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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十章 ステーションⅢ

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閑話 ポテト戦争3

「ただいま~」


 旅行2日目。


 ダイエット戦士達に新作魔道具ノンフライヤーを授け、ダイエットとは無縁の若者達と祭りを楽しんだ俺は、その後どうなったのか気になったこともあり、少し早めに切り上げて宿屋に戻ってきた。


「いや~、楽しんだ楽しんだ。やっぱ祭りと言えばカキ氷の食べ歩きだよな。イチゴ味を食べて舌を赤くしたり、ブルーハワイ味食べて青にしたりする定番ネタもバッチリやってきたぞ。ところでブルーハワイ味ってなんなんだろうな。広めた俺が言うのもなんだけど色も味もソーダなんだからソーダで良いじゃんな。あとあのスプーン、ビックリするぐらい食べづらいよな。ストローとスプーンを両立させた結果どっちの用途でも使いにくくなってるくね? でもそれが良いよな。夏の風物詩って感じするよな。こぼしてもあざとくならないし」


「「「う……うう……」」」


「あ、そうそう、ゆっくり味わうために休める場所を探してたら溶けるっていう本末転倒のあるあるネタをしないように歩くことにしたんだけど、会話や物見に夢中になって結局溶けてやんの。でもあれってジュースとして普通に美味いよな。温いけど氷魔術を使えたら冷やせるし。ただ溶けたやつをもう1回凍らせたら不味いからやめとけ。シロップの成分が分離してジュースを凍らせた時みたいになる……ってそのまんまだな。とにかく溶けたカキ氷はちょっと冷やして飲むのがオススメ。カキ氷自体も美味しいし、喉も潤せるし、味に飽きたら友達のと交換出来るし、それでひと盛り上がり出来るから、祭りではカキ氷を買うべし」


 そこら中に疲れ果てた男性陣が転がっていたが、それ以外に変わった点は見られないので、トラブルは発生していないと判断し1日を振り返りながら自室へと歩を進める。


 忘れない内に日記に書かないといけないしな。


(こうやって人間は他人に無関心になっていくんですね~)


(挨拶したのに、会話の切っ掛けを与えたのに、何もしない方が悪いんです。困った顔してたら誰かが助けてくれるなんて甘えた考えは許しません)


 謂れのない批難を浴びせてくる神様を撃退しつつ、さらに歩を進める。


「だからなんでそうなるのよ!」


「私が好きだからに決まってるじゃない!」


 奥の食堂からダイエット戦士達の口論が聞こえるが、やはり俺には関係ないことなので、貸し切りなら多少騒いでも平気だろうと聞かなかったことにして進む。


 その辺に転がってる男性陣も同じ。使用者のいない体育館で寝転んで誰が怒るというのだ。ステージ上なんてそのためのスペースと言っても過言じゃない。


「「「ちょっと待ちなさい」」」


 捕まった。


 奥からワラワラと出てきた女性陣に取り囲まれた。


 まぁわかってた。


 男性陣が俺を見た途端『これでこの地獄からオサラバだ』みたいな顔したし、某童話のパンのように食堂から玄関横の休憩室まで点々と配置されていたので、何かしらの方法で女性陣に伝達したのだろう。


「な、何の用だ……ノンフライヤーに何かあったのか?」


 このタイミングで絡まれる原因はそれに違いないと、一同の圧に負けないよう気持ちを奮い立たせて犯行動機を尋ねる。


 未遂だろうと本人が苦痛と感じたらそれはもう暴力だ。


 皆さんの気持ちわかってますよアピールで罪(?)の軽減も図れる、一挙両得の策である。


「いいえ。そんなことがあったらデートを邪魔してでも連れ帰ってたわ」


「やめろ。ラヴルート進めって言ったのアンタ等だろ。息子や未来の娘の幸せより自分優先すんな。4時間ぐらい大人しく待ってろよ」


「冗談よ。フィーネかユキに言って直してもらうわよ」 


 平然と自己中心的発言をおこなう母さんを咎めると、手をパタパタさせながら苦笑し、先程とは別の自己中心的発言を繰り出してきた。


「根本的に間違ってる。俺は『待て』と言ったんだ。どうやって現状を打開するかは聞いてない」


「ルークが去った後、私達はあの部屋にあったジャガイモを食べ尽くしたわ。でもまだ食べ足りない。当然よね。フライドポテト以外にポテトチップ、コロッケ、サラダといくらでも料理出来るんだから。そこで王都中にあるジャガイモを買い漁った私達は、ここの厨房を借りて食後のデザートを作ることにしたの」


 無視……。


 しかし気にしたら負けだ。ツッコんでも負けだ。


 良いじゃないか、無視。要は無関係ってことだろ。責められないってことだろ。その気になれば王都中の技術者と倉庫の中身を集めてノンフライヤーを量産することも出来たのに、今居るメンツと今ある道具だけで解決しようとしただけ偉い。


 予想だが、もし俺が製作に失敗していたら、あるいは求める素材がなかったら、たぶんそうなっていた。そのぐらいの勢いはあった。


 女性にとっての体重とは国宝や第一級機密より重要なこと。知らんけどたぶんそう。じゃなきゃここまで市場拡大しない。どんだけ同じ商品出てんだよ。


「でも問題が発生したの……」


 平凡な日常を語っていた母さんの顔つきが急に神妙なものになり、周囲もそれに合わせてゴクリと唾を飲む。震える者すら居る。


 自然と俺の心拍数も上がる。


 数秒の間を開けて母さんはカッと目を見開き、叫んだ。



「一番良いポテトの調理方法はなにか、争いが生まれたのよッ!!」



 く、くだらねぇ……料理の一番とか誰がどう決めるんだよ。十人十色で決着つかないだろ。


 もちろん思うだけ。


 口に出したら第一次が片付いてないのに第二次ポテト戦争が勃発する。


 まぁ争いってそんなもんだけどさ。火種が残ってる内に次を焚きつけるもんだけどさ。用意した道具が無駄になるし、敗北を認めない勢が一定数残ってるし、命の奪い合い以外……いや命の奪い合いですら競争意識による技術革新に繋がるし。


 ただこれは違う。どこにも繋がらない。終わりもない。


 一応聞くだけ聞くけど。




 案内(連行)された厨房にはダイエットに関係なく女性陣が大集合していた。


 ヒカリやユチなど、参加者の半分は好きな食べ物についてトークしているだけのようだが、残りの半分は相手を滅ぼしてでも一番になろうとする野蛮人のようだ。


 調理台と廊下の惨状から察するに、処刑場ちゅうぼうに連れてこられた男性陣はどの派閥に属するか選択を迫られ、選ばれなかった派閥に「これを食ったら気が変わるはずだ」と片っ端からポテトを詰め込まれたのだろう。


 上手く凌がないと俺も同じ運命を辿ることになる。満腹は空腹より辛いと言うからな。気を引き締めていこう。


 女性陣も同じような攻防によってそれなりの量を食べているはずだが、甘い物とお菓子と試食は別腹という謎理論を謎に実行出来ちゃっているせいで無傷と。


「私は断然シューストリング派ね。あのカリッて食感は他では出せないものよ」


「同じく。ジャガイモのサイズや品質にも左右されづらいですし、細いので揚げる時間が短くて済みますし、ちょっとしたおつまみにピッタリです」


 そして始まる各派閥の演説。


 おそらく何十回と繰り返されていることだが、1人でも多くの同志を得たい女性陣は気にしないどころか嬉々として良さを伝えてくる。


 母さん、エル、シャルロッテさんのオルブライト熟女トリオは、ファストフードでよく使われるタイプを支持。3人とも料理をする人間なことも大きそうだ。


 エルも、ダイエットには興味がなくても美味しい料理となれば話は変わるらしく、俄然乗り気。絶対にナンバーワンの座は譲らないという強い意志を感じる。


 なおウチで最も高齢はフィーネとユキだが……おっと誰か来たようだ。う、うわっ、なにをす――。


(閑話休題で~す)


(ええ。これは閑話休題ですね。本題とは一切無関係ですし、主が他者を貶しているところは見ていて気持ちの良いものではないので、我々なりの教育的指導です)


 ……ハッ、俺は一体何をしていたんだ。


 あ、語り部か。


「ふっ、何を言ってるんだか……あんなの冷めやすくて型崩れが早い失敗作じゃん。フライドポテトの魅力は食べ応えのあるホクホク感! つまりウェッジカット一択!」


「ぶっちゃけアレってジャガイモじゃなくても良いよね。何のためにジャガイモにしてるんだ。素材風味を味わおうよ」


「猫の手食堂では昔からこのタイプが一番人気だニャ」


 ノルン、リン、リリのロア商会熟女トリオは、ファミレスから高級店まで様々な場面で付け合わせとして活躍する三日月状の皮付きカットを支持。


 個人的な意見だけではなく店で人気という客観的意見により一歩リード……かと思いきや、他を下げようとしているのでプラマイゼロ。自信があるなら良いところだけを伝えて勝利を掴みとれ。


「私はやっぱりストレートカットね。カリカリとホクホクを両立した食感が堪らないわ。店によって一番味や食感が分かれるし、調味料とも合わせやすいし、食べ応えもあるし、パーフェクトフライドポテトよ」


「ワタクシもマリー様と同じ意見ですわ」


「飽きないのは大事よね」


 マリーさん、ニコ、ユウナさんの王都上流階級トリオは、ファミレスでも単品で使用される、揚げ時間は掛かるが食べ応えもあるスタンダードタイプを支持。


 当たり前のように王妃様が参戦しているがスルーの方向で。


 てっきり彼女達は普段食べているであろうウェッジカットを支持すると思っていたのだが、高級志向あるある『最高を求め過ぎて同じになる』によって食べ飽きて別の味や食感を求め始めたようだ。


 ところで、飽きさせないための工夫はするのに、あえてランクを落とすって考えに至らないのはなんでなんだろうな。


 俺はそういう不釣り合いの食べ方好きだぞ。キャンプで作るカレーに高級牛肉入れたり、家で食べるカップ麺にお手製カレー入れたり、チーズ乗せるだけの朝食パンに高いの選んだり、それだけでテンション上がる。コツは普段と違う部分をちょっとにすること。多過ぎるとただの高級品になる。


 ちなみに類似品に、最新至上主義の『性能を出し切った結果基礎が疎かになる』『凄いが一般人には理解されず並に敗北』があるが、高級志向と同じく努力の方向性を間違えていると思う。


「飽きないと言えば、最近は原材料の品質に左右されないハッシュドポテトも増えましたよね~。細かく刻むから色々な形に成型出来ますし、ポテトなのにポテトっぽくなくて一風変わったフライドポテトとして食べられるので私好きです~」


「わたしも!」


 ユキや子供達は、ファストフードの朝食メニューや冷凍食品などで有名な、揚げても焼いても美味しいカリカリポテトを支持。


「ユニークな形状にカットしたものも増えたわよね。くるくると渦を巻いたスパイラルカット、波状にカットしたクリンクルカット、網目状のラティスカット。会食でよく見るわ」


 貴族様にはお馴染みの、ボリューム感やメニューの独自性などに効果を発揮する、バラエティー豊かな新ジャンルも参戦予定。



「お前等フライドポテト舐めてんのか? なに一通り出揃った感出してんだよ。塩・ケチャップ・マヨネーズ・ピリ辛バーベキュー・バジルなどなど、味付けでさらに細分化されるし、まだ出てないコーディングタイプもあるだろ」


 決着がつかないなら一生争わせとけば良いじゃない。


 各々の主張を聞き終えた俺は、批難や正論ではなく新たな火種をもってこの争いを終わらせに掛かった。どうせ食べ飽きたら「今は○○の方が好き!」ってなるし。


「またアンタは知らない料理を出して……」


「で、それってどんな料理なの?」


 良いことをしているはずだし、油で揚げるという調理方法が一般化した今だからこそ意味のあるものなのだが、何故か一同に呆れられてしまった。


 別に気にしないけど。


「表面に味付きのバッター液……水や牛乳で小麦粉を溶いたものをコーディングするんだ。油で揚げたような食感になるし、これなら時間が経ってもサクサク感が持続する。揚げタコ焼きやリンゴ飴に近いな。

 ちなみに、焼くにしろ揚げるにしろ何かしら加工する必要があるから、ノンフライヤーじゃ出来ないぞ。カロリーは高くなるけど美味い」


「「「今すぐ作って」」」


「お前等……」


「こ、これはチートデイよ。あえて太りやすいものを食べることで代謝や満腹度を上げて痩せやすい体にするっていう、週1ぐらいでやるノットダイエットデイ」


「限度があるわ!!」


 と言いつつ作業に入る。


 すべて計算通りだ。


 この隙にノンフライヤーを隠せば、太りにくいという大義名分で活発化したこの不毛な争いも、一旦は落ち着くはず。


(――ってもう無いし。ナイスだユキ)

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