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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十二章 千年郷

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千三百十話 参加理由と方法

 ヒカリの好奇心によって起きた器物損壊事件。


 例えユキ達に仕組まれたものだったとしても責任を免れることは難しく、払えなくはないが出来ることなら払いたくない状況でヒカリがどう動くのか。


 加害者でも被害者でもない俺は静観することにした。


「ルークが払うよ」


 ――などと思っていた矢先。ガッツリ当事者にされた。


 加害者から責任転嫁された……いや、罪自体は彼女が背負っているがそこから発生する諸々のものをこちらに回された。


「弁償サエシテクレレバ文句ナイネ」


 当然というか何というか、イーさんもその意見に乗って、こちらに手を差し出してくる。


 こういった場合、現実で必要なのは、罪の意識でも、謝罪の心でも、感謝の気持ちでもない。金だ。


 大抵のことは金で解決出来る。支払う能力のない貧乏人だけが、それ等を抱える羽目になるのだ。戦いでは勝者こそが正義だが、リアルでは金持ちこそが正義。モラルもルールも損得勘定に訴えれば無視しても許される。不満を表に出すより隠す方がメリットが大きいとわかったら個人も企業も国さえも黙る。


 ルールは正義のための力ではなく自分が得するための力。


 そこまで行けば人生イージーモードで、そうなりたいからこそ人は他者を踏み台にしてでも成り上がろうとする。金持ち万歳。権力者万歳。


 その事実を否定するつもりはないし、世界共通の価値観であり生きるために必要な金以外の方法で賠償するのも無理だと思うので、一切謝罪しないヒカリを責めることなく金だけを求めるイーさんの言動は理解出来るのだが……。


「日頃のことは午前中に散々払ったじゃん! 楽しませたじゃん!」


「さっきのセクハラの件がまだだよ」


「あれしきのことで金貨20枚はエグくないっスか!? キャバクラや風俗、援助交際が何回出来ると思ってんスか!? 結構な倫理観と貞操観念を持ってる女性じゃないと何されても断らない額ですよ!?」


 日頃の感謝と慰謝料込みの値段かと思いきや、まさかの単体。


 現実的に考えても慰謝料どうこうではなく疎遠になって終わるレベルだ。ましてや今回は知り合いからの冗談交じりの行為。一応事故ということにしているし、故意だろうと「も~、仕方ないな~」で済まされるぐらいの関係は築けていると思っている。200万円どころかイタメシの1つでも奢れば万事解決だ。


「未成年なんだから当然でしょ。お金さえ払えば何とかなる大人と一緒にしないで。わたし達はプライスレスだよ」


「ぐぬぬ……たしかに俺は大人達がどれだけ望んでも出来ないことをやった。夢を現実にしたんだから対価は払わないといけないかもしれない」


 援助交際も映像保持も法律で禁止しなければ無限におこなわれていたもの。JKは最高のブランドという言葉もある。実際、禁止された後も幼ければ幼いほど良いという変態紳士が、あの手この手で法の網を掻い潜ろうと頑張っている。


 そんな努力も気苦労もせずに、幼馴染へのセクハラという犯罪性の少ないもので欲望を満たせた俺は間違いなく勝ち組。自分の年収分の代金でその立場を得られるなら、喜んで払う者はごまんといるだろう。


 だが――。


「なんでそんなに嫌がるの? 普段なら喜んで出すじゃない」


「奉仕や援助は第三者に強要されてやるものじゃない。あれは自ら望んでやってることだから良いんだ。『ここは俺が出すよ』と『あと払っといて』じゃ全然違うだろ」


「悪いことしたからジュース奢るぐらいの気持ちで良いのに……」


「金額が桁違いですが!? 謝罪の印に一年間の稼ぎを出す人間がどこにいるんですか!? あとそれ俺が言うべきセリフ! 求めてる側が言っちゃダメなやつ!」


「金額的にはそうでも懐事情的には違うでしょ。ルークにとっては銅貨20枚ぐらいの感覚でしょ」


「それどこのゲイツさん!? 俺は秒で金貨稼がないが!? どちらかと言えば貧乏だが!?友達との楽しい時間のために金を使うことを喜びとしているのと同時に、節約することに楽しみも見出してるが!?」


「そうなの?」


「そうなの。欲しいものがあっても我慢する生活を送ってるの。贅沢と高級志向を同列視したくないから。お金の大切さを忘れたくないから。金なんて使わなくてもアイディア次第でそれ以上に楽しめるし。むしろ使わないからこそ色々出来るし」


「いや、わたしが言ってるのはそこじゃなくて、貧乏の方」


「あ、ああ、そっちね……」


 褒めてもらいたかったのだが、ヒカリにとってもそれは当たり前の考え方だったなのか、平然と流されてしまった。別に良いけど。


「さっき下ろした時に見たんだけど、思ったよりなかったんだよ。ギリギリここは払えるけど今後何かあった時が辛くなるから嫌だ」


「卒業祝いであれこれやってた時に『ガハハ! 来月から俺は社会人だ! 凄まじい勢いで貯金が増えていく! 貧乏学生諸君に奢ってやろう!』とか社会人マウント取ってたじゃん」


 シィに、ブランド服を陳列棚の端から端まで買えって言われて、土下座して撤回してもらったやつな。懐かしい。


「まぁそれは記念だから頑張ったとしても、その後も事あるごとに財政に余裕ある感じ出してたよね? まさか見栄張ってたの?」


「違う違う。稼ぎが浪費を上回ってたんだよ。俺自身は節約するし、誰かのために金を使おうとしても『前にお世話になったから』って俺の知り合い全員が感謝や楽しい気持ちを巡らせるから、実際には全然使ってないしな」


「ならなんで貯金ないの?」


「……お母さん貯金が、な」


 大体のイベントに参加している上、あとから各方面から話を聞いているヒカリなら、俺の財政事情を把握していてもおかしくはない。


 ただそこまでは知らなかったようで、なにそれ、という顔でこちらを見る。


「就職した時に、自分でいくら稼いだかわかりやすくするためと言われて新しい口座を作らされたんだ。これまで小遣いやら発明やらでコツコツ貯めたものは結婚資金として没収された」


 一流企業とは言え所詮は新社会人。3年働いたところで稼げる金額なんてたかが知れている。


 それに加えて、フィーネとユキが素材提供した分の金額をそこから引くようになった。俺の発明って大体アイツ等に協力してもらっているので、試行錯誤なども含めると作れば作るほどマイナスになっている。


「それってお金ないって言うんじゃないの?」


「最近までここまで酷くはなかったんだよ」


 3年間の分の仕送りを一気に徴収されたり、過去の素材提供分まで引かれたり、成果を出せば給料が上がったりボーナスが出たりするが全然足りない。


「わたし達に奢ってる余裕ないじゃない」


「いや、逆だ。奢らないと無くなる。奪われる」


「もしかしてエリーナちゃん?」


「たぶんな。本人が直接指示したのか、オルブライト家の従者として働いてる分の給料を減らしたり泊まり込み代金を上げて困窮するように仕向けたのかはわからないけどさ」


 俺は、黒幕としてオルブライト家と俺の財布を握っている巨大な母さんの姿を脳裏に思い浮かべて、肩を竦めた。


「金貨10枚までなら貸せる」


「私も。トイチで良ければ全然貸すニャ」


「ニーナはともかくユチはフザけんな。友達への金貸しで儲けようとしてんじゃねえよ。あと借りるとしてもこの次に困った時だわ。何もなければ良いわけだし」


 と、本気か冗談かわかりづらい社会人の先輩2人を一蹴して、俺は改めてヒカリに向き直る。


「出せて半分。金貨10枚だ。この後買い与えるタンクトップ&ミニスカートの着用を条件にな。あの程度のセクハラでそれ以上は無理だ」


「お姉ちゃんを生贄に捧げて倍プッシュだよ」


 くっ……姉妹おそろは強い。エロい。本来はコストゼロで使えるカードなのに先に手札に加えることで有償化するとは……やってくれるぜ。



「ふふ~ん、おこまりのようね!!」



 獣人・未成年・美人姉妹。


 三権分立以上に完璧なトライアングルに無限の可能性を見出しつつも、ここで支払えば未来という文字通り無限の可能性を持つものが失われてしまうかもしれない恐怖に怯えていると、イヨがかつてないほどのドヤ顔で声を掛けてきた。


 腹立たしい。そして可愛らしい。


 さらに少女はこちらの反応を待たずに声を大にしてセリフを続ける。


「そんなアナタにオススメのイベント! なな、なんと! このスタンプラリーをクリアするとお好きな商品プレゼント! 金貨20枚がチャラに!」


「いや、別に賞品とか罰則とかなくても参加するつもりだったけど?」


「――っ!?」


 明らかに俺達のために用意された茶番をテキトーに流し、イヨの努力やらやる気やらを削ぐのはこの辺にしておいて、イベントの詳細を教えてもらおう。


 助かることは助かるしな。


 おそらく安物だが、俺がそう考えることを見越して本物を用意した可能性もあるので、ここは本気で行かせていただこう。


「スタンプラリーに参加するにはどうすればいいんだ? スタンプは店員に押してくれって言えば良いのか? ヒントとかあるのか?」


「え~、本来はイヨさんの仕事だったんですけど、ちょっと無理そうなので私が代わりに説明させていただきますね~」


「うう……」


「ごめんって。あとでアイス奢ってやるから機嫌直せって。その緑のエプロンも似合ってるぞ。デキる店員の雰囲気あるぞ。セリフも覚えられてエライじゃないか。どれだけ練習したんだ? 漢字も使えて意味もバッチリだったぞ」


「そ、そう? えへへ~」


 チョロい。


 あまりにもチョロ過ぎて将来が心配になる。


「まぁ説明役は譲りませんけどね。もう私のものですし」


「なんでよ!?」


「スタンプは正解のお店で銅貨5枚以上買うと貰えますよ~。参加店かどうか尋ねるのはNG。スタンプラリーに関係あろうがなかろうが買い物してくださいね~」


「あーっ! わたしのセリフ!」


 流石ユキ。わかってる。


 イヨは弄られてこそ輝く存在だ。泣き顔こそ正義。天真爛漫な笑顔はそのための布石でしかない。ある意味ギャップ萌えだ。


 それはそうと、このスタンプラリー……悪を懲らしめ、祭りを盛り上げ、自分達のみならず周りの店舗の売り上げにも貢献する良いことづくめのイベントだった。


 普通にやれば良いのになんでひと騒動起こすかなぁ。

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