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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十章 学校編
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百三十六話 体育教師2

 何故か体育教師として俺達を指導すると言い出したフィーネ。


 クラスメイト達はエルフに教えてもらうと言う事で、緊張しつつも期待に満ちた表情で指示を待っている。


 今日は基礎体力を測定するので特にやることはないはずだけど・・・・。


 さてどうなることやら。



「まず最初は腕立て伏せをしましょう。出来ない人は膝をついても構いません」


 ・・・・普通だ。


 長年生きてきたフィーネならではの教育方法があるのかと思ったけど、何の変哲もない腕立て伏せをしろと言い出した。


 当然生徒達も期待していただけに特別な事をしないフィーネにガッカリしている。


「はい! フィーネちゃん。わたし、最高速でも10分は続けられます!」


 ヒカリのこれは例外だとして、早々にエルフへの尊敬を無くして勝手に回数を競おうとする連中まで現れ始めた。


 つまりフィーネ先生の授業、大不評である。


「ヒカリさん、学校では先生と呼んでください。

 これから皆さんの自重を増やしますので、その状態で5回を目標に腕立て伏せをしましょう」


 そんな周囲の低評価を気にすることなくフィーネは呪文を唱えると『グラビティ』と魔術を発動させた。


「「「うわっ!」」」


 ズンッと言う耳鳴りと同時に俺の体が重くなる。いやこの様子だとクラス全員か。



「それが皆さんの全魔力を使用した時の疲労感です。限界からの運動が最も効果的ですからね。

 では始め!」


 フィーネの合図と共に超重力に慣れないまま俺達は腕立て伏せを開始した。


 こんな凄い魔術を見せられたんだから、そりゃあ最初の腕立て伏せ発言から一変して全員が素直に従ったさ。



「・・・・ぐっ・・・・・・な、なんだこれ。もう無理」


 普段なら10回ぐらい余裕な俺は3回しか出来ずにギブアップ。


 しかも腕の震えが止まらないぐらいギリギリな状態で。


「はぁっ、はぁっ・・・・こ、これがエルフの訓練方法か。素晴らしい!」


 俺より運動神経の良いファイも何故か3回でダウン。他のクラスメイト達も似たようなものだった。


「もぉ~、限界! 5回しか出来なかったー!

 フィーネちゃんズルいっ!」


 ヒカリですらまさかの5回でその場に倒れ込んだ。


 なんでだ? 10分は続けられるって豪語してたんだぞ?


 フィーネにズルいと言っている理由も気になる。


「ヒカリさんは流石ですね。あと今の私は先生です。

 何人かお気づきのようですが、魔術の効果はそれぞれ異なります。共通している事はそれが皆さんにとっての限界だと言う事ですよ」


「つまりどういう事だ? ・・・・ですか?」


 なんか先生って言う立場を主張しているので一応敬語にしてみた。


「ルーク様と生徒と教師の関係・・・・ウフフ・・・・・・まさに禁断の恋」


 お~い先生。本音が漏れてますよ~。


 ってか俺1人だけ『様』付けはどうなんだろう。ここでルーク君とか呼ばれても変な感じだから別に良いけど、周囲から睨まれてる気がする。


 フィーネの気付いたらしく早々に話題変更を試みる。


「・・・・おっほん。単純な体力測定なら私は見ただけで判断できるので必要ありませんよ。これはあくまで皆さんが自身を知る機会だと思ってください」


 なんと俺達それぞれに合った重力を設定しているらしい。


 だから全員が同じような回数しか出来なかったわけか。


「わたしだけ重力魔術が3重に掛かってたの~。

 ほら見て、私が腕立て伏せしてたところ! 地面にめり込んでたから手の後が残ってるんだよ!」


 と、先ほどから文句をつけるヒカリが詳しく説明してくれた。


 大げさな表現かと思ってよく見たら本当にちょっと地面が凹んでいる。そんなにか!?


 しかし個別に身体能力を下げるって言うなら学年トップの身体能力を持つヒカリは入念に掛けられても仕方ないだろう。


 ちなみに俺には10kgほどの重しを乗せたぐらいだと言う。


 いや、6歳児にとってはそれでも結構変わるんだって。


 ・・・・俺以外の生徒は20kg以上だったけどさ。



 それにしても千里眼を使わなくてもフィーネの魔術を解析できるとか凄いな。


 あっ、一応ヒカリが魔術を使える事とか秘密にしている。


 フィーネもまさかそこまで詳しく解析されると思ってなかったのか驚いていた。


「いつもはもっと複雑な魔術使うよ? これぐらい余裕だよ~」


「フフフ、嬉しい誤算です。これは次の段階にいけますね」


 なにやらフィーネの予想以上にヒカリの戦闘力が上がっているらしい。


 そんな力どこで使うんだよ・・・・。



 その後も同じ状態で腹筋したり、シャトルランしたり、反復横跳びしたり、とフィーネに回復魔術を掛けてもらいつつ全力で自分の限界の先を体験した俺達。


 倒れるまで運動、そして回復ってのを繰り返したんだ。これフィーネが居なかったら筋肉痛で絶対3日は動けなくなってるぞ。


「なんだろう。この1時間で強くなれた気がするよ」

「私もですの。とても体が軽いですの」

「ですわね。今なら間違いなく50m走の自己新記録を出せますわ」


 授業終わりに重力魔術から解き放たれたファイ達が口々に「凄い体験をした」と言っている。


 かく言う俺も中二病全開で、


「フッフッフ・・・・重力という名の呪縛から解放された俺を止められるかな?」


 とかポーズを決めつつ呟いていた。


 フッ・・・・若い頃は両手両足に重りを付けて代用してたもんさ。


 そんな夢にまで見た超重力を体感できるんだ。そりゃ童心に返ってもしょうがないってもんだろ。


 ヒカリが無言でビンタしてきたのですぐに正気に戻されたけど・・・・。



「そう言えばフィーネはどうやって特別顧問になったんだ?」


 授業が終わったので普段通りの喋り方に戻した俺は、気になっていた事をフィーネに質問した。


 いくら商会会長やエルフだからと言ってそう易々と教師になれるもんでもないだろ。


 学校側も万が一フィーネが変な授業をしたら責任問題になりかねないんだから。


「ユキが平日に学校へ行こうとしていたので問い詰めたところ白状しました。まさかヨシュア学校の校長先生と知り合いだったとは。

 彼はユキの戦闘能力の高さをご存知だったので彼女はそこに付け込み、特殊な訓練方法を教えると言う条件で特別顧問になろうとしていたのです。

 そこで私は正当な取引をして代わってもらったと言うわけです」


 まさかのユキ発端だった。アイツ無駄に顔広いからな~。


 知り合いだと言う校長も入学式で挨拶したんだろうけどウトウトしてたから全く覚えていない。


 あと付け込んだのはフィーネさんも同じですよね?


 正当な取引については触れなくていいだろう。たぶんロクな事にならない。


 さらに言えばフィーネが特別顧問になる事が決まった時、ロア商会の商品を学校に寄付したらしく、それはそれは感謝されたと言う。


 商会の方はフィーネが居なくても自分達で運営していけるようになったようだし、たまにはフィーネの好きなようにさせてあげないとな。


 今までが働き過ぎなんだ。




「それにしても楽しい授業だったね。アリシアちゃんが聞いたら羨ましがるよ~」


「そうだな。1年生以外は担当しないんだろ?」


 流石にそこまで暇じゃないだろうし、俺達の相手も週に1,2回ぐらいになるんだろうな。


 あ~っと。1年生以外って言ったのは俺達以外の1年も同じ条件の体力測定してたからだ。80人以上の生徒達一斉に個別に魔術を掛けたフィーネ先生マジパネェっす。


「そうですね。そこまで手を出してしまうと特別顧問ではなく、ただの教師になりますので」


 しかもフィーネが言うには将来アリシア姉を鍛える時も同じ方法にするつもりらしく、知らないうちに目標を奪っていたのだ。


 これはアリシア姉暴れるぞ~。


 日頃から散々『きっとこんな修行をするんだ』『そんな特殊な訓練をするんだ』と楽しみにしてたから。



「わたしが重力魔術を覚えてアリシアちゃんに掛けてあげたら目標達成だね」


 うん、止めてあげて。たぶん泣く。



「じゃあ、実はわたしが最初から1段階上の訓練してるって言わない方がいいのかな?」


 そうだね。妹みたいな存在のヒカリが自分より大分先に進んでるって言わない方がいいね。


 いつも疲労していると思ったらフィーネに鍛えてもらってたのか。



「手加減されてるけどフィーネちゃんに一発入れた事も言わない方がいい?」


 そうですね。それアリシア姉の最終目標だからね。


 ってかヒカリ凄いな!?


「フフフ。ルーク様近衛兵育成計画は順調なのです」


「いや、誰かと戦争する気ないから。既に過剰戦力だから」


 もしかしてフィーネとユキの最強コンビが居なくても、国家相手にいい勝負出来るんじゃないか?


 いや絶対しないけど。


 ・・・・しないよ?

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