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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十二章 王城生活
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百六十四話 移動方法は神獣

「はぁ・・・・朝から酷い目にあった」


 俺の恋愛観を確かめるために城を挙げてのドッキリを仕掛けられてからしばらく経ち、ようやく落ち着いたので予定していた過ごし方をすることにした。


 でも全員が笑いながら部屋に入って来たのを俺は忘れない。


 ギャグキャラは先代国王のアーロンさんだけじゃなかったのか?


 随分面白い家族ですねイブさん、と皮肉を込めてドッキリ企画者側のイブに今の気持ちを伝えてみたら、


「ありがとう」


「うん、褒めてない。でもどういたしまして」


 ダメだ。そもそもイブがギャグキャラだった。




 さて、予期せぬイベントもあったけど予定通りに魔界へ行こうか。


 前々から行ってみたいとは思ってたけど移動手段がなかったし、色々危険そうなので諦めていたのだ。


 でもイブは行ったことがあるので、俺とヒカリにとっては未知の世界である魔界について色々話を聞いていたら、


「私に乗っていくか? 龍の姿なら魔界までひとっ飛びだぞ」


 とみっちゃんが言ってくれるので全員で行く事になりました。


 俺だけなら絶対トラブルが起きるだろうけど、皆が一緒ならそんな事は起きないはずだ。目的地に行って帰るだけだしな。


 実はアリシア姉がワイバーン便に乗った時から羨ましくて、『空の旅』が将来の目標と言えるほどになっていた俺はそりゃあ喜んで賛成したね。


 龍に乗って別世界に行くとか王道ファンタジーじゃないか!


 ・・・・まぁ別世界とは名ばかりで、国境にあるちょっと大きめの海を渡るだけなんだけど。



 そんなわけで今から魔界にあるハチミツ発祥の地でクーさんと出会うイベントを開催します。



「で、ユキ。クーさん暇だって?」


「大丈夫みたいですよ~。イブさんの時みたいにトラブルも無いそうです~」


 あちら側が忙しかったら迷惑になるので、転移が使えるユキに確認してもらったのだ。


 しっかりアポイントメントを取って訪問時期を相手に合わせられる、そんな出来る男な俺を褒めるがいい! 尊敬するがいい!!


「ユキちゃん居なかったら突然訪問してたクセに。手紙を出して返事をもらうまで数ヶ月待つなんて絶対出来ないよね」 


 俺のドヤ顔を見たヒカリが呆れながら辛辣なツッコミを入れてきた。


 魔獣のクーさんが手紙を書けるのかはさて置き、転移によって一瞬で伝達出来るんだからそれを使わない手は無いし、俺がユキに連絡させたと言うことに意味がある。


 例えそれがイブやヒカリ、みっちゃんからの提案であってもだ。




 で、いつになったら魔界に向かうの? 話し長くない?


 そんな事を思う人も居るだろう。


 俺もそう思う。


 もちろんこれには理由があって、俺達が王城から飛び立とうとしていたら騎士の方々から「目立つから止めて」と注意されてしまったのだ。


 だから俺達は古龍が飛んでも問題ない『白霊山』と言う小高い山を登っている最中なのである。


 何度も話題に出たイブの先祖のアイリーンさんが眠る場所でもあるらしいので、墓参りも兼ねてハイキング気分で山登りを楽しんでいた。


 マイナスイオンが満ち溢れてるぜ!


 え? ユキが張ってる結界だから精霊は多いけど人の体に影響はない? マイナスイオンなんて存在しない? あ、そうですか・・・・。


 ここ、自然の山に見えて完全な人工物みたいです。


「へぇ~、この霧って結界なんだ! ユキちゃん何でも出来るんだね」


「そうなんですよ~。凄い結界なんですけど誰も褒めてくれないんですよ~。ヒカリさんが初めてかもしれませんね~」


 と悲しそうに語るユキだけど、自分が作ったってバラしたのはつい最近とか言ってたから褒められなくて当然だ。


 イブ達は褒めると言うより「またか」って呆れる方だろうし、ヒカリの千里眼ですら結界だとはわからなかったんだから神獣ぐらいしかユキを褒めるヤツは居ないだろう。


 少し疑問に思ったのは、その神獣である割と常識人のみっちゃんなら褒めそうなもんだけどって事。


「なんで褒めなかったんだ? 褒めて伸ばす性格じゃないとか? まぁユキを褒めたら鬱陶しいぐらい調子に乗るから気持ちはわかるけどな」


 だから俺はユキにお礼は言っても褒めることは無い。


 古い付き合いのみっちゃんはそれを理解しているって事か。


「ん? いや結界だとは知っていたけど、ユキがアイリーンと『ここを綺麗な状態に保つ』と約束したから褒める気にもならなかった。約束を守るのは常識だからな」


 逆に結界に解れがあったら怒っていたと言うみっちゃん。


 ・・・・下手に美味しい料理を作るとか言わなきゃよかった。


 結構厳しい人らしい。



「そろそろ到着ですよ~。最後ぐらい自分の歩きます?」


「そうだな、下ろしてくれ」


 ユキにオンブされていた俺は最後の数十メートルを自分の足で歩くことにした。


 ・・・・いや、あのね。ちょっと言い訳させて。


 まずここ2日間王都を歩き回ってるわけですよ。そりゃ足はパンパンになるし、筋肉痛にもなるってもんでさぁ。


 さらに! なんでもかんでも回復魔術に頼らない方が良いって皆が言うからストレッチだけしてたんだけど、日々の運動不足もあって溜まった疲れは到底取り切れるわけもなく、それが積み重なった所に山登り!


 まぁ普通、攣るよね。


「お揃い」


 ほら、俺の隣では同じく歩けなくなったイブがみっちゃんに担がれつつ『当然』って顔で同意してくれてる。


 決して俺達2人がひ弱って事じゃないと思うんだ。


 そう、たまたま今になって限界が来ただけの話。


「たしかにベルちゃんが管理してる山はスイスイ登るよね。でももうちょっと鍛えた方が良いと思う」


 ヒカリがフォローなのか注意なのかわからない事を言ってくれた。


 ちなみに登り切った後に再び攣ったので回復魔術を掛けてもらいましたけど何か?




「いいか、みっちゃん。いやさアルテミス!

 人の姿から龍に戻る時は演出が大切なんだっ!

 全身は光輝き、魔法陣や地鳴りによって見ている者を圧倒する演出がっ!!」


 今後の行動に影響が出るので完全回復してもらった俺の前でみっちゃんが黒龍の姿になったんだけど、あろうことか何の演出も無く一瞬で変身してしまった。


 そんな変身シーンを見せられた俺は怒り心頭である。


 だって人生初めての変身シーンだぞ? ファンタジーってそうじゃないだろ?


「アニメのヒーローや魔法少女がそんな変身してみろ。クレームの電話が鳴りやまないぞ。

 アルテミスはやれば出来る子なんだ! もう一度!!」


「普段は死んだような目をしてるクセに、たまに鬱陶しい熱量を持つ奴だな」


 俺の目はどうでもいいんだよ。


 でも説得の甲斐もあって『そう言うものか』と納得したみっちゃんは、俺の指示通り見事な変身を披露してくれた。


 体の周りでパァーッと光る魔法陣!

 着ていた服がどこかへ消えるフラッシュ演出!

 その光の中から現れる巨大な翼、そしてヌッと伸びる長い首!!


 これぞ変身っ!


 うむ、これで先に進める。



 変身後テイク2。

 

 初めて見るけど本来のアルテミスさん、かっけぇー! 古龍かっけぇー!


 艶々してるかと思ったらフサフサしてる体とか、大地を力強く踏みしめる足の爪とか、大空の覇者っぽい大きな翼とか!


 こ、これで今から移動出来るのか・・・・っ。


 テンション上がるわ~。


『さぁ乗ってくれ』


「いや、乗れって言われても・・・・。せめて頭下げてもらえます?

 足場が無いから背中への乗り方がわからないんだけど」


 巨大な生き物に乗る場合、必ずハシゴなり足掛けなりがあったりするもんだけど当然みっちゃんにはそれが付いていない。


 地面から背中まで約5m。さぁどうする?


「え? 飛べばいいよね?」

「ほら、どうせ頭を下げても胴体より低くなりませんから」


 はい、出た。自分勝手な強者の意見『ハシゴが無ければ飛び乗ればいいじゃない』。


 出来るかっ!


「私、ホウさんの時はユキさんに持ってもらった」


「よし、ヒカリGO!」


 誰かに持ち上げてもらうと言うイブのアイデアを採用して、ヒカリに頼んでみっちゃんに乗せてもらう事にする。


「少しは恥ずかしがろうよ」


「他の人が居たらな。知り合いしか居ない状況で自分のメイドに頼る事に恥じらいなんて皆無だ」


 忘れてるかもしれないけどヒカリは俺のメイドだ。


 主が自力で解決できない時、メイドに助けてもらって何故恥じらう必要があるのかわかりません。


「プププー! 自分より小さい女の子にお姫様抱っこされてますよ~」

「ルーク君、それは流石にカッコ悪い」


 こうするしかないじゃないか!



『2人でユキに運んでもらえば良かったのでは? もしくは一度イブを乗せてからルークを運ぶとか』


 みっちゃんが飛び立つ瞬間、衝撃の事実を口にした。


 ・・・・まぁ気付いてましたけどね。


 幼馴染の猫人族の女の子に抱っこされたかっただけです。


 ヒカリの腕の中はずっと抱かれていたいと思う不思議な安らぎがありました。


 俺結構M気質なのかもしれません。

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