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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十四章 神獣のバーゲンセール

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千三百六十三話 ダークエルフ1

「……っし、こんなもんだろ!」


 昨日一日ゆっくりしたお陰で平穏な日々というものを思い出した俺は、明日からの仕事に備えて、息抜き多めで甥っ子へのプレゼントづくりに励んでいた。


 皆の協力もあってヨシュアに到着する前に8割方完成していたので、本来であれば昨日の夜に1時間ほど作業するだけで終わっていたのだが、生まれて初めて見たドラゴンが人類にヘコヘコしていたことでオリバーはドラゴンへの憧れを完全に失ってしまった。


 完全にメルディ達のせいだ。


 レオ兄達からは気にするなと言われたが折角のお手製プレゼント。


 喜んでもらいたい。妥協したくない。末長いお付き合いをしてもらいたい。


 そこで使役(雇用)されていないグリフォン・シーサーペント・ユニコーン・オーガはそのままに、ドラゴンだけ別の魔獣で代用することにし、俺は半日掛けて魔改造を施した。


「これで完成ですか~? スイちゃんとクオリティに差がありませ~ん?」


「仕方ないだろ。変形合体の関係上ドラゴンからかけ離れた見た目には出来ないんだから。あんまり似せたらスイちゃんの二の舞になりかけないし。空想上の生物とされてる鳳凰の見た目なんて言ったもん勝ち、やったもん勝ちだわ」


 選んだのは翠龍と対を成す聖獣、鳳凰。


 敵キャラとして作ったスイちゃんを気に入ってくれたのだから、リーダー格であるレッドにホッちゃんを採用することで、光と闇、生き別れの兄弟、洗脳された恋人などなど、妄想……もといごっこ遊びが捗るはずだ。


「そもそもグリフォンもシーサーペントもユニコーンもオーガも変形や合体しないだろ?」


「まぁ肉体という枷がありますからね~」


「ほらな。じゃあオリジナルだ」


 もし「え? しますけど?」と言われたら困るところだったが、幸いそこまで非常識な世界ではなかった。


「さてと……細かな設定は本人と話しながら詰めるとして、スイちゃんをモデルにした敵キャラが『ドラグナー』って名前だから、こっちは『スザク』だな」


 強度や関節、合体後の動作確認をして、すべてにおいて問題が見つからなかったので、俺はぽっちゃり飛竜に名前を付けて作業終了の合図とした。


 メインどころぐらいはつけておかないとな。


「ホウさんの部下にそんな名前の人が居たような気がします~。見た目も丁度こんな感じで~」


「フラグ立てるのやめろ。これは全部オリジナルの魔獣だっつってんだろ。仮に見た目や名前が同じ魔獣が居たとしても偶然だ。鳳凰山の連中だって何も言わないだろうよ。エルフ達もスイちゃんの肖像権がどうとか言わなかったしさ」


「間違いありませんね。商品化する際に不満を抱いたとしても私が黙らせます」


「いや……そこまでは……」


 時々フィーネが怖くなる。


 あ、いつの間にか現れてたことじゃなくて、俺の願望を叶えるためなら他人がどうなろうと構わないって精神の方ね。


 流石に冗談だと思うけど。商品化するつもりないし。


 何なら影武者が出来てラッキーとか言いますよ、という昔ながらの友人ユキの言葉に安堵し、俺は出来立てホヤホヤの人形5点セットを届けるべく、自室を後にした。




 ピーンポーン。


 庭で遊んでいたオリバーに手渡し、機能紹介がてら実践およびシャルロッテさんとクロ一家と世間話をおこない、暗くなってきたので自宅に入って数十秒。


 夕食のために食堂へ向かっていた俺は、フィーネもエルもマリクも忙しい時間帯だったため、来客の応対をするべくチャイムの音に反応して玄関へと引き返した。


 気配が感じられないので強者確定だが動揺はない。アイムクーリッシュ。心なしかチャイム音も一昨日より落ち着ている気がする。


「ゴメン。無理だったわ」


 ドアを開けるとそこには農夫姿のルナマリアが立っていた。


 髪を後ろでまとめたり、ズボンだったり、何なら軍手をはめていたり、農業以外でその恰好をしていることも珍しいが、さらに驚くべきは形だけとは言え俺に対して謝罪していて、グルグル巻きにしたエルフを2人引きずっていること。


 片方は先日俺に道を尋ねたダークエルフだ。


 謝罪は友達との待ち合わせに3分遅刻したレベル。入場制限や乗車時間などのタイムリミットがあるならともかく、遊ぶ約束ならまったく問題ない。せいぜい自販機でジュースを奢るぐらいだろう。


「これどういう状況? ちなみに俺は、王女に絡んだりルナマリアに告白してボコされたのはそっちの短髪で、ルナマリアに用事があった長髪は実はお前の婚約者。ズバリエルフは最初から2人居た。叙述トリックはこっちに掛かってたと予想する」


「こっちってどっちよ? アンタまた勝手な決めつけで暴走したわけ?」


「してない。しそうになったけどフィーネ達に助けられた」


「どこの主人公よ……」


 人間誰しも自分が物語の主役だ。そもそも頼るなら俺が主人公って認めてるようなもんじゃん。問題の中心に据えられるのはどう考えても主人公ポジよ。


 暴走に関しては、出来ないことを貶すより、出来たことを褒められる人間が好きです。ぶっちゃけ責めるな。byるくを。


「まぁ大体合ってるわね」


「お、マジか。てことはルナマリアが短髪を徹底的にボコれなかった理由も、相手が王族だか村長の一族の配下で正当防衛以上のことをすると外交問題に発展するからで、逆にルナマリアの正体を知らずに絡んだ短髪はお仕置きとして、長髪は人間批判か何かやらかして拘束されてる……いや、俺に手を出さないようにするためかな? 俺を使って婚約破棄しようとしてるとか」


「そんなわけないでしょ。自惚れないで。結婚願望はあるけど相手が居ない場合に選択肢に入れるぐらい気楽なもので、そもそもそんな気がなかった上に、彼の人柄を知って破棄する決心を固めただけよ」


 仮にも王女なのでそういった相手が居ることに驚きはないが、世襲制かつ跡継ぎを自力で作れるなら政略結婚どころか結婚する必要すらないわけで……。


 俺と同じく恋人は友人の延長にあると考えているルナマリアは、仲良くなれない相手と付き合ったり結婚するなんて、死んでもゴメンだろう。


 ただそうなるとこの状況の説明がつかない。


「じゃあなんで連れてきたんだよ? 『私が好きなのはこの人です!』ってやっても暴れないように拘束してるんじゃないのか?」


「当たらずとも遠からずね」


 と、疲れた様子で肩を竦めたルナマリアは、さらに続けた。


「まず魔界から来たエルフは3人。この2人はその王族の配下で、人間を見下してたのも、アルフヘイム王国の連中に絡んでたのも、アタシの正体を知らずにナンパしてきたのも、農場で気絶してる婚約者よ」


「あ~、そっち系ね。配下が調子に乗って周りに迷惑を掛けて上が窘めるんじゃなくて、上が権力振りかざして配下が苦労するパティーンのやつね」


 そりゃあ嫌われて当然だな。


「でしょ? あとここに居ない理由は『じゃあお前で』ってイヨに手を出そうとしたから。全員でぶちのめしてやったわ」


「え? なんで生かしてんの? 他国とのいざこざが面倒なら言ってくれよ。こっちで責任もってやっとくから。そこに関しては迷惑と思わなくて良いよ」


「今すぐだったら外交なんて気にせずやってたわよ。一応大きくなったらって話だったから致命傷で済ませたのよ。この2人も加担したから縛り上げたわ」


 チッ。そういう事情なら仕方ないな。そこまで否定したら恋愛が成り立たなくなる。何歳差まではセーフとかいうややこしい問題に発展する。


「てか何なん? ダークエルフの連中相手に困ってんの?」


「……何よ、そのダークエルフって?」


「あ、スマン。動揺するあまりつい本音が……。差別してるわけじゃないんだ。毎回魔界のエルフとかいうの面倒だし、肌の色がルナマリア達より黒いから、心の中でそういう呼び方をしてただけで。気に入らないなら全然変えるぞ」


「良いんじゃない。それが今回の問題点でもあるわけだし」


「そうだな」


 ルナマリアに確認するような視線を向けられた長髪ダークエルフは、世が世なら荒れること間違いなしの呼称をアッサリと受け入れた。




「ごはんですよ~」


 早速話を聞こうとすると、ユキがどこぞの海苔商品のようなノリで夕食の時間を知らせてきた。ノリだけに。


「良かったらアンタ等も食べてくか? どうせ長くなるだろ? 『王子ほど人間を見下してるわけではないけど仲良くなる気もない』『でもルナマリアに認められた相手を無下にする気もない』『人間の文化に興味もある』って感じだろ?」


「そうしてもらえると助かるわ。アンタ達もそれで良いわね」


「ふんっ。良いだろう。人間の可能性とやらを知るいい機会だ」


「うむ。魔獣を強化するなどという世界のバランスを崩壊させかねない計画を本当に人間の力だけで実現出来るのか否か、この目で確かめさせてもらおう」


 ここに来た理由やら今後の方針やら、もう大体読めたけど、取り敢えずダークエルフ達もこの提案を受け入れた。


(完全に偏見だけど魔界って人間界以上に弱肉強食の世界っぽいし、他種族や自然に介入するのはあんま良くないって考え方なんだろうなぁ……)

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