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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十章 学校編
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百四十六話 大衆を見ると全体攻撃したくなりますよね

 いよいよ夏休みの始まりだっ!


 怒涛のイベントラッシュな1ヶ月になること請け合いの初めての長期休暇である。


 まず最初のイベントは王都で開催される各校対抗試合。通称『大会』。


 先月やったヨシュア学校での最新ランキング上位6人が参加するんだけど、その中にアリシア姉が入っていたので明後日から王都へ行くことになっている。


 これは言ってみればオルブライト家から全国大会出場者が出たと言う事。


 そりゃ例え地元を離れることになろうと家族で応援に行くさ。


 戦闘には興味の無い俺でも、セイルーン王国中から人が集まる大きなイベントと言う事で終業式からずっとワクワクしっぱなしだ。


「大会ってどんなだろうな~。2年に1度って言うぐらいだし祭りとかやるのかな? 出店は間違いなくあるだろうな~」


 俺の中では演奏会みたいな静々とした会場じゃなくて、盛大に盛り上がっている賭け試合のイメージだな。


 当然その周りには屋台がたくさん出ていて客の気持ちをさらに高揚させるのだ。


 ってな妄想はいくらでも膨らむけど実際はどうなんだろう?



 誰か知ってる人は居ないのか、と聞く前に現地の状況を知っているユキが答えてくれた。


「会場周辺はお店の準備で忙しそうにしてましたね~。

 参加者の学生はもちろんですけど、応援団や大会を見るためのお客さんが国中から集まるので繁盛するみたいですよ~」


 いいね、いいね~。


 俺達みたいな連中も居れば、将来性を見込んで青田買いをする貴族や冒険者も多いらしく、学生の試合にも関わらず注目度は相当高いと言う。


 しかもそれに乗じて各店が軒を連ねて活気づいているので、きっと別に美味しくない焼きそばとか、普段なら絶対に買わない少量のカキ氷なんかを、ぼったくり価格で販売してるんだぞ。高い場所代払って一部の人達の金儲けのために汗水たらすんだぞ。


 そんあ屋台の裏事情を知ってる俺だけど、もちろん買うさ! 雰囲気重視だからな!


 こういうのは楽しんだもん勝ちなのだ。


 これは財布のヒモを緩める必要がありそうだぜ~。この日のために貯めていたと言っても過言では無いな。



 そんな話をしていると、ふと大会参加者について気になることがあった。


「ところでマリーさんとか参加しないのか? 王族って強いんだろ?」


 生まれた時から英才教育をされてるはずなので、出場者に選ばれていてもおかしくはないだろう。


 その問いに答えたのも同じくユキ。


「いくら試合とは言っても王族を攻撃できる人は少ないと思いますよ~。その辺も考慮してマリーさん達はランキング上位ですけど辞退したみたいです~」


 そりゃそうか。万が一怪我でもさせたら大問題だしな。


「何よそれ! 強い奴と戦う機会が減ってるって事じゃない!」


 そんな当然の対処に不満があると言い出したのはアリシア姉だ。


 アンタみたいな人が居るから運営側は気が気じゃなかったんだよ。


 王女様だろうと遠慮なく骨を砕こうとするだろ。ワザとじゃなくても国際問題になる。


「バカね~。ウチの学校のチンケな結界と違って、試合会場は世界最強の結界が張られるのよ?

 学生達が全力を出せるように武器の使用だって認められてるんだから、決め技は頭から真っ二つに決まってるじゃない!」


 骨を砕く? いいえ胴体を切断します。


「論外だ! 怪我ならまだしも、全力で殺そうとするんじゃない! 治療出来なかったらどうするつもりなんだよ!?」


 そんな心配をする俺を家族全員が『え? 知らないの?』って顔で見てくる。


 ・・・・なんか理由あるの?


 また俺だけ知らないパターン? もしかして俺って常識ないヤツって思われてる?


 誰か説明プリーズ。


「大丈夫でしょ。あの闘技場が出来てから今まで怪我人ゼロって話よ。もちろん交流試合以外も含めて」


 昔から強者達が度々使用している王都の闘技場には、誰もが知る完璧な結界があるから安全らしい。


 俺は知らなかったけどな!



 と、一部を抜粋してみたけど、このように夏休みに入ってから大会の話題で持ちきりだった我が家。


 たぶん関係者は大体こんな感じだろう。




 そしていよいよヨシュア学校の代表者達が王都へ向かう日になった。



「私達は先に行ってるわよ」


 王都に向かうワイバーン便に学校の連中と共に乗り込んだアリシア姉はそう言い残して出発した。


 流石2年に1度と言うだけあって、王都から態々飛んできた王国騎士団の護衛付きワイバーンで生徒達を運ぶという超VIP待遇。


 何らかの事故で撃ち落とされて対処しようがなくなるより地面を移動する方が安全だと思ったら、騎士団全員が風魔術で短時間飛行できるらしいので空の移動が1番安全だと言う。


 安全・安心のワイバーンにちょっと乗ってみたいと思ったのは秘密だ。


 事故の無いスカイダイビングとかもやってみたいじゃん?



「じゃあ僕達も行こうか」


 アリシア姉を送り出した俺達応援団も後を追うように出発の準備に取り掛かる。


 メンバーは俺、ヒカリ、フィーネ、母さん、父さんの5人。


 仕事の都合でギリギリまで行けるかわからなかった父さんだけど、同僚から「娘さんの晴れ舞台なんだから行っといで」と言われて何とか休みが取れたのだ。


 貴族の仕事ってそんな人任せで良いのか。思ったより融通が利きそうである。


 まぁ何はともあれ父さんも行ける事になったので、セイルーン高校代表者であるレオ兄を含めて久しぶりのオルブライト一家全員集合の機会。


 そりゃテンションも上がって来るってもんさ!


「頼んだぞクロ! ワイバーンに負けるな!」


「グルッ!」


 俺達は意気揚々とクロが引く荷台に乗り込み、アリシア姉達よりも先に王都へ到着することを目標に移動を開始する。




 って感じで今、ヨシュアを出て王都までの整地された道路を走ってるんだけど、凄く暇だったりする。


 今回ユキはイブ達王族と行動を共にしているので、恒例のクロとの競争はないのかと思ったら代役としてヒカリが名乗り出たんだけど・・・・。


「人が見てない時なら全力出しても良いんだよね? それならわたしはクロにも負けないよ~」


 普段の学生生活においては獣人のヒカリが魔術を使える機会は皆無。


 口には出さないけど鬱憤が溜まっているのかもしれないと思った俺達が止めることはなかった。


 ・・・・が、2年ぶりの大会と言うこともあり王都へ向かう馬車、竜車、ワイバーン便が大量に居たため人目を気にせず全力ダッシュ出来る時間などなく、ちょっと早い竜車として時間を掛けて移動する羽目になっているのだ。


 当然出鼻を挫かれたヒカリは拗ねるし、楽しみにしていたクロも周囲に合わせて走っているのでつまらなそうだ。


 さらに不貞腐れているヒカリになんと声を掛けて良いのかわからず父さん達は静かになり、フィーネは御者をしているので俺1人退屈な状況になってしまったではないか。


 すぐ到着すると思ってたから遊具なんて持ってきてないし、とにかく暇なのだ。



 そんな時は有能メイドに頼るしかないだろ。


「なぁ、なんとかしてやれないか? 折角の旅行だって言うのに皆のテンションが下がっていくんだけど・・・・。移動が遅いのはもういいから、せめて楽しい旅行に出来ないか?」


「そうですね。これだけ人が多いと結界で周囲からは見えなくしても存在が消えるわけではないのでぶつかりますし、難しいですね。

 あ・・・・全員気絶させれば「それは止めよう」・・・・そうですか」


 魔術で飛んでもワイバーンにぶつかる。

 車内から出たら人目に付く。

 楽しい遊びをしようとしても全員乗り気じゃない。


 大衆と目的地が同じと言うだけでこんなにも窮屈になるものだとは。


 クロが、クロがワイバーンだったら・・・・!


「クロ進化だ! 羽を生やしてワイバーンっぽくなるんだ!」


「グルゥ・・・・」


 無茶言うなって顔でこちらを振り向くクロ。


 まぁ無理ですよね。


 と諦めかけていたその時!



「出来ますよ?」



 なんとフィーネがクロのワイバーン化が可能だと言い出した。


 え? マジで? ついに生態系にまで影響及ぼすようになったの?


 完全に冗談のつもりだったんですけど・・・・。


 フィーネの発言を聞いたクロも、まさかそんな事が出来るとは思っていなかったのか、「僕、空飛ぶんですか? 空はちょっと」って複雑な顔してる。


 驚きもさることながら、一応大地を駆ける竜としてのプライドがあるらしい。


「あ、いえ。周囲に幻影を見せてワイバーン便に偽装することが可能と言うだけです。期待させてしまい申し訳ありません」


「な、なんだ。ビックリした~。勝手に勘違いしたのは俺だし謝らなくていいよ。

 つまりフィーネに掛かればクロが空を飛んでいても不思議じゃない状況が作れるって事か」


 まぁ空を飛んだからなんだって話だけど、このまま地面をノロノロ移動するより爽快感はあるだろう。


 何気に空を飛ぶの初体験だし。


「ヒカリさんも飛行魔術の訓練になりますよ」


「・・・・やる」


 ふて寝していたヒカリも、のそりと起き上がってきて是非飛びたいと言う。



 そんなわけで人目を避けるべく王都への主要道路から外れた俺達一行は、フィーネの魔術で空の旅を楽しむことになった。


 フィーネに指導されながらヒカリが凄く楽しそうに飛んでたよ。


 一応俺も挑戦してみたけど自分の体を浮かせることすら無理だった。


 最初からわかってたさ! 俺が出来る魔術なんてマッチ程度の火を出したり、柔らかい砂場に拳大の穴を空けるぐらいなもんだしな!


 魔力は十分あるし、魔法陣を作れるほどなので繊細な操作も出来るけど、イメージ力が伴わないのだ。


 イマジネーションってどうやったら身に付くんだろうな。わかんねぇよ。



 そんな不満を抱きながら俺はヨシュア出発から半日以上かけて王都に降り立った。


 途中から飛んだこともあり、結局アリシア姉達が乗っているワイバーン便には追いつけなかったのは無念である。

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