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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
八章 ユキ物語
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閑話 魔族言語

 ユキの思い出話を聞いた俺は号泣した。


(コレットさん・・・・ユキ、いい友達を持ったな)


 たぶん彼女と出会わなければ、ユキは『珍しい自我を持った精霊』止まりだったんだろう。


 でも少女と出会えたからこそ、こうして楽しい精霊生活を送れているのだ。



 と、ここまでなら良い話で終わってたんだけど、この直後ユキの正体を知って落胆した。


「お前が精霊の王? ふざけんな! なら俺は神か!?」


 数千年に1度って転生者より確率低いんじゃないだろうか? そんな希少な存在がコレ?


 普段マヨマヨ言って遊んでばかり居るおバカキャラが精霊王・・・・だと?


 一刻も早く俺の感動を返せ。


 大体「ほら、気品溢れてるでしょう? 王の威厳あるでしょ~?」と自慢げな顔をしているのも腹が立つ。


 『殴りたいこの笑顔』リターンズだ。


「そもそも最初に会った時に『人として生きる精霊に会った事がない』って言ってたじゃないか。数千年に1人なら居るわけないだろ?」


「え~? それだけ長生きしてる精霊王さんだって居るかもしれないじゃないですか~」


 まぁそうだけど・・・・。


 精霊王は数千年の周期で転生を繰り返してるから1人しか居ないってのが俺の考えだ。もしくは神様に昇格して次の精霊王が生まれるとか。


 どちらにしても俺が生きてる間にはユキしか会わないはずだからどうでもいいか。


 これフラグじゃないぞ? もう出てくるな。



 しかし精霊達のトップであり、代表が『コレ』か~。


「はぁ・・・・」


「あっ! 私を見て溜息つきましたよー!? 絶対バカにしてますよー! むきーっ!」


 何がむきー、だ。当然だろ。



「あれ? フィーネには精霊王と話す時の名前があるけど何に使うんだ?」


 ふとそんな話を思い出した俺は隣に居るフィーネに聞いてみた。


 つまりこの場合ユキと話すときに必要ってことなんだろうけど、名前があっても別に何ができるわけでもないだろ?


「あれは言ってしまえば『友達の証』ですよ。

 一部の種族にはこうして精霊王と会った時に、信頼を得られるように代々伝わっているのです。精霊王にとっても自分の過去を知る貴重な機会ですし、秘密が無い分友達として接しやすいですからね」


 ・・・・絶対フィーネはエルフの王族、ってか最上位の存在ですよね?


 しかしフィーネもユキもその辺の事を詳しく話すつもりがないのか、この話はここで終了した。




 魔界について感想を言うなら、自称王子様のジークさんは絶対に認めないって事か。


 たぶんジークさんがセイルーン王国に来るときはウチにも連絡があるんだろうけど、俺はそのパーティに参加しないと心に決めた。


 だってロクな事にならないってわかるじゃん! むさ苦しいオヤジと会って何すんだよ!?


 イブと一緒にドン引くぐらいしか出来ないぞ。


 クーさんやケロちゃんには会ってみたいけど、俺が魔界に行ったら絶対トラブルに巻き込まれるから止めておこう。


 遊びに来てもらう分には大歓迎だし、クーさんなら転移ぐらい出来そうだけど、無理なのかな?




 そしてユキの魔界話を聞いた俺は、日々の練習の成果を披露しようと思い立った。


 ユキとイブが魔族言語を話せると聞いて「俺だって話せるぜ」と自慢したのだ。


 突然だけど俺は魔族言語をマスターしている。


 入学前から自主的に色々勉強してたんだけど、基本的に前世の知識が使えるのですぐにやる事が無くなって何となくアルディアにしかない別言語に手を出したわけだ。


 一部の魔族しか使ってないらしいけどいつか役立つだろうさ。


 でもこれで俺は全世界を股にかけた貴族と言えるな。


 勉強時間になると居なくなるユキは知らないだろうから、さぞビックリする事だろう。



「じゃあテストしてみましょう~」


 ユキがそう言い出したので受けて立った。



「じゃあ行きますよ~。

 『はじめまして、私はユキと言います』」


 ふむ、基本的な挨拶だな。


「そんな簡単なので良いのか?

 『はじめまして、俺はゴキブリです』」


 どうだ! 驚いたか!


ブルブルブルッ。

「・・・・っ!」


 なんか隣でフィーネが震え出した。間違ってたかな?


 ドンマイ、ドンマイ!



 俺の間違いを気にすることなくユキが会話を続行する。


「まだまだ~。

 『今宵は私主催のパーティへようこそ。どのような食べ物が好みですか?』」


 長文だけど何とか理解できる。


 たぶんパーティに出席した時の話で、好みについて聞いてるはずだ。割と実用的な会話を想定してるな・・・・ユキのくせに。


 なら昨日食べた『から揚げ』とか好きだ。


「え~。

 『俺は大きな胸が好みです。昨日も沢山いただきました』」


ガタガタガタッ。

「っ! っ!!」


 さらに震え出すフィーネ。また間違ってたらしい。


 くっ、発音か? 発音が悪いから伝わってないのか? 微妙な舌の動きかもしれない。


 連続で失敗したことにより俺の練習は無と化した。


 流石のユキも生暖かい目で憐れみを込めて見てくる。


 くっそぅ~。それなりに話せてるはずなんだけどな。



 でも会話自体は続けるらしい。


「それなら~。

 『お隣の女性は誰ですか? あなたの家族ですか? 恋人ですか?』」


「っ!? ・・・・良い質問ですね」


 隣のフィーネの事を聞いてるっぽい。フィーネが一瞬驚いた後、真剣な表情でこっちを見つめてきた。


 俺の答えは決まってる。家族であり、メイドであり、大切な女性だ!


「今度は間違えないぞ。

 『彼女は俺の性奴隷です。いつも下の世話をさせています。大変素晴らしい技術です』」


 フィーネも聞いてるから普段言えない俺の感謝の気持ちを言葉にしてみたんだけど。


ブルブルブルっ。

「ぶふっ!」

「・・・・・っ。・・・・っ」


 今度はユキが噴き出して、フィーネは幸せそうな表情で悶えている。


 お、おいフィーネ・・・・悶えすぎてビクンビクンしてるけど大丈夫か?


 それにしてもおかしい。


 正しい言葉になっていたならフィーネの嬉しそうな顔は理解できる。


 でもユキが爆笑してるのが気になったので、今までの会話を説明してもらった。



 ・・・・・・もう標準言語以外は絶対使わない。


 なんでフィーネが喜んだのか深くは考えるな。




 母さんが少し話せるようなので会話してもらった。


 どうやら若かった頃に魔界で武者修行する一環として覚えたらしいけど、家族に止められて計画は潰されたと言う。


 まぁどうでもいい・・・・アリシア姉が影響されなければ。


「では行きますよ~。

 『あなたの家族構成を教えてください』」


「フフフ、簡単よ。

 『言う事を聞く夫、手の掛からない自慢の長男、私に似た長女、そして次男のゴキブリです』

 どうよ?」


 フィーネに同時通訳してもらう。


 俺、泣いていい? ま、間違えただけかな?



「ふむふむ。

 『彼はゴキブリなのですか? 仲間はずれですか?』」


 止めてユキ、俺の心が砕け散りそうだから・・・・。


「え? ルークの事?

 『その通りです。彼は家族全員からそのように思われています。そして彼自身も受け入れています』」


 いやいやいや、そんなわけないじゃん。なんで受け入れるって思うのさ?


 何この会話・・・・。



「ほほぅ~。

 『彼は獣人が大好きですが、どう思いますか?』」


 この流れで会話が成立するとは思えないけど。


「またルークの事よね?

 『私は失望しています。ルークの変態趣味には呆れる他ありません。今すぐ止めてもらいたいです。そのためにまず小遣いを減らしてグッズの購入を防ぎ、ニーナやヒカリなど仲の良い獣人との肉体接触を禁止しようと思います』」


 なんでだよ!?


 会話が成立するどころか、物凄い具体的に喋れてるじゃん!


 あと、ルークって普通に言ったよな!? なんでさっきゴキブリって単語が出たんだよ!



 今回の教訓。


 自信のない言葉は使わないようにしましょう。見栄を張らず、出来ないなら出来ないと言いましょう。


「ロクな事にならないな。恥かく前にテストして良かった。誰かに聞かれてもちょっとだけ理解できるって言っておこう」

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