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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六十章 ステーションⅢ

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千二百六十三話 続1000年祭4

 セイルーン城内。


 普段から国の政治と経済の中心として機能しているこの巨大建築物は、多数の人間が働いており、いつも荘厳な雰囲気の中にどこか騒然として空気が漂っている。


 が、現在は人々が忙しく動き回る姿が目に付く。


 言うまでもなく、1000年祭の準備や運営、ステーション計画のあれやこれや、各国からの使者を迎えるための仕事に追われているからである。


 とは言え、何年も前から開催が決まっていた祭りについては覚悟完了しているはずだし、ステーション関係も地元民との交渉や鉄道開発、それに伴う人材や物資の運搬、慣れない地下整備、新技術てんこ盛りで気を遣う作業などなど、新しく町をつくるより大変だがやること自体はこれまでやってきた仕事とそう変わらない。


 むしろ忙しいことを喜ぶべきだ。


 成功するかどうかもわからず、成功しても一言二言の褒め言葉のみで失敗したらボロクソに言われるとしても、国を担う人間なら成長を歓迎しなければならない。


 それが彼等の生きる道であり、これがここ半年の彼等の日常である。


 そして、誰しもが事情を理解しているので多少おざなりな対応をされても文句は言わないだろうし、忙しさの要因の1つを作り出した俺達は例えぶつかられたとしても苛立つことはない。


(まぁ雇い主の前でそんな失態をおかすバカ居ないけどさ)



 城内の忙しさを他人事のように眺めながら(実際他人事なのだが)、国王が待っている部屋へとやって来た俺達は、すぐに部屋を出て移動を開始した。


 用事が即行で片付いたとか、問題が起きて移動を余儀なくされたとか、待ち合わせに使っていただけで目的地は別にあるとかではない。


『彼女達は玉座での謁見を希望しています』


 このユキの余計な一言でガウェインさんに気を遣わせてしまったのだ。


「「…………」」


 勝手に気持ちを代弁されたリンとノルンは当然絶望した。


 というか、ナウ、している。


 もはや歩くだけの人形だ。首を吊れと言われたら迷わず従うかもしれない。


 たしかに彼女達が王族っぽさを求めていたが、国王である必要はなかった。手隙の先代国王辺りに謁見の真似事をしてもらうだけで良かったはずだ。


 体調不良で当日欠席したバンドメンバーの代わりをプロに頼んで、しかも初対面で、命令に近い要望を、無関係な第三者に出されて平気な人間など居るわけがない。


 玉座も、空いていたので良かったがもし利用……は国王不在なので無いにしても、この後のイベント支度をしていたらどうするつもりだったのか……。


「え~、手の空いている王族を全員集めてください。大臣やこの国と深いかかわりを持つ国の人達も」


「やめてやれ。それ以上イジメると2人ともそこの窓から身を投げ出すぞ」


「は? そんなわけないじゃん。いくら不敬だからってそれはないわ。申し訳ないとは思うけど、この程度のことでそこまで要求する国王の治める国とか滅ぶべきでしょ」


「そうそう。結局のところ同じ人類だしね。権力や財力があるからって生殺与奪の権利まで持ってるわけじゃないし。高慢なヤツ見てると生まれや職種がそんなに偉いんかいってツッコミたくなるよ。貢献度で言えばアタシ等と変わんなくない? 何ならルークとかフィーネ様の方が上っしょ?」


 俺のフォローを返せ。


 そしてもうちょっと王族に尊敬の念を持て。


「ははっ、構わないよ。国民の本音が聞ける貴重な機会だ。そう思われている内は我々もまだまだ努力不足ということだ」


 口に出すまでもなく俺の言おうとしていることを察したガウェインさんは、ノルン達の冗談のような主張を笑って受け入れた。


(流石は先祖代々、子々孫々を背負う王族……世間体を気にするあまり好感度の上がる返答しか出来なくなった哀れな人間よ……)


「その同情的な目はどうかと思うがね」


「え? 言いがかりつけるのはやめてくださいよ。俺はガウェインさんの懐の広さに素直に感心したんです。それ以上何か言ったら評価が下がるだけですよ」


「ルークさんが嘘をついている確率……100%!」


「っていういつもの冗談だろ? ん? 場所と空気を弁えろ? 今は冗談が許される状況じゃないぞ?」


 ユキの所持していたロクでもないデータを捨てさせるべく、俺は残像を生み出しながら彼女の両頬をアイアンクロー。頷く以外の選択肢を潰していった。


「それにこの程度の不敬、これまでルークさんがやってきたことに比べたらなんてことありませんよ~」


 が、俺が掴んでいたのは質量を持った残像だったらしく、ユキは『少し離れた窓際に座って微笑みかける』という強者感丸出しの雰囲気で話を続けた。


 何故か矛先がノルン達から俺に変わり、家族全員が凄い目をしているが、俺は自分に正直に生きてきただけだし功績も十二分にあるので大丈夫だと思いたい。


「私も心当たりがあります。これまで我々は親衛隊として王族の方々を見守ってきましたが、彼の言動は目に余るものがありました」


「右に同じく」


「お前等は黙ってろ。話がややこしくなる」


 ここまで案内してくれたモンパとディアンが口を挟んできたが、慌てず騒がず即座に対応。


 事あるごとに俺の前に現れた彼等は色々知っている。おそらく彼等が言おうとしていることの2割は真実だ。


 ただ偏向報道によって8割の嘘も真実にされかねない。


 今の状況でそれはマズイ。火に油だ。


「なんで焦ってんの? フィーネ様に読心術使ってもらえばいくらでもフォローしてもらえるんじゃないの?」


「ノルンはバカだね~。各国のお偉いさんが集まる王城で、読心術なんていう争いの火種になるような真似出来るわけないじゃん。どうせ禁止しても使う輩が現れるから城全体に妨害結界とか張ってるんだって。そりゃフィーネ様なら余裕で破れるし、バレないように出来るだろうけど、そんなことしたら王城のメンツ丸つぶれだし根拠を示さずにフォローも出来ないから頼るわけにはいかないんだよ」


「なるほどっ!」


 説明御苦労。


 まぁ俺の知り合いは大体気にせず使ってるんだけどさ。ユキに至っては政治に関係ない部分なら問題ないって判定でバラしてるし。


「でもいざとなったら頼るぞ。例えば俺に不利な条件を突き付けてくるヤツが居た時とかな」


「さ、着きましたよ。お待ちかねの玉座です」


 モンパは俺の挑発を見事に受け流し、王城の中でもひと際豪華な扉をディアンと協力して開いた。


 都合が悪くなったのでスルーしたとも言う。




「本日来てもらったのは他でもない。ルーク君とイブの関係についてだ」


 語り合いうことを目的とした謁見の間と違い、使者の応対や任命など形式的な面が強い玉座。


 荘厳な雰囲気で座った国王とその前に立つ貴族や平民。


 物語によくあるシチュエーションに興奮する一部の人間を他所に、ガウェインさんはまずこちらを見て、続いて同意を得るように一同に視線を向け、よくわからない話題を持ち出した。


 ちなみに俺もテンション上がった側。


 ここには何度か入ったことはあるが、パーティだったり何かのついでの報告だったり、毎回謁見っぽくないのでこの如何にもな空気は新鮮だったりする。


「俺とイブの関係? 婚約解消とかそういうことですか? 別に良いですけどイブは貰っていきますよ。イチ研究者として幸せになってもらいますよ」


「冗談でもやめてくれ。あの子は本当にその道を選ぶ。安心してくれ。キミ達の結婚に反対している人間はもうこの王城には居ないよ。それどころか歓迎している」


 脅迫するとガウェインさんは呆気なく折れた。


 世間の目を気にする彼等にとって王族の地位返却はよほど痛いと見える。前例があるのかは知らん。でも彼女はやる。これまで培った力を使って世界初をやってのける。


「それが違うとなると……」


「一部でキミ達の結婚が政略結婚と思われているんだ」


 これ以上脱線されては堪らないと思ったかどうかは知らないが、ガウェインさんは俺の話を遮って答えを提示してきた。


 先程の説明に『もう』や『この王城には』などの不安を煽るワードが入っていたのはそういうことだったようだが――。


「そんなもん放っておけば良いでしょ。この前の戦いで俺は実力を示しましたし、天才が組めば新しいものを次々生み出せる事実もあります。何よりお互い一緒に居て苦じゃありません。政略は全員が納得してるなら歓迎されるべきことですよ」


「そうはいかない」


「何故?」


 ガウェインさんは俺の背後に目をやった。


 そこにはユキの姿が。


「え? あ、はい、噂を広めたの私ですけどそれが何か?」


「何故!?」


「……わかりませんか」


 尋ねる意味合いが強った先程とは違い、責める意味合いを前面に押し出して叫ぶと、ユキは神妙な顔つきおよび口調になり、


「ルークさんにはラヴが足りていないんですよ」


 訳のわからないことを言った。


「ぶっちゃけテコ入れです」


 補足したがやっぱり訳がわからなかった。

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