けようとも明らかに構って欲しい感満載で無視されてしまう。


 本当に『プイッ』って言う人初めて見たぞ。




 その後も何とか機嫌を取っているとようやくこちらを向いて話をしてくれた。


 でも神様の怒りは未だに収まらず、頬を膨らませて不機嫌アピールをしている。


 そんな彼女の言い分はこうだ。


「王都へ行くなら行くであっちでも神殿に立ち寄るべきでしょう~?

 いくらお祭りが楽しかったり、婚約者と遊んだり、魔界をエンジョイしたり、ケモナー心がくすぐられる人がたくさん登場したからって、私を蔑ろにし過ぎなのでは?

 学校が忙しいのはわかりますし、世界を良くしようとするのもわかりますけど、最近全然来てくれないじゃないですか~。色々やりたい事あったのに旬が過ぎちゃいましたよ~」


 アンタは俺の彼女かっ!


 神様が怒っていた原因はどうやら俺だったみたいです。


 会いに来なかったのは悪いと思うけど俺の言い分も聞いて欲しい。


 そもそもこうして定期的に神殿を訪れてるのだってあくまでも自主的な事で、必要性は全くないのに忙しくて来れなかったからって怒られるのはおかしいじゃないか。


 たしかに神様からこちら側に連絡をしようとすると『神託』って面倒な手段しかないから俺が来ないと遊べないけどさ。


「しかもヨシュアに帰ってからだって新しいお菓子を作るのに夢中で一向に来る気配もなく!

 ルーク君が来るのを今か今かと待ち続けていた私の気持ちわかりますかー?」


 だからアンタは俺の何なんだ?


 でも怒ってるみたいだし、一応その辺の事は弁解しておこう。


「約束に厳しいみっちゃんを満足させられる龍菓子が中々作れなくて・・・・」


 責任転嫁って言うんじゃないぞ?


 実際あのジャンキーは朝から夜まで放してくれないのだ。


「あの古龍め~。転生させる時は味覚の無い爬虫類にでもしてやりましょう~」


 そう言って神様はメモ帳に何やら書き始めた。



 話題転換に良さそうだし気にもなったので詳しく聞いてみよう。


「申請用紙は10年分をまとめて書くタイプなんです~」


「申請用紙!? 転生とかって神様が勝手に決めるんじゃないの!?」


「そんな事出来るわけないじゃないですか~。ちゃんと願書なり申請なりしないと動いてくれませんよ~。社会の常識です~」


 驚愕の真実!


 神様の力を使うには書類審査が必要だった!!


 どこの世界も、例えそれが神様だろうと社会のルールを守らなければ生きていけないらしい。


 人間に例えるならひと月分の書類を月末に片付ける感じなのだろうか?


「ちなみに同じランクの生き物への転生は難しいので、大抵は魂だけを下等生物に移し替えますね~。大きくまとめるならアルディアの2割ぐらいは転生者ですよ~」


「マジで!? 俺、もう魔獣討伐とか出来ない!」


 もしかしたら先祖の命を奪う可能性もあるんだろ? 無理無理。


「あ、魔獣は精霊が生み出すので違いますよ~。母親から生まれる生物だけです~」


「なら安心」


 自分が管理する世界での転生にも申請用紙が必要になるらしく、神様の仕事の大半は死者関係だと言う。


 まぁ世界に干渉出来ないんだからそのぐらいしかすることないわな。




 さて機嫌も直ったので本題に入ろう。


 俺が今日ここに来た理由はどうしても王都での土産話がしたかったからだ。


「ね! プリーサは恥ずかしいヤツですよね!?」


 それは帰宅間際の出来事についてである。


 あの後、いくら説明してもフィーネ達は「はいはい」って聞き流すだけだったので話題を共有できる人に話さないと納得できなかったんだよ。


「私はペシータの方が恥ずかしいと思いますけどね~。

 孤高の狼ぶってる割に普通に結婚して幸せな家庭築いちゃってますし、息子が未来に帰る時なんて良いパパし過ぎでしょう~?」


「あれは親なら誰でもああなるって言う名シーンだから良いんですー。

 それよりプリーサも同じ孤高の狼なのに父親と一緒に地球まで復讐に来ちゃってますからね? しかも剣で瞬殺って・・・・噛ませ犬もいいところですよ」


「あの剣は伝説の勇者から貰った由緒正しき武器なので強いんですよ~。

 それを言うならペシータは『プライドを捨てるぐらいなら死を選ぶ!』ってカッコいいこと言っちゃってるのに、たまに『ダメだ、もうおしまいだ。絶対殺される』とか『楽しいゲームで盛り上がれば忘れてくれる。そうだビンゴをしよう!』とか完全なギャグキャラじゃないですか~。

 ルークさんは見てないかもしれませんけど、最近やった映画では見てて居たたまれなくなる恥ずかしさでしたよ~」


 ぐっ・・・・たしかに彼のブレブレ具合にはツッコまざるを得ない。


 ピックルさんと言い、なんで真面目なヤツ等って話が進むにつれてギャグキャラになるんだろうな?


 自分のキャラを最後まで守れよ。


「ルーク君の周りもそんな感じですけどね~。

 きっとフィーネさんやニーナさんが突然『おはラッキー!』とか『ヤッハロー!』ってハイテンションで言い出すんですよ~」


「止めてっ! 初期キャラクター最後の砦なんだからあの2人は汚さないで!」


 少なくともフィーネ達には落ち着いたキャラを守っていただきたい。


 たまに暴走するけど基本居たら安心するカレーの福神漬けみたいな役割をしてくれているのだ。




 その後も俺達のアニメトークはいつまでも続いた。


 どちらがより恥ずかしいキャラクターかを検証するためにアニメを最初から見直し、それでは決着がつかなかったのでトラコソポールの格ゲーをこれまた初代から2人で対戦した。


 初心者ガチャプレイの神様に負けそうだったから禁断のハメ技を使ったら「反則負けです~」と言い出したので、またそこで論争が繰り広げられた。


 それはそれで楽しいんだけど!


 何ならここ3週間を取り戻す意味でもこのトークを続けててもいいんだけど、ここに来たもう1つの目的も果たしておかないとな。


「龍菓子で良い案あります?」


 それは今まさに挫折している新作料理の事だった。


 気分転換した方が良いアイデア出ると言って執拗に迫るみっちゃんから逃げてきたのである。


 実際ここに来て気分転換出来たし、ついでに全知全能(笑)の神様から何かいい知恵を貰おうと言う算段だ。


「今まで数々の料理人が挑戦してダメだったんですから、誰も試したことない調理をしてみたら良いんじゃないですか~?

 ルーク君が作った物あるじゃないですか~」


「なるほど・・・・砂糖とかですね。

 一度試してダメだったんですけど、帰ったら別の方法で試してみます」


 実はあの龍菓子、神様からの助言で生まれた物だったりします。


 俺が考えたと思った?


 ジャムを失敗した時点で砂糖は無いな~って決めつけてたから、この助言が無ければその答えに辿り着くまで相当時間掛かったよ。


 流石は神様!


「なら(笑)って言ったの取り消してくださいよ~」


 それは無理です。


 アナタがユキみたいなキャラである以上は付け続けます。

カレーにはラッキョウよりも福神漬け。

ときどき生卵。

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