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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十章 学校編
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閑話 アイスクリーム

 皆様、最近いかが御過ごしでしょうか。


 こちらは夏真っ盛りですが、完璧な空調管理をしてくれるフィーネのお陰で室内は非常に快適です。


 自室だけをより涼しくしたい時にはユキが用意してくれた特製の氷を置くと、溶けることなく部屋中を冷やしてくれるのでいつも以上に引きこもってしまいます。


 しかし家から1歩出ると地獄のような暑さで、毎朝1km以上もある通学路を歩いていると到着する頃には全身から汗が噴き出して脱水症状になりかけます。


 そんな時は冷たい物が食べたいと思いませんか?


 カキ氷以外の冷たい物・・・・。



 そうっ! アイスクリームが!



 冷房に慣れ親しんだ現代っ子な俺は季節に逆らうのが大好きだ。


 暑い日は冷房をガンガンに効かせた部屋で寝て、寒い日は暖房をガンガンに効かせた部屋で寝る。これがたまらない。


 そんなわけで冷却と言えばこのお方、ユキ先生のご登場である。


「ユキ・・・・いくらフィーネが適温にしてくれているとは言え、外はちょっと暑すぎると思うんだ」


「ほほぅ・・・・つまりこの私に『冷やせ』とおっしゃる訳ですね?」


「ああ。肉体的な意味で頼んだぞ」


 事前のボケ潰しである。


 やはり寒いギャグでも言って精神面で冷やそうとしていたのか、ユキはメソメソ泣き出した。


 えぇい! 鬱陶しい!



 ひと悶着あったけど、無事容器に氷を入手。


「本来ならここでひたすら寝続けるところだけど、今回はアイスクリームを作ろうと思います」


 やっぱり夏と言えばアイスだよな。カキ氷にはもう飽きた。


 試食&製作者としてユキ、アリシア姉を呼んだ俺は2人に容器を手渡す。


「ほい・・・・っと。アリシア姉、ユキ、これを頑張って振るんだ。欲望の赴くままに! パッションのままに!!」


 原始的だけと1番有名で簡単なアイスクリーム製造マッスィーン。


 砂糖と牛乳を入れた容器の周りに氷と塩を詰めて、ひたすらかき混ぜるだけ。


「アリシア姉、これはユキとの勝負だ!」


「なんですって!? ふふっ。身体能力では負けるけど、ただ容器を振るだけならイケるわっ!!」


 いやそれを身体能力って言うんだぞ。アリシア姉の言う通りなら最初から負け確定してんじゃん。


 相変わらず頭がちょっと足りないお方だ。


「フッフッフ~。冷たい食べ物を作る技術で私に勝てるとでも~?

 震えの違いを見せつけてやりますよー!」


 対するユキは美味しいデザートを作ってやると自信あり気だ。


 なんだよ震えの違いって。格の違いだろ。



 なんか結構マジな勝負をするらしいので、審判はフィーネに頼むことにした。


 新しいお菓子を作ると言う事で甘いものに興味津々な家族が続々集まって来た。具体的には母さん、エル、ヒカリだ。


 このいやしんぼ共め!


「では、両者準備は良いですね? ・・・・スタート!」



「でやぁぁああぁぁぁっ!!」


 シャカシャカシャカッ!


 スタートの合図と同時にアリシア姉が叫びながらシェイクする。


 魔力がどう作用するかわからないので使用禁止にしてるけど、それにしたって早い。容器の残像が見える速度でブンブン振り続けている。


 これは中々いいアイスが出来そうですよ~。



 一方、自信満々だったユキ。


「・・・・」


 ブィィーーン。


 なんか・・・・本当に震えの違いを見せつけられた。


 わかりやすく英語で言うならアリシア姉のはシェイク、対するユキはバイブレーションだ。


 素人目から見てもユキが黙って振り(震え?)続けてるってのはわかる。


 ただ手元の残像が見えるとかじゃなくて・・・・ユキが2人居た。強者御用達の分身の術である。今触ったらあまりの速さで怪我するかもしれない。


「一応聞くけど、魔術で分身してるわけじゃないよな?」


 俺には判断できないのでフィーネに聞いてみる。


「はい。ユキが縦以外に横にも高速振動した結果としてあのように見えているのですよ。規定通り身体能力のみで振り続けています」


「速いね~。しかもちゃんと中身を混ぜるように動かしてるんだよ」


 魔力なしであれかよ・・・・。半端ないな。


 ヒカリは同じ動きこそ出来ないものの、ユキの手元は見えているらしい。


 ってかこの作り方で振り過ぎるのって大丈夫だっけ?



 そんな俺の心配を他所にどうやら完成したらしく、ユキがピタっと振動を止めた。


 まぁ結果は言うまでもないだろう。


「あー! もうっ! あんなのにどうやったら勝てるのよ!?」


 開始直後から結果は見えていたんだけど、負けず嫌いなので一応頑張っていたアリシア姉は不満を俺にぶつけてくる。


 人に厳しく自分にはさらに厳しいアリシア姉は、何よりも力不足な自身に苛立っているっぽい。


 勝負に持ち込んだ俺が悪かったよ。あれは人間の動きじゃない。


「ちなみにどんな料理なんですか~?

 私の勘がここがベストなタイミングだと言ったので振るのを止めたんですが、中身が想像も出来ませんね~」


 あっ、そうだよ! もしかしたら混ぜ過ぎたユキの方が不味い可能性だってあるよな。大切なのはアイスクリームの出来だし。


 さて容器オープン!



 中にあったのは真っ白なアイスクリーム。


 ふむ・・・・。見たところ若干トロっとしつつも十分固まってるし、ユキが冷却をミスするとも思えないので食感は抜群だろう。


 となると問題は味だな。


 こればっかりは実際に食べてみないとわからない。


「これは『アイスクリーム』と言う暑い時期にピッタリな冷たいお菓子です。

 今回は人力で作りましたが、味付けや製造方法が確立されればロア商会で大量生産しようと考えています。それでは皆様、どうぞお召し上がりください」


「「「いただきま~す!」」」


 あまり多く作ってないので無くなる前に俺も食べよう。


 モグモグ・・・・ほほぉ~。


 美味しっ!


 混ぜ過ぎたらどうなるか不安だったけど流石は雪精霊、絶妙な硬さに仕上がっているので口に入れて食感を楽しんだら自然ととろけると言う素晴らしいアイスクリームだ。


 さらに固くしてアイスキャンディっぽくしてもありだけど、今回はアイスクリームと言う名に恥じないクリーミーさがある。


 俺が配合した味付けも丁度良く、果実を混ぜ合わせて味に変化を持たせても美味いだろう。


「冷蔵庫に入れれば露店販売も可能になるアイスクリーム。皆はどうだ?」


 俺1人が気に入っても大衆受けしなければ新商品としては売り出せないからな。


 もちろん俺は涼しくなるまでの間、定期的に作って食べるつもりだ。



 すると黙々とアイスを食べていた全員が俺からの問いかけを待っていました、と言わんばかりに喋り出した。


「ふっ・・・・ルークやるじゃない」

「1日中食べていたいわね」

「料理は温かい物に限ると思っていた自分が浅はかでした!」

「ルーク様、とても美味しいですよ。これは販売するべきです」


 口には出さなかったけど全員が暑くて過ごしにくい、何とか涼しくしたいと思っていたのか夏にピッタリの食べ物だと絶賛してくれた。


 んで、冷たい物に目が無いユキはどうだ?


「これはカキ氷と同じで無数の味付けが可能ですね~。冷気を調整することで硬さの変化も楽しめますし、形状も動物とかにすると初めて食べる人にも受け入れられそうです~。販売した場合は長時間溶けなくするために容器に氷を入れる必要がありますね~。

 私イチオシのお菓子『カキ氷』に勝るとも劣らない絶品ですー!」


 ありがとう。ついでに俺がやりたかった商品開発を全部説明してくれて。


 異様に詳しいのでこの件はユキに任せることにしよう。




 まぁ当然のようにこの夏、ヨシュアで大流行したアイスクリーム。


 露店販売で連日長蛇の列を作り出したアイスを最も食べたのは予想外の人物だった。


「あぁ・・・・幸せです~」


 そう、ベーさんである。

 

 もちろんヨシュアに買いに来たわけではない。


 俺がお土産としてアイスクリームを農場に届けた際、やけに気に入ったベーさんが珍しく自分で作ると言うので容器を置いて来たのだ。


 牛や鶏は農場に居るし、砂糖や果実は山と畑にいくらでもあるからな。


 その結果、夏の間ベーさんが山から下りないと言う事態に陥ったらしい。1ヶ月以上山の中でアイスを食べ続けたのだ。


 どうやら元々乳製品が好きだったらしく、それを無数に変わる味付けで食べられる幸せ。しかも暑い季節に冷たい物で、だ。


 そりゃ体調を崩さないヤツなら夢中で食べるだろうさ。


 1ヶ月ぶりに会ったベーさんの胸は1段階大きくなっていた気がしたよ。


「ちなみに他にもラクトアイス、アイスミルク、アイスキャンディーなどなど類似品はいくらでもあるんだぞ」


「・・・・!?」


「まぁ涼しくなってきたから、もう食べなくなる「私は今ほどルークさんの名前を覚えて良かったと思った日はありません。是非レシピを教えてください。今まで以上にお仕事頑張りますから」・・・・おっとりキャラを忘れるほどか!?」


 かつてないほど饒舌に、そして活発に俺のセリフに割り込んできたベーさん。


 普通に喋ってんじゃねぇよ! キャラ守れよ!


 そして仕事したことあったか? 山で寝てただけじゃないのか?


 嫌な予感がしたので、功績を残したらレシピを1つ教えると言う条件で改めて警備をお願いした。


 すると真剣な顔で頷いたベーさんは山へ帰っていった。



ゴロン・・・・ゴロン・・・・。

「ラクトアイス・・・・シャーベット・・・・フローズン・・・・アイスサンド」


 今日も彼女はアイスのために山を転がっている。

挿入する部分がなくて気が付けば季節は秋に・・・・。

時期外れの話題ですが、ベーさんはアイス好きです。

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