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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十一章 王都大会編
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百五十五話 古龍は変な人でした

 大会2日目っ!


 昨日は残念ながらイブと一緒に観戦できなかったし、アリシア姉の活躍を見れたのも1試合だけだった。


 レオ兄の出番は一杯あったけど、あまりにも強すぎたから勝って当たり前の展開ばかりなので途中から相手頑張れって対戦相手を応援してたよ。


 まぁ過ぎた事をゴチャゴチャ言っても始まらない。


 問題は今日だ。


 アリシア姉は魔力が回復していないので熱戦は期待できないし。

 レオ兄はまた相手を応援する事になるだろうし。

 ヒカリは試合に集中してて話さないし。

 イブは来れるかすらわからない。


 ほら、問題だらけじゃないか。


「フンフフ~ン♪」


 昨日は人混みに負けて自室で休んでいたイブから「秘策を思いついた」と連絡があったんだけど、一体どうするつもりだ?


 彼女と一緒に観戦できる確実な手段としては、王族観戦スペースに俺を連れ込む事だろうけど、そんな目立つ行動は絶対にイヤだ。


 だってあそこ周囲から丸見えだし・・・・。


 そもそも俺とイブの関係がバレてはいけないはず。


 この前イブ達がウチに来た時に聞いたけど、イブ5歳の誕生パーティ出席者には俺という婚約者の存在について口止めをしたらしい。


 流石に婚約者がいるって情報ぐらいは漏れただろうけど、それが俺だとは誰にも知られていないはずなのだ。


「マヨマヨ~ン♪」


 だからそんな誰にも見つからない場所なんてないだろう、と聞いたらイブは「皆が一緒に見れる場所」とだけ言った。


 皆、つまり父さん達も傍に居るって事だ。


 そんな所は昨日見た限り無さそうだったけどな~。


「ユキ、もうちょっと前でも良くないか? その方が迫力あるぞ」

「みっちゃん、口出しする手伝ってくださいよ~」

「そうですよ。急がなければ観客が入って来てしまいます」



 で、君ら3人はさっきから何やってんの?


 そして『みっちゃん』って誰?



 朝早くに闘技場に集合した俺達は、人目を忍んで場内に侵入していたりする。


 何やら先ほどから作業しているユキ達にその理由がありそうなのだが、未だに一切の説明がないのだ。


「大丈夫、許可はもらった」


「さいですか・・・・」


 まぁイブとユキが一緒なのは当然なので別にいい。


 ただ知らない褐色少女が増えていた。


 どうもユキの知り合いらしいけど、彼女とフィーネは場内に入ってからユキと共に忙しそうにしているので挨拶すら済ませていないのだ。



 今、俺が居る場所?


 あぁ・・・・何故か試合するフィールドの真ん前だよ。


 普通ここは戦う奴しか入っちゃいけない場所じゃないのか?


 横に選手が入場する扉が見えるし、目と鼻の先に闘技場の結界がある。



「「出来ました!」」


 フィーネとユキが納得の出来栄えだと言うそれは・・・・。


 どこにでもありそうな椅子だった。



「そろそろ説明しろよ。朝から何やってたんだ?」


「フッフッフ~。ここが昨日3人で考えた秘密の観戦場所ですよ~」


 俺以外の皆も不思議がっているので、代表して俺がユキ達に質問をぶつけたら『待ってました!』とばかりにユキが自慢し始めた。


 どうやらこれがイブの秘策らしい。


 この観客席から丸見えの超目立つ椅子が?


 誰がこんなところに座るんだよ。見世物も良い所だわ。


「ルーク様、ご安心を。ただの椅子なら当然目立つでしょうが、そこで我々の出番と言うわけです。

 この一帯に透明化の結界を張りましたので、誰がどの角度から見ようとも我々が居る事はバレません」


「しかも、しかも! 後ろの壁を別の空間と繋げたのでトイレや買い出しし放題なんですよ~」


 絶対にここで観戦したくないと言う俺に対してフィーネとユキが事情を説明し始めた。


 どうやら見世物にはならずに済むようだ。



「うむ。私の目から見ても違和感のない完璧な仕上がりだ」


 と発言したのはみっちゃん(仮)であり、この言葉からして絶対強い人だろう。


 だって自己紹介されないから話しの流れで勝手にみっちゃんだと思うしかないじゃないか。


「わたしの千里眼でもわからないよ」


 そりゃユキとフィーネが結構な時間かけて作った結界だからな。


 透明化するって言ったから、『見えなくなる』じゃなくて『周囲から一切影響を受けない』って事なんだろう。たぶん入場した選手がこの近くをウロウロしても触れられないようになっている。


「もちろんアリシアさんとレオさんには見えるようにしてますよ~。今朝ちょっと会ってきました~」


 一応選手との接触は禁止されてるんだけど、転移し放題のユキを止められるヤツなんて存在しないので仕方ない。


 試合に影響しなければ会っても問題ないだろうからな。




「それでは用事も済んだことだし挨拶をしようか。

 初めまして、アルテミスだ」


 みっちゃんは一通り結界の説明を終えたので静かになったフィーネ達から離れて俺に話しかけてきた。


「アルテミスのみっちゃん?」


 たしかに『ミ』は入ってるからみっちゃんで間違いじゃない。


 何故『アッちゃん』や『アルちゃん』でないのか気になるところではある。


「・・・・(ピクピク)いや・・・・アルテミスだ」


 俺から呼ばれた瞬間、アルテミスさんは嫌そうに顔を歪ませたので今後みっちゃんと呼ぶのは止めるべきだろうか。


「・・・・・・(ボソ)ドラゴンフルーツ」


「っ!」


 なんだ? ユキが何かつぶやいた瞬間、アルテミスさんがビクッとなったぞ。


「・・・・・・・・・・・・みっちゃんだ」


「え?」


「みっちゃんと呼べ! 友達の証だ!

 さぁこれでいいんだろう!? 帰ったら龍フルーツ祭りだっ!! 友に手料理を振舞うのは当然だな!?」


 すると突然キレたアルテミスさんが訳のわからない事を言いつつ掴みかかって来た。


 事情はわからないけど、取り合えず今後はみっちゃんと呼べばいいらしい。


「よろしくね~、みっちゃん」 


「貴様もか!?」


 おぉ・・・・流石ヒカリだ。明らかに嫌がられている呼び方を初対面の相手でも平然と使うなんて、どれだけ度胸があっても俺には無理だ。



 結局ヒカリに先導されるまま俺とフィーネもアルテミスの事は『みっちゃん』と呼ぶようになった。ちなみに父さんと母さんは『アルテミスさん』である。


 ・・・・その直後知ったけど古龍、ってか神獣さんらしい。


 良いのかな~?



「モグモグモグ・・・・へぇ、みっちゃんはドラゴンフルーツってのが好物なのか」


 まぁ切り替えの早さが売りなんで一瞬で気にしなくなりましたけどね。


 今は朝食に会場近くの屋台で売っていたお好み焼きを食べつつ、試合開始時間まで初対面のみっちゃんと親睦を深めている。


 ムム? このお好み焼き、ベチャベチャな量産型かと思ったら普通に店で売れるぐらい美味しい。


 流石は国中から人が集まる大会だけあって、販売する品々のクオリティも相当高いな。余は満足じゃ。


 おっと、美味しい朝食に気を取られていたけどみっちゃんの事は忘れてないぜ~。


「龍フルーツな。それでルークは良い調理方法を知っているらしいじゃないか」


 ・・・・龍フルーツ? ドラゴンフルーツじゃないの? 古龍だから龍?


 何かこだわりでもあるかもしれないので触れないでおこう。


「いやどうだろう? 俺は食べた事ないから何とも言えないけど、まぁ色んな料理の作り方は知ってるから何かしら使えると思うよ」


 聞けばドラゴンフルーツは見た目がグロテスクなため、食べるのにはドラゴンに立ち向かうぐらいの勇気が必要な珍味らしい。


 当然俺は食べた事なんてなかった。


「それを盾にユキとイブが昨日から色々としているんだが・・・・不味かったら暴れようと思う」


「ユキ、責任とれ」


 何やってんだよ。


 どうして俺を呼ばなかったっ!


 え? 違う? そうじゃない? いや、だってみっちゃんの頭の角がさぁ~。


「了解です~。頑張ってヨシュアが全壊するまでには抑えますね~」


 先ほどから俺を魅了してやまない龍の角に気を取られていると、ユキが凄い事を言い出した。


 ・・・・え? ユキでもそんな被害を出すレベルの相手だったりします?


 もしかしてみっちゃん、メッチャ強い?


「古龍が人化するのは強い証拠ですよ。強くなりすぎて他にすることが無いので下等生物の真似をしてみたと言うことですから」


 非常にわかりやすく補足説明してくれたのはフィーネ。


 たしかにニート時代の俺でも『本気で犬になろう』とか考えたことも無いので、人に変身出来るみっちゃんは余程暇な時間があったんだろう。


 あ、本気じゃなかったら結構あるよ? 犬が自分の尻尾追い回す姿とか見てるだけで興奮したし、猫になって自分のお腹や尻尾を舐め舐めしたいって思わない方がどうかしてる。


「ハッハッハ! 伊達に1000年生きてないぞ」


 ・・・・1000年竜(サウザンドドラゴン)とか物語で出てくるラスボスか裏ボスじゃないですか~。


 そんな相手に初めて使う食材で美味しい料理出せって言ってんの?


「もし今度サウザンドドラゴンなどと呼んだら殺す」


 本当に殺されそうなぐらい冷たい視線を飛ばしてくるので『なんでドラゴンにそこまで敏感なんですか?』って聞く勇気はないけど気になる。


 これでもフィーネやユキが緩和してくれてるんだろうけど、怖い事に変わりはない。



「みっちゃんさん、ルーク様に危害を加えると言うなら私が相手になりますよ」


 『みっちゃん』に敬語を使ったら『みっちゃんさん』になるんだ・・・・。


 そして随分と喧嘩腰ですねフィーネさん。


 しかも初対面の相手から喧嘩を売られたみっちゃんも買ってしまった。


「ほほぉ~。人間などと言う100年も生きられない弱い生物を主と崇めている頭のおかしいエルフが私に勝てるとでも?」


「フフフフフフフフ。所詮人間から見えれば古龍もドラゴンもトカゲも同じ種族なのです。自らをあまり過信し過ぎないほうがよろしいですよ? サウザンドトカゲさん」


 ゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 止めて~。2人の怒気で大地が震え出してるから止めて~。


「フッフッフ~。これだけの騒ぎにも関わらず結界の外は平穏そのものですよ~。

 何せユキちゃん特製の結界ですからねー!」


 この2人を唯一止められそうなユキが自信あり気に結界内だけの事だと言う。


 コイツ相変わらずここぞって時に使えねぇ~。


 何か! 何か止める手段は無いのか!?



「ケーキ、ゼリー、タルト。これがフルーツ3大料理だけど、龍フルーツも美味しく食べられるんじゃないか?」


 そんなの考えるまでもなく喧嘩の発端であるドラゴンフルーツだった。



「ケーキ!? ぜ、ぜりぃ? たる・・・・と?」


 フィーネとの睨み合いを止めてこちらを振り向いて首を傾げるみっちゃん。


 よっし! 喰いついた!!


 彼女の反応を見るに、ケーキは何となく聞いた事があるらしいけど、ゼリーとタルトは未知のお菓子のようだ。


「まぁ実物を食べてみないと何とも言えないけど、基本的にフルーツならこの3つは美味しく食べれられる鉄板料理だな」


「ルーク様の作るお菓子は絶品ですからね。弱い人間の作る料理なんて神獣様はお食べにならないでしょうが」


 俺に殺意を向けた事をまだ許していないのか、フィーネは相変わらず喧嘩腰のままである。


「・・・・ゴクリ」


「もちろん喧嘩をするような奴には絶対に作らない」


 俺の知り合いは大抵これで堕ちるんだけど、アルテミスさんはどうでしょうか?


「まぁ寛大な私は例え逆鱗に触れられようとも怒ることなどありえないがな!」


 すると俺の予想通り怒りが収まった・・・・いやむしろ上機嫌になったみっちゃんは『龍』と書かれた服を捲って自分の腹にある黒い塊を見せてくれた。龍Tシャツは夜なべして自作したらしい。


 へぇ~、あれが触れば絶対怒り出すと言われている逆鱗か。


 『龍の逆鱗に触れる』とも言うからきっと大変なことになるんだろう。



「わたし昨日触った。コリコリしてた」


 ・・・・俺も触って良いかな? 実は興味があったりするんですが。


 これも一種のケモナーと言えるのかもしれない。


 もちろん頭の上にあるあの角にも興味津々ですがね!


 時間を掛けて古龍の生態とか詳しく聞き出したいですけどね!!

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