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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十章 学校編
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閑話 遠足の裏側

 ルーク達が遠足を満喫している裏側で、フィーネとユキは多忙を極めていた。


 誰にも見つかる事の無い完璧な気配の消し方で東西に分かれて護衛をしている2人。


「なんということでしょう・・・・まさか特別顧問は参加できないイベントがあるとは。これでは何のために学内へ入り込んだのかわかりません。このフィーネ、一生の不覚です。

 それにしても融通の利かない学校ですね。メイドとして同行を許しても良いと思うのですが・・・・ブツブツ」


 何やら1名怨念を撒き散らしているが、とにかく護衛をしていた。


「グチグチ、ブツブツ・・・・おや? 早速ですね」


 そんなフィーネが生徒達に忍び寄る魔の手を感知し、遠足の邪魔にならないよう密かに排除するため移動を開始する。



 これは平和な遠足中のルーク達に降りかかったトラブルを、人知れず解決していたフィーネとユキの物語である。



「クックック。個人的な恨みなど無いが依頼を受けたからには誘拐させてもらおうか」


 どうやら生徒達の親の中に権力者の恨みを買ってしまった者が居るらしく、ルーク達の行く手には顔を隠す汚れたマントを身に付けて武器のシミターを構えた盗賊風な男が待ち構えていた。


 そんな男の言葉からもわかるように誘拐目的らしい。


「ではその依頼主と理由を詳しく教えていただきましょうか」


「誰だ!? ・・・・ぐはっ!」


「あなたが知る必要はありませんよ」


 当然ルーク達がやって来る前に片付けられた盗賊。


 狙いは1組の生徒ではなく、全く無関係な2組の生徒だったようだ。理由も『商売で邪魔された』と言う完全な逆恨み。


 抵抗する間も無く一瞬で気絶させられた盗賊は、砲弾のようにフィーネの魔術でヨシュアの警備兵駐屯地へと飛ばされた。



 その同時刻、フィーネが居る場所とは別の方向から巨大な魔獣がゆっくりと近づいていた。


「ゴアァァッ。(クックック、美味そうな獲物がノコノコやってきたな。この魔獣の王たるビッグベア様の食料となるがいい)」


「ユキちゃんパーンチ」


「ゴアァ!?」


 これまた瞬殺され、ユキの転移で猫の手食堂の地下食糧庫に運ばれた魔獣。


 この日の限定メニューはビッグベアの照り焼きだったらしい。



 さらにフィーネ側、上空にて。


「フム。この森など我ら魔族の拠点に相応しいではないか。人間達を駆逐するための手始めとして、この周辺の生きとし生ける者を皆殺しにするのだ!」


「「「おおおぉぉーーーっ!」」」


 悪魔のような翼を生やした魔族の集団が突如ルーク達に襲い掛かる!


「森が欲しければ所有者に交渉してください。『トルネード』」


「「「ギャーッ!」」」


 これまた誰かに見つかる前に不可視の広範囲魔術で一斉に処理するフィーネ。



 今度は地面から深層の生物が現れた。


「ゴゴゴゴッ(地下世界を征服したこのドリルモグラ様が地上も支配してやろう!)」


「一生地面の下と、一生氷漬け。好きな方を選んでください~」


「ゴゴッ(あ、スンマセン。自分マジ調子乗ってました。地面の下で過ごしま~す。お疲れっした)」


 深層を征服したと言うだけはあり、ユキとの力の差を一瞬で見切ったドリルモグラは謝罪して帰っていった。


「この荒れた大地は元に戻して・・・・っと。

 それにしても流石ルークさんですね~。トラブル目白押しじゃないですか~」


 キッチリ後処理もして、何事も無かったかのように新たな敵の排除に向かうユキ。


 やはりルーク関係者は全員この遠足でトラブルが巻き起こると予想していたらしい。



 その後もフィーネ達による鉄壁な守りは続いた。



「ヒィ~ッヒッヒッヒ。血だ。俺の剣は血に飢えている~」


「呪われた剣は跡形もなく粉々です」


 ある時は洗脳された人切りを助け出し。



「パルプレミレ(ほほぅ。この星には文明が栄えているらしいな。我ら宇宙人の支配下に置いてやろう)」


「ちょっと強めのドーンッ!」


 またある時は隕石に乗ってやってきた宇宙人を空の彼方へと吹き飛ばし。



「愚かなる下等生物どもよ! 私は恐怖の大王」


「「ちょっと目立ちすぎです(よ~)」」


 そんでもって空を割いて現れた異世界の大王を次元の狭間に追い返していた。




「いや~、凄いですね~。ルークさん絶対変な磁場か何か持ってますよ~」


「ルーク様の忠実なメイドとしてはフォローしたい所ですが、ここまで様々な襲撃者が現れると流石にフォローのしようもありませんね」


 たまに東西の境目に出現する敵を協力して葬ってはこうして情報交換をしている2人だが、全ての原因はルークにあると言う共通認識は覆りそうにない。



 もちろんこの護衛任務はルークが街に帰るまで続く事になるのだが、2人は文句を言う事なく敵を排除し続けた。


「デュフ、デュフフ・・・・ボクが仕入れた情報じゃ、こ、これからここに子供達が来るんだな。そこにこのコートを広げると・・・・デュフフ」


「えっちなのはいけないと思います」


 強敵に紛れて、たまにこうして変態も現れるのがフィーネ唯一の困り事だった。


 その度にそちらを見ないようにして処理しているのだが、問題はその量にある。


「こんな事ならルナマリア達にも応援を頼むべきでした・・・・。魔獣はともかく変質者がここまで多いとは」


 しかも何故か全員フィーネが守護する東側だけに現れていた。


 この日だけで軽犯罪者を収容するヨシュアの刑務所が3割埋まったとか、埋まらないとか。


「「「デュフフフフ」」」


「・・・・『ストーム』!」


 途中から面倒になったのか、敵かどうかの確認すらせずにそれらしい人間全てをまとめてヨシュアまで吹き飛ばすようになったフィーネの事を誰が責められようか。




 ところ変わってユキサイドには変質者が現れない分、普通の敵が多いので護衛当初は楽しんで討伐していたユキも段々飽き始めていた。


「世界にとって人類こそが最も有害な存在「人によります~」 グアッ!?」


「俺の世界最強伝説がここから始ま「らないです~」 グフッ!」


「またフラれた。私以外の女は全員死ねばいいのよ。呪ってやる・・・・世界中の女を呪ってや「あっちに月給金貨5枚のイケメンが居ましたよ~」 え? 本当?」


「道に迷ってしまってのぉ~。ダアトはどっちじゃったか?」


「山1つ超えるなんて凄いですね~。送っていきますよ~」


「フェッフェッフェ、すまんのぉ~」


 こうしてたまに人助けをしつつ適当に護衛の役目を果たしている。




 ルークがヨシュアに入った途端、これまで数分単位であった襲撃がパタリと無くなったのでフィーネとユキの護衛任務も終わった。


 そして今2人で最終報告をしている最中である。


「大王1体、魔獣8体、魔族20人、盗賊5人・・・・変質者43人でした」


「私の方は変質者さんが居ない分、人生と言う道に迷った人が多かったですね~。1人普通に迷子のお爺ちゃんも居ましたけど」


「大きく分ければ変質者も道を踏み外した人間には変わりないのでしょうけど、何故私ばかりが・・・・」


「ルークさんと同じでフィーネさんもそう言う星の下に生まれてるんじゃないですか~?

 どうしてもって言うので途中で東西の配置を変えましたけど、私は1人も会ってないですもん。皆さんフィーネさんに引き寄せられてるんですよ~」


「絶対に東側で集会でもしていると思っていたのですが」


 ルークの頼みでなければあまりの多さから途中で帰っていたと言うフィーネ。もちろん少しでも被害に遭おうものなら辺り一帯が消し飛んでいただろう。


 それほどに辛い任務だったのだ。



「まぁルークさんは平和な遠足が出来たみたいですし任務完了ですね~」


「次回までに変態を一網打尽出来る魔術を考えておきます。邪な事を考えた瞬間頭痛がするような魔術を」


「いっそ学校関係者以外を排除する広範囲結界とか展開した方が楽だったかもしれませんね~」


「・・・・何故もっと早く言わないのですか!? それさえあれば私があそこまで変態の相手をしなくて良かったではありませんか!」


「最初は楽しかったですもん」


 そんな守護者たちの涙ぐましい努力があった裏側の話。



「ルーク様、あ~ん」


「食べさせてくれなくていいから腕、治してくれない?」


「申し訳ありませんが、護衛任務で魔力を使い果たしまして・・・・治療は出来ません♪」


 予想外の報酬がありフィーネも大満足のイベントだった事を最後に記しておく。

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