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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十二章 王城生活
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閑話 アリシアの初ダンジョン2

 新武器を携えてダンジョン攻略へと乗り出したアリシア。


 忙しいフィーネの代わりにルナマリアとベルフェゴールをお供に加え、意気揚々とやってきたダンジョンの前には屈強なガーディアンが!


 どうなるガーディアン!


 山を焼き尽くす火炎魔法を止める術はあるのか!?



「これはダンジョンに入る前の腕試しって事よね? 『私を倒さなければ入る資格はない』ってやつよね?

 なら全力で行くわよっ!」


 ガーディアンから重々しい声で脅しにも似た忠告を受けたアリシアは一瞬で戦闘態勢に入った。


 背負っていた大剣を両手に握り、何とか使いこなせるようになった魔法を放とうと魔力を込める。


「へえ~、これが純正な魔法。魔力を上乗せした精霊術が魔法陣を伝ってあの剣の内部で混ざり合い爆発するってわけね。綺麗な術式だわ」


「芸術は爆発だー・・・・魔法も爆発だー」


 高まる魔力、呼応するように輝く大剣、震える空気、その横で冷静に観察するルナマリアとベルフェゴール。


 そしてフィーネの修行を経て、より完璧となった奇跡の魔術『魔法』が今、ガーディアンに向かって放たれる!



『や、やめてくださいよ! 鎮火するの大変なんですから!』



 ・・・・ことは無かった。


 先ほどまでダンジョン挑戦者を威圧していた甲冑ガーディアンがどこからともなく白旗を取り出して降参したのだ。


 魔法が制御できるようになったアリシアはその溜めに溜めた魔力を散らして発動を止め、反対に怒りのボルテージを上げてガーディアンに食って掛かる。


「なんで降参なんてするのよ! これから盛り上がる所でしょ!? ガーディアンならガーディアンらしく最後まで守り抜きなさいよ!!」


『え~、それは理不尽ですよ~。そもそも私ガーディアンじゃないですし』


 最初の威厳はどこへやら、非常に丁寧な口調で話し始めたガーディアンは実はガーディアンではないと言う。


「ほら・・・・やっぱりボロボロなマントを被った老人の方が良かった・・・・」


『ダンジョンと言えば屈強なガーディアンだと思ったんですけどね~』


 目に見えて優しい雰囲気になったガーディアンの下へ転がり寄ったベルフェゴールがダメ出しをする。


 どうやら2人の間でダンジョンの前に居る人物について意見が食い違い、今回はガーディアンを採用したらしい。


「まぁ予想はしてたけどアンタ等、何やってんのよ」


 以前ここを訪れた際に知り合っていたルナマリアはこのガーディアンが誰なのか、そして何故立っているのかわかっていたようで呆れている。


「そうよ! 弱そうな語り部とか、逃げ帰った冒険者が何で思いつかなかったのよ!!」


「アリシア・・・・それも違うわ」


 間違いなくこの甲冑は敵ではないので3人はダンジョン前でゆっくり話をすることにした。




『いやぁ~、ホント危なかったですね~。森が燃えたらフィーネさんに怒られてましたよ』


「結界は・・・・ダンジョン内だけですし・・・・」


 このガーディアン(仮)は先ほどからしきりにアリシアの魔法を怖がっていたが、その理由は自分自身より森の方が心配だったようで、大事に至らなくて良かったと言っている。


「私の魔法を舐めないでよね。アンタなんて一発で蒸発するわよ」


『あ、それは無理です。私ゴーレムですから』


 そう言ってガーディアン改め『甲冑ゴーレム』は被っていたヘルムをずらしてその顔を晒した。


 そこにはたしかに石で出来た強固なゴーレムの顔があった。


 アリシアは「それ甲冑の意味あるの? むしろ動きにくくて邪魔じゃない?」と思いつつも何か意味があるのだろうと考えてグッと堪える。


 が。


「その甲冑意味ないでしょ。むしろ動きにくくて邪魔よね」


 隣で同じことを考えたルナマリアがツッコミを入れてしまった。


『いやいや、ガーディアンと言えば甲冑じゃないですか。高かったんですよ、これ』


「「買ったの!?」」


 今度は思わずアリシアもツッコんでしまう。


 無意味な鎧を魔獣が大枚叩いて買ったと言われればツッコまざるを得なかったのだ。


『そりゃそうですよ。双剣は石を固めてそれっぽく出来ますけど、甲冑なんて複雑な構造をしたものは職人さんじゃないと作れませんからね。器用なドワーフさんに無理言って用意してもらった特注品です。

 ちなみに甲冑を身に付けたからって防御力が増すことは無くて、生身のままでも水属性以外なら魔法ですらほぼ無効化出来ますけどね。

 あ、値段は秘密ですよ』


 2人の予想通りこの甲冑、見た目以外の意味は皆無。


 そして本当に動きにくいらしく、無理に動けばせっかく買った甲冑が壊れるし、壊れない様に慎重に動くと移動が遅くなると言う。


 先ほどアリシアに攻撃されそうになった時も、『甲冑を捨てて魔法を止める』か『甲冑を守って脱いでから消火活動をするか』で迷っていたのだとか。


 ダンジョンからの帰り際、アリシアから「ガーディアンはゴーレムも有りよ」と言われて衝撃を受ける羽目になるのだが、今は置いておこう。



 甲冑ゴーレムの話を聞いて威勢の良かったアリシアはショックを受け、1人静かに凹んでいく。


「ねぇ私、魔法が最強の魔術だって聞いたんだけど・・・・」


「間違ってないわよ。コイツ等が規格外過ぎるから人間の魔力じゃ火力不足ってだけで、その剣をアタシやベルフェゴールが使えば余裕で消し飛ばせるだろうし」


『そ、そんな・・・・っ! 私が何をしたって言うんですか! ただのゴーレムとして一生懸命お客様を歓迎するって役目を全うしているだけなのに、消すなんて言わないでください!

 不当な暴力を振るわれたらミスリルゴーレムに進化して反乱しちゃいますよ』


「たまに食べてますもんね・・・・ミスリル」


 誠心誠意、ダンジョンに居る魔獣として頑張っているゴーレムは泣き言を言いながら脅してきた。


 ただでさえ頑丈なゴーレムがさらに固くなり、その上魔術耐性まで備わって完璧な盾として猛威を振るうと言う。


 ちなみに一般的なゴーレムは魔道生物なので体のどこかにある魔法陣を消せば止まるが、この喋るゴーレムは体内の魔石に魔法陣が刻まれているので内部を攻撃しない限り倒せない。


 それが不可能ということは最早無敵と言っても良いだろう。


「ホント何なのよっ! ここの連中は!! 絶対外に出すんじゃないわよ!? 1人で国落とせるじゃない・・・・」


 実際、ガーディアンとしてゴーレムを生成する魔術師は多く、たまに暴走して村が大変なことになったりするのでルナマリアが言っている事もあながち間違いでもないのだ。


 と言うかこのダンジョン内に居る全ての魔獣が一騎当千・・・・いや一騎当万の戦力である。


「このダンジョンって修行場にはなるかもしれないけど、普通の戦闘には役立ちそうにないわよね」


 アリシアが魔界深層にでも行かない限りミスリルゴーレム対策など必要ないだろう。


 なんとしてもフィーネを倒さなければならない状況なら話は別だが、彼女自身が本気でその域に達する事が出来るとは思っていない。


「強さこそ正義・・・・正義は我にありー」


 実はルーク一派とは別に、ベルフェゴール一派として世界最大級の戦力を保有してしまっている。


 そんな彼女がノリで世界征服に乗り出したら・・・・。


 世界は数日で落とされるかもしれない。


『あ、マスターに命令されても我々はこの山から出ないんで大丈夫です。騒ぎになるのはわかってますし、平穏な日々が大好きな連中なので』


 その戦闘力以外は常識人な彼らは、そんなアリシアとルナマリアの不安を一掃した。


「ちなみにルナマリアが全力でこのダンジョンを踏破しようとしたら出来る?」


「まぁ・・・・たぶん出来るけど・・・・その前に山が無くなりそうね」


 アリシアの魔法に耐えうるダンジョンですら消滅すると言う激戦必至なメンツらしい。



『花束を用意したんですけど挑戦の邪魔になりますよね?』


「そ、そうね・・・・それは踏破した時か、挑戦終わりに貰うわ」


 記念すべき挑戦者第一号であるアリシアのために作ったと言う花束を脇に置き、彼は『やっぱりダンジョン最奥部で歓迎パーティの方が良かった』と後悔するのであった。


 どちらにしろ挑戦者が居るのは嬉しいらしい。


 もちろん知り合いで、安全で、暇つぶし程度な戦闘ならばと言う条件付きだ。

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