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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十一章 ステーションⅣ

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千二百八十話 ステーションの乱2

「遅い、遅すぎるみゃ。儂の貴重な時間を無駄にするんじゃないみゃ」


「うっせぇなぁ……トイレぐらいゆっくりさせろよ……」


 何の前触れもなく現れた案内人、アホ貴族ことヴュルテンブルク侯爵によってロクな支度もしないままステーションへ行くこととなった俺達。


 アホ貴族は見た目通り自己中心的かつせっかちな性格で、自分から誘っておきながら相手の支度が整うまで待たないどころか高速に乗る前のトイレ休憩すら許さない暴挙に出た。


 が、こうなる前からこの男の評価は低かったし、必要ないとは言え現場監督(?)が同行してくれるのは有難いことなので、俺はすべての不満を言い訳一つで終わらせて、宿屋の前に移動させた(たぶん最初から停めてあった)馬車に乗り込んだ。


 俺のせいで出発が遅れたのは事実なのだ。言っていないだけで急ぐ理由があるのかもしれない。


 あと、アホ貴族は知らないだろうが、不備を見抜く目・発生する前に見つける嗅覚・不穏分子を片付ける武力という視察に必要な力をすべて持ち合わせている俺達は自分の身一つで出発できる。支度することなんてない。


 また、これもアホ貴族は知らないことだが、トイレというのも建前で本当は共同戦線を張っているマリーさんに連絡していて遅れた。


 1000年祭で通信回線が混雑しているせいらしいが、年越し並みに通話が繋がるまでに時間を要したため、皆を待たせることになってしまったのだ。


 正直自分でもヤバいなとは思った。


 繋がるまでの時間に何度ユキに頼もうと思ったことかわからない。間違いなくよくない方向に情報改変されるので思い止まったが、出すもの出すだけなら文句は言われなかっただろうし、こんなことなら頼んだ方が良かったかもしれない。


「……って、お前等の方が準備出来てないじゃん。急かすのは全員が馬車に乗り込んでからにしろよ」


 と、大人しく引き下がった矢先、理不尽ポイントを発見した。


 馬車の横で護衛の男性2名が何やら作業していたのだ。


 彼等はセクハラ制裁イベントでアホ貴族を助けた関係者。俺が乗ってもまだ空席があるにもかかわらず外で待機。しかも手を動かしている。


 これでトイレが長いと文句を言われるのは納得出来ない。


「それは儂等が出発するまでの暇潰しの点検だみゃ。如何にも働いているように見せて残業時間を延長させるテクニックだみゃ。そいつ等は同行しないみゃ」


「残業代泥棒を許すな! てか時給制なんかい! そして肝心なところで仕事終わるんかい!」


 町中より外界の方が、魔獣・盗賊・自然現象など護衛が必要な場面が多い気がするのだが……。


「あ、もしかしてそっちの女性達が強い感じ?」


 当然と言うか、アホ貴族は護衛の他に2名の化粧濃いめのお色気ムンムン美女を侍らせており、フィーネとイヨと共に馬車に乗り込んでいた。1人は御者だ。


 精霊に好かれているか否かでしか戦力を測れない俺にはわからないが、こんな見た目をしていて実は強かったり、守る力が優れていたりするのかもしれない。


「元風俗嬢だから非力みゃ。気に入ったから引き抜いたのみゃ」


(わ、振り切ったなぁ……まぁ本人がそれで良いなら良いけど。ステーションの片隅に風俗街作りそうのは気になるけど)


 もちろん否定的な意味で。


 ラブホやアダルトショップみたいに、出来るまではゴチャゴチャ言ってたけどいざ完成したら普通に利用するみたいなことにはならない。たぶん。興味はある。だって男の子だもの。探究者だもの。


 それに加えて、エロが産業として優秀なことも理解しているので、どうしてもというならやぶさかではない。というか絶対その内どこかで風俗街が生まれる。


 そんなことを考えながら座る場所を選ぶ。


 ――と言っても進行方向を見る形の席は一杯で、イヨの隣かつ美女の正面かつフィーネに近い中央の2席か、座席を2つ使っているアホデブ貴族の正面かは悩む必要がないこと。


 俺は迷わず中央に座った。もちろんイヨ側に寄って。


「儂だって本当は腕の立つビキニアーマー戦士や有能ミニスカメイド、くっころが似合う女騎士が良かったみゃ。でも世の中はそんなに上手くいかないみゃ。強いヤツは金で動かないし、ブサイクが多いし、両方満たす中くらいの人間を見繕ってもセクハラしたら即辞めるんだみゃ」


「ま、性欲の権化のアンタが我慢出来るはずがないわな」


 セクシャルトークが成り立っているせいか、女性陣から軽蔑の眼差しを向けられているような気もしなくもないが、おそらく被害妄想なので気にせずトーク続行。


 興味がなくても納得出来るのは嬉しいものだ。


「そこで儂は割り切って、屈強な男と、ボディタッチOKの美女を傍に置くことにしたんだみゃ」


「強い男消えたが?」


 俺が乗車するのを見届けた男達は、小さく会釈して、町の中へと消えていった。


 そして馬車は何事もなかったように動き出している。


 フィーネとイヨだけで一国の軍事力を上回るのだが、そんなバランスブレイカーの存在など知る由もないアホ貴族が護衛無しの外界に震えない理由とは一体……。


「問題ないみゃ。ステーションはすぐそこで、建設中だからそれなりに人通りがあるみゃ。たしかにあの辺は≪ムムル街道の主≫という危険な魔獣が出没するエリアだみゃ。でもこの時期は活動を弱めていて街道まで出てくることはないし、最近ヤツの姿を見た者もいないみゃ。おおかた棲み家を追われてどこか別の地域に移ったんだみゃ」


 フラグにしか聞こえない。


 そしてそんな場所に町を作ろうとするな。いくら地下メインとは言え、地上を移動する連中も居るんだぞ。せめて主がいなくなったのを確認してからやれ。


「その魔獣は既にいなくなっていますよ。力こそ凄まじいですが争いを好まない性格だったため、安住の地を求めて東へ向かいました」


「あ、そうなん?」


 フィーネからの補足によって俺はツッコミを一時中断することとなった。


 そりゃそうか。仮にも国家事業だもんな。いくら無能が多かろうとそれ以上に優秀な連中が携わっていて、彼等主導で入念な調査してるわな。無能というのは何もしなくても利益が生まれるところに集まるものだ。


 魔獣の件と合わせて強者が手を打ってくれた可能性もある。


「ただし別の魔獣が棲みつきましたが」


「……頼むな」


 俺は話の二歩先を行くぜ。


 これまでは主が怖くて近づけなかったが立地が良く、いつか棲みたいと思っていた→空いたので予約殺到→弱肉強食レディーゴー→勝ち残った魔獣達は強い→襲って来る→強いからピンチ→フィーネ無双。


 完璧なシミュレーションだ。




「そっちの女共は初対面だみゃ。名乗っておくみゃ。儂はヴュルテンブルク侯爵。これから行くステーションの一部建設を担う大貴族みゃ」


 自己紹介すらしていなかったことに再び文句を言いたくなったが、それは一旦置いといてアホ貴族の所有する馬車でステーションへ向けて出発した俺達は車内で楽しい会話を繰り広げていた。


 20分足らずの僅かな時間だろうと無駄には出来ない。


「そう堅くならずともよいみゃ。儂のように高貴な者を前にして緊張するのはわかるが――」


「知ってるか。世界には凄い国があるんだぞ。『自分達が眠いんだから敵も眠いはず。だから夜襲があるはずがない』と見張りを置かなかったら奇襲されたとか、『美女に食事に誘われたから酒飲んでたら乗ってた戦車を盗まれた』とか、『軍隊の備蓄は武具や銃弾よりワインの数の方が多い』とか、『宣戦したが作戦は宣戦後に計画された』とか、『自軍の空軍に配備が済んでいないのに機体を優先して輸出していた』とか、『風が感じられないという理由で高速戦闘機の正面ガラスを外したせいで速度が出なくなった』とか」


「「へぇ~」」


 アホ貴族以外でな。

 

 この2日で祭りの空気にも慣れ、祭りについても語り尽くしたので、自然と話題は世間話or他愛のない知識披露になる。


 フィーネは無反応だったが耳は傾けていたし、正面に座っている美女Aはバッチリ反応していた。アホ貴族はぼっちだ。


「無視するんじゃないみゃ! 人の話はちゃんと聞きなさいって学校で習わなかったみゃ!?」


 当然のように絡んでくるぼっち貴族。


「習わなかった。その前に自覚してたから」


「習得の有無は聞いてないみゃ! 教えられたかどうかみゃ! そしておみゃあ出来てないみゃ!」


「え? だってお前が勝手に喋ってるだけじゃん。興味があれば混ざるけど、ないなら無視して良いだろ、親しくもない他人の話なんて。てか邪魔しないでくれます。俺、今、この子と喋ってるんで」


 隣のイヨに視線を向ける。


 必然的にぼっち貴族に背を向ける形になる。


 この席順が嫌だと言われても困る。恨むなら自分の魅力の無さを恨め。


「だとしてもそんなダメ武勇伝を話すぐらいなら聞いてもよくないかみゃ!?」


「ザケんな。美少女との楽しい会話と今後仲良くする気もないブサイク男との交流。どっちの方が大事かなんて言わなくてもわかるだろ。ハーレム要員の関心まで奪われたからって嫉妬してんじゃねえよ。太もも触るだけで満足しとけ。もしくはこっちの会話に参加しとけ。時には多数派に流されることも大事だぞ。それが空気を読むってことだ」


「ぐぬぬ……反論出来ないみゃ……」


 アホ貴族はやっぱりアホ貴族だった。


 このぐらいの方がやりやすいから助かるけど。



「しかし本当にそのような国があるのですか? 信じられません」


 このビッグウェーブに乗るか否か悩むアホ貴族をバッサリ切り捨てて話を進めるフィーネも中々に残酷な気もするが、何度も言うが俺は仲間達の方が大事なので気にせずトーク開始。


「ま、実際のところは事実に尾ひれがついて面白おかしくされてるけどな。自軍の強化より他国を優先したのは、財政難を何とかするために外貨目的で優先的に供給しただけ。ガラスぶち破って速度低下は、当時の計器が信頼出来ない品質で体で風を受けた方が速度が測れるっていう理由に加えて、ガラスの透明度が低くて視界が遮られるから外したって感じに」


「知りたくなかった……」


「だねぇ~」


「んなこと言われてもなぁ」


 おバカ大国の真面目さを知って落ち込む美少女と美女。


 面白い国ってところで終わらせておきたい気持ちもわからなくはない。


 というわけでオチをつけよう。


「あ、あと、他国がしのぎを削って兵器開発をしてる間に、戦場で美味しいものを食べるためにフリーズドライ製法を開発したって凄いけど凄くない武勇伝もある」


「なにがしたいの、その国?」


「知るか。当人達は一生懸命だったはずだぞ」


 歴史なんてそんなもんよ。後の世代にどう評価されるかは神のみぞ知ることだ。


 俺達に出来るのは今を頑張ることだけ。

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