表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十章 学校編
201/1657

閑話 友達の家

 色々あった入学式からの帰り道。


「折角お友達になれましたので皆様を我が家へ招待いたしますわ!」


 と言うアリスのお言葉に甘えて、俺は『初めて友達の家に遊びに行く』というイベントを決行した。


 だから俺はさっきからワクワクが止まらない。


 だって友達とのトランプとかリバーシ大会とか絶対楽しいじゃん!


 そもそもアリスの家(つまり領主邸)には母さん達が集まっているので迎えにいかないといけなかったし、一般的な女の子の部屋ってのにも興味がある。


 ヒカリやニーナの部屋は殺風景だし、アリシア姉は可愛い物好きだから一応女の子っぽいけど、その反面武器や防具も大量にあるので一般的とは言えない。


 別に女の子に変な幻想を抱いてるわけじゃないけど、少なくとも人形から刃物油の臭いがするのは異常だと思う。せめて全世界で使われるようになった石鹸の匂いだよな~。


「先月ぶりだね。しかも今回は周囲に気兼ねなく遊べるとはなんとも嬉しい限りだよ」


「パーティ中はうるさかったですの」


 やめて・・・・俺が参加できなくなる話題はやめて。



 俺達がヨシュア領領主邸へと足を踏み入れると、まるで待ち構えていたかの様に母さん達が駆け寄って来た。


 自宅に友達を招く。それはアリスにとっても初めての出来事だったらしく、一刻も早く親に知らせるために学校の外で待っていた執事に伝言をしたのだ。


 だから歓迎の意味も込めて家族が出迎えるのは不思議じゃない。


 駆け寄る理由はわからないけど。


「待ってたわよ! さぁ化粧品を出しなさい!」

「お久しぶりですわね! さぁ!」

「初めましてだね。私がファイの母親のパステルだよ。そんな事より美肌効果があると言う液体について色々話してもらいたいな」


 な、何のことだ?


 よくわからないけど、エリザベスさんは相変わらずのドリルだし、パステルさんは中性的な女性だった。


 呆然とそんな観察をしている俺にイライラしながら詰め寄る女性陣。



 やがてそれは『出ーせっ! 出ーせっ!』と言うコールに変わった。


「だ、だから何を言ってんだよ? なんで俺がそんな物を持ってると思った?」


 いいから説明しろ。訳がわからない。


「・・・・え? な、無いの?」

「・・・・エリーナさん、話が違いますわよ」

「期待値無限大のロア商会関係者だから楽しみにしてたんだけど」



 事情を聞く限り悪いのは母さんだ。


 アリスからの伝言で俺達を連れてくると聞いた母さん達。


 そのセリフと言うのが、


「わたくしが帰るのを楽しみにしてくださいませ! きっとお母様は歓迎したくなりますわよ」


 なんだとか。


 普通に考えたら入学式帰りの子供が言う『楽しみに』とは、初日で友達が出来たとかそんな所だろう。歓迎したくなるって言葉からも連想出来る。


 でも勘違いした母さんが、


「絶対にエリザベスへのプレゼントよ! いいえ、親への日頃の感謝として私達全員分用意してるかもしれないわ」


 と皆を盛り上げたのだ。


 女性が喜ぶモノ、つまり美容関係。


 俺達子供だけならいざ知らず、ロア商会幹部のフィーネとユキが居るのでそれはそれは期待していたらしく、校内探索で遅れた時間もプレゼントで悩んでいるとしか思わなかったと言う。



 駆け寄って来た母さん達の中にリリが居ないと思ったら、案内された部屋のソファーに深く腰掛けてうな垂れつつ、死んだような目で「知らないニャ。何もしてないのニャ」とブツブツ呟いていた。


 どうも全員が同年代にも関わらずリリだけピッチピチな理由を根掘り葉掘り聞かれたようだ。


 伝言を聞く前にそんな話をしていたせいでお土産しか連想出来なかったらしい。



「・・・・バッカじゃねぇの?」


 どこをどう勘違いしたらそうなるんだよ。


 アリスが友達を連れてくるとしか考えられないだろ。


「うぐぅ・・・・だってアリスちゃんが初めて友達を招くとか知らなかったし」


 全員からの責めるような視線を受けて思わず鳴いた母さんは、最後に少しだけ言い訳をした。


 美を求める気持ちはわからなくはないけど、だからと言ってこの空気をどうしてくれる。


 折角楽しみにしていた友達の家が居心地最悪じゃないか。


「な、なんか無い? ほら、学校で一緒に遊ぶつもりだった遊具とか」


 ある訳がない。入学式に余計な物を持っていく新入生がどこに居るんだよ。


「・・・・・・はぁ。ユキ、お菓子でも買ってきてくれ。あとトランプ」


「アイアイサ~」


 無難に珍しいお菓子でも食べれば落ち着くだろう。


 いつも通り転移して買い物に出かけた。もちろん全額母さん持ちだ。



「「「消えた!?」」」


 あぁ~。そう言えば俺達は日常風景だから気にしなかったけど、普通『転移』って言えば大規模な装置が必要になるんだっけか?


 なんか説明も面倒なのでフィーネさんヨロシク。


「・・・・(ブツブツ)やはり成り上がりの商会より安定した公務員を選びますか・・・・仕方ありません、少し強引ではありますが」


 フィーネさん?


「・・・・えっ!? あ、はい。もちろん証拠は残しません」


 そうじゃない。


 いや、それも大切だけど、今は転移の説明を・・・・って何するつもりだ!?


「あ、あぁ。はい。彼女はロア商会幹部ですので」


 ・・・・・・で?


 そんな説明で誰が納得す


「「「それなら納得」」」


 るんですね。なら良いです。


 物わかりの良い大人達はともかく、子供達まで見たことも無い超高度な魔術を使ったユキの正体を追求する気がないようだ。


「ルークが思っている以上にロア商会って凄い組織だと思われてるんだよ~。特に2人しか居ない幹部は怪物だって」


 あながち間違いじゃないのがまた凄いな。


 まぁ今後何かあったらロア商会幹部だからって言っておこう。



「ウフフ。やはりルークさんとお友達になったのは間違いではなかったようですわね」

「なるほど、これならヒカリさんの強さも納得だね」

「・・・・負けないですの」


 お前らも結構な大物だと思うぞ。



 折角家族が集まっているのでお互いに自己紹介をして親睦を深めていると、ユキが買い物から帰って来た。


「ただいまです~。開発部長権限で色々買ってきましたよ~。

 あ、エリーナさん。どんなお菓子が良いのかわからなかったので一通り買ったら金貨6枚になりました~」


「なんでよぉぉぉーーーっ!?」


 一般的なヨシュア労働者の月給3か月分のお菓子とか買いすぎだろ。


 この大量の菓子は入学祝と友達になった記念として皆に配る事にした。


 持ち帰ってもどうせ腐る・・・・いやウチの女性陣の胃袋なら余裕か?


 まぁでもロア商店の宣伝も兼ねてプレゼントだ。


 どうでしょうか? 俺の自信作の数々。


「これ美味しいね! 和菓子って言うのかい? 上品な甘さが癖になる」

「団子が美味しいですの」

「カステラ・・・・素晴らしいですわ」


 喜んでもらえて何よりだ。




 初めて食べるお菓子に舌鼓を打つ子供達、そして体重を気にしつつも手が止まらない大人達。


 そんな俺達を他所に、1人平べったくなった財布を悲しそうに見つめる母さん。


「ぐふぅ・・・・わ、私の小遣いが・・・・・・買おうと思ってた新作美容液が~」


 自業自得だろ。


 そんなに小遣い欲しいなら父さん締め上げてエロ本貯金を没収すればいい。あの人、また王都から取り寄せてたぞ。


 たぶんどこかに収納魔法陣を作ってるはずだから。


「その収納魔法陣ですが、この館にもありますね。3階の東端にある部屋です」


「・・・・具体的には部屋のどの辺りでしょう?」


 どうやら領主様の書庫らしい。アリスのパパも同類か・・・・。


 当然彼の末路も父さんと同じだろう。


「ねぇ。ウチのメイドが発見したんだから1割頂戴よ」


「考えておきますわ。それよりわたくし少し席を外します。

 フィーネさん、書庫だけ防音魔術掛けられますか? え? 出来る? 30分ほどお願いしますわ。

 では皆様ごゆっくり・・・・・・」


 そう言って来客である俺達に一礼したエリザベスさんが応接室から出ていった。


 扉が閉まる瞬間『ダンッ!』と床を蹴る音が聞こえたので、王国騎士団も真っ青な見事な縮地が発動したのだろう。



 この30分後、時間ピッタリで清々しい顔をしたエリザベスさんが戻ってくるまで俺達はトランプで遊んでいた。


 彼女のドリルが若干変色していた事を気にする人間は居なかった、と言うか全員が気付いていたけど突っ込めなかったのだ。


 そんなエリザベスさんが大人達だけの話し合いがあると言うので、俺達はアリスの部屋で遊ぶことにする。


 3階がエドワード家のプライベートスペースらしく、どこかにアリスパパが居ると言うけどそんな気配は微塵も感じないとても静かな廊下を抜けて、アリスの自室で大量のお菓子を食べながらお喋りをして楽しい時間を過ごした。


 もちろん帰る時間になっても3階では人っ子1人見なかったよ。他の階ではメイドさんや執事さんが忙しそうに働いていたけど。


 まぁ俺には関係ない事だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ