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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十章 ステーションⅢ

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千二百六十四話 続1000年祭5

 ○○をするためには××が必要で、それを手に入れるには△△を集めなければならない。


 周回プレイや町の行き来はゲームを隅々まで楽しんでもらうために必要な要素だが、やり込み要素に見せかけて手を抜いていることの多い部分でもある。


 それがどちらかはプレイヤー自身が判断すること。本人が楽しいと思えばどんなクソゲーも神ゲーになるし、楽しくなければどんな神ゲーもクソゲーになる。


 これはゲームに限った話ではない。


 現状を受け入れられるか。周りに「これは必要なことだ」「やれば絶対楽しい」と言われて納得出来るか。強要されても前向きになれるか。


 そういった心持ちが人生を大きく左右すると俺は思う。


 ちなみに、祭りを楽しむためには王城に立ち寄らなければならないなどという訳のわからないクエストを一切説明なく強制イベントにするゲームは絶対に手抜きゲーだが、そこで楽しめることが起きればまだ納得していた。


 ただおこなわれたのは国王および精霊王による人生の否定。


 曰く、俺とイブが恋人っぽくないせいで「こいつ等が結婚しても幸せになれない!」と頼んでもいない心配をされたり、裏取引があったに違いないなどの憶測が飛び交っているらしい。


 しかもその責任が俺にあると言われてしまった。


 どこに楽しみを見出せと?


「今より素敵な人生になることを喜べば良いと思いますよ~」


 意識たけぇなオイ。


 流石の俺でも難癖を改善案として捉えるのは無理だわ。


 自分自身の行動に疑念を抱いていたならともかく、正しいと思ってることを曲げてまで従うわけがない。



「言いたい奴等には好きに言わせとけよ。部外者が気に入ろうが気に入らまいが知ったことか。俺達は俺達の好きなようにやる。正しいと思った道を進む。今までも、そしてこれからもな」


「つまりラヴルートには向かわないと?」


 諸悪の根源であるユキと、根も葉もない噂に振り回されて迷惑を掛けられたわけでもないのにゴチャゴチャ言っている無関係な第三者に遺憾の意を表明すると、ユキが最後通告をするように質問してきた。


「少なくともお前が用意した道は進まない。強要されてやるようなもんじゃないだろ、恋愛って。他にやりたいことがあるのに、それを蔑ろにしてまで周囲にアピールをする必要がどこにあるんだよ」


 世間体のために恋愛する必要があるかと言われたらNOだし、した方が良いかと言われたらYESだし、難しいかと言われたら返答に困る。


 行動理由の過半数がYESにならない以上、優先度を変える必要はないと俺は考えている。


 俺もイブも趣味を仕事にしている。


 遊ぶ時間があったら作業し、気分が乗った時は食欲や睡眠欲を放り出して没頭する人間が残る三大欲求『性欲』をおざなりにするのは当然だし、発散するにしても楽しい楽しい仕事の時間を削ってまで他人の評価のために恋愛するわけがない。


 本人達がそれを望んでいるのだ。そして望んでいないのだ。


「恋愛の楽しさを知らないだけでしょう~」


「否定はしない。慣れたら仕事より楽しくなる可能性は十分ある。でも強要されてやるようなもんじゃない。手が空いた時にやってみるかってなるもんだろ」


「うわ……考え方が陰キャ……」


「黙れ、ノルン。消極的な人をバカにするな。それだけ今に満足してるってことだろ。その刃を突き立てて良いのは現状に不満を抱いてグチグチ言ってるヤツだけだ。好きなことを仕事に出来て、しかも楽しんでるとか最高じゃないか。若いんだから恋愛しないとダメとか強要する方がどうかしてる」


 恋愛優先度が低い人間同士が自然とくっつくのは悪いことではない。


 本人達のやりたいようにやるのが一番だ。


「ルークさんはさっきから強要強要と言いますけど、世の中に強要されないことなんてありませんよ~。世間の風潮、周囲の目、親兄弟の期待、友人との比較、被害妄想や加害妄想など、人は常に焦りを感じています。あるのは自ら動くか、周りに動かされるかの違いだけです」


「なら部外者の立場を貫けよ。周囲に働きかけるな」


 ユキ達がやって良いのは見守ることだけ。


 百歩譲って茶化したりそれとなく促したりで、思った通りに動かないからといってコマを急き立てることは許されない。動き方まで決めるなどあってはならない。


「噂に影響される奴等も奴等だ。本人達が納得どころか歓迎してるのに『いいや、違うね』はおかしいだろ。法やモラルに反したことしてるわけでもないんだぞ。むしろ素晴らしい成果ばかり出してるんだぞ。なんで口出してくんだよ。それをやって良いのは、心配する義務や身を守る必要がある家族、友人、仕事仲間だけだろ」


 自分達の生活を左右しかねない公務をしているマリーさんや他の王子ならまだしも、滅多に表舞台に立たないイブの人生をとやかく言われる筋合いはない。


「楽しいからに決まってるじゃないですか~」


 確固たる意志をもってラヴ賛成派の意見を跳ね除けると、ユキはニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべて、俺の持論を否定してきた。


 何故だろう。いつもの行動理念のはずなのに前世の記憶がそこはかとなく刺激される。ネット社会に想いを馳せずにはいられない。自分の思い通りにならないことに憤慨する厄介オタクの姿が脳裏にありありと浮かぶ。


 というか彼女こそその体現者だ。


「荒らすことに快感を覚えるようになったら人として終わりだぞ。まさか自分を正義と勘違いしてるんじゃないだろうな? 関係者一同と議論しなければならない、どこに出しても恥ずかしくない批難が出来ないなら、それは悪だからな?」


「あwwらwwしww。勘違いしてるのはルークさんの方ですよ~」


 流石は体現者。真っ当な指摘を鼻で笑い飛ばした挙句、こちらに責任を押し付けてくる。


 理由を言え、理由を。話はそれからだ。


「私が流した噂なんて『○○ってどうなん?』程度のものです。それをにーちゃんねるで見たり巷の噂で耳にした人々が思考し、納得したことで今の状況が生まれたんです。つまり元々皆さんの中にあった不安や疑惑が私が質問を投げ掛けたことによって噴き出しただけ。それを解消するのは当然じゃないですか。

 よってルークさんは『最近有名になってきたルークさんの度量が疑問視されてるので、やれば出来るってところを見せて安心&納得させましょう』という私のスンバラシイ提案を受け入れるべきなのです!

 そもそもルークさんも言ってたじゃないですか。良いか悪いかで言えば恋愛するのは良いことだって。楽しくて有益だからと、仕事にばかり時間を使って恋愛をしようとしない、たまの休日も役立ちそうな情報を集めてしまう、ハーレム願望を持ちながらイチャイチャを二の次三の次にしている現状を改善しましょうよ~」


「む……」


 やり方はアレだがやろうとしていることは思った以上にまともだった。


「いつまで経っても恋愛しようとしないルークさんの人生は見飽きました。よってラヴを要求します」


 と思ったら、思った通り自己中心的な理由だった。


「私の行動理由は問題ではありませ~ん。ルークさんが、やるかやらないか、出来るか出来ないか、恋愛を楽しめるか楽しめないかです」


 それはそう。


 先程も言ったが、これまであまりやっていないから知らないだけで、やれば楽しめる可能性は十分にある。


 あるのだが……。


「ん~……」


「そんなに嫌なの? イブちゃんとイチャイチャするのが」


 何故俺が唸ったのかを理解しているレオ兄達は何も言わないが、その代わりとばかりにリンが尋ねてきた。


 聞きたくても聞けない、強引に場所移動させた国王への謝罪の意味もあるかもしれない。


「いや、そうは言わないけどさぁ……俺は仲間達と祭りを楽しむために来たんだ。なのに王城に籠ってなんやかんやしたり、出掛ける時は絶対イブととか、なんか違うんだよ」


 子供が欲しいからと毎晩相手させられるようなもの。


 読みたかった本を本棚に仕舞い、友達からの誘いを断り、貯金や2人きりの時間を犠牲にしてまでやるべきことかと言われたら唸るしかない。


「またまた勘違いしてますね~。誰もイブさんとだけイチャつけなんて言ってません。イブさん一筋で行くならそれでも良いですけどルークさんはハーレム希望じゃないですか。この際、懐の広さを見せつけてハーレムを作れるってことを知らしめちゃってください」


 世間の人々が心配しているのは、俺にそれを成り立たせるだけの力と愛があるかどうか。みんな幸せにするなら問題ないという暴論である。


 まぁこれが一夫一婦制が一般的な世界なら、野郎共から嫉妬されたり、女共から「愛は1人に捧ぐものよ。こんなの家庭じゃないわ」と文句言われたり、その他大勢に杞憂されるだろうが、一夫多妻が当たり前の貴族社会なら問題ナッシングだ。


「王城で寝泊まりするって話は? 抵抗したら宿屋に泊まれなくなるとか言ってたじゃん」


「何故私の脅しが本当だと思ってしまったのか……」


 つまりいつもの冗談だったと。


 安心しつつも嘲笑うような雰囲気を醸し出すユキを殴りたくなった今日この頃。



「ガウェインさん……というかセイルーン王家的にはどうなんですか? ユキが噂を流すのを止めたら無理にイチャイチャしなくても良いと思います? 世間体さえ何とかなれば楽しい研究生活送ってても大丈夫な感じですか?」


「無理強いするつもりはないよ。私は本人の意志を尊重する。ただやはり父親としては娘に幸せになってもらいたいし、様々なことに興味を示して見聞を広めてもらいたい」


 つまり男女のあれやこれやをやって欲しいと。教えて欲しいと。照れながら彼氏の良さを語ったり、男のために努力する娘の姿を見てみたいと。


 そこまで言われたら仕方がない。


 やってみようじゃないか。


 おそらく俺達が結婚するのは来年、15歳になってすぐ。


 あと1年半で世間の奴等に知らしめなければ。


「どしたの? 急にやる気じゃん」


「だって出来なかったらコイツ絶対『こんなものがあるから!』ってロア研究所を破壊するだろ。それどころか世界の理に干渉して化学反応や精霊術の方式を変えたり、属性によってはプラズマクラスに隠匿したり、世界中の人々から技術と知識を奪うだろ」


「ボクも全力で応援するよ! 頑張って!」


 リンが協力したところで何か変わるとは思えないのだが、邪魔されたり茶化されるよりは良いので、大人しく受け入れることにした。


 別にイチャイチャすることが嫌なわけじゃないしな。やればハマるかもしれないし。いや、エロい意味じゃなくてね。


 なお近くに控えていた両名フィーネとユキが無反応だったことをここに記しておく。


 取り敢えず対抗戦力を確保するために、イブ、フィーネの順番で落とそうと思うのだが、どうだろう?

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