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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百七十五話 プレゼントフォー・ユー 農場編

 ロア商店に寄った俺達は次なる目的地、同じ商店街にある猫の手食堂へお土産を渡しに向かった。


 商店までの道すがらチラッと見たけど夕食時で賑わってたから後回しにしたのだ。


「・・・・まぁ数十分で変わる訳ないよな」


 大人気食堂は今も満員御礼状態で、店の前には先ほどよりも長い行列が出来ていた。


 お土産を渡すだけなので急ぐわけでも無いし、ヒカリが応援に行ってるって事は俺達が帰って来たという知らせでもあるわけで・・・・。


 よし! 次、行ってみよう!




 残るお土産は『学友への物』か『農場への物』のどちらか。


 しかしファイ達は夏休み中ヨシュアに居ないらしいので、選択肢は実質1つしかない。


 すなわち農場だ。


「みっちゃんが行ってるはずだけどルナマリアかベーさんのどっちかとは昔馴染みっぽい反応だったよなぁ~。

 ルナマリアが知り合いって可能性あるのか?」


「おそらく無いと思います。私が旅をしていた間はわかりませんが、昔から彼女は里を出ませんでしたから外界での交友関係は少ないはずですよ。

 みっちゃんさんがエルフの里に来る理由はないでしょうし、交流があるとすればベルフェゴールさんの方かと」


 道中で先に到着しているであろう神獣様の事を思い出したのでどっちが知り合いだろうと言う話をしたら、幼馴染であるフィーネからルナマリアは無いと断言された。


 あのツンデレさんは予想に違わぬ典型的な排他主義のエルフなのだ。


 ただ同族であるエルフに対しては優しいようで、他者と一切接触をしなければ街での買い出しとかにも付き合っていたらしい。


 コミュ障や引きこもりって言うより、他種族の友達を作る必要性を感じないからしなかったって方だな。


「でも妙にソワソワしてたぞ? ベーさん、ああ見えて実は昔は怖かったとかかな?

 じゃなきゃ人間嫌いで強気っぽく見せてて上から来るルナマリアに怯えるのはともかく、あのベーさんを怖がる理由がわからない」


 神獣とは言え彼女も昔から強かったわけじゃないだろうから、もしかしたら弱かった時代に何かあったのかもしれない。


 ・・・・急ごう。


 温厚な2人が和解する前の修羅場を見てみたい。




 はい、やってきましたロア農場。


 辺りは暗くなり始めているので作業員が見当たらず、ルナマリア達がどこに居るのか聞くことも出来なかったけどフィーネが既に把握していると言う。


 山に居る事の多いベーさんが今は宿舎に来ているらしく、そこにみっちゃんも居るとか言われたら行くしかないじゃないか。


 脳内でギスギスした空気を醸し出す2人を想像してニヤニヤしつつ、俺達は無人の田畑を歩いて木造宿舎に到着した。


 少なくとも外から見た限りは平穏そのもの。どうやらまだ戦闘態勢には入っていないようだ。


「なぁドア開けたらいきなり爆発したりしないよな?

 『昔はよくも!』みたいな緊迫した雰囲気だったり、逆に『あの頃は本当にスイマセンでした』ってギャグ要素一切ないシリアスな展開だったりしないよな?」


「魔力の高まりはありませんから大丈夫ですよ。後者は否定しかねますが」


「そっか、なら安心」


 それでも一応念には念を入れてフィーネに開けてもらった俺はビビりでは無いと思う。安全な場所から会話に参加したいだけなのだ。


 お土産渡しに来ただけでこの緊迫感よ。痺れるだろ?


 実は結構楽しいんだぞ。


 フィーネが居なかったら絶対来てないけどな!



 俺だけが謎に緊張する中、フィーネは何食わぬ顔で玄関のドアを開けた。


 その先に居たのはルナマリア、ベルフェゴール、アルテミスの3人。


 他の連中は隣の食堂に居るらしく、耳をすませばガヤガヤと楽しそうな声が聞こえる。


 で、アンタ等は玄関で何やってんの?


「久しぶりだな・・・・ベルフェゴール!」


「・・・・・・」


 やっぱりベーさんが知り合いだったようだ。


 しかもみっちゃんが完璧に喧嘩腰なので、昔2人の間に何かあった事も確定。


 完全に予想通りの展開だ。


「あっ!? 毎度毎度アンタは本当に面倒ごとを持ってくるわね! 普通に王都土産を渡すって事が出来ないの!?」


 と、ここで俺達に気付いたルナマリアが怒鳴って来た。


「おう、ルナマリア久しぶりだな。

 いきなりキレるなよ。ツンデレってそう言う事じゃないから。話の流れで照れ隠しとしてツンツンするヤツの事だから」


「誰がツンデレよっ!」


「まぁ落ち着けって。唯一この状況が説明出来そうなお前まで役目を放棄したら話が進まなくなるだろ。

 面倒ごとってみっちゃんの事か? なら俺じゃなくてユキが原因だから俺を責めるのはお門違いもいい所だぞ」


「こ、こんのぉ・・・・っ! それも含めてアンタが中心に居るんでしょ!」


「落ち着きなさい、ルナマリア。ともかく今は説明を」


 ナイスです、フィーネさん。


 Mっ気の強いエルフさんをツンツンデレツンさせるのも面白いけど、今はみっちゃんとベーさんの方が気になる。



「・・・・ふぅ・・・・説明すればいいんでしょ、説明すれば。

 アタシ達が夕食をとろうと思ったら彼女が『ベルフェゴールはどこだ!』って怒鳴り込んできたのよ。なんか神獣みたいだから他の連中は食堂に行かせてアタシがこうして仲裁してるってわけ。

 ベルフェゴールは最初からここに居たし、戦いになったら止められるのがアタシぐらいしか居ないからね」


 フィーネに注意されたルナマリアは落ち着きを取り戻して現状を教えてくれた。


 従業員、ベーさん、みっちゃん、全員の事を気遣って一番損な役回りを進んでやるなんて、なんだかんだ言ってもやっぱり世話焼きな人だな~。まぁ助かるけど。


 で、こうして睨み合ってる所に俺達が来たと。


「みっちゃんさんは怒らない人だと思っていたのですが、ベルフェゴールさんはそれほどの事をしたのでしょうか?」


 俺もフィーネと同じ意見だ。


 どうせベーさんがゴロゴロするだけで何もしなかったから怒ってるんだろうけど、それにしたってみっちゃんがこんなに怒る人だとは思いもしなかった。


 ルナマリアも詳しくは知らないらしいので、俺達は一方的にベーさんを睨むみっちゃんの動きを見守る事にした。




 すると俺達の登場を待っていたと言わんばかりに事態は動き出す。


 動かしたのは・・・・みっちゃん!


 ベーさんはいつもと変わらずボーっとしている。怒りの対象が自分だと気付いていない可能性が高い。


「ここで会ったが400年目!」


 おっと新情報。


 2人の確執はユキやアイリーンさんと知り合うよりさらに100年ほど前の出来事らしい。


 まぁ確執って言うか、みっちゃんの主張を聞かないベーさんって感じだけど。


「で、ベーさんは何やったんだ?」


 先ほどから黙ったままの転がり元魔王は、いつも通りの半開きの目でみっちゃんをジッと見つめるだけ。


 しかし流石にここまであからさまなセリフが出てくると自分の事を指してるのだと気付いたらしく、彼女も初めて言葉を発した。



「・・・・・・・・誰・・・・ですか?」



「っ!?」


 あぁ・・・・これ怒るやつだ。


 積年の恨みを晴らそうとリベンジしに来てみれば相手からは覚えられてもいなかった。


 むしろ『この人、なんで怒ってるんだろう?』って同情された神獣様がこの後どういう行動に出るかは誰でもわかるだろう。


「貴様が身勝手に占領した洞窟に住んでいた古龍だ!!」


 ほら怒った。


 それでも喧嘩の理由を説明してくれる辺り流石は常識人・・・・いやベーさんに思い出させようとしてるだけかもしれない。


 まぁこの人が覚えてるわけないし、思い出しもしないだろうけど一応頑張って。


「洞窟・・・・?」


「そうだ! 『良い睡眠は良い寝床から』とか訳のわからない事を言って奪い取ったのだ!」


 それは間違いなくベーさんの仕業だな。


 昔から変わらないヤツだ。



 そして案の定いつまで経っても思い出さないベーさんに痺れを切らしたみっちゃんが当時の事を語り出した。


 あの・・・・お土産・・・・。


 話が長くなるようなら夕飯も下さい。

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