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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
九章 女神降臨
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百十八話 ヒロイン登場

 俺達は今、オルブライト家の玄関でイブのお母さん(名前は『ユウナ』さんと言うらしい)が来るのを待っている。


 庭で訓練中だったヒカリやマリクに見つからない様に遠回りしてコッソリやってきたんだけど、これが何気に楽しかったりする。隠密行動ってワクワクするよな。


 と言う事をイブに話したんだけど、残念ながら共感してもらえなかった。


 むしろ同い年の女の子であるヒカリと早く知り合いたいと言われたよ。


 忍者や工作員に憧れるのは男の子だけなのか?


 いいや違う! ユキだっ! ユキは絶対こっち側のはずなんだ!


 肝心な時に居ないヤツだな。まぁユウナさんを迎えに行っているから仕方ないと言えば仕方ないんだけどさ。後で絶対確認してやる。



 婚約者との価値観の違いにショックを受けていた俺の目に入ってきたのは1台の豪華な馬車。


(あれか? いや、でもワイバーンで飛んできたって言うから馬車なんて用意してないはずだし違うか。

 しっかし豪華だな。あんなコテコテな装飾された馬車とかヨシュアで見た事ないぞ。どこの成金貴族が作った馬車だよ)


 ちょっと俺は乗りたくない派手さだ。


 なんてことを考えていると隣に居るイブがアレだと言い出した。


「女王様が徒歩で来るわけは無いと思ってたけど、ちゃんとこっちで馬車を用意してたのか」


「準備万端」


 このドッキリのために念密な計画を練っていたらしい。



 もちろん馬車は俺達の前に止まる。


 遠くからはわからなかったけどこの馬車、普通のガラスとは違う素材で全く中の様子が見えない。おそらく防弾や防音も完璧なのだろう。要人専用だな。


 そんな高性能な馬車から1人の女性が降りてきた。



「初めまして。イブの母親のユウナと申します。突然の訪問で驚かせてしまったかしら? ウフフ、ごめんなさいね」



 ・・・・女神が居た。


 イブと同じく、くすみ1つない綺麗な金髪だけどユウナさんの方はサラッサラなロングヘヤー、落ち着いた雰囲気があり、穏やかな口調で静かに喋ってるんだけど凛としてるから耳に残る美声、笑った顔もチャーミングかつセクシー。


 素晴らしいっ!


 俺の理想通りの女性がそこに居た。


 この人を守るために騎士団に所属しようかと真剣に考えるほどだ。


 い、いや、待て! 落ち着け!


 見た目でどれだけ騙されて来た?


 美女・美少女は内面が残念っていい加減に覚えるんだ、俺。世界の真理で『容姿と性格は反比例する』って頭に叩き込め!


 ここは冷静になって色々と確認しなければならない。


 そう慎重に・・・・慎重に。


「サプライズですから嬉しかったですよ。それより不躾な質問なんですが・・・・。

 実は性格がきつくて他人から嫌われてるとか無いですか?」


 初対面の女性に対してあり得ないセリフだけど必要な事なんだ。どうなんですか!?


「少なくとも私を含めて3人の王妃は仲良いわよ? 友達も多いわね」


 そんな俺の問いかけに対して彼女は怒るわけでも、呆れるわけでも無く笑顔で答えてくれた。


 なるほど、なるほど。彼女クラスの美女がまだ2人も・・・・くたばれ国王!


 あ、これは反逆罪とかじゃなくて世界中の男の気持ちを代弁をしただけです。逮捕しないでください。たぶんフィーネが暴れます。


 しかしひとまず第1段階クリアか。



 ユウナさんは周囲から好かれる存在らしいが、それだけでは納得できるわけもなく俺は次なる質問をする。


「じゃ、じゃあ下々の物に厳しかったり、自分じゃ何もしないだらけた性格でメイドや料理人から疎まれていたりは?」


 友達が多いって事と、部下に対して気遣いが出来るって事とはまた別問題だからな。


 実は庶民を見下してて『公爵以上じゃないと人間扱いしません。友達は皆さん偉い貴族の方々です』なんてありそうじゃないか。


 まぁ事実だとしても初対面の俺に言うわけもないだろうけど・・・・。


 さて、いかがでしょう?


「国の象徴として、他の模範にならないといけないから大抵の事は出来るわね。

 メイド達とはプライベートでも仲良しで、よく一緒にお買い物とかするのよ? むしろ家事を教えてもらう時は私の方が虐められてるぐらいだわ」


 家事、裁縫、国庫管理、他国との交流、戦闘技能、なんでもござれらしい。完璧超人か!?


 素晴ら・・・・い、いや、まだだ! まだやれるっ!


「な、なら! 実は戦闘狂だったり、甘い物の取り過ぎで太ったのを人のせいにしたり、趣味に没頭してる時はヨダレを垂らしたり、嫉妬深かったり、金にガメツかったり、何かと国を滅ぼそうとしたり、ってのは!?」


 あの人とか、アイツとか、あの少女の事だ。


 全ては残念要員。俺が容姿の優れた人に偏見を持つようになった原因。


「・・・・こ、個性的なお友達が多いのね。もちろんそんな事はありません。

 それより最後の国を滅ぼすと言うのは何?」


 そしてそんな俺からの質問に対して女神様は引いていたけど、素敵な返答をしてくれる。


 あ、最後のは気にしないでください。実はウチのメイドによって何度か滅びそうになっていたり、なんてことはありませんから。



 しかし素晴らしい!


 まさにパーフェクト! パーーフェクッ!!!


「あの・・・・今日から信者になっていいですか?」


 入会手続きはどうすれば良いんだろう?


 もしも握手してもらえたら一生手を洗わないかもしれない。いやお世辞ではなく本当に。なんか幸せになりそうだし。



ゲシッ!



 ってな感じで俺がユウナさんとイチャイチャしているとイブに蹴られた。


 君、アクティブになったな。


「ごめんなさい。私、人妻なの。娘で我慢してね」


 そう言ってユウナさんは隣で待機していたイブを俺に差し出してきた。


 おぉ!? ジョークもいける口だな! ますます好みのタイプだ!


「わかりました。でも義理の息子と仲良くするのは大切だと思うんです、ボク」

 

 『ボク』なんて久しぶりに言ったぞ。


 なんだろう? 意識してないけど内心で好かれようと必死なんだろうか? 年上受けするように媚び売ってるんだろうか?


 まぁいい。でも家族になるのは間違いじゃない。


 イブと結婚したら俺はこの人の息子になる訳で。

 子供ってのは親に優しくしないといけない訳で。

 優しくってのはお手伝いをしたり、ちょっとした気遣いって事な訳で。


 つまり具体的には風呂で背中を流したり、寒い日は湯たんぽ代わりに一緒の布団で寝たり。


 そうだ! 美しさを保つためにマッサージも必要だよな。うん。俺、足ツボとか秘孔とか詳しいですよ!



ゲシゲシッ!



 隣からの攻撃が激しくなる。


「ウフフフッ。イブに嫉妬されない程度に仲良くしましょう」


 今まで知り合った人達では到底出来ない大人な余裕を見せつつ優しく微笑んでくれるイブママ。


 俺の知り合いなら大体ここでボケるか、怒るか、殴る蹴るの暴行が入る。


「ぜぜぜ、是非! あっ、ウチのお風呂は王城より凄いですから一緒に入りましょうか!? きっと気に入ってもらえますっ!!」


 人妻だろうと知った事かっ! メインヒロインが目の前に居るんじゃいっ!!



ドゴッ! ゲシッ! ギリギリギリッ!!



 ・・・・本格的に怪我しそうなので一旦落ち着こう。


「ジョークじゃないか、ジョーク。イブもお母さんみたいに落ち着きを持たないとダメだぞ~。それが大人な女性になるって事だぞ~」


「冗談に聞こえなかった」


 いかん。完全に機嫌を損ねてしまった。早くイブの機嫌取りをしなければ。


 そう全てはお茶目なジョークなのだ。


 俺が好きなのは君だけだぜ。キラ~ン。


「そんなに不機嫌そうな顔するなって。ほら、ほっぺたビヨーン。スマイル、スマイル」


 俺は婚約者がしている『への字の口元』の両頬を吊り上げてニッコリとした笑顔に変える。


 相変わらず色々と柔らかい少女だ。それとチラリと見える白い歯が眩しかった。きっと王族は歯が命なのだろう。


 そんな俺との戯れで機嫌が直ったらしく、いつも通り腕に抱き着いてきた。


 ちょろい。ちょろい過ぎる。


 わたくし、イブの将来が心配です。



 この後、時間があったらユウナさんの少女時代とか聞いてみたいな~。


 イブと同じぐらいコミュ障だったのか、はたまたアリシア姉ぐらいお転婆だったのか。


 ん~、肌が白いから主に室内で生活していたっぽいな。化粧品では到底隠し切れない肌の質感からの予想だ。



 そんな事を考えていると俺は重大な問題に気付いた。


 おっと、いかん。このままだと女神様の綺麗なお肌が日焼けしてしまうじゃないか!


 早く室内に退避しなければ。


「ユバスチャン! お母様に日傘をっ!」


「・・・・それ私の事ですか~? まぁ、これどうぞ~」


 ユキ+セバスチャン(執事)で『ユバスチャン』だ。


 そんな意味のわからない呼び方に不思議そうな顔をしながらも、キッチリ氷で日傘を作り出して手渡す辺り、こんな時だけ素晴らしく空気の読めるヤツ。



「相変わらず凄まじい魔術ですな」



 ユキの魔術を見て突然会話に入って来たこの男性。たしか前のパーティでユキの試合の審判をしていた人だ。


 ユウナさんやユキと一緒に馬車から降りてきたので彼がイブの言っていた護衛なのだろう。


 実はずっと傍に居たんだけど黙って立っていたので俺も気にしなかった。まぁ俺がユウナさんと話し続けていたからってのもある。


 アリシア姉が帰ってきたら王族の方々よりも彼に興味を示すこと請け合いの猛者っぽい雰囲気が漂っている。


 あの時はわからなかったけど、この人、強い・・・・!


 ふふん。俺だって人を見る目が成長しているのだよ。



 ・・・・ごめん、嘘。1人しか居ない護衛だから単純に強いし信頼もされてるんだと思っただけです。


「大丈夫ですよ~。最近見た人の中では間違いなく強い方ですから~。マリクさんよりは強いですね~」


「恐縮です」


 ユキからのフォローを受けつつ、俺達は屋敷内へと入っていった。




 の前に紹介しても問題ないヤツの下へ案内する。


「彼がウチのマスコット兼ペットの竜。名前は『クロ』です」


「グル~?」


 クロが初対面のイブ達に首をかしげ、俺の方を向いて『この人達は誰ですか?』って言ってる気がするので俺の婚約者で偉い人だと説明する。もちろん無礼のないように言いつける。


 頭の良いクロが噛んだり蹴ったりするのはユキ相手でしか見たことはないけど、一応念のためだ。


 そして俺から説明されたクロは「グルッ」と頷いた後、挨拶するようにイブとユウナさんに近寄って会釈した。なんか社会人が上司にする挨拶っぽい。


「よろしく」

「あら、頭の良い子。よほど普段からしつけが行き届いているのね」


 ・・・・普段のしつけ?


 1番関わっているって事ならユキだ。

 調教って意味ならフィーネ。

 子供の扱いって意味ならアリシア姉。

 人間らしさって事なら俺が原因。


 さて誰の影響でこうなったのやら。


 取り合えず1人の人間として扱ってくれれば問題ない。こっちの言葉は理解してるから言えば何でもやってくれる。


 そんな説明を受けてイブが早速話しかけた。


「今度乗せてくれる?」


 どうやらイブは俺と遠出をご希望のようだ。


 もちろんクロは首を縦に振って肯定する。散歩はクロの数少ない趣味なので、尻尾をブンブン振って凄く嬉しそう。


「嬉しい・・・・良い子、良い子」


 希望が叶った事への感謝の印にクロの頭や胴体をグイングインと撫でまわすイブ。


 ちょっと激しいけど嫌がっている様子はないので、幼女の戯れだと割り切って受け入れているのだろう。


 そりゃアリシア姉の相手をしてればこのぐらい何てこと無いか。


 なんとなくだけど、孫を見るお爺ちゃんの目をしている気がする。



 ・・・・もしかして1番大人なのってコイツ?



 そんな寄り道をして俺はいよいよ正念場を迎える。

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