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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
九章 女神降臨
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百十二話 誕生パーティ 6歳編

「ねぇアルディア様、酷いと思いません!?」


「そうですね~・・・・・あっ! 私のアイテムが!?」


 今、俺は6歳の誕生日に神様と会っている。


 元々誕生日の予定としては、昼頃神様と遊び、その間みんなに誕生パーティの準備をしてもらい、帰宅後は夜までどんちゃん騒ぎって感じだったのだ。


 なのに俺が神殿へ行こうとしたらアリシア姉と母さんに捕まって。


「「美味しいケーキを作りなさい!」」


 と来たもんだ。


 数あるお菓子の中でもパーティにはケーキが1番合うと思ったらしい。


 だからもう夕方だけど大量のお菓子を作り置きしてパーティを抜け出してきた。


 みんなが物凄い勢いで食べるから作っても作っても作り置きが出来なくて、こんな時間になってしまったじゃないか!


 まぁ途中参加した従業員は普通の胃袋だったと言うのが大きいな。ホールケーキを1人1個食べたらお腹一杯と言ってお喋りを始めたから。


 なんで俺の知り合いの女どもは際限なく食べ続けられるんだろう?



 そんな俺が来るのを待っていたのか、暇つぶしに1人で遊んでいたのか、は知らないけどゲーム機を取り出した神様と一緒に遊んでいる所である。


 ソフトは生前やり込んだローズピンクとモスグリーンの姉妹が主役の『シスターカート』。主役の2人のイメージカラーが微妙な色合いだけど、公式で理由があるって聞いたような気がする。なんだったかな・・・・?


 で、今回やってるのは、その続編『シスターカート88 SPスペシャル』。通信対戦が熱くて世界中で大流行してるレースゲームなんだとか。


 俺は64まではやってたんだけど、いつの間にか88まで出ていたらしい。俺の知る限り40年以上も出続けている最長のシリーズ作品だ。


 なんだよ88って、外伝とか入れたらもうすぐ100作品いくぞ・・・・半年に1作品以上のペースって出し過ぎじゃね?



 そして俺は愚痴を吐きながら楽しくレース中。冒頭に戻る。


「なんで主役が1番苦労しないといけないんだよ! 喰らえ追尾の赤エンピツ」


「いや~、結婚式や葬式も招いた人が実は1番大変だったりしますし、きっと誕生日も同じですよ~。ミカンの皮ブロックです~」


 そりゃ式は大人達が大金掛けて色々するし、それで生活してる人達も居る訳ですから。


「でも子供の誕生日ってもっと純粋に楽しませてもらえるもんでしょ!? 新機能2つアイテムでもう一発」


「ギャー! ズルいです~。なんで初めてなのにこんなに上手いんですか~。これなら絶対勝てると思ってたのに~」


 神様と会うたびに色々な遊びをするんだけどテレビゲームにおいてはほぼ俺の全勝だった。これだって初めてとは言え昔やり込んだゲームなんだからコツさえ掴めば上達するに決まってる。


「ふぅ、また1位を取ってしまった・・・・」


「うぅ~、あそこで赤エンピツを防げていたら私が1位だったんですよ~」


 いつも通り完勝したけど、俺の話を聞いてました?


「え? 6歳になったから嬉しいな~って事ですよね~?」


 神様はレースに夢中で全然聞いてなかった。




 まぁ遊びはこのぐらいにして本題に入ろうか。


 今日は神様へ相談しに来たんだ。


「神力は何が良いと思います?」


 年に1回だけ使える究極魔術『神力』はどんな願いでも叶う凄い能力だ。


 ただ、それだけに何に使えば良いのか結構悩む。


 この人、バカキャラとは言え一応神様だから良い答えを期待して相談に来たのである。


「人の事をバカって言うルーク君には言いませーん」


 この通り心を読むのだってお手の物。


 拗ねて意地悪を言う神様だけど、俺は事前に『とある約束』をしていたから大丈夫だ。


「え~、さっきのレースでハンデとして『攻撃をブロックしないから、それで勝ったら何でも質問に答える』って約束忘れてませんよね?」


 この神様、下手の横好きのようでゲームが中々上達しない。にもかかわらず負けず嫌いらしく、ゲームの得意な俺が色々とハンデを付ける事が多いのだ。


 だけど俺も負けず嫌いなのでハンデを付ける代わりに色んな要求をしている。


 そして今日はお悩み相談に答えてもらう事になっていた。神様が約束を破るなんてありえない。



「ムムッ・・・・仕方ありません、真面目なアドバイスをしましょう~。

 そうですね~。将来の事を考えると食料の量産体制を整えておきたいですかね~。魔獣以外の食べ物も必要になりますよ~」



 なるほど。たしかに魔獣などの調理方法を伝授する事によって食材が増えているとは言え、農作物などの生産量はそんなに変わっていない。


「なら成長促進の散水機とかですか?」


 単純に生産スピードが上がれば解決しそうだな。


「もっと強欲に行きましょうよ~。いっそ遺伝子組み換えが出来る鍬とか」


 そんな俺の考えを遥かに超える魔道具を提案する神様。


「そんな贅沢言って良いんですか?

 なら『成長促進』『遺伝子組み換え』『安全性』『腐りにくさ』全部付けますよ?」


「良いんじゃないですか~? その辺は精霊さんが寄ってくるとかもありですね。

 あ、でも争いの種にならないようにはしてくださいね~」


 俺の言った事は全て精霊さんが何とかしてくれるらしい。凄いな精霊。


 争いについては言われるまでも無い。


 でもどうしよう・・・・伝説の勇者っぽく『印を持つものだけが扱える』とかにしようか?


 鍬だけど。農業しか出来ないけど。


 たぶんフィーネかユキならそんな制限魔術も使えるよな。




 いや~、有意義な会話が出来た。これだけ充実した時間を過ごせたのは5歳の誕生日以来じゃないだろうか。


 大体アニメや漫画の話をするだけだから必要ないと思って語っていないけど、俺は週1ぐらいでここに通ってるからな? たぶんリリやノルンより多く神様と会ってる。


「たくさん知ってるのにルーク君が聞かないだけですぅー。タメになる話も出来ますぅー」


 再び拗ね始めた神様だけど、まぁ否定はしない。


 別に全知全能になりたいわけじゃないし、まだまだ試したい事もあるからイチ貴族に必要ない知識なので聞いてないってだけだ。


「もし行き詰ったらその時は教えてくださいよ。

 神様はアレです、RPGのガイド役です。もしくはラスボスだけど最後の最後までは親切にアドバイスくれる妖精みたいな」


「ほほぅ~。つまりこの物語になくてはならない大切なポジションと言う事ですね~?」


 まぁ・・・・たぶん・・・・・・いや大抵の事はフィーネやユキが知ってるから必要ないかもしれないけど。


 しかも最後には裏切って俺の前に立ちはだかるんだろ?


「フフフ~。私のヒロインとして活躍に全宇宙の皆さんが期待してますよ~。困ったことがあったらいつでも来てくださいね~」


 上機嫌になったアルディア様に別れの挨拶をして俺は神殿へと戻った。




 気が付くと俺は時間帯のせいもあるだろうが割と人も少なくなってきた神殿の大広間に居た。


 もちろん貴族御用達の個室じゃない。毎週大金払ってあんな無駄な儀式やってられるか!


「さて帰るかな」


 今後の方針も決まったし、パーティ第2弾といきますか。




「あらルーク、お帰りなさい」

「早く新作ケーキ作りなさいよ!」

「・・・・・・チーズケーキ、まだ?」


 フィーネとユキの作る既存ケーキも良かったけど、やっぱり新しいお菓子を食べたいと駄々をこねる女性達。


 お前らどんだけお菓子を食べ続けてんだよ。明らかに自分の体積より食べた量の方が多いだろ。


「「「甘いものは別腹」」」


 いや限度があるだろ・・・・少なくとも5時間以上食べ続けられるのは異常だぞ。何がアンタ達をそこまで駆り立てるんだ?


 あれだけ作り置きしたケーキは当然無くなっていて、フィーネとユキによるお菓子の量産が続いていた。



 でも神殿に行って休めたし、今更主役がどうこう言うつもりも無いから作るけどさ。


「わかったから、作るから!

 ただし! 俺への感謝の気持ちを込めたプレゼントを受け取ってからだ!」


 まさか散々お菓子を作らせておいて「プレゼント? 5歳の時にあげたでしょ?」なんて言わないよな? こっちは結構楽しみにしてんだぞ?


 すると俺の言葉を聞いた女性陣が一斉に解散した。



 え? マジで無いの? ・・・・ね、ねぇ嘘だろ?


 誰か答えてくれよ!?



 母さん! 息子がプレゼントを楽しみにしてるんだぞ!?


「・・・・・・5歳の時にあげたから良いかなって」


 俺のお陰で繁盛してる食堂のみんな!


「・・・・・・最初だけパーティ料理作ったニャ」


 作った、ってか食堂から持参した感じだったけどな。しかも最初のツマミとしてから揚げを人数分。


 足りないよ・・・・全然足りないよ。そもそも俺は料理作ってたから食べてない。


 ま、まぁ、リリとエルは料理提供で良しにしよう。


 他のみんなは?


「・・・・スラムに配るつもりで持ってきた古い服をあげるにゃ」

「よ、良かったね! 前からお金払ってでも欲しいって言ってたじゃん。私も耳あて新しいの買ったからあげる」


 ヒャッハー!! 猫人の服だぁぁああーーーーーっ!!!!



 って違うよ! プレゼントってこういうんじゃないんだよ!


 百歩譲ってコレで良しとしても、なんで洗濯して綺麗にしてんだよ! ふざけんなっ!!



「ルークはそんなにプレゼント欲しいの?」


 俺と同じくこのパーティの主役であるヒカリは「わたしは別にいらないけど」と達観した意見を言う。


 ま、まさか・・・・誰も誕生日を祝う気がない?


 え? なんか美味しい物が食べれるパーティぐらいな感覚なの?



「大丈夫ですよ。ルーク様のプレゼントは私が用意しています」


 フィーネ! やっぱり俺の事を想ってくれるのは君だけだ!!


 何かな、何かな~? 前回は凄い腕輪を貰ったから期待しちゃうぞ~。



「こちらです」



 そう言ってフィーネが取り出したのは、普通の料理。


 ・・・・・・ナニコレ?



「ロア商会が経営する農場で初めて取れた果実です。

 ルーク様が以前から言っておられたカカオから作ったチョコレート料理ですよ」


 ・・・・・・・・あ、あぁ、アレ量産できるようになったんだ。


 今まで地方からユキの転移便で取り寄せてたんだけど、ウチでも作れるようになったんだな。おめでとう。


 早速いただこうかなぁ~。


モグモグモグ。

「うん、美味しい・・・・。しょっぱくて涙の味がする・・・・でもとても、とっても美味しいよ・・・・・・・うん・・・・・・・・美味しい」


 たぶんフィーネに悪気はない。


 俺が前々から『作物を量産できたら嬉しい』的な事を言ってたから、プレゼントにしたら喜ぶと思って持って来てくれたんだ。


 でも、そうじゃないんだよ。


 誕生日プレゼントって、もっと・・・・こう・・・・さ。




 誕生日に過度な期待をするのは止めましょう。勝手な思い込みは傷つくだけです。


 俺が苦労するだけだし、次の誕生日パーティは7、8、9歳を飛ばして10歳にしようかな。


 こうして人は誕生日を祝わなくなっていくらしい。


 そしてそれが大人になると言う事なのだろう。

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