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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十二章 千年郷

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閑話 続エロカルタ1

 王都旅行、3日目。


 1日を寝るまでとするのか、日付を跨ぐまでにするのかは意見の分かれるところだろうが、個人的には起きたら翌日カウントなので4日目ではなく3日目だ。このまま寝ない可能性もあるしな。


 兎にも角にも、王都で過ごす最後の夜にどんちゃん騒ぎをしようと同世代の野郎共を部屋に集めた俺は、体内の魔力に刺激を与えて思考をほどよく定まらなくさせる飲み物を摂取しながら、カードゲームに熱中していた。


「オナニーってさ、絶対した方がいいよな。ドロー2」


「当たり前だろ。子孫を残すのはどの生物にも備わってる基本理念。子づくりを男と女でする必要のある人類は、快楽という抗いがたい欲求によって自然とそうなるようになってるわけだから、オナニーで事前にその快楽を知っておくのは大切なことだ。食べたことのない料理の味を自信満々に語る美食家なんて居ていいわけがない。

 女は自分の股を触ることを禁忌とされてるみたいだけど、それで恋愛や結婚生活を楽しめなくなるなんて本末転倒だっての。ドロー2」


「っ……ドロー2!」


「そもそもあれって絶対健康にも良いだろ。快楽によるストレス発散。ホルモン分泌による美容。性への意識が高まって嫌悪感は薄れ、草食系や絶食系の数は減る。恥ずかしさ以外パーフェクトな行為だろ。ドロー2」


「なんでだよおおおおッ!!」


 俺がこの世界に持ち込んだオリジナルカードゲーム『NUOヌオ』の3試合目。


 そろそろこのゲームや場の空気にも慣れてきただろうと、満を持して話題を振ると、3つの反応があった。


 1つは流れるように広げる者。ワンとスーリが該当する。


 もう1つはエロトークが始まったことに恐怖する者。ファイだ。1位は最下位になんでも命令出来るこのデスマッチに負ければ「お前も混ざれ」と言われると思っているようだ。まぁ命令するのだが。


 そして最後に、どちらの勢力に加担するか悩んでいたらゲームで圧倒的不利な状況に追い込まれ、そのリアクションを優先した者。ピートである。


 次の相手に2枚引かせるカード『ドロー2』は、同類のカードを持っていてれば効果を上乗せしてさらに次の相手に手番を回すことが出来るが、共有デッキには8枚しか入っていないので5人プレイだと絶対に2周はしない。


 そして俺の手元にはドロー2が2枚ある。


 仕掛ければ確実に負けない。


 俺、ワン、ファイ、スーリと4枚分のダメージが上乗せされたので引くのは8枚。1ターンに1枚しか出せず、手札が無くなれば勝ちのカードゲームでは致命的だ。


「おい、ワン、リバースあるか? あるなら使って俺に回せ。まだまだ畳みかけられる」


「オケ」


「お、お前等、卑怯だぞ!!」


「バカ言うな。罰ゲームがあるのは最下位だけ。順位は1位が決定した時点の残り枚数で決まるんだから、不利なヤツを全員で狙うのは当然だろ。ピートだって前の2試合は加担してたじゃないか。自分がやるは良くて他人がするのはダメとか、そんな身勝手が通用するほど世界は優しくないぞ。てなわけでもう1枚ドロー2」


「ぐああああ!!」


 ピート、エロトーク参戦決定。



「め、命令を聞かないって選択肢は……」


 自分がこれから何をされるのか、またやらされるのか悟ったピートは、縋るような目を向けてきた。


「「「ない」」」


 が、俺達はこれを一蹴。


「明日以降“何故か”身の回りでエロいことが多発し、あだ名が『エロ○○』になるかもしれないが、それでも良ければ御自由に退席してくれ」


「ぐっ」


 そろそろ眠くなってきたので、などと言われる前にリタイアも封じる。


 逃がしてなるものか。


「ところでファイ君は何故無反応だったのかな? ここは恥じらいを捨てて本音で語り合う場。我々は裏切り者を許さないよ」


「~~~っ! こんなところに居られるか! 僕は部屋に帰らせてもらう!」


 自分が次の標的にされたことを察したファイが、もう十分遊んだだろうと、死亡フラグビンビンのセリフを吐きながら立ち上がった。


 が、その選択は愚かとしか言いようがない。


「おいおい、話を聞いてなかったのか? それともそんなにエロ大王になりたいのか? 日常に溢れるエロを享受したいのか?」


「トイレに行くだけだよ。あと飲み物が無くなったから部屋から持って来るよ。戻るのは遅くなるかもしれないけどね」


 ピートの件で学んだらしく、拒否も催促も難しい状況を作り出して勝ち誇るファイだが、甘い。


「おっ、そうか。なら丁度良かった。実は生理用品を作ったついでにオムツも改良したんだ。これの使い心地を試してみてくれよ。もう1ゲームぐらい出来るだろ」


「い、いいや! 無理だね! 膀胱が限界だよ!」


 絶対に持参してはいないのに当然のようにカバンの中に入っていた成人用オムツを取り出すと、ファイは股間を抑えてドアへと猛ダッシュ。


 大ではなく小にしたのはせめてものプライドだろう。腹痛の方が言い訳にはしやすいが、どうせ負けて出すなら小の方がダメージ少ないしな。不正の準備は万端です。


 ファイは勢いそのままにドアノブに手をかけ、


 ガチャッ、ガチャッ――。


「あ、開かない!?」


「あ~、言い忘れてたわ。この部屋から出るには全員の許可を貰わないとダメなんだよ。わかりやすく言うと全員を順番に最下位にして、1位の命令で『出て良し』って許可を貰うんだな。なんかやたら精霊達が協力的でな。簡単な作業だったよ」


「もしくはエロトークに参加して俺達を満足させるんだな。そっちの方が早いと思うぞ」


「てか俺達の内誰か1人でもその命令されたら結託するし、1位の命令も『さっきの命令解除』にする。無理そうな時は罰ゲーム覚悟で最下位を取る。つまり俺達を満足させる以外にここから出る方法はない」


 動揺する2人と同じくワンとスーリも初耳のはずだが、俺のすることをいちいち気にするのをやめたのか、当然のようにこの状況を受け入れてこちら側についた。


 流石だ。


「悪魔め!!」


「はっはっは、なんとでも言え。痛くも痒くもない。心も痛まない」


 エロの前ではすべて無力だ。


「それより早くした方がいいぞ。今のトイレ宣言は冗談でもその内限界は来るからな。本当にオムツを使う羽目になりたくなければエロトークに花を咲かせ、このエロカルタを完成させることだ」


「条件を増やすんじゃない!」


 まったく……エロカルタやる前にNUOやっておいて良かったぜ。絶対どっちかはこうなると思ってたからな。


 俺はルーク。


 計算高い男である。




「で、ファイは女子のオナニーについてどう思う?」


「……はぁ。基本的には賛成だね。性に関心を持ったり快楽を覚えるっていう3人の主張はもっともだ。ただ1人ですることに慣れ過ぎて男女での行為が面倒と思うようになるかもしれない」


 ファイは最後に深々と溜息をついて持論を展開し始めた。


「たしかにな。草食系だの絶食系だのはそこから来てる可能性が高いしな」


「ま、当然のことなんだよな。自分が一番自分のことをわかってるって。『ここでこうすれば気持ちいい』『ここが一番の盛り上がり』なんて他人にはわからないことだし」


「顕著なのは二次元だな。時間停止モノ、露出モノ、異種姦モノ、エロ展開だけでも多種多様だけど結構な確率で自らの快楽を求めてない。発散出来なくても構わない。射精しなくて問題なし。とにかく女体を弄りたい。相手の反応を見たり、想像したり、身勝手が快楽になる。

 これが責めなのか奉仕なのか、寝取りなのか寝取られなのかは置いといて、男にとって性って『自分勝手に楽しむもの』なんだよな。好きな時に、好きなだけ、好きなもので発散するのが性欲なんだよな」


 子孫繁栄のためならば妊娠可能な女性の子宮に射精することが絶対条件だが、それ等は違う。どれにも当てはまらない。性交の『交』が邪魔ですらある。


 原因は明らか。


 自分でする方が楽だし楽しいからだ。


「ファイも言ったみたいに面倒臭さや自分勝手が本能を上回ってるんだよな。でもオナニーをしないってのは違うぞ。それ以上の快楽を知らないだけだ。やってることは本番に向けた準備運動・予行演習だってことに気付いてないだけだ」


「そうかな? 性の不一致で別れることはよくあるじゃないか」


「特に最近はそうだよな。昔は結婚しないとおかしいみたいな風潮だったし、周りとの距離も近かったから口うるさく言われてたけど、今は結婚しなくても許される。安全が手に入って金と時間が自由になるようになったからだ」


「……俺やロア商会は悪くないぞ」


「誰もそんなこと言ってないだろ。悪いとも言ってない。どちらかと言えば感謝してる。性が多様化し過ぎた結果そういう連中も生まれたって話だ」


 ならば良し。


「あとファイ。不一致じゃない。相性の良い相手と巡り合えてないだけだ。合わせる努力も快感を得るための練習もせずに、一方的にダメって決めつけてるだけだ。そうならないために日々の鍛錬オナニーが大事って言ってるだけだ」


「まぁそれはそうなんだけど……」


 煮え切れない様子のファイ。


 賛同はしたくないが否定する方法が思いつかない。


 そんな感じだ。


 ただそれはこちらとて同じこと。俺達は言いくるめたいわけでも悩ませたいわけでもない。楽しくエロい話をしたいだけなのだ。


 こういう時は楽しい話で気分転換するに限る。


 つまりエロカルタづくりだ!

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