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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十四章 神獣のバーゲンセール

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千三百六十九話 ダークエルフ7

「さて……」


 ダークエルフの王子ことトレント氏の紹介と各種考察が一段落して数秒。


 次の話題を切り出す発言と共に威厳を宿す眼光をこちらに向けてきた“それ”は、スッと右手の人差し指と中指を立てた。


「ルーク=オルブライト。貴様に残された道は2つだ。

 1つ目は、目の前で困っている者達を助けて未来を捨てる道。

 2つ目は、人類の未来のために今を捨てる道。

 そして、どちらも選ばず傍観者となる道」


「今3つあったぞ」


「ふっ……貴様ならそう言うと思っていたぞ。第四の選択肢『己の力と周りの者達を信じて困難に立ち向かい、大勝利を手にする』を選ぶとな」


 “それ”ことユキは自然な流れで小指を立て、まるで最初から立っていたかのように薬指も同時に追加し、己の失敗をなかったことにした。


 さらには、選んでもいない返答に勝手に満足し、押し付けてくる。


「何もかもが違う。強い遺伝子を求めなくても強者サディストになれる方法をダークエルフ達に教えるか、一旦確定情報をまとめて戦闘都市実現に向けた議論や調査をお偉いさん方にしてもらうか、知らなきゃ良かったってなる覚悟で黒海の主と交渉したお前から情報を引き出すかって話だろ」


 無駄に大仰な進め方をしているだけで脱線ではないところが一段と鬱陶しい。


「どうせ全部するのに悩む必要あります~?」


「お前が言い出したんだろうがッ! ダークエルフ達は話が出来る状況じゃないし、1000年祭と防壁の件でバタついてる王都は物資や人材を集めたり現地調査出来る状況じゃないから議論しても仕方なくて、話を聞く一択なのに! あと急に素に戻るな!」


「私が何をしようと私の勝手じゃないですか~。そして第四の選択肢を除外しないでください。『全部』とは種族の衰退から開拓までルークさんがすべて解決するって意味ですよ~」


「秒で手のひら返すな。俺にも選択権を寄こせ。俺の勝手だろって言わせろ」


「与えるかどうかも私の勝手です~」


 なんという我がまま。なんというジレンマ。


『私はオルブライト家に一任した方が良いと思っているよ。建築や周辺住民との交渉といった貴族の仕事が必要となる可能性が高いからね』


「すぐに使える流通ルートを確認します」


 釘を刺してくるユキと、退路を塞ぐガウェインさんと、何もしないフィーネと、時折体をビクンと跳ねさせながらも一族の復興に心躍らせ(ているような気がす)るダークエルフ達と、やりがいのある仕事を任せてもらえて光栄だと言わんばかりにやる気に溢れる父さんとレオ兄。


 四面楚歌だ。


 ただ諦めるわけにはいかない。


「俺だってやりたいこと沢山あるんだよ。忙しいんだよ。今取り掛かってる地下鉄はどうするつもりだ? ステーションの視察や使えそうな魔道具開発も依頼されてるんだぞ? ダークエルフの件は? 神獣化は? お偉いさんとの議論は? 好き勝手にしていいもんなんて1つもないだろ?」


「全部やりなさいよ」


「ブラック企業ですら諦めざるを得ない理屈を平然と押し付けてくるだとぉ!?」


 などとふざけている場合じゃない。


「ルナマリア。やっぱりお前は何もわかってない。ダークエルフの件だってそうだ。マヨネーズを無駄にした説教がてらフィーネが厳しめにやり方を説明したからこうなってるだけど、フィーネがやらなかったら自分がやってたって言ってたな」


「な、なによ……そりゃあフィーネほどじゃないけど、トレントと同じようには出来たわよ。それとこれの何が違うっていうのよ」


「全然違うわ。お前のは『この力があれば一族の力を取り戻せる』って思われてる。それじゃあダメだ。フィーネがやったみたいに、願望すら抱かせないほどの力の差を見せつけて、ようやっと納得するんだ。例え弱体化の原因がわかったとしても、こいつ等はルナマリアやイヨを里に連れて帰るのを諦めないだろうよ」


 フィーネの実力の一端を垣間見てグッタリしているダークエルフ2人の代わりに、変態ヘタレ王子が申し訳なさそうに頷く。


 この反応だけでルナマリアよりフィーネの方が怖いということは一目瞭然。嘘をつくより気持ち悪がられた方がマシだという固い意思を感じる。


 単純な実力差もさることながら、ルナマリアでは出せない本物の圧を感じさせたフィーネは、流石だ。


「本物も何もあれは本気で怒ってたでしょ……」


 まぁね。


 特製マヨネーズの分離に失敗した2人に失敗した理由を教えてやったのに、自尊心によって「そんなの出来るわけがない」「もう俺は戦えない……少しでも圧を感じたらこの恐怖が頭をよぎる……」とロクでもない言い訳をしてしまい、


『おや? まさかとは思いますがルーク様の指示が間違っているとおっしゃりたいのですか? 私のせいで命を落とすとおっしゃりたいのですか?』


『『ノー! サー!』』


『口ではなんとでも言えます。行動で示しなさい。これまで通りに振る舞い、これまで以上に努力し、教育してもらえたことに感謝しながら生きなさい』


『『イエッサー!!』』


『だからと言って口にしなくていいわけではありませんよ』


『『ご指導ご鞭撻を賜り、ありがとうございましたッ!!』』


 と、喜びの涙を流しながら深々と頭を下げたのが、大体今から1分ほど前のこと。



「まぁルークが全部の仕事を担えるかどうかは一旦置いておいて、話を進めてみようよ。計画を立てる前から諦めてるだけかもしれないし、みんなで考えれば良い案が浮かぶかもしれないよ」


「やらせる前提で話を進めるな。やたらめったら有能扱いするけど、俺が知ってる情報はほぼほぼ出したからな。さっきから語ってるのは考察でしかないし」


 とネガティブなことを言いながらも、今抱えている問題の数々を解決したくないわけではないので、俺は求められるがままに話を進めた。


 ガウェインさんが気になっている黒海の主について。


 これが俺が持っている最後の確定情報だ。


「試験官を倒せる野蛮な輩もいるはずなので、そいつ等が調子に乗らないように年に一度、祭りの一環として黒海の主《イリーガルシードラゴン》に顔を出してくれるようユキを通じてお願いしたんですよ。『そんなに自信があるなら挑んでみろよ』ってなるでしょ?」


『なるほど。抑止力というわけだね』


「はい。なんでも海洋生物のクセに陸上の動物の肉に目がないらしくて、牛とか馬とか魔獣以外の肉の塊が食べられるならと、簡単にOKが出たそうです」


『あ、悪用されないか不安になるレベルだね……』


「し~んぱ~いないさ~♪」


 と、ここで色々な意味で心配になるユキの割り込みがおこなわれた。


 ここまでは聞かされていたので俺も説明出来るのだが、やりたがっている者から奪うほど話したがりでもないので、このままユキに任せるとしよう。何か新しい情報が出るかもしれない。


「ガルシーさんが好きなのは丁寧に処理された動物肉ですからね~。偶然流れ着いた死骸には見向きもしませんし、中途半端なことをすれば逆鱗に触れます。期待を裏切る過大広告ほどイライラするものはありませんからね。都市の海辺から放り込まれた人と魔族と魔人の手で加工された100kgを超える肉以外は無視するようにお願いしました」


 イリーガルシードラゴンってそう略すんだ……。


 それはともかく大体注文通りだ。


「なので、祭りの時期以外はどこかの王城で調理を担当しちゃうぐらいの料理人を育ててください。そうすることで魔族や魔人、魔獣なんかも自然と社会に馴染めるはずです。人間の料理人も彼等に負けないようにいっそう努力することでしょう」


 これは願望込みの提案。人型にはならないorなれないけど上手に肉を捌ける神獣とかも居るかもしれないしな。



「ただですねぇ……」



 などと補足説明をしていると、ユキが不穏なセリフを吐いた。


 この後に否定的、もしくは問題提起する発言以外が出たシチュエーションを俺は知らない。


「黒海って魔の海とも呼ばれている天然のダンジョンじゃないですか~? 無謀にも挑んで命を落とす生物が後を絶たないじゃないですか~? そうなるとさっき言った中途半端な肉が量産されるわけですよ。

 海の底にいるガルシーさんの目に入る前に大体はその他の海洋生物に食べられますけど、彼等が『うまかったわ~』と感想を述べてそれを耳にしたガルシーさんをイラつかせますし、捧げものを間違って食べられる可能性もゼロではないわけですよ。逆に命を落とす生物がいなかったら、物珍しさから捧げものを食べてしまったり、飢えて地上を襲うかもしれません」


「なら定期的に食料を提供……はしない方が良いだろうな。食物連鎖が崩れかねないし、呼び出すためのものかどうかもわからなくなる」


「はい~。実は漁業も迷惑してると言ってました~」


「まぁ地産地消で生態系が成り立ってる連中からしたらそうだろうな」


「色々話し合った結果、黒海とは別に海をつくるということで、双方納得しました。大陸側の普通の海を『内海』、黒海を『外海』として、別の生態系を生み出しましょう」


「ですって。どうですか?」


『そんな軽々しく言われても困るのだが……海とはそんな簡単につくれるものなのかね? 仮につくったとして生態系に影響はないのかね?』


 全員から注目されたガウェインさんは、冷や汗を垂らしながら質問を投げかけてきた。


「「「さぁ~?」」」


 俺、ユキ、ルナマリアの自然博士トリオが揃って首を傾げる。


『フィーネさんはどうかな?』


「膨大な労力を要しますが可能です。黒海は闇の力を長年取り込んだことで生まれた特異点。戦闘都市を挟みさえすれば影響を受けず通常の海になるでしょう。各地への影響ですが、消費された魔力で補填されるのでほぼないかと。土を削って水を増やすので地下鉄と同様に建築物や埋め立てをおこなう必要はありそうですが」


『戦闘都市をつくることで何とかなりそうですな』


 そんな俺達を置いて話は進む。


「私もまったく同じことを言おうと思ってました。ただ皆さんで導き出してほしかったので黙ってました」


「アタシは助言したら協力を求められると思ったからはぐらかしたわ。もちろんわかってたわよ」


「ミートゥーだ。まぁ俺は確証なかったけどな」


『ではルーク君。頼んだよ』


 おかしいだろ!?

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