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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
七章 商店街編
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九十四話 誘拐事件 

全世界100人のユキファンの皆様、お待たせいたしました!

ユキメインの話の始まり始まり~。

懐かしのあんなキャラやそんなキャラが登場します。


「「ユキが誘拐されたぁーー!?」」


 そんなルークとアリシアの叫びが家中に響き渡った所から今回の話は始まる。


「どうやってユキちゃんを攫ったんだろ? ねぇ、どうするの?」


 呆然とする2人とは違い、ヒカリが冷静に事態を把握しようとして知らせを持ってきたアランとエリーナに問いかける。


「えっ・・・・ど、どうするの?」

「う~ん。どうしようか?」


 質問されたアラン達が悩むのも無理はない。


 ポストに届いた手紙には『大切な家族は預かった』としか書かれていなかったのだ。


 フィーネとユキが居るので問題ないだろうが、一応子供達の安全を確認するためにこうして全員を集めたところ、居なかったのがユキ。


 つまりこの手紙はユキを攫ったと言う事なのだが、人を驚かせる事が趣味な彼女なら平気でやりそうな冗談ではあるし、万が一実力で攫える人物だったなら王国騎士団を集結させても無意味だろう。


 なのでどう対処したものかと全員が悩み始める。



 そして悩んだ末に出た結論は『放っておく』であった。



 結局何がしたいのか相手からの連絡を待たなければどうしようもないし、ユキの自作自演で冗談ならすぐに飽きて帰って来るだろう、と考えた一同は普段通りの生活に戻っていった。




 そんないつも通りのオルブライト家の様子など思いもしない3人の人物が、ヨシュアの街はずれにある廃屋に居た。


 この内2人は誘拐犯の兄弟。


「なんで誰も助けに来ない!?」

「兄さん・・・・ちゃんと計画を立ててないから、どこかで失敗してるんじゃないかな?」


 それもどこか抜けた誘拐犯。


 無計画にユキを攫ったらしい。



 そんな2人の後ろにはロープで縛られて身動きの取れなくなったユキが居た。


「まだですか~? まだルークさん達は来ないんですか~?」


 もちろん最後の1人は彼女だ。


 先ほどから定期的に犯人の2人に向かって文句を言っている。


 面白がって誘拐されたは良いが、誰も助けに来ないのでは面白くもなんともない。


 ここに連れてこられた当初は「きゃー、たーすーけーてー」とか、「くっ・・・・そんな脅しには屈しない! 殺せ!」など立派な(?)人質になるべくトレーニングをしていたユキだが、すぐに飽きたようで今は精霊と世間話をしている。


 そしてたまにこうして私を楽しませろ、と催促をしてくるのだ。


「うっせぇな! 大人しくしてろ!」

「今、不備がなかったか確認しなおしてるから。もうちょっとで身代金を持ってくると思うんだ」


 


 事の始まりは兄弟が格安で売られていた魔術師捕縛用のロープを手に入れてしまったこと。


 そのロープを使って、今ヨシュアで最も儲かっていると噂のロア商会、その中でもトップのドラゴンスレイヤーは無理だとしても『ナンバー2ならイケるのでは?』と思った2人は誘拐を実行に移した。


 街中をフラフラ歩いていたユキに「従業員からサプライズがあるんです」と言って近づき、人目のない裏路地へと連れ込んで魔術の発動を妨害するロープで縛って袋に詰め、こうして廃屋まで連れて来たのである。


 その道中でも袋の中から「誘拐するなら連絡はオルブライト家にお願いしますね~」と、お気楽なセリフが聞こえてきたので、言われた通りロア商会ではなく家族の方へ手紙を出した犯人達。


 しかしユキを誘拐してから2時間が経つのだが誰も助けに来ない。


 ロア商会と言えばヨシュアでも有名な大商会。その幹部が攫われたのに警備兵も動かないと言うのは妙である。



「ちょっと様子を見てきますね~」


 いつまで経っても「あーでもない、こーでもない」と作戦の不備を確認している兄弟を置いて、魔術対策のロープで縛られたユキはいつも通りの転移をした。


 このロープ、発動した魔術を若干乱すだけで体内の魔力を使って転移するユキには無意味な物である。一般的な魔術師に対しても『乱す』なので弱めるぐらいしか出来ないし、もちろん強度は普通のロープなので力を入れれば簡単に切れる。


 要は不良品を売りつけられたのだが、そんな事とは夢にも思わない犯人達は突然消えたユキに恐怖した。


「き、消えたよ!」

「このロープに縛られて魔術が使えるだと!?」


 この瞬間から彼らは『自分達はもしかしてとんでもない相手を人質にしてしまったのでは?』と後悔し始める。


 だが時すでに遅し、誘拐してしまった以上は最後までやり遂げなければならない。もしくは今すぐ自首するかだ。




 一応誰にも見つからない様にオルブライト家へ戻って来たユキだが、その気配を感知したフィーネがすぐにやってきた。


 ユキもそれを予想して帰ってきたので2人とも驚いた様子は無い。


「おかえりなさい。誘拐されたのではなかったのですか?」


「そうですよ~。なんで助けに来ないんですか~? 待ってるんですよ~」


 自由に戻って来れるので誘拐も何もあったものではないが、とにかく怒っていると言うユキ。


 そんな彼女にフィーネは手紙の不備などの事情を説明する。


「なるほど・・・・それはあの人達が悪いですね~。じゃあ場所と助けに来る人を指定するので、今度こそちゃんと助けに来てくださいよ~。お願いしますよ~」


 フィーネの話を聞いて納得したユキは引き続き誘拐事件の被害者をすると言う。


 それだけ伝えて廃屋に戻ろうとするユキをフィーネが止めた。



「では折角なのでルーク様、アリシア様、ヒカリさんに人質救出のやり方を学んでいただきましょう」



 人生には大切な誰かを人質に取られる事がある、と言うフィーネ。


 相当珍しい経験のはずだが、彼女からすれば数年に1度はある定例イベントなのかもしれない。


「なのでまず身代金として金貨100枚を要求しましょう。私が即金で用意します」


「え~、もっと大金にしたほうが緊張感出ますよ~?」


 自分にはもっと価値があると不満げなユキだが、大金を下ろしに行ったらそれこそ大事になるので気弱な犯人と言う事にして金貨100枚ぐらいが丁度いい、と言うフィーネの言葉に納得した。


 受け渡しは子供3人が行うので大金を持たせるわけにもいかないのだろう。



 犯人の力量をユキから聞き出したフィーネはさらなる計画を立てていく。


「ではヒカリさんの千里眼封じとして廃屋に結界を張ってください。結界内に入った3人の魔力も封じましょう。アリシア様が剣を持っていくと思うので怪我のないように吹き飛ばしてください」


「了解です~。手紙の方はどうします?」


「私が魔術で転送します。実力のある魔術師なら魔封じの結界が無ければ手紙を転送するぐらい可能ですからね。相手は・・・・アラン様にしましょう。

 警備兵の場所の把握はこちらでしておきますので、多少の騒ぎは問題ありません」


「じゃあいっそ犯人さんには強化の魔術をかけてアリシアさんより強めにしておきましょうか~? 苦戦した方が楽しいと思いますよ~?」


 あらゆる事態を想定してユキに指示を出す参謀フィーネ。


 そしてどんな要求にも応える実行犯ユキ。


 その後も『誘拐された人質』と『身代金を支払う被害者』による緻密な犯行計画が練られていった。自作自演とも言える。




「楽しみにしてますね~。ではでは」


 満足のいく計画が決まったユキは廃屋へと帰っていった。


「さて・・・・まずはこの手紙をアラン様に渡しましょうか。大仰に」


 先ほどユキが書いた救出願い。そしてフィーネが筆跡を変えて書いた犯行文である。


コンコン。

「アラン様、ロア商会の店舗拡大についてお話があります。今、お時間よろしいでしょうか?」


 早速アランの執務室へやってきたフィーネは、入室した一瞬で机の上に魔法陣を展開し、ついでに本当に用事もあったのでロア商会についての話を始めた。


「・・・・ってことは、先にそっちに許可を取って作った方が・・・・」


 2人が話をしていると、突然アランの机が輝きだした。


ボワーン。


「な、何? 魔法陣!?」


 当然フィーネの仕業だ。そしてここからフィーネの演技がスタートする。


「離れてくださいアラン様。・・・・これは手紙?

 ・・・・・・どうやらユキを攫った犯人からの物のようですね」


 棒読みだらけなユキの『なんちゃって役者』とは違い、まるで本当に知らない出来事を体験しているかの様にアランへと手紙を手渡した名役者フィーネ。



 そしてこの偽手紙をアランが読んだことにより事態は動き出す。

この章、ラスト以外はこんな感じの短編集です。

ユキの内心とか知られると今後に影響がありそうなので、第三者視点のみとなっております。

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