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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十四章 神獣のバーゲンセール

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千三百五十二話 盛り上がらない車内

「いやぁ~。やっぱり手作りは良いなぁ~。愛着が湧く。想いが籠る。贈り物はこうでなくちゃ。もちろん重くならない程度に。

 恋人へのプレゼントは温度感を大切にしろ。じゃないと引かれるだけだぞ。付き合って1週間で婚約指輪渡されるぐらいキモいぞ」


 計画に従って取る団体休憩とは別に、トイレ休憩と称して(用も足したけど)その辺でかき集めた素材をこねくり回すこと数時間。


 オリバーへの謝罪の品づくりを一段落させた俺は、語り部&輪の中心としていつも通り素晴らしいコメントをした。


「も、もうちょっと丁寧に扱わない?」


「あわ……あわわ……」


「…………」


 が、二号車の乗客達の関心は別のところにあったため、華麗にスルーされた。



 まず、オリバーの手の中で、いつ壊れてもおかしくないほど激しくぶつかり合うロボ達を見て震えている、エルフ達。


 自分達が提供した素材ということや破損後の惨状を知っていること、幼児の怪我の心配というのもあるだろうが、俺はそれ以上に聖獣スイちゃんをモデルにしたことが大きいと見ている。


 値段をつけるのも馬鹿らしいゴミから生まれた『ルクガンダーZ』と、余裕で売り物になるスイちゃんモデルの『ドラグナー』がぶつかる度にアワアワする姿は、滑稽を通り越して面白い。


 あくまでも参考にしただけで似て非なるものなのだが、それでもここまで動揺するなんて、本気で似せたら一体どうなることやら……ニチャァ。


「……何を企んでいる?」


「冗談だよ。やらねえよ。たぶんこれって俺がスイちゃんと触れ合った経験があるからだろ? 外して外してこれだ。本気出したら依り代にされそうじゃん。それだけならまだしも『人間の分際でスイちゃんの依り代を作るだとぉ!? ふざけるな!!』って種族間の問題に発展しそうじゃん。ヤダよ、そんなの」


 反応したのがルナマリア辺りなら構わず続けたが、そこまで親しくない上に高慢で名高いフリーザの世にも珍しい不安そうな顔に申し訳なさが勝ったため、俺は黒い笑みを仕舞い、聖獣のニオイに敏感な精霊達を追い払う作業に集中した。


 こんなことになっているのは全員の意見を尊重したせいだったりする。


 エルフの生み出した素材と俺のイマジネーションの相性が良すぎたのか、想像以上の代物が出来てしまったので劣化させようとしたところ、「いや、これはこのままで……」とエルフ達に止められた。


 しかし放っておくわけにはいかないので、強度はそのままに機能だけ失わさせる方法として『自然に任せる』が採用され、オリバーの自由にさせているのだ。


 ルクガンダーZに宿っている想いと混ざるし、破壊される度により強靭な肉体を手に入れて復活するので研磨役にもってこいだし、オリバー自身の想いで上書きも出来る。


 自分の手で劣化させるのは無理だけど、乱雑に扱われる姿を見るのも忍びないというジレンマに苦しんでいるルナマリア達が止めない理由もそれだ。


 流石はエルフ族に神格化されている者と言ったところか。



 ぐいっ、ぐいっ――。


「ふむ……」


 コーネルは残る5体の正義の味方(俺の中での設定)の製作を頑張っている。


 乱暴に扱われるのは目に見えている……というかルクガンダーZの代役として活躍してもらう予定なので耐久性を高めるのに余念がなく、腕や首といった接続部分を入念にチェックしている。


 ちなみに、ある意味オリバー以上に乱雑に扱っているため、ドラグナーを同様に調べた際にルナマリア達から怒られた経緯を持つ。まぁこっちはこっちで人形好きとして妥協したくなかったようで一歩も譲らなかったが。


 我が子のように扱ってもらいたいエルフ vs 絶対に壊されたくない人形師。


 結果は我慢出来なくなったオリバーが奪取してドロー。


 ……いや、チェックされるまでもなく完璧に仕上げた俺の一人勝ちだ。


「おい、ルーク。ここの彫りが甘いぞ。これでは間接部分の動きが固くなってしまう。遊びやすさを重視しろと何度言えばわかる。強度は二の次だ」


「バカ野郎。それ以上パーツを削ると絶対すぐ壊れるぞ。本体の方を削れ」


「強度と稼働領域をあげる魔法陣を組み込んであるから無理だ」


「そういうのは相談してからやれ」


「合わせると言ったのはお前だろう。オリバーの観察はほどほどにして、もっと周りの作業を見ろ。雑談もするな。するなら作業を完璧にこなしてからにしろ」


 パーツのチェックもおこなっているので、こうやって俺やレオ兄やシャルロッテさんが生成したものにイチャモンをつけてくる。父さん達には流石に何も言わない。年寄りだから細々した作業が苦手でも仕方ないとか思ってそう。


 まぁそれはさて置き、完成度を少しでも上げたいという気持ちは理解出来るし、言っていることも間違ってはいないのだが、無理強いするのは違う。


「お前と作業するの息苦しいよ……」


「言い訳は後で聞く。手を動かせ。頭を働かせろ」


 流石コーネルさん。その辺の高校生とは芯の強さが違う。嫌がる相手だろうと平気で無理強いさせる。結果も出しちゃう。有能。


「ただやっぱり息苦しいよ」


「自分が言い出したことだろう。そして自分が招いたことだろう。責任を持て」


 社運を賭けた仕事や信用問題にかかわるコンクールならともかく、遊びの延長の工作で失敗したって良いじゃないか。試作品を改善するのを楽しめよ。


 俺の言おうとしたことを察したコーネルは、これは遊びではなく仕事だと言わんばかりの様子で、完成度と作業速度を両立させようとする。


「いやいや、間違ってるぞ。俺は到着までにドラグナーを完成させられたらいいな~ぐらいの気持ちだった。それが終わった今、メインはみんなとワイワイ過ごすことだ。研磨は無限復活するルクガンダーZに任せてもっと喋ろうぜ」


 ノルマをこなしたからと仕事中にサボるのはダメだが、残業してまで働くようなことではない。そして今は残業中。続きはウェブで。というか暇な時に。


「レオ兄やシャルロッテさんを見習えよ。木を削ったり適度に掘ったりサポートに徹してるし、集中する時はするけど息抜きを忘れないだろ。作業と会話のどっちも楽しんでるだろ。このぐらいユルくて良いんだよ」


「ルークのは会話の内容がなさ過ぎるけどね。基本ネガキャンだし」


 内容がないよ~。


 などとボケている隙に、形勢不利であることを悟ったコーネルの言い訳が入る。


「それは彼等が自分に出来ることを理解しているからだ。作業を疎かにしてまで無理に会話する必要はない」


「……さてはお前アレだな? モノづくりしてれば会話しなくて済むと思ってるな? ヨシュアに到着するまで作業して間を持たせようとしてるな?」


「そんなことはない」


 目は口ほどに物を言う。百聞は一見に如かず。


 コーネルの目を逸らすという仕草は両方のことわざを体現していた。


 まぁ表に出さなかったら読心術で無理矢理情報を引き出していたところだが。全員で取り押さえて心の奥の奥まで読み取ってやったんだが。運のいいヤツめ。



「と、ここで油断してるエルフ達に問題! ネガキャンとは何の略でしょう。用語解説と合わせて答えてください」


 我関せずでオリバー(というかロボ)の動向を見守っていたルナマリア達に質問を投げかける。


「ネガティブキャンペーン。ライバル企業や人物を貶めるような発言・広告宣伝をして、相対的に自分達のイメージアップを謀る人間の浅ましい戦略でしょ。

 楽して勝つために自分を上げるんじゃなくて相手を下げるなんて誰の得にもならないじゃない。そんなんだから心も体も退化するのよ。技術力以外褒められるとこないのよ。魔獣に力を与えるなんて人類全員が出来るべきなのよ」


 無視したら全員で取り押さえて以下略だったが、ルナマリアは難なく正解した。ついでにネガキャンもした。


 そんなこと俺に言われても困る。帰路についてる全員はたぶん魔獣を神獣化させられるし。ちゃんとしてるにもかかわらず「最近の若いもんは……」って同列視されるようなもんだ。もう批難出来るなら誰でもいいんだろ。


「――って顔ね。実際に神獣化させたわけでもないクセに偉そうに」


「させてるかもしれないだろ。身の回りに多過ぎて気付いてないだけで。百歩譲って神獣化させてないにしてもそれ以上の成果を出してる。鳳凰と翠龍って両聖獣に認められた人類とか数えるほどだろ」


「その力を活かして人類をまともにしろって言ってんのよ。同族の管理は力を持つ者の義務でしょ」


「ん~、まぁたしかに上に立つ者にはそれだけの影響力があるけどさ。その界隈の良い部分も悪い部分もそいつ等の責任だったりするけどさ」


 俺はルナマリアの価値観に共感しつつ続けた。


「でも出来ることはやってるぞ? 日頃のおこないもあって身近な連中は比較的(ボソッ)まともだし、知り合った奴等も大体(ボソソッ)改心して良いヤツになるし、武勇伝を聞いて俺みたいになりたいって努力すること多いって聞くぞ?」


「これまで表舞台に立とうとしなかったヤツがよく言うわ。もっと積極的に干渉してれば神獣化計画の候補者の選定なんてせずに済んだんじゃないの?」


「ハアアァァ~? それ言ったらお前等エルフが精霊の何たるかを伝え広めてれば済む話だろ? 精霊と対話するために自然と一体になる方法を教えたり、基礎学校の卒業式で適性ありそうなヤツを実際に精霊と対話させてみたり、他種族と子作りしてみたり、世界のために出来ることなんていくらでもあるだろ?

 興味ないフリして隠れ里に籠って何もしてこなかった連中に批難されたくねえよ。フィーネやイヨを見習え。エルフが他種族に排他的な責任取れ」


「エルフの力や知識を求めてくる連中の大半がゴミだったんだから当然じゃない。アンタ、蟻や羽虫が頼ってきたら相談乗るわけ? 進化させようと頑張るわけ?」


「それは……しないけど……」


 やっぱ人間はダメだな。


 勝手に争って、勝手に荒廃して、そんなになっても手を取り合わずに自分より下を探して驕って衰退してることを認めないとか、他種族と交流出来てる今が奇跡じゃないか。


 どこかの種族がその気になったら、数が多いだけの人類なんて、あっという間に滅ぼされたんじゃないか?

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