表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十四章 神獣のバーゲンセール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1651/1659

外伝46 友達ブルー

「これからアンタ達が相手にするのは、自分が生きるためなら、自分が強くなるためなら他の命がどうなろうと構わないっていう身勝手の極みよ! アンタ達も負けないぐらい身勝手を押し付けなさい!」


「「「おう!」」」


「これまで何のために命を喰らって生きてきたの!? 今日勝つためよ! 人生に役に立たないことなんて1つも無いわ! 使い道を思いつかないだけ! 命懸けで自分を成長させなさい! 今生で足りないなら前世でも来世でも世界でも他人でも使って魔獣に力を認めさせるのよ! 強い肉体には強い精神が宿るし、強い精神には強い肉体が宿るのよ!」


「「「おう!!」」」


「生きるか死ぬかの瀬戸際でこそ人は成長するわ! ここに居るってことは死ぬ覚悟出来てるわよね!? 成長するためなら死んでも構わないわよね!?」


「「「いやぁ、それは流石に……」」」


 過剰表現でもなんでもないそれは勢いで押し切れるものではなかった。


 ここで拒否しなければ間違いなく実行される。


 山籠もりに向けての心と体の準備を始めた生徒達は、身勝手の化身のようなアリシア=オルブライトに声を揃えて異を唱えた。


「というわけで持ち物は全部置いておきなさい」


 が、彼等の意見をアリシアが聞き届けるかどうかは、また別の話。


「なんでよ? 武器や魔道具は人類の培ってきた知識と技術の結晶でしょ。魔獣に力を認めさせるならそういうものこそ見せつけるべきじゃない」


 が、説明もなく身を守る術を取り上げようとするアリシアに従うかどうかも、また別の話。


 ミスティは自分が思っていたものとはかけ離れた彼女の方針に抗議した。


「たしかにそれで認める魔獣もいるでしょうね。でもそれ以上の魔獣に呆れられると思うわよ。お金なんて人間社会でしか通用しないもので手に入れた品を自慢されても、それで自分をどう成長させてくれるのか謎じゃない。人類にしか使えない力かもしれないわけだし――」


(シュシュ……シャッ、シャシャッ)


「……使ってるぜぃ。めちゃくちゃ軽やかに」


 話の最中。根っこを足のように動かして一同の眼前にやってきた花が、2回お辞儀して何か合図をしたかと思うと、葉で握ったナイフで剣舞を始めた。


(……チン)


 機敏に動き続けること数秒。最後にナイフをクルクルと3回転させた花は、空想上の剣士の如く絵になる様子で背負った鞘に仕舞った。


 明らかに日頃からやっている動きだ。


 そしてそれが誰に対しての言動(?)かも明らかだ。


「話の、邪魔を、するんじゃ、ないわよおおおっ!」


 一応最後まで見守ったものの、「魔獣は道具を使えないし惹かれない」という自分の発言を全否定しただけのオジギソウの胴体を掴んだアリシアは、バックホームする野手と見紛うばかりに勢いよくレイクに投げつけた。


 剣舞を披露するだけならともかく、その後の『余裕ですけど何か?』と煽るような雰囲気が良くなかったのかもしれない。


「おかえりなさい。オーちゃん」


(シュシュ)


 液体のようにレイクの体に入り込んだオジギソウは、彼女の右手から手(葉っぱ)を出し、いい仕事したぜと言わんばかりに揺らした。


「あれは例外よ。レイクから分離した元植物だから武具を扱えて当然なの」


「……ねぇ。これって納得していいところ?」


「さ、さぁ……?」


「嫌ならレイクと語らいなさい。私は納得した人と話を進めるから」


 ミスティ達がどちらを選んだかは言うまでもない。



「必要なのは自分自身が認められること。人類の力を示しても意味ないわ。それどころか距離を置かれたり敵視されるかもしれないじゃない。上に行けないなら自分を下げるしかないの。ダンジョンに放り込まれるか持ち物を全部置いていくか、2つに1つよ」


「ダンジョンはやめておいた方が良いですよ。ダンジョン内で食物連鎖が完成していますし、魔素溢れる環境で生き抜くことが心と体の成長に繋がります。言うなれば生まれながらの戦闘民族の町。現状に不満を抱いていない魔獣の協力は見込めないでしょう」


「安全って聞いて来たんだけどなぁ……王都周辺で魔獣と戯れる大変だけどやりがいのある仕事って触れ込みだったんだけどなぁ……」


「だよねぇ。他には『国の危機を救えるのはキミしかいない!』とか」


 レイクの助言によって選択肢が1つになったことを悟ったレトは、同じく元ヨシュアレンジャーのフクと共に、文句を言いながら差し出された籠に所持品を入れていく。


 アリシアの性格的に致命傷を負うまでは助けに入らないこともわかっている。


「そんな怖がらなくても大丈夫よ。世の中ってそんなに理不尽じゃないから。試行錯誤する猶予ぐらいはあるわ」


「今まさに理不尽な経験をしたばかりだけどまぁそれはいいわ。でも世の中が理不尽じゃないって部分は否定させてもらうわよ。さっきも言ったけど死ぬのは御免だわ。毎日のように死人出てるじゃない。それなりの準備してないと確率は跳ね上がる。まさか100人に1人成功したらいいなんて考え方をしてるんじゃないでしょうね?」


 2人と違ってアリシアと知り合ったばかりのミスティは、指示に従わず、申し訳程度のツッコミをして捨て駒にされているかもしれない現状に苦言を呈した。


 考え方や過程はどうであれ装備品を身に付けずに死んだら同じことだ。


「それは努力が足りないからよ。自分の力を理解してないからよ。正しい選択をするんじゃないの。選択したものを正解にするの。それが出来てない連中が命を落とすのよ。貴方達は違うわ」


「どこから来るのよ、その自信は……」


「勘よッ!」


「「「…………」」」


 守る気はないが死なす気もない。


 何の根拠もないが何故か大丈夫と思えてしまうアリシアの様子に一同は戸惑う。


「で、でも、そうやって死んでいった知り合いが多い私としては、やっぱり別の方向で行きたいんだけど……神獣化の成功例は少ないんだからそのやり方が正解とは限らないわけでしょ? 色々試した方が良いと思うのよ」


「まぁそうなるわよね」


 ミスティがアリシアの納得した様子にホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。


「私、考えたのよ。なんで人間は努力しないのかって」


「あ、姉御……?」


 ニンマリとするアリシアにひきつった笑みを浮かべるレト。こういう時はロクでもないことが起きると過去の経験からわかっているのだ。


「金や権力で手に入れた力を頼るからよ! 私の生徒に甘えは許さないわ! アンタの武具の耐久力あまえがどの程度のものか、私が調べてあげるわ~っ!」


「や、やめてええええ!!」


 数分後。アリシアの魔法剣によって破壊の限りを尽くされた愛刀と防具を前に、絶望する自称美少女冒険者の姿があった。


 苦楽を共にした相棒を失って嘆く彼女に「余裕で修理出来るけど? 何ならもっと良い素材で新調する?」と告げてトドメを刺すのは、このさらに数分後のことである。




「……ハッ!? い、生きてる……俺生きてる!?」


 目を覚ましたレトは、気絶中に脳内を駆け巡った酷い走馬灯を思い出して震え、空の青さと空気の美味しさから生を実感してさらに震えた。


「くまぁ」


「やったぜいいいい! 俺は生き延びたんだああああ!!」


 そして地面から這い出し、全力で喜びを表現し始めた。


「くまぁ?」


「ひゃっほーーっ!! 俺は自由だああああああああ!!」


「くまぁ!」


「……いや、さっきから何だよ、お前。勝手に喜び分かち合うなよ。あといくら子熊でも『くまぁ』って鳴くのは違うだろ」


 急に冷静になったレトは先程から自分の周りでぐるぐるしていた子熊に触れた。


「そいつ、アンタを餌と勘違いして食べようとしてたのよ」


「助けてくれたのかと思いきやまさかの外敵!?」


「ぐまぁ(ニヤリ)」


 いつの間にか傍に居たアリシアからもたらされた情報と、それを裏付けるかのように黒い笑みを浮かべる子熊に戦慄したレトは、慌てて2人から距離を取った。


「い、いや、まだ決めつけるには早いぜぃ! 気絶してる内に仲間にしてて、最初だけツンケンしてる可能性もあるぜぃ! 俺孤児院で働いてるし! 子供に好かれるタイプだし! 溢れ出る父性に人も魔獣もメロメロだぜいっ!!」


「親熊はアンタが気絶してる間に鍋にしたから新しい保護者を求めてるだけよ。親を倒した私に媚び売るためにアンタを殺して自分の力をアピールしようとしたの。そのしたたかさ嫌いじゃないわ」


「想像の何百倍も酷い状況だった!?」


「私達はそうやって生きてきたんでしょ。その事実から目を逸らす方がどうかしてるのよ。食に感謝してない証拠じゃない。現場を見せなかっただけ優しいと思いなさい」


「優しさのハードルが低すぎて引くレベルだぜぃ……」


「ぐまぁ」


 共感したように頷く子熊。


 もし言葉を理解しているとしたらアリシアの発言も相当アレなのだが、気にするだけ無駄なのでレトは一切合切スルーして話を進めた。


「こいつは神獣候補として俺が育てるってことでいいのか?」


「そうね。アンタはフクみたいに属性が得意ってわけじゃなさそうだし、仲良くなることで力を引き出す自発型でやってみなさい」


「え? ってことはもうあの地獄は終わりってこと? 俺が言うのもなんだけどテキトー過ぎね? 生かさず殺さずがモットーの姉御はどこ行っちまったんだよ?」


「私のことをなんだと思ってるのよ。そんなことしたことないわよ」


(((え……?)))


 レトのみならず、足元の子熊も、彼のサポートを担当していたピンキーも、フクに精霊術の何たるかを指導しているパックも、遠くでミスティを見守っているイーサンも、そこら中を漂っている精霊達まで全員が頭上にハテナを浮かべた。


 ただそれを表に出せた者は居ない。


 伝わらなければ無いのも同じ。アリシアは話を続けた。


「出来ないのにいつまでも粘るのはバカのすることよ。時にはキッパリ諦めることも大切なの。思い返してみればアンタ魔獣に近づくの上手かったし、この山の魔獣達と仲良くなってみなさい。その子熊が神獣になれなくても他の魔獣がなれるかもしれないわ」


「散々追いかけまわした直後に仲良くしようって言ってもなぁ……あ、いや、素晴らしいアイディアです! 喜んでやらせていただきます!」



 そしてレトは魔獣と『友人関係』という形で対等な立場を得ることになる。


 フクのように得意属性を伸ばしたり、ミスティのように共闘する実力こそないが、彼の真似をすることで自ら考える能力に長けた子熊達は2人の相棒と変わらぬ活躍をする……ようになるのはしばらく先のことである。


 教育というのはそんなに甘くない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ