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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十三章 怒涛の6歳
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百七十四話 プレゼントフォー・ユー 商店編

 それぞれ別行動することになったので、俺は友人たちに帰って来た事を知らせると共にお土産を配る事にした。


 その唯一の同行者は・・・・フィーネ!


 俺と同じく土産を渡すはずのヒカリは、「家族に報告するついでに店を手伝う」と言って一足先に猫の手食堂へと向かったので今は居ない。


 全員分のお土産を持ってるのは俺だからヒカリはついて来る必要がないと言えばないので、真っ先にリリやニーナに会いたいと思うのは普通の事だろう。


 そこで丁度手の空いていたフィーネがついて来たのである。


 しかし2人きりってなんだか久しぶりな気がするなぁ。


 それはフィーネも同じだったようだ。


「ルーク様のために頑張れば頑張るほど一緒に過ごす時間が無くなるというジレンマ。この時を一体どれほど待ち焦がれていた事かっ!」


「こんな事で泣くなよ・・・・。

 たしかに最初の塩を作った頃とか『絶対離れない!』って酷かったもんな。それに比べたら大分マシになったんじゃないか?」


「あの頃はルーク様の周りにユキ達が居ませんでしたからね。今でこそ安全になりましたが、当時はルーク様がいつドラゴンや魔王に襲われるか不安で眠れぬ夜を過ごしたものです。

 もちろん私のルーク様への愛は日々増え続けていますよ」


 そう言ったフィーネは家を出た時からずっと嬉しそうに俺の手を握っている。


 たまに鼻歌まで聞こえてくるってんだから相当機嫌が良いぞ。まぁ俺と居る時に不機嫌な事なんて滅多に無いけど。


 だからって愛が溢れて周囲の迷惑になる事だけは止めてくれよ・・・・大抵ロクな事にならないから。


「ルーク様への愛が世界を覆う。素敵な光景ですね」


 ダメだ。完全に暴走モードに突入してしまった。


 ユキのマヨネーズと言い、アルテミスのドラゴンフルーツと言い、長寿の連中が言うとリアリティがあり過ぎて恐ろしくなる。


 俺の死後に記念館とか建てるなよ?




 さて、そんなフィーネの妄想に戦々恐々としながらやってきたのはロア商店だ。


 夕方と言うこともあってそれなりに空いていた店内で仕事中のサイを見つけた俺は、男性なら必ず喜ぶお土産を渡した。


「ほら王都土産だぞ。待望の品だぞ」


「挨拶も無しか!? はぁ・・・・お前変わんねぇな。

 まぁありがたく貰っとくけど、待望って言われても欲しいもんなんて無いんだが・・・・ちっちぇ袋だなぁ。どうせこれが男全員分なんだろ? 期待薄だな」


 挨拶? 帰宅の知らせ?


 そんなの男にして何が楽しいってんだ? 見ればわかるだろ。


 それはサイも同じだったようで、俺から手のひらサイズの袋を受け取った途端お世辞も社交辞令も無く、その少なさにガッカリしやがった。


「中身を見ても同じことが言えるかな?」


 サイは1人当たりの量を計算してケチ臭いな~とおざなりな反応をするけど若い若い。


 『量=満足度』だと考えるなんてヒヨッコもいい所だ。


 さぁ震えるがいい!


「(ガサゴソ)・・・・こ、こここ、これはっ!

 ふ・・・・ふはは・・・・ふははははっ! 流石は師匠だ!!」


 袋の中を覗き込んだサイは俺と固く握手をして同志の絆を深め、手を離すと同時に絶対に無くさないようにシッカリと両手でお土産を抱え込んだ。


 きっと大金を手に入れた人はこんな仕草をするんだろうってぐらい厳重なブロックである。



 まぁそんな事をすれば逆に怪しく見えるわけで・・・・。


「ルーク様、中身は何なのでしょうか?」


「おっと、それは言えないな。こいつはフィーネへのお土産じゃなくてサイ達へのお土産だから中身は秘密だ」


「そうだな。これはロア商店の副店長サイじゃなくて、師匠の弟子として受け取った物だからフィーネ様に見せる必要は無いな。

 これさえあれば俺達はあと半年戦えるぜ」


 ビンに入った『それ』が『男連中へのお土産だから全員に分配してくれ』という俺からの無言のメッセージだと理解したサイはロア商会内で楽しむことをほのめかした。


 流石は我が弟子よ。


 でも怪しいからもうちょっと自然に振舞おうか。




「・・・・まぁいいでしょう。

 それよりルーク様。トリーさん達に会いますか?」


 中身の確認を諦めたフィーネが別の話題を振って来た。


 そう言えば商店に来てからサイ以外に仲の良い連中を見かけていない。


「あ~、ノルンは昨日までサマーフェアをしてたから死んでるぞ。

 夏休みだから人の動きが活発になるし、最近話題のロア商会を一目見ようってヨシュアまで足を延ばす連中も多いだろうから特売をやったんだ」


 周囲をキョロキョロと見回す俺を見て、サイがしんどそうにこの1週間の出来事を話し始めた。


 言われてみれば王都に行く前にそんな話を聞いた気がする。


 オープン当初にも負けない混雑具合だったらしいのでノルンが倒れているのは仕方ないだろう。


 サイは結構な体力自慢だから辛うじて仕事出来てるらしいけど、店長であり女性のノルンには過酷なスケジュールだったようだ。


 けどソーマ夫婦は応援レジなのでそこまで疲労していないはずだけど・・・・ってか新規雇用をしてるからレジすらしなくなったとかユチから聞いたような。


 つまり2人は店内じゃなくて2階の社員寮で本職の管理人をしてるって事か?



「なんだ、まだ知らなかったのか? アイツ等は子供が出来たから産休中だぞ」


 なんとサイの口から出てきたのは『トリーが妊娠した』と言う驚くべき知らせだった!



「なんだと!? 初耳だぞ! 散々世話した俺に言わないとは何事か!」


 2人が結婚出来たのは俺のお陰と言っても過言じゃないのに、学校や旅行で忙しくて今の今まで知らなかった。


 言ってくれたらパーティでもしたのに。


「つっても生後半年は特に死ぬ可能性がたけぇから迂闊に知らせても迷惑になるだけだろ?

 ちょくちょく遊びに来るお前等はそのうち気付くと思ったし、てっきりもう誰かから聞いてるもんだと」


 っ! ・・・・しまった。


 たしかにこの世界では入学式まで、つまり6歳まで子供の存在を知らせないなんて事が当たり前なんだった。


 食糧事情を改善する以前に病院を作るべきだったか・・・・。


「大丈夫ですよ。死亡率が最も高いのは栄養失調や貧困などの食糧関係ですから、そちらは医療よりも優先するべきでした。

 それと言っていませんでしたが病院も建設中です。魔術での治療を専門に行う神殿とは別に、魔術に頼らない自己治癒力による健康維持を目的とした指導を行う予定です。衣食住や運動などですね」


 俺が後悔しているとそれを察したフィーネがコッソリ説明してくれた。


 知らないところでヨシュアの設備が充実していっているようだ。


 栄養に関してはレジや昔作った『コードバトラー』の応用で、刺したら数値で表示される『栄養メーター』なる物を開発してるから適切な食事を取る事が可能となっている。


 全員が全員、治癒術による治療を受けられるかと言われたら金銭や人手不足の関係でNOだから自らの健康管理が大切になってくるって話だ。



「知らないようだから言っておくと、猫人族の出産は半年ほどで出来るからもう結構腹が大きくなってるぞ。だからこそ産休なんだけどな」


 ボソボソと話す俺達を見たサイが勘違いしてトリーのことを補足説明をしてくれたけど、その辺の事はもちろん知っていた。


 ケモナーたる者、その生態の全てを知る事こそが第一歩と言えるだろう。


 ついでに言うなら獣人は双子や三つ子の率も高いようで、ハーフの場合ならどちらかの種族に寄るらしい。


 つまりトリーに似たら生まれてくる子供は俺の妹分弟分の猫人族になると言うわけである。


 ソーマに似たら浮気しないように躾けないとな!


 俺みたいになれよ!!


「・・・・ルークが3人居たら世界は滅ぶだろうな」


「そうですか? 私は幸せ過ぎて毎日がパラダイスですが」


 おいおい、俺が世界を滅ぼすわけないじゃないか。 


 むしろ発展速度が3倍になってより良い世界になるぞ。


「じゃあフィーネ様はルーク×3のハーレムを許容出来ると? 自分が選ばれなくても?」


「・・・・女性だけ別の国に閉じ込めましょうか」


「俺そっちに移り住んでもいいか? ロア商店の女人王国支店の店長やりたい」


 おいおいおいおい、獣人の女性専用の国も作ってくれよセニョリータ。


 成人したらそこで獣人ショップ開くからさ。


「あ、フィーネ様もお土産の王都クッキーありがとな。皆で美味しく食べたよ」


「いえいえ、疲れた時には甘い物が一番ですからね。丁度サマーフェアの真っ最中でしたので息抜きになればと思いまして」


 ・・・・ねぇ? 俺の声、聞こえてる?


「聞こえていますよ、ルーク様。反応する必要がない言動でしたので無視していただけです」


 俺の周りの女性はたまに厳しいです。


 しかも今回はサイまで俺を無視しやがった。


「チッ・・・・お土産やったのに無視するとか有り得ない。返せ」


「怒るなよ。これから皆にも配るんだろ? そん時どっちが正しいか聞いてみろ。100%俺だから」



 訳のわからない事を言うサイと別れ、俺達は次なる場所へと向かうのであった。

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