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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十二章 王城生活
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百七十一話 お土産

 予期せぬ旧友との再会もあったけど買い物を続けよう。


 淡泊かもしれないけど、どうせその内ワン達を連れてヨシュアに来るだろうからその時にゆっくり遊べばいいさ。


 そんな事より今はお土産選びで頭が一杯なのだ。


 父さん達が買っているような特産じゃない旅行の土産って何にすれば良いんだろう?


 まず王都の印が入ったような物は特産品だからダメ。

 逆にどこでも買えるような物もダメ。

 高価な物もダメだし、喜んでもらえない物なんてもっての外だ。


 まぁ・・・・つまり・・・・何も思いつきません!



 だからこそ、こうして王都をウロウロしてるわけなんですけどね。


 そんなあてもなく中央通りを散策する俺にみっちゃんがアドバイスをしてきた。


「土産もいいが龍フルーツも忘れるなよ。ヨシュアに無い物も多いはずだから王都でまとめ買いしておくようにな。

 果実と言ってもそこそこ保存がきくから、あるかないかわからないヨシュアで探さなくても買って帰ればいい。ちなみに最も短い賞味期限の物でも3ヶ月だ」


 流石はドラゴンフルーツマニア。販売員になればいいんじゃないかってぐらい的確な事を言ってくる。


 しかし俺はお土産探しで忙しいのだ。


「その辺の事はわからないからこれで好きなの買ってくれ。ほら丁度あそこに売ってるし」


 そう言って俺は財布から取り出した銀貨3枚をみっちゃん渡して御遣いを頼んだ。


 1人で持てる量のドラゴンフルーツを買うのに態々全員が行く必要もないから、ここは別行動の方が良いだろう。


 丁度目の前に青果店があるから、そこで買っている間に俺達は近くの店でお土産探しをしよう。


「さ、3枚・・・・銀貨3枚か・・・・・・。

 なぁ、ちょっと深層でひと狩りして来ていいか? たしかドラゴンを売れば金貨数千枚になるんだろ?」


 しかし金を受け取ったみっちゃんは「これでは満足のいく買い物が出来ない」と不満をたれて、良い稼ぎ方があるのでドラゴンフルーツを買い占めようと提案してきた。


 冗談ではなく、「それだけあれば龍フルーツ食べ放題だ!」と意気込んでおられるので本気のご様子。


 そう言えば俺がギャンブルで金稼ぎしようとした時も彼女だけは乗り気だったし、金の使い道を考えてニマニマしていた。


 随分と俗世に染まっているようだけど、それにしても金がない状況で強盗しようって考えないのが神獣アルテミスの優しい所だな。


 普通の獣なら金を用意しようなんてしないだろうから。



 でも、それとこれとは話が別だ。


「ダメです。そもそも売る場所がギルドなんだから誰も入れないじゃないか」


 ここに居るメンツで成人しているのは精霊のユキと神獣のアルテミスだけ。


 当然どちらもギルド会員ではないし、身分証明も無いのでカード発行まで時間が掛かってしまうだろう。


 つまり彼女の案は使えない。


「くっ・・・・いや、王国騎士の誰かをドラゴンスレイヤーに仕立て上げれば・・・・」


「ダメです。いいから諦めて銀貨3枚分で我慢しろ。

 調理に失敗したとしても十分な量は買えるはずだから」


 なおも食い下がるみっちゃんを一喝したら、彼女はしぶしぶと言った様子でお金を受け取り、「せめて美味しい龍フルーツを」と1人青果店を練り歩き始めた。


 目の前にあるあの店でいいじゃん・・・・俺達は待たないから勝手に探せよ。




 そんなわけで一時パーティを離脱したみっちゃんを置いて、俺達はあてもない散策を続けるのであった。


 が、さっきのやり取りを見てユキが俺の言い方に文句をつけてきた。


「さもルークさんがお金出したっぽくしてますけど、それガウェインさんから貰った分ですからね~?」


「1人3枚」


 まぁたしかに俺の金じゃないですけど。俺の小遣いはお祭りで綺麗サッパリ無くなりましたよ。


 だって美味しそうな物がぼったくり価格で売ってるんだもの! 買うしかないじゃない!!


 そんなわけでイブやみっちゃんはともかく、国王様が全員にお小遣いをくれました。


 ありがとう、パパ。危うくヒカリやイブにたかるところだったよ。


「わたし達まで貰っちゃってゴメンね。お小遣いって言われたけど自分の分は用意してたのに」


 俺とは違い、計画的にお金を使っていたヒカリはお土産を買う余力を残していたらしい。


 ただ言わせてもらえば試合会場での食べ物を俺と分け合っていたから、これは実質俺の金でもあるわけだけど・・・・知らない人から見たら女の子に金を貰う『ヒモ』だと思われてしまうので有難かったよ。


「大丈夫、私のもあげる」


 メイドと王女に支払わせるクズ男は誰だ!?


 ・・・・俺だよ。



「ちなみに私は無理ですよ~。無一文ですからね~。お給料マヨネーズですからね~。

 ガウェインさんに貰ったお小遣いも本を買ったら無くなりましたし」


「ユキはお土産買う必要ないじゃん。3日に一度ぐらい王都に来てるし、大体誰にあげるんだよ。ベーさんか? あの人、すこし前に旅行する事を伝えたら『土産いらないから新作アイスくれ』って言ってたぞ」


 お土産ってそういうもんじゃないよな。


 ちなみに買った本は速読したので王城の自室に置いているらしく、その内容はなんてことのないアイリーンさんの生涯を面白可笑しく描いた本だとか。


 それを見ながらアルテミスと2人で盛り上がったそうな。




 さて、色々と悩んだ結果それなりに良さそうな王都土産を購入することが出来た。


 男連中には散策する前に買っていた『これ』だろ。

 食堂には獣人しか居ないから『爪とぎ』。

 農場の連中には学を身に付けるために『本』で、ファイ達には無難に『王都の絵』。


「うん、どれもこれも完璧なチョイス。良い買い物したな」


「サイ君達へのお土産以外はヨシュアでも買えそうなものばかりだけどね」


 俺が満足していると、隣からヒカリが本当にそれで良いのかと聞いてくる。


 他の連中も口には出さないけど同じことを思っているようで、もうちょっと探した方が良いのではないかという顔をしていた。


 仕方ない。ここは俺が巧みな話術で納得させてやろうじゃないか!


「何を言うんだ、ヒカリ。

 ほら、この爪とぎは深爪の防止が出来て、裏にはヤスリまで付いてるんだぞ!? しかも王都産である証明として印もバッチリ入っててお土産にピッタリ!

 これは印入りだとしても父さん達は絶対買ってない一品だろ」


「獣人ショップに入りたかっただけだよね」


 ・・・・そ、そんな馬鹿な。


 俺は獣人ばかりの食堂で全員に喜んでもらえるお土産を選んだだけじゃないか。


 たしかに入店した時のテンションは店員すらもドン引きしていたように思うし、全商品ひとつひとつを手に取って舐め回すように見ていたので軽く1時間は掛かっただろう。


 見終わった俺がもう一度最初から吟味しようとしたのを察したヒカリ達が無理矢理引きずって出ていなければ今も店内に居た自信はある。


 正直、客の獣人達にまで絡んだのは悪かったよ。


 ただ少しでも彼女達の買い物を手助けしようとした俺の純粋な気持ちも理解して欲しい!


 え? 入りたかったか、入りたくなかったかって?


 もちろん入りたかったさっ!!



 ・・・・次いってみよう。


「んじゃ王都ならではの物語が書かれた本はどうだ!

 ヨシュアには流通してないかもしれないし、農場の連中には『本を買おう』って意識なんてあるはずもないから俺が渡さなかったら絶対手にしない品だぞ!?

 読書は心の栄養補給です」


「ならなんで買う途中で大人向け雑誌コーナーに入ろうとしたの? 小説コーナーとは真逆だったけど。

 王都のエロ本事情を調べようとしたんだよね? あわよくば買おうとしたんだよね?」


 ・・・・・・道に、迷ったんだよ。


 決して父さんが持ってる本に興味を惹かれたわけじゃない。


 そもそも本を選ぶって目的があるんだから、例えそれが店内の角にひっそりとあるピンクの暖簾が掛かっていた場所にだってルナマリア達が喜ぶ物があるかもしれないじゃないか。


 そう、俺は必死にお土産を探していただけなんだ。


 なんとか目を盗んで転がり込んだ瞬間、獣人本が無いか周囲を見渡したのは秘密です。ヨシュアにある本屋はレジの隣を通らないといけなくて入ったこと無いんだよ・・・・。


 ええ、そうですよ! この世界のエロ本がどんなもんか見たかっただけですよ!!



「ならこれはどうだ! 王都の絵!!

 これは一切不純な動機がない王都にしかない景色が描かれた芸術品だぞ!?」


「『これは』って・・・・それ今までは不純だったって認めてるよ。

 だってこれを提案したのわたし達だし。ルークはよくわからないチャンバラセット買おうとしてたよね」


 ・・・・・・・・・・・この世界にもチョンマゲあるんだな~って、新選組変身セットみたいなオモチャがあったから気になって。


 買う買わない以前に、手にした瞬間全員からダメ出し喰らって絵にさせられましたけど。


「ルークさんの残念なセンスに任せていたらいつまでも決まらないと思ったんですよ~。ねぇ~?」


「私は散歩も楽しい。でも友達からアレを渡されたら喜べないと思った」


「わたしは論外だったよ」


 唯一イブが味方になるかと思いきや、まさかの『俺大好き主義』の彼女ですらチャンバラセットはお気に召さないらしく苦々しい顔をしている・・・・ように思う。


 表情こそ変わらないものの、そのセリフから嫌がられているのは間違いない。


 たぶん俺以外がアレをお土産にしたら受け取りすらしないんだろうなぁ。


 そんなにダメかね? チョンマゲ。


 子供なら喜んでくれると思ったんだけど・・・・。




 何はともあれ無事お土産を買えた俺達はヨシュアへ帰る事にした。


「じゃあみっちゃんを探して帰りましょうか~」


「まさかあっちの方が遅いとか思いもしなかったわ・・・・。何をそこまで選ぶ必要があるんだよ。全部同じだろ」


 なんだかんだで時間が掛かったから予定時刻を大幅に過ぎていたにも関わらず、それよりもフルーツ買うだけのアルテミスの方が遅かったのだ。


 たしかに希少なドラゴンフルーツは全ての青果店に売ってるわけじゃないけど、それにしたって3割ぐらいの確率であったように思う。


 つまり彼女は最高の品を求めて王都中をウロウロしているという事になる。


 どこがそんなに違うんだかサッパリわからん。


「今度ルークが獣人でゴチャゴチャ言い出したら同じ事言って良い?」


「ダメ♪」


 まぁ趣味なんて人それぞれだから、興味のない人には理解出来ないものなのだろう。


 しかし俺はヒカリの言葉でハッとした。


 これはケモナーの理解者を増やすために布教活動をしなければならないようですね。


 帰ったら何か手を打たねば。



 あ、みっちゃんはどれだけ力を隠していようと神獣には変わりないのでユキに掛かれば一発で見つけられました。


 しかも遅くなった原因は少しでも安く良い物を買おうとして店先で値切っていたからだった。


 神獣が値切るなよ・・・・。


 でも満足のいく値段まで下げられたらしく、「大量だぞ」と嬉しそうにドラゴンフルーツを見せびらかしてきたので良しとしよう。


 美女の笑顔は正義なのです。


 その交渉術をどこで学んだのやら・・・・。

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