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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十二章 王城生活
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百六十五話 平和なハチミツの森

「「はじめましてっ!」」


「ブーン(はい、はじめまして。イブさんとは久しぶりですね。そちらは・・・・古龍さんですか? 人型には初めて会いますがそのサイズの方がゆっくりできると思いますので、森を楽しんでくださいね。私の事はクーさんと呼んでください)」


 魔界のハチミツ王国で女王をしているクイーンホーネットと対面した俺とヒカリが元気よく挨拶をすると、彼女は嬉しそうにブンブン飛び回って迎えてくれた。


 ヒカリに釣られて挨拶したものの、正直いくら良い人とは言え魔獣であることには変わりないので不安だった俺は、ユキの同時通訳で歓迎されている事を知って一安心。


 だってこのクーさん、想像よりも大きかったのだ。


 まぁここのキラーホーネット達は野生のより大きな枕サイズなので、そんな彼らの王が人間サイズなのは理解できるけど、実際対面してみると結構威圧感がある。


 全身銀色って言うのも不思議な感じだ。


 鉄のような見た目なのに、触ってみたらフサフサしていて、戦闘中は固くなると言う謎な魔獣さんである。


 そんな心配性な俺とは違い、一度来た事のあるイブは慣れたものでその辺を飛んでいたホーネットを捕まえてモフモフしていた。


 クーさんの知り合いだから許される行為なんだろうけど、尻尾の針が怖くて俺には出来そうにない。


 どうやら毒は戦闘中しか出ないらしいけど、それにしたって刺さったら痛いだろうよ・・・・。


「可愛いのに」

「ねぇ~」


 気が付いたらヒカリまでモフり始めていた。




 ユキが皆を紹介した後、早速森を案内すると言うクーさんの後ろをついて行く俺は色んな魔獣と会話してみたいと思い、アルテミスにある質問を投げかけた。


 だってユキみたいに会話さえ出来ていれば最初から無駄に怖がる必要なかったんだもの。ビーストマスターみたいでカッコイイしな!


「ところでみっちゃんは魔獣の言葉ってわからないのか? 何となく強い連中は出来る印象があるんだけど」


 もしも彼女も通訳出来るなら、俺は無理でもヒカリなら可能性があると考えたんだ。条件によっては俺にもワンチャンある。


 そしてそれは出来る出来ないに関わらず、どちらにしても俺のケモナー人生にとって非常に有益な情報となる。


 もちろん出来た方が嬉しい。


「いや・・・・期待しているところ悪いんだが、おそらくユキ以外は出来ないだろう。

 アイツの場合は精霊を通して全ての生物と意思の疎通をしているから、言語を使う我々とは次元が違うんだ。ちなみに私の念話も言葉を魔力に乗せて飛ばしているだけだから知らない言語を使う種族には無意味だ」


 しかしみっちゃんから無理だと言われ、俺の夢がまた1つ潰れた。


 獣の友達100人作りたかったな~。


 男友達はファイ、ワン、スーリの3人しか居ないけど・・・・。


 『言語の壁』以上にどうしようもない『種族の壁』が立ちはだかっているのは理解出来て良かったけど、また心の荒む出来事だった。



「それにしてもクイーンは凄いな。若い魔獣とは言え、力だけなら既に神獣クラスだ」


 慰めるように別の話題を提供してくれたみっちゃんの優しさに感謝しつつ、俺はその言葉を聞いて『第二の戦闘狂』のヒカリが大人しい事に納得してしまった。


「あぁなるほど。ドラゴンより強い魔獣なのにヒカリが興味を示さないと思ったら強すぎる相手だったんだな。

 たしかユキが力を与えたんだっけか? そりゃ強いわけだよ」


 挨拶した時にさり気なく古龍と遭遇している事を話してくれたクーさんは魔獣として破格な生命体らしい。


 髪を食べたクロと言い、このクーさんと言い、ユキの体には強くなる成分が含まれているのだろう。


「いえいえ、クーさんの努力の賜物ですよ~。私は切っ掛けを与えたに過ぎませんって~。

 あっ、そう言えばヒカリさんには千里眼を与えましたね~。これも日頃の鍛錬のお陰ですけどね~。フフフ~」


 とか言いつつ嬉しそうにドヤ顔するのは止めるべきだ。


 それさえなければ謙遜してると思えたのに・・・・相変わらず残念なヤツだよ、お前は。



「・・・・風? ううん、水の方が・・・・」


 隣を見ると一切会話に入って来ない話題の少女はキラーホーネットを安全に暗殺する方法を考えていた。


 まぁ魔獣の対策をするのは良い事だよな。


 ここの連中が良い奴等ってだけで野生のキラーホーネットは凶暴だから勝てるに越したことはない。


 ただ言葉を理解しているとしか思えない抱きかかえられたホーネットさんが震えているから心の中に留めておいてやれ。


「プルプルして可愛い」


 イブもその状況を楽しむんじゃない。




 以前プレゼントした浄化槽やトイレが使われている事に感動しつつ、一通り素晴らしい森を案内してもらった俺達は今、クーさんの巣に居る。


 ホーネット達と同じハチの巣をイメージしてたんだけど、それとは別に作った友達用の別荘なんだとか。


 ちょくちょくユキが来たり、俺達みたいな突然の来訪者や極稀に魔族連中も来るので今後のために必要かな~と思ったらしい。


 その別荘は・・・・何と言うかこじんまりした普通の家だ。


 壁や床、屋根、家具などは大工も真っ青な木材加工で釘を使わない凹凸の接合だけで作られているし、水車付きの川が近くを流れていて、木には果実がたくさん実っているので非力な人間でも暮らせる。


 全て剪定技術の応用でクーさん達が作ったと言う。


 魔獣スゲェな!



 感動しつつ別荘でひと休憩した俺はクーさんへのお土産を渡すことにした。


「さて、ユキ・・・・『アレ』を持って来てくれるか」


「了解です~。『アレ』ですね」


 お土産とは言っても物はオルブライト家にあるため、ユキに持って来てもらうしかないのでお得意の転移をしてもらった。


 結構大きいから王都へ来る前にクーさんと会う事がわかっていたとしても持って来れなかったのだ。


 それは日頃からハチミツをもらっているお礼としていつか彼らと会った時に渡すため作っていた専用の魔道具である。


 浄化槽と同じく完成した時にユキを通じて渡してもらっても良かったんだけど、急ぐもんでもないし、どうせなら俺の手で渡したかったから今の今まで部屋の片隅に眠っていた物だ。


「取って来ましたよ~」


 俺の指示通りユキがすぐにお土産を持って帰って来てくれた。



 よし、久しぶりに営業しますか!



 俺とユキ以外の全員が何事かと注目する中、俺はお土産の横に行って大声で解説を始める。


「さぁ今回ご紹介する商品はこちら!

 『ハチミツ製造機』!!」


「凄そう」

「いつの間にそんな大きなの作ったんだろう?」

「ほほぉ~、これが噂のルーク特製の魔道具か」


 みんな興味津々に地面に置かれた巨大な箱を見ているそれは、大の大人が余裕で入れる大きさの魔道具である。


 ノズルが付いていたり、タンクが付いていたりと複雑な構造なので見ただけでは用途がサッパリわからないだろう。


「ブーン? (ハチミツ? ハチミツは私達も作ってますけど、これは一体どんな魔道具なんですか?)」


 ムフフ、みんな悩んでる悩んでる。


 あぁ・・・・聞こえる。早く使い方を教えてくれと言う皆の心の声が!


「待ちきれないようなので早速ご説明しましょう!

 なんとこのハチミツ製造機! ホーネットの巣から蜜を採れるのです!」


「「「・・・・だから?」」」


 あれ? 俺、接客下手になった?


 違うんだよぉ~。俺がやりたいショッピング番組はこうじゃないんだよぉ~。


 リテイク!


「そこの奥さん! ハチミツを流通させているようですが、採るのに苦労していませんか!?」


 俺は『ビシっ!』とクーさんの方を指差して質問を投げかける。


 これでターゲットロックオン状態なので相手は逃げられない。


 気弱な人ならこれだけで落ちるし、嫌がる相手でも強引にいけば7割方成功するの。まぁ実演を見に来た人はそもそも購入予定だから来てる訳で、むしろ3割逃がしてるって駄目な気はするけど・・・・。


 あれ? やっぱり俺、元々接客下手?


 でも流石にお土産を渡されて断ることは無いだろうから、受け取ってもらえると信じて気にせず続けよう。


「ブーン(奥さんでは無いんですが・・・・まぁハチミツを採るために一部とは言え巣を潰すのは手間ですね。心も痛いですし)」


「そうっ! しかーし! この製造機があればそんな苦労は無くなりますっ! こちらのノズルを巣に入れて、魔力を込めれば液体を集めてくれるのです!!

 つまり! 巣を壊すことがなくなり、作り直す手間も、心労も、全ておさらば! 

 さらにお好みの量だけ出すことが可能になるという画期的なアイテム!」


 より詳しく言えばハチミツの糖分を集める過程で分離不可能な液体もついてくるってだけなんど、こればっかりは説明するより実際に使ってみた方がわかりやすいだろう。


 てな訳でスイッチオン!


 俺が魔力を送り込むパネルに手を当てて魔力を注入すると、ブーンと言う動作音と共にハチミツの吸引が始まった。


「凄い。ハチミツがドンドン溜まる」

「こ、これは・・・・便利だね!」

「しかも採ったハチミツの鮮度を保ちつつ容器に移せるな」


 そうなのだ。


 このハチミツ製造機は巣を潰さないので純度100%のハチミツを採る事が可能となり、一定量魔力が溜まっていればタンク内は常にかき混ぜられるので固まったり沈殿したりすることがない。


 さらに真水を吸い込む事で楽々洗浄も出来ると言う画期的な魔道具なのである。


「いかがですか奥さん! この世紀の大発明!」


「ブブブーンッ! (革命です! ハチミツ産業に革命が起きましたよー!)」


 製造機を使ったクーさんは今まで以上に勢いよくブンブン飛び回り始めた。


 喜んでもらえて何よりです。


 一応取り扱い説明書と修理マニュアルを一緒に渡した。


 クーさんって魔法陣刻んだり出来るのかな?




 早速部下のキラーホーネット達にハチミツを採らせてはその都度感動しているクーさんや、それを面白そうに眺めているイブ達を尻目に、立派に説明役を勤め上げた俺は満足してお茶で一服していた。


 するとユキから伝えないといけない事があると言われ、


「お家にニーナさんが来ていて凄く怒っていましたよ~」


 と告げられた。


 ・・・・俺、なんかしたかな? 全く心当たりがない。


(((何もしてないから怒ってるんでしょ)))


 何故か女性陣からの視線が冷たい。


 つい最近知り合ったばかりのクーさんやみっちゃんからもだ。


 言いたいことがあるならハッキリ言いなさい!

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