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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百七十九話 龍菓子

 さて色々と紆余曲折はあったけど各種ドラゴンフルーツが手に入ったので、いよいよみっちゃんお待ちかねの調理に取り掛かろうか。


 今度は食べられないうちに一通り試食してみたけど、王都で食べたドラゴンアップルと同じくどれもこれも濃厚過ぎて普通の人には1個食べきる事は難しそうだった。


 つまり宣伝文句でよくあるような『果実たっぷり』とか『1日分の栄養』とかではなく、ドラゴンフルーツをメインにしつつ胃もたれしないように少量だけ使うお菓子を作らなければならないのだ。


 ドラゴンフルーツってヤツはどいつもこいつも主張が激しいけど組み合わせ次第では美味しく作れるだろう。


 ただ問題は製造方法がバレた時に詐欺っぽくなること。


 それは例えるなら飲み放題や食べ放題の店で、物凄く薄めたジュースとか具無しのカレーを提供するようなものだ。


 そっちは食べ放題だからって建前があるから良いにしても、こちらは商品として売り出すのだから果たしてそれで良いものか悩んでしまう。


「とか色々考えてる間に作ってみたドライフルーツのパンです。試食どうぞ」


 新作料理なんて試行回数を重ねてなんぼの所があるから『考えるよりまずやってみよう』の精神で、取り合えず残っていたドラゴンフルーツを一番楽な天日干しにしてみました。


 お土産を配っている間に良い感じでカピカピになっていたので、後はパンに入れて焼くだけ。


「美味い! 美味いぞぉぉぉーーっ!!」


 アッという間に完食したみっちゃんは絶賛しているけど、大事なのは彼女以外の反応だ。


 どうせ失敗料理はマヨネーズの時のユキの様に処理してもらう事になるので、『美味しい』としか言わないジャンキーは最初から相手にしていない。


「これ細かく刻んで量を減らしてるんだよね? まだまだ味が濃いよ」

「そうね。仮に普通のパンと同じ量を食べたらお昼は食べられないかもしれないわ」

「ちょっと甘すぎるわね。・・・・た、体重が」


 一口づつ食べた女性陣からの感想はまぁ予想通り不評。


 濃厚さを抑えることに失敗しているらしく、菓子パンにしてもちょっとってぐらいの出来なんだとか。


 中でも腹回りが気になるお年頃な母さんはパン1つあたりのカロリーを考えて震えていた。


 これでも結構ドラゴンフルーツの量を減らしたんだけどな~。



 試しに作ったジャムも、


「・・・・やるじゃないか。加熱する事で甘みが増し、シャリシャリとした食感を残しつつも液体になっているから新食感だ。これならパンやサラダにつける事も可能だろう」


 瓶ごと口に放り込んだ神獣様の御墨付きをいただきました。


 中身のジャムを流し込んだ後は『ぐぽっ』と音を立てて口から放したけど、美女が大口開けた姿は不細工だと感じた今日この頃。


 でもやっぱり彼女以外には無理だったようで全員がスプーン一杯を舐めて悶絶してしまった。


 元々濃厚だったドラゴンフルーツの甘さがさらに際立ち、頭まで突き抜けるような甘みが口の中に充満するわ、無理に飲み込もうとすれば喉が拒否反応起こすわ、散々である。




 こんな調子でケーキ、タルト、アイスクリームなどなどフルーツを使った料理を思いつくまま作り続けたけど、どれもこれも出来栄えはいまひとつ・・・・いや失敗に終わった。


「美味しいのになぁ・・・・」


 ドラゴンフルーツに関しては無限の胃袋を持つみっちゃん以外の皆がギブアップしていく中、俺は1つの結論に至った。


 これ、無理じゃね?


 料理うんぬん以前に主張の激しいドラゴンフルーツを如何に消すかって方向で考えてる時点で食材としてアウトだろ。


 しかも煮ても焼いても揚げても変わらないとかどうしろと?


「流石のルーク様でも難しいようですね」

「みっちゃんの夢は来世で叶えましょう~」

「いや! きっとルークならやってくれるはずだ! 頑張るんだ!!」


 悩む俺の目の前では、完全に他人事の3人が食べ過ぎて腹を壊したアリシア姉達を治療してはまた試食させると言う拷問を強いていたりする。


 基本的に味は悪くないので当人達は喜んでるけど、俺から見たらいつまで経っても腹一杯にならない地獄の様な光景だ。


 それ戦争で相手に使ったら食糧不足になって自滅するんじゃないか・・・・?



「もう食材を組み合わせてなんとかするしかないな。お互いが干渉しあってくれれば味も変化するだろうさ」


 最終手段! 数打ちゃ当たる作戦!!


 従来あった食材はこれまでも試してるだろうから、俺が試すのは現代知識でこの世界に新たに生み出した調味料や食材だ。


 すなわち砂糖、小豆、寒天。


 そこから作れる料理、つまり和菓子!!


「これで! 決まりだぁぁあああーーーーーっ!!!」


 俺が自信を持ってテーブルに出したのは『イチゴ大福』ならぬ『イチジク大福』。


 完成した大福の中以外に、餡子の中にもドラゴンフルーツを入れているので消費量は桁違いに増えている。


 これならイケる!


 ・・・・かもしれない。


「勢いよく出してる所悪いが、今までと違って大釜で煮てる間に皆逃げて行ったぞ」


 流石に子供が入れるぐらい大きな鍋で煮込むドラゴンフルーツ餡子は食べられないと思ったようで、調理場には俺とみっちゃんしか居なかった。


 でもみっちゃんが居れば大丈夫・・・・なはずだ。


 残ったらロア商会で配ろう。


「で、どうよ? 餡子は?」


「・・・・こっ、これは!」


 ってこの神獣様はなんでも美味しいって言うんだった。


 俺が、俺がやるしかないのか?


 大丈夫、今思いつく手段は全て講じた。ここで倒れても問題はないはずだ。



 いざ!




 龍菓子、誕生しました。


「うまっ! 食べやすっ!!」


「濃厚な果実とは違った味になっていると思いきや、飲み込んだ後から広がるまごう事なき龍フルーツの香り! そして甘み!!

 凄い、凄いぞ! これは凄いぞぉぉぉおおおおおおっ!!」


 なんかよくわからない化学反応が起こったみたいです。


 調べてみたら砂糖、小豆、寒天。この内2つとドラゴンフルーツを組み合わせたら人間でも美味しく食べられるお菓子になってました。


 つまり『羊かん』『饅頭』、たぶんだけど『わらび餅』なんかはドラゴンフルーツと合うって事だ。



「これなら和菓子、洋菓子に次ぐ新しいお菓子のジャンルとして売り出せそうだな。

 龍の刻印を入れる事でブランド力を出しつつの商品化も出来るし、和洋折衷の『龍菓子』・・・・イケるぞ!」


「龍菓子っ!? 龍!! 素晴らしいネーミングじゃないか!

 これで世界はドラゴンとおさらばする!!」


「いや、ドラゴンフルーツって言う総称は変わらないと思うけど・・・・。あくまで調理した菓子が龍菓子って呼ばれるだけで」


「そうなのかっ!? なら意識改革の方法も一緒に考えて・・・・いや、ここからは私の戦いだな。龍菓子を広めると同時に龍フルーツと言う呼び方も知名度アップだ!」


 龍菓子がロア商会のオリジナル商品だとすると、パチモンで『ドラゴンフルーツ菓子』ってのも増えるだろうけど今は言わなくてもいいだろう。


 俺の作った料理を喜んで食べてくれてる所に水を差すなんて野暮ってもんだ。



「ふおぉぉぉぉ。うおおおおぉぉぉーーー!!

 300年間、夢にまで見た龍フルーツの菓子!!

 アップルやマンゴーの味が染み出していて・・・・っ! かき込まずにはいられないっ!!」


 新しい龍菓子を口に入れる度に適切な解説コメントをしつつ咆哮するみっちゃん。


 これが王都最強の守護者『神獣』ってんだから世も末である。




 夢に一歩近づいたと喜ぶみっちゃんはこの数日後、ロア商会の龍菓子広報という謎の役職をもらった。


 もちろん無給で何の束縛もない。布教活動の際にそれっぽい役職を名乗れた方が何かと便利だろうと言うフィーネ達の案である。


 王都の青果店かお菓子コーナーでドラゴンフルーツがどうこう言ってる角を生やした女性を見かけたら・・・・そっとしておいてあげて欲しい。


 彼女は夢のために頑張ってるだけだから。


 もし絡まれた、迷惑を被ったって言う店員さんはロア商会かセイルーン王家に言えば慰謝料がもらえるかもしれません。


 ただしそれが嘘なら人生棒に振る事になるので、くれぐれも角が生えた尋常ならざる熱意を持つ女性だったか確認しておいてください。


 苦情が多ければ龍菓子の生産を減らそうと思います。

 少し今後の活動について話させていただきます。


 いずれ全編書き直そうと思っていたのですが予想外の文章量になってきたので、まだまだ未熟ですが今後は不定期に手直ししていこうと思います。


 本編の毎日投稿は変えませんが修正した話数は紹介文に書くのでお時間があれば読み直してみてください。ご指摘していただいた案を参考にしつつ修正するので読みやすくなっていると思います。


 ただし・・・・新しく書くと言う事は今までと同じような文章間違いをする可能性があると言う事。温かい目で見ていただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ドラゴンフルーツを龍殊(りゅうじゅ)みたいな呼び方にしたらみっちゃんも喜ぶのかな
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