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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十一章 王都大会編
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百五十六話 2日目はダイジェストです

 急遽、特等席を作り出したユキ達のお陰で、俺は目の前で繰り広げられる迫力満点の試合を堪能させてもらっていた。


 昨日とは段違いの臨場感で対抗戦を楽しんでいると、本日初となるヨシュア学校の出番になり、顔を覚えたばかりの選手達が続々と入場してくる。


 顔は覚えたけど名前を覚えてないのは仕方ないだろう。だって見せ場なかったし!


 当然その中にはアリシア姉も居る訳で。


「あっ、アリシアちゃん来たよ! おーい!」


「いや結界があるから見えない・・・・アリシア姉は見えるんだっけか? んじゃ俺も、おーい!」


「? ・・・・おーい」


 ヒカリが両手を振って声援を送ったのを皮切りに、俺とイブも一緒になって手を振って近くで応援している事をアピールする。


 たぶんイブは俺達に合わせただけで、自分がしてる事を何も理解出来てないけどな!



 隣から全く声援が聞こえないので「ほらほら、アンタ等も応援しなさい」とやけに静かな大人達の方を見ると、試合前だからかほのぼの寛いでいた。


「ここ見やすくて良いわね~。画面越しだとどうしても物足りなかったり、見たい所以外が映ったりして不便だったのよ」


「それはそうだけど・・・・エリーナ、映像があるってだけで凄い事だからね? 不便なんて言ったら怒られるよ」


 父さん達も間近で見る試合に感動して大満足のようだし、ユキの思い付きがここまで良い方向に転んでいるのは珍しいな。


 あ、アリシア姉がこっち向いた!


「なぁ、ところで声って届くのか? アリシア姉が俺達を見えるってのは聞いたけど、それ次第では声援する意味が無くなるんだけど」


 さっきから応援してるのに何故かアリシア姉の反応が薄いのが気になっていた。


 これ、たぶん聞こえてないよな?


「ごめんなさい~。なにせ急いで用意したので声は届かない仕様なんです~」


「私としたことが、ルーク様のご期待に応えられないとは無念です。あと2時間あれば・・・・!」


 すると俺の思った通り声は届かないらしく、ユキとフィーネが悲しそうに事実を告げた。


 フィーネは自分を責めてるけどこの結界だけでも十分だよ、ありがとう。


 それが不満とまで言うつもりはないけど、折角近くに居るのに身振り手振りしか伝わらないのはちょっと悔しいな。


 まぁ昨日までの観戦席と同じと考えれば良いんだろうけど、少し残念ではある・・・・。



「それぐらいなら私が何とかしよう。要はあのツインテールと念話が出来れば良いわけだな?」


 と言ったみっちゃんが何か呪文を唱えると、頭の中にアリシア姉の声が聞こえてきた。


 どうでもいい情報だけど古龍の間でも『ツインテール』という髪形は浸透しているようだ。



『あ、ホントに近くで観戦してるわ。手を振ってるけど応援してくれてるのかしら? 声が聞こえないのが残念ね』


「みっちゃん、スゲェな。

 もう聞こえてるぞ。アリシア姉、試合頑張れよ!」


「アリシア、勝つのよー!」


 どうやら母さん達が応援しなかったのは声が届かない事を理解していたからのようで、届くとわかった今は俺達に負けないぐらい大声でエールを送っている。


「魔力無くても勝て・・・・ハッ・・・・・私、アリシアさんと自分の学校、どっち応援すればいい?」


 俺達と同じく声援を送ろうとしたイブは、その途中で別の事を考え始めた。


 ヨシュア学校とセイルーン学校が戦う時だけ自分の学校を応援すれば良いと思うよ。


 だから俺の胸で頭をグリグリして悩まないで。見えてないとはわかってても公衆の面前だから恥ずかしい。


『あら? 声が聞こえるようになった。きっとフィーネかユキが何かしたのね。

 応援してもらって悪いんだけど、全然魔力が回復しなくて戦力になれそうにないから今日は大将にしてもらったのよ。相手が相手だから順番回って来そうにないし』


 突然念話を使われたアリシア姉だけど特に驚いた様子は無かった。流石の順応性である。


 まぁ昨日あんだけ盛大な魔法を使ったんだから魔力は残ってないと思ってたけど、やっぱり姉の試合が無いとわかるとテンション下がるわぁ~。



 で、試合の方もアリシア姉が言った通り惨敗だった。


 戦う前から力の差を理解していたのか、大将まで回ることなくレナード君の1勝のみという残念な結果だ。


「ふむ。弱者の試合と思っていたから興味はなかったが、ここまで弱いと逆に応援したくなるな。拮抗しているのがまた良い」


「ですね~。魔術とか構成がグチャグチャでいつ暴発するか見ててハラハラします~」


「武器の扱いも未熟なので予想外の場所を攻撃しますよね。結界があるとは言え、子供のお腹や頭に刃物が当たると思わず震えてしまいます」


 御三方は俺達とは違った楽しみ方をしているようだけど、それも間違いなく『楽しみ』ではある。



「む? アイツは筋が良いな」


「レオさんですね~。私達が教えたので当然です~」


「順調に成長しているようで安心しました。鍛錬は怠っていなかったようですね」


 へぇ~。今のレオ兄ってこの3人から見ても戦闘センス抜群なんだな。


 この調子ならレオ兄は2年後も出場するんだろうけど、『アリシア姉 VS レオ兄』ってカードを見れないのは残念だ。


 その頃には片方冒険者になってるから。


 ・・・・あれ? って事はアリシア姉、あれが最初で最後の試合だったのか?


 なんか悪い事したな。魔法を使わなかったらもっとたくさんの試合を楽しめただろうに。


 と言うような事を俺が考えていると、試合が終わってはけたはずのアリシア姉が会場のどこかから念話を飛ばして慰めてくれた。


『ルーク、気にしなくていいわよ。思い出に残る一発が撃てたのよ? それで充分じゃない!

 ちょっと個人戦に出てみたいって言う気持ちはあるけど、後悔はしてないわよ』


 本人がそれなら良いけど・・・・。


 ってか何故わかったし。


「「ラブ、ですね」」


 フィーネとユキの流行語が決まったな。



 あ、そんな事を考えてたらレオ兄の試合終わってる。


 ゴメン、全く見てなかった。



「あの人、嫌い」


 アリシア姉は出場しない事がわかり、レオ兄が圧勝を続けた後も試合を観戦している俺達だけど、とある試合中にイブが突然暴言を吐いた。


 それもそのはず。なにせイブの通っているセイルーン学校の代表選手が試合中に、


「チッ、俺が負けたのはマリーが出場しないからだ。なんで強い奴が出ないんだよ。頭おかしいんじゃねぇの。あの口だけ女が出てればこんな事には・・・・」


 と妹が目の前に居る事を知らずに負けた言い訳をし始めたからだ。


 子供の言ったことだから気にするな、とフォローも出来ないレベルでそいつはグチグチ言い続けている。


 まぁ代表として出場したのに接戦することなく惨めに負けたんだから言い訳したい気持ちもわからなくはないけど、タイミングが悪かったな。


 夏休み終わるまでに転校した方がいいと思いますよ。




 てな具合に特に話すことがない対抗戦も終わり、明日からは個人戦に入る。


 結果は言うまでもないけど、前評判通りに王都セイルーン高校とセイルーン学校が優勝した。


 なんとその日の夕方には号外が配られて、活躍したレオ兄の似顔絵と名前が王都中に知れ渡ったのである。


「プププーッ! な、何ですかこの決め顔~。

 これ絶対後々恥ずかしくなるやつですよ~。保管、保管・・・・っと」


「あ、ユキ。家に飾りたいから私達の分も保護魔術掛けてくれる?」


「良いですよ~。この絵を後世に残しましょう~」


 レオ兄、オルブライト家で晒し者決定。


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