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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十章 ステーションⅢ

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千二百七十一話 続々1000年祭1

「やっぱ宿屋はこのぐらいが丁度良いな……」


 自分に割り当てられた3階の部屋に荷物を置き、室内を軽く物色し、階層や位置によって差があるのか調査するべく2階にあるイブの部屋へ。


 部屋にはシングル・ダブル・ファミリーの3種類あり、俺もイブもシングルだったことに安心と不満の入り混じった複雑な感情を抱いたものの、人数的に仕方ないのだろうと納得することにし、階下へ向かいながら誰とはなしに賛辞を贈った。


 俺達が今居るのは王都の中でも寂れたエリア。


 大陸中どころか世界中から観光客が集まった結果、路上で寝て強制退去させられた連中が町の外に村をつくるような状況となり、そこら中に露店はあるし通行人も多いが大通りと比べたら閑散と言えるほど静かだ。


 それに加えて宿屋は絶妙に野暮ったい造りをしていて、まるで都会の中にある自然公園のような癒し空間と化している。


 そういった場所の方が貸し切りやすかったというのもあるだろうが、利便性より居心地重視の俺やイブのような連中のことを考えてわざわざ選んだのもたしか。


 一言で言うと需要と供給が合致していた。


「ん。落ち着く。人が入って来ないのも良い」


 会話する大切さに気付いたというよりは自分の意見を言える雰囲気だったからだろうが、隣を歩いていたイブが反応してくれた。


「それな。表の看板。誰が考えたのか知らないけど表彰もんだろ」


 宿泊可能か否かの確認があまりに多かったのか、入り口横にある案内板には新品同然の『満室』のプレートが設置されていた。微妙に隙間が空いているので『空室』のプレートが入ると見える。


 ひと目で宿泊状況がわかる看板のお陰で宿屋に足を踏み入れるのは関係者のみとなっており、俺達は実家さながらのまったりとした空気をエンジョイすることが出来ていた。


「でも今だけ。3日後には普通の宿屋に戻る」


「しゃーない。泊まりたい人がわんさか居るのに、空き部屋の分も料金払うから貸し切らせてくれってのは、あまりにも自己中心的な考え方だしな。部屋割を調整して2階だけは貸し切るらしいから我慢してくれ」


 旅行参加者の半数は2泊3日の予定。


 その後は多種多様な人種が入り乱れる普通の宿屋になる。


「それだと食事中や出入口は危険地帯」


 知らない人と接触する可能性のある場所を『危険』と表現するのはやめていただきたい。それをするのはコミュ障の中でもだいぶ極まったヤツだけだぞ。


 まぁ旅行先の宿泊施設や祭りで浮かれたテンションなら、「うぇーい、YOU達どこから来たのうぇーい」と絡まれるのは十分あり得ることだけどさ。


 それも旅行の醍醐味ってことで。


 そうならないように守るし。


 貸し切らなかったせいで苦痛を感じたらきっと彼女は二度と旅行しなくなる。するとしてもバカ騒ぎしてない時期か、裏からこっそり。



「おや、お出かけですか」


 夕飯の支度をしているのだろう。受付は無人で、食堂の奥から良いニオイが漂ってくる1階を進み、町へ繰り出そうとしていた俺達は呼び掛けに足を止めた。


「デートです。夕飯までには戻ります」


 声の主は義姉、シャルロッテさん。


 玄関横の休憩室で愛息子と共に駄弁っている。入店した時は見かけなかったので部屋を物色している間にすれ違ったのだろう。


「シャルロッテさんは……楽しんでるみたいですね」


「はい。それはもう」


 ここで誘うほど野暮ではない。彼女達も3日で帰還予定組だったこともあり、息子にばかり構っていないで自分も祭りを楽しむべきだと進言しようとするも、テーブルの上にはソース料理から謎用品まで各種お祭りグッズがズラリ。


 ひと休憩した後、町へ繰り出し、お祭りムードを堪能しつつ買い漁り、戻って来てさあ遊ぼうというところで俺達と遭遇したようだ。


「さっきまでユキさんも一緒でしたよ」


 どこにでも居るな、アイツ……。


 しかし宿屋に戻って来た時の遊び相手、話し相手になってもらえるのは有難いことだ。誰がオリバーを一番喜ばせられるか勝負も出来る。


 レオ兄の仕事が片付いたら3人で何かするだろうし、彼女にはこのまま電話番ならぬ宿番をしていただこう。


「そのユキさんから伝言があるんですけど、聞きます?」


「あ~……その前に確認したいんですけど、その質問は無視したところでどうにもならないことを俺が重々承知しているのを理解した上で、やってるんですか?」


「もちろんです」


 悪戯っ子め。義理の姉でなければお仕置きしていたところだ。


「伝言ですけど『新作魔道具の発表会はラヴに向いていないので絶対に行かないように。そして義理の姉でエッチな妄想をしないように』とのことです」


「全体通しての返答は『冗談は生き方だけにしろ』で」


「つまり賑わっている中央部に向かうと?」


「はい」


「私のことはエッチな目で見ていないと?」


「はい」


「え~っと、ルークさんがそう答えたら……あ、ここですね。なになに。私とエリーナさんとイブさんが普段使用している下着を並べて、どれが興奮するか選んでもらう、ってユキさん!? なんですか、この質問!? 2人の仲を進展させるって話だったじゃないですか! 私達を巻き込まないでください!」


 お祭りグッズの中に紛れていた紙から目的の一文を見つけ出したシャルロッテさんは、目で追いながら朗読。初めて知ったその内容に声を荒げた。


 犯人は言わずもがな。おそらく件の下着セットもどこかに紛れているはずだ。


 ただ俺は微塵も見たいとは思わない。


 例え、手近にある箱の蓋がパカッと開き、一瞬それらしきカラフルな物体が見えたとしても断固知らんぷりする所存である。


 実母と義姉と将来の嫁の下着審査。


 誰が好き好んで6割強で死亡するデスゲームに参加するというのか。


 そもそも審査している時点で、知り合いの下着に触れた時点で死亡確定だ。どうせ手に取った瞬間に父さんとかレオ兄とか仲間の誰かがやって来てドン引くしな。


「あ、間違えました。イブさんが買った下着を言い当てるでした」


「どうやればさっきのルートに行けるか気になるところではありますが、まぁ良いでしょう。まだ死にたくありませんからね」


「一応確認しますけどまだご存じありませんよね?」


「もちろん」


 道中でその話題に触れはしたが拒否されたし、嫌よ嫌よも好きの内と都合よく解釈して周囲の目に晒されないよう袋の中で開封することも出来たが、別の話題を優先してしなかった。


 あえて言うなら、袋のサイズから上下セットを購入したと推測したぐらいか。つまり彼女が買ったのはブラとパンティが似た色や形のもの。


 当然それを口に出したりもしていない。


 ふふふ、俺だってそのぐらいの配慮は出来るんだぜ。



「そうですね……ズバリ! 黒のスケスケ!」


「その心は?」


「イブは周囲の人間から恋愛の愚痴を聞いていました。ならば男がそういった物を好むことも知っているはず。必ずしもそうとは限りませんが、1つ持っていた方が選択肢の幅が広がると考えたイブは、この機会に購入したのではないかと予想しました。大袋に入れた際にもほとんど重さが変わらなかったというのもあります」


「気持ち悪いですね」


「思春期の男子なんてこんなもんですよ。表に出すか出さないかの違いがあるだけで。悪いのはそれをクイズにして引き出したシャルロッテさんです」


「ユキさんにはいつもお世話になっているので断りづらかったんです……」


 そこまでわかってるなら俺を責めるな。


 大体身の回りの変化に興味を示すのは素晴らしいことだぞ。自己分析まで出来てなお良し。


「ではイブさん。正解をどうぞ」


「あってる。メイドさん達が教えてくれた。そういうのも持ってた方が良いって。男の人は好きだって」


 ふっ、余裕だぜ。



 ――で? それが何か?


 羞恥心がある内はダメとかイイとかそういうこと?

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