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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
九章 女神降臨
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百二十話 お買い物

 将来の家族としてお互いに親睦を深める事に成功したオルブライト家とセイルーン王家。


 突然の来訪だったため昼食はロクな用意も出来ず、間に合わせの料理になってしまったけど和気あいあいとした楽しい食事だった。


 その昼食の最中もずっと仲良く話していた母さんとユウナさんの2人は、客室で美容についての重要な会議をするため退席。


 俺の知らない間にイブ達と護衛のジャンさんがウチに泊まる事になったらしい。


(これは女神様とお風呂に入るチャンスやで~)


 などと考えていたらヒカリとイブの両者から両横腹を抓られた。


 何故わかった・・・・? あっ、そこはダメだって! 特にヒカリ。魔力で強化された爪が刺さってる!


 そんな痛くもあり、楽しくもある戯れ。



 実は最も気になっていたのは両家よりもフィーネだった。


 前に俺の婚約者の話題であれほど暴走していた彼女が今回はやけに大人しい。


 理由を尋ねてみると、「ルーク様の幸せが何より優先されるべきです」と悟り切った顔で答えてくれた。


 もしもイブがフィーネの姑的な御眼鏡に叶わなかったら全力で排除していただろうけど、ユキが気に入る素敵な人物だったので当然フィーネも気に入ってしまったのだ。


「彼女なら仕方ありません・・・・世間的には、ですがね。フフフフフフフ」


 何やら最後に怖い事を吐きながらメイド業に戻ったフィーネ。


 世間じゃない部分はどうなんですか? 正妻は自分だって事ですか?


 もちろんそんな質問が出来るほど俺は勇者じゃないので、それらの疑問はソッと心の奥底にしまった。




 普段通りの食事(まぁそれでも異世界料理なので珍しがっていたけど)を王族に食べさせると言う失態を犯したエルとフィーネは、名誉挽回とばかりに腕によりをかけた夕食を作ると意気込んでいた。


 1時間で10人分のフルコースを用意するのは流石のフィーネでも無理だったらしい。


 なのでフィーネは山へ魔獣討伐に、エルは5時間煮込んだハンバーグを作るために厨房に籠った。



 そして夕食が完成するまでの間、イブにヨシュアを案内するため俺達は自慢の商店街へと移動をしている最中だ。


「この時間だと食堂は混んでるから商店に行こうよ!」


 まだ昼過ぎなので間違いなく戦場と化している食堂へは後々行く事にして、ヒカリの言う通り商店へ向かう俺、イブ、ヒカリ、ユキの4人。


 すでにヨシュアの観光名所にもなっている商店は魔道具開発者のイブなら絶対楽しんでもらえる場所だ。


「ルーク君が作った魔道具も一杯ある?」


 予想通りイブが興味津々に聞いてくる。相変わらず魔道具一筋の人生らしい。


「ってか、ほぼ全部だな。直接作ってない物もあるけど、アイデア出したり、構造考えたり、とにかく売ってる商品すべてに俺が関わってるぞ。

 関わってないのはフィーネやユキが取って来る魔獣素材ぐらいかな」


 つまり人工物には全て俺の知識が活かされている。


 もちろん売ってない物にだって関わってるけど、それは実際に見てのお楽しみだ。



「フッフッフ~。今回なんと! 私が全額お支払いするんですよ~。お金持ちのユキちゃんにお任せですよ~」


 そう言ってパンパンの財布を自慢気に見せびらかすユキ。


 まるで自分で稼いだ金みたいに言っているけど、これは母さんとユウナさんから貰った小遣いだ。軍資金とも言う。


 ユキは給料全部マヨネーズだから一文無しだし、たまに稼いだと思ったら面白そうな物を買うという典型的な『貯金出来ない人』である。


 そんなユキと俺達が買い物に行くと聞いた母さん達が渡してくれたのだ。


 まぁ子供達の欲しい物があったら買ってやれって事だな。


 さらに言えば商店でオススメの美容品を買って来いって事。


 だって格安の雑貨屋で金貨10枚は絶対に必要無いし、お忍びなのでユウナさんが周囲へのお土産を配るってことも無い。


 昼食を食べ終わった2人から金を受け取った時、『わかってるな?』って顔でこちらを見た理由を俺は理解している。



 話題は自然と商店の事になり、猫人族として運動遊具に一家言あるヒカリがオススメ品について語り出した。


「わたしフリスビーが好き!」


「フリスビー?」


「こうやって投げると回転して飛んでいく道具だよ!」


 人通りの多い場所にも関わらず恥ずかしがる様子もなくデモンストレーションを始めるヒカリ。


 イブも人目を気にする性格ではないので、恥ずかしがることなく興味津々にヒカリを見ている。


 日頃運動しないと言うイブだけど、俺の作った魔道具を使ったら外で遊ぶようになるかな?


 そんな活発になったイブを見て、ユウナさんやマリーさんが泣きそうな気がする。前に同世代の子供達と会話しただけでマリーさんが泣いてたからな。


 結婚相手がわかってるなら、いっそ今から俺好みの嫁に育てるべきだろう。


 俺は物静かな女性が好みだけど、実は運動が得意って裏設定も好きだ。魔術と体術の両方が使えて、王都の大会とかに身分を隠して出場。圧倒的な力で優勝した後、実は王女様でした~って展開が大好きだ。


チラ。

「どこかにそんな素敵な女性居ないかな~」


チラチラ。

「俺も魔道具を作ってサポートしたいな~」


チラチラチラ。

「そんな女性と2人きりで世界中を旅するのも楽しいだろうな~」


「・・・・頑張るっ!」


 俺の視線の意味を理解したイブが意気込んでいる。


 真っ白な細腕と握力皆無な手を胸元まで持ち上げてグッと力んだ彼女はとてもプリティだった。


 その非力な身体をどこまで鍛えられるのか、心身共に成長が楽しみである。


「わたしも頑張る!」


 そしてそれを聞いたヒカリも対抗意識をメラメラと燃やし出した。


 君は今でも十分だと思うんだけどな。まぁ目標はフィーネらしいので、あの高みまで辿り着けるとは思えないけど取り合えず頑張れ。


「フッフッフ~。それはつまり私と旅がしたいと言う事ですね~?」


 さらに勘違いしたバカが訳の分からないことを言い出した。


「素敵な女性だって言ってんだろうが!

 そもそもお前、目立つの嫌いだから王都の大会なんて出場しないだろうし」


「え~? 時と場合によっては全然出場しますよ~? 面白そうな展開になるなら目立つことも我慢します~。優先順位を自分で決められる女なんですよ~」


 そ、そうなの?


 でも余計なことはしなくていいの!




 そんな会話をしながら俺達は商店へとやって来た。


 相変わらず人は多いけど、今日は特価日ではないので十分買い物できる混雑具合だ。


「ここね、安売りの日には店員さんが殴られるんだよ。そして空を飛ぶの」


「・・・・みんなそんな場所で買い物してるの? 怖い」


 庶民の生活を想像してガタガタ震えるイブ。


 もしかしたら将来俺と結婚したら自分も殴る立場にならなければいけないと思ったのだろうか?


 いやいや、ここだけだから・・・・たぶん。


「最近は皆さん体を鍛えてるので耐えられるようになってるみたいですよ~」


 でも相変わらず生傷は絶えないと言う。


 そんなユキの発言を聞いてイブは今から体を鍛えることを決意したらしい。


 ま、まぁ・・・・結果オーライって事で。



「「いらっしゃいませ~」」


 商店の扉を潜った俺達は新人レジ打ちの2人に迎えられた。


 忙しくない時、ソーマとトリーの2人は寮長として2階に居るらしい。


 顔が知れ渡っているユウナさんが一緒だったら大騒ぎになっていただろうけど、社交界デビューして間もないイブは無名。可愛い少女だなってぐらいで従業員や客達からスルーされる。


 そんなイブは店内に足を踏み入れた瞬間、数々の発見をした驚きから入り口で立ち止まってしまう。


「この音・・・・魔術じゃない?

 明るい・・・・これは魔道具。

 会計も魔道具、お客さんの持ってる商品も魔道具、あれは珍しい魔獣の素材、天井に浮かんでるあれは何?

 石鹸が一杯」


 情報量が多すぎてパニックだ。



 あのままだと閉店まで動きそうになかったので、ひとまず最も混雑している入り口から離れてオモチャ売り場へやって来た。


 ここならレジ前よりは情報量が少ないからマシになるだろう。


「これはね、オルゴールって言って決まった音が流れ続けるんだよ。こっちは風船って言って空中に浮かぶの」


 やはりと言うかヒカリがオススメの遊具について説明し始めた。


 元々この世界にあった品もあるんだけど俺が改良を加えているので、ほとんどの物が初めて見るイブは説明される度に驚いている。


「これは知ってる。リバーシ。私も持ってる」


 その中にあったリバーシは俺が初めてイブにプレゼンとした思い出の品だ。


 1年経った今でも毎日遊んでいるらしい。


「えっ!? わたしプレゼントもらった事ない!」


 イブがプレゼントを貰った時の自慢話をすると、ヒカリが驚きながらこちらを見てきた。


 そりゃヒカリが5歳の時はドタバタだったし、6歳の時は『要らない』って言ってたから渡したことは無いけど。


「記念日にしかプレゼントを贈らない人はモテない人ですよ~」


「なんだと!?」


 ユキ曰く、モテる人物とは相手の事を考えて記念日など無関係に適切なタイミングで欲しい物を贈るのだとか。


 要求されてから渡すようでは2流らしい。


「くっ・・・・ヒカリ! 何が欲しいんだ?」


 俺は『モテ度』的には2流だけど空気の読める男なのだ。今すぐプレゼントを用意しようじゃないか。



 そんな身もふたもない俺のセリフを無視してイブが動いた。


「これ、私からのプレゼント。これからも仲良くしてね」


「ありがとう! イブちゃんもわたしと仲良くしてね」


 イブが手渡したのは道中でヒカリが好きだと語っていたフリスビー。


 初めて友達から貰ったプレゼントに当然ヒカリは喜んだ。


 なんて事だ・・・・完全に出遅れてしまった。


「ルークさん、ダメダメですね~。

 相手からの度重なるヒントを見逃した挙句、渡す相手にどんなプレゼントが良いか聞くなんて。しかも初対面の人にその機会すら奪われる始末。

 ハーレム王には程遠いです~」


 もう止めて!


 だってネットのまとめサイトで『サプライズなんて必要ないから変なプレゼント貰うより欲しい物を聞いてもらいたい』って書いてあったんだ!


 実用性のある物を贈れって書いてあったんだ!


「『まとめサイト』は何か知りませんけど、それは擦れた大人の考えですね~。

 ルークさんからのプレゼントならヒカリさんは何だって喜んだはずですよ~」


 気持ちのこもったサプライズに意味があると言うユキ。


 うぅ・・・・反論できない。


 しかもこの後にプレゼントなんて渡そうもんならタダのピエロじゃないか。



 結局俺は何もできずに喜びつつ友情を深める2人の少女を眺めているしかなかった。


 普段の感謝の気持ちとか入学祝とか言って渡せば良いのに、というユキの呟きは当然俺の耳には届かない。



 その後、俺は2度と同じ過ちを繰り返さないためヒカリとイブの会話を隅から隅まで聞いて適切な対応を考え続けた。


「ルークが気持ち悪い」

「ルーク君、それはダメ」


 大不評だった。



 ならせめて大人達だけでも満足させようと化粧品を一杯買った。


「その香水は2人には合わないよ」

「お母様、派手な化粧はしない」


 これも大不評だった。



 ならば、と数量限定の珍しい魔獣素材をイブにプレゼントしてみた。


「これ買ったらエリーナちゃん達の美容グッズ買えないよ?」

「私はルーク君から『携帯』をプレゼントされたから要らない」


 またまた大不評だった。



「ルークさん、負のスパイラルに陥ってますね~。最高評価から落ちる事の無いヒカリさん達だから良かったですけど、マリーさん辺りなら疎遠になるレベルですよ~」


 俺はもう何がダメで、何が正解なのかわからなくなっていた。


 やり直してぇ~。入店前から人生をやり直してぇ・・・・。


 選択肢を! 恋愛シミュレーションみたいな選択肢とセーブポイントをください!


「その考え方がもうアウトです~」


 ユキさん、今日ちょっときつくない?




 そんなこんなで店内を満喫しながら俺達はイブの新鮮なリアクションを楽しんでいた。


「・・・・大きな冷蔵庫」


 と、壁一面の巨大冷蔵庫のある食品コーナーで冷えた魔獣肉やジュースを珍しがったり、


「もふもふ」


 と、羽毛布団にダイブしたりした。


 もちろん気になる商品はカゴに入れて購入。ちゃんと洗顔パックや保湿クリームなどの美容品も入っている。



 そしてそんな最新鋭の商店の中でイブが最も興味を示したのはレジだった。



「物質に宿る微精霊を判別する? 全く同じ品は無いのに・・・・一体どうやって?」


 ブツブツ言いながらレジに商品が通って値段が表示されるたびに唸っている。


 たしかにイブの言う通り微精霊だけなら同一の物は絶対に存在しないので商品判別は出来ない。


 でも商品のサイズと形を判断材料に入れることで解決されるのだ。


 フィーネとユキ以外誰にも理解してもらえなかったレジの理屈を説明してみた。


「それは思いつかなかった。なるほど、多角的に捉える事が大切・・・・なら、あの魔道具も・・・・」


 何やら考え出したけど、俺の評価はさらに上がったっぽい。



 プレゼント事件は払拭できたかな?

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