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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十二章 王城生活
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閑話 アリシアの初ダンジョン1

「以上で魔法の基礎訓練を終了します」


「フィーネ先生、ありがとうございました! とっても楽しかったわ!!」


 アリシアが魔法剣『レーヴァテイン』を手にした事から始まったフィーネとの修行も終わり、いよいよ本格的に彼女の魔法使い人生が幕を開けた。


 王都からヨシュアへ帰る道中で魔法に関する知識を身に付け、魔獣や盗賊が現れれば実験台にし、現れなければフィーネの探知魔術で住処を見つけ出して猛威を振るった魔法。


 そんな日々はヨシュアに到着してからも続き、アリシアはルーク達が戻って来る前に『魔法剣士』と名乗れるほどになっていた・・・・初級の。


「では早速ダンジョンに挑戦してみましょうか」


「ダンジョン!? 良いわね! 冒険と言えばやっぱりダンジョンよねっ!!

 でもヨシュアの近くにそんな所あったかしら?」


 魔法剣士アリシアへの最終課題としてフィーネが提案したのは『実践』である。


 この世界の田舎というのは『交通の便が悪い』『特産物が無い』『気候の厳しさ』など様々な理由があるのだが、その中の1つに『ダンジョンが無い』というのがある。


 ダンジョンとは冒険者を集める事が出来る絶好のスポットであり、人が集まればそこには産業が生まれ、やがて巨大な街となるのだ。


 とは言え、田舎のヨシュア近辺にも少ないがダンジョンは存在する。


 しかしどれもこれも簡単に踏破出来る小規模のダンジョンで、訓練目的の学生や駆け出し冒険者でなければ見向きもしないような物ばかり。


 とても究極魔術と呼ばれる魔法の練習場所にはならないだろう。


「そのダンジョンは最近生まれたのですよ。高難易度は保証します」


 それなりに修行場所については詳しいアリシアは「そんなのあったかしら?」と疑問に思いながら大人しく従う事にした。




 いよいよダンジョン初挑戦の日。


 フィーネは仕事が忙しくて同行出来ないと言うので、その代わりにルナマリアとベルフェゴールが付き添う事になり、アリシアは朝から指示されたロア農場へとやって来ていた。


 そこではいつものようにルナマリアが作業着を身に纏い、日頃世話している作物の収穫に勤しんでいた。


「ルナ、久しぶり。朝早くから精が出るわね」


「あら、もう来たの? じゃあダンジョン行きましょうか」


 近くで作業していた従業員に指示を出したルナマリアは、着替えるでもなくそのままの格好でダンジョンに潜ると言う。


「私ダンジョンの事を何も聞いてないんだけど、そんな装備で大丈夫なの?」


「大丈夫よ。詳しく知りたいならそこに転がってるのに聞けばいいわ」


 従業員への挨拶もそこそこに早速移動を開始したアリシアが質問すると、ルナマリアは自分より詳しい人物と言う事で足元を指差す。


「・・・・グッド・・・・モーニング」


 そこには当然のようにもう1人の同行者ベルフェゴールが寝転がっていた。


「っ! ビ、ビックリしたぁ・・・・。

 ベル、おはよう。相変わらず神出鬼没ね」


 いくらフィーネやユキで慣れているとは言え、突然足元に大人の女性が転がっていたら驚くのは当たり前である。


 が、そんな奇行も何のその。すぐに落ち着きを取り戻したアリシアはルナマリアと同じくベルフェゴールとも久しぶりの再会を喜びつついつも通りの挨拶をする。


 彼女こそが今日潜るダンジョンの生みの親なのだ。



「で、これからどこ行くの? 遠いの?」


「本来は遠いんだけど、コイツが最短ルートを作ったから近いわね」


「ここを真っすぐ・・・・」


 2人が指さしたのは農場から伸びる道、いや最早『道路』と呼べるものだった。


 道幅5mほどの綺麗に整地された地面には肉眼では見えない保護膜が張られているため草一本生えず、側溝にはまるで通る人々を歓迎するように花々が咲き誇っており、その道はどこまでも真っすぐ続いている。


「このバカ、フィーネの許可が出るや否や『ダンジョンロード』とか言ってこれ作ったのよ」


 呆れながら説明するルナマリアの話では、今から向かうダンジョンは1つ向こうの山にあるのだが手前の山が邪魔で遠回りをしなければならなかった。


 しかし移動が不便だとフィーネ会長に相談して一部トンネルを掘る許可が貰えたらしい。


「掘ったぜー、ちょー掘ったぜー」


 その話の最中ずっと地面でバタバタ手を動かしていたベルフェゴールはとても誇らしげである。


 そこから推理したアリシアは1つの結論に至った。


「つまりベルが管理するダンジョンって事?」


「「そうよ(です・・・・)」」


 危険と隣り合わせの大冒険を想像していたアリシアとは裏腹に、2人は全く危険の伴わないダンジョンだと言う。




「ねぇ見て見て! これ!! ルークが私のために作ってくれたのよ!」


 トンネルを通る最短ルートがあるとは言っても、山1つ移動しなければならないのでそれなりに時間は掛かってしまう。


 3人が道中で最近の出来事を話していたら、当然行きつく先はダンジョン探索の理由となったアリシアの大剣だった。


 すると待ってましたとばかりに自慢を始めるアリシア。


 先ほどまで「安全かぁ・・・・」とダンジョンへの不満を言っていた彼女は一気にそのボルテージを上げ、3人以外は存在しないトンネルなので秘密であるはずの製作者や製造過程もバンバン話していく。


「アイツ、ホント何なの? あの気持ち悪い性格と、変態な趣味を無くしたら賢者にでもなるでしょ」


「料理、魔道具、鍛冶・・・・知識の宝庫・・・・アイス・・・・食べたいです」


 ある程度予想していたとは言え、魔法剣の製作者がルークであると明かされるとルナマリア達は驚きを通り越して呆れてしまった。


 よくわからない事を言いながら『グー』とお腹を鳴らすベルフェゴールはともかく、ルナマリアは珍しく本気で人間を褒めている。もしかしたら初めてかもしれない。


 賢者。それは最高の魔導士である証。

 賢者。それは勇者と共に世界を救う最強の魔導士にだけ与えれる称号。

 賢者。それは人間では辿り着けない至上の生命体。


 そんな人物になれるとまで言ったルナマリアは実はルークを認めているのだ。


「まぁいくら腕が良くてもあの性格じゃあねぇ・・・・」


「ダメよ! ルークはあのバカな感じが良いんじゃない。フィーネもユキも他の皆も今のルークが好きなのよ。

 2人だってルークに惹かれて今ここに居るんでしょ?」


「か、勘違いしないで! アタシはフィーネ目当てよ!? まぁ人間の中じゃマシかもしれないけど」


「私は・・・・どうですかねぇ・・・・嫌いではないです」


 アリシアから説教されてツンデレになるルナマリアと、自分でもわかっていないのんびり屋なベルフェゴールであった。




 暗く退屈なトンネルと思いきや、常に明るく、壁や床や天井に様々な絵が描かれていたので会話の種も尽きることなく楽しい時間を過ごした3人はダンジョンに到着。


 その入り口には巨大な甲冑に身を包み、2mはあろう体長よりも大きな双剣を携え得たガーディアンが静かに立ちはだかっていた!


『人間よ。この場所に足を踏み入れるならば命を捨てる覚悟が必要となるぞ』

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