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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
七章 商店街編
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九十三話 公衆トイレ

 さてこのロア商店街、今まで語ってきた通りヨシュアで一大ブームを巻き起こしている。


 食堂、銭湯、雑貨屋、どれを取っても連日大賑わいだ。


 しかし、実はもう1つの目玉があったりする。


 誰にも注目されていないし、これがあるからと言って得する人が居る訳でもない。


 ただ商店街にはどうしても必要な物だったのだ。



 それこそは『公衆トイレ』。



「というわけでやってきました~」


パチパチパチ。

「ルーク様イチオシの場所ですね」


 俺の掛け声に反応してくれたのは、お情けで付いて来てくれたフィーネだけ。そもそもフィーネ以外誰も居ない。


 ・・・・うん。知ってた。


 そりゃトイレだもん。ってか完成した時にもう来てるもん。


 言ってしまえば、皆が使った汚いトイレを問題が無いか点検しに来ただけ。


 あのユキですら「面白くなさそうです~」と言って同行を拒否したほど、一切盛り上がりのないイベントだ。


 俺も今後は用を足す以外の目的で来ることはないと思う。




 さて、気を取り直してトイレの紹介だ。


「・・・・フィーネは男子の方に入らないのか?」


 作りも違うから男女両方を紹介するんだけど、先に俺が男子トイレに入ってもフィーネは入り口から動く気配がない。


 ウチのトイレ掃除はユキの担当。でもユキが来るまでフィーネも掃除してたんだから恥ずかしいって事はないと思うんだけどな。


「見ている間に誰か来そうなので、私はここで待っていますよ」


 と言って頑なに中には入ろうとしなかった。


 いいよ、いいよ! 俺1人で点検するよ!




 結局1人で男子トイレを調べていく。


 まず男女共通の事から話そう。


 公衆トイレを作るにあたり、今まで公共事業を行うことに腰が重かった貴族連中が突然協力し始めたのだ。


 まぁ、ここまでロア商会が活躍してしまった以上認めざるを得なかったのだろうが、とにかく最近一気に下水道工事が進んだのである。


 もう毎日どこかで地面を掘り返していたり、大きな道路からパイプを搬入している。辺りを見渡せば、あっちでもこっちでも工事中って状況だ。


 なので大小合わせて8つある便器は全て水洗式。


 近くの川から水の出し入れを行っているので、俺が最初に作った独立した複雑な浄化槽が必要無くなった。


 今後は同じようなトイレが各住宅に広まる事だろう。



 壁や床には特製の合板を使用。


 なんか『撥水性のある魔獣の皮と、防臭効果の高い木材を合わせたら出来ないかな~』と試したところ、まさかの『撥水』『防臭』両方の性質を持った奇跡の素材が完成した。 


 合わせた、って本当に合わせただけなんだけどな・・・・。こう、ベニヤ板・皮・ベニヤ板・皮・ベニヤ板って5層にして圧縮しただけ。


 この圧縮で木材と皮がいい感じに溶け合ったらしい。普通の合板と違って接着剤も使ってないから、どちらかから接着成分が滲み出てきたんだろう。


 しかしこれにより、俺が今居る男子トイレも入った瞬間「臭っ!」って事がない。


 一応防臭目的で化粧台に木炭を設置してるけど、もう完全にインテリアと化している。あ、これは何の変哲もないただの木炭だから盗まれても問題はない。と言うか無料配布用に置いている。


 一般的に光源なら魔石があるし、暖を取るなら火の魔術で薪を燃やせばいい。


 それすら出来ない人用に置いているのだ。ちゃんとそういう説明書きもあり、定期的に減っているところを見ると役立っているらしい。



 あと便器には全て手洗いが付いていて、用を足した後に水を流すとタンクの上から循環された水が出てくる。


 これは大も小も全部だ。


 女子トイレは身だしなみを整えるために使うから化粧台をシッカリ作ってるけど、男子トイレは手を洗えればいいって人が多そうなので小便器にも手洗いを付けた。


 どうせ水を流すんなら、その流水地点をちょっと上にするだけ。


 もちろんセンサー付きだから便器の前や上に3秒以上居たら認識されて、離れれば水が流れる仕組みだ。



 あとは・・・・・大便器はウォシュレットを使ってるから葉っぱは不要って事ぐらいかな。


 ってか誰でも使用する尻拭い用の葉っぱは絶対盗まれるから必須だった。


 ほら公衆トイレでトイレットペーパーを盗むヤツ多いじゃん。なんでウォシュレット完備しないかな~。たぶんコストの問題か、実際拭かないとダメって人が多いからだろうな。


 しかしこの世界ならノープログレム!


 コスト面は商会活動でどうとでもなるし、認知度はこれから上げるだけ。


 今やウォシュレットブームと言っても過言ではないのだ。



 実は言ってないけど、このトイレの水・・・・同じ水を使っていたりする。


 川から流れ込んできた水を、洗面台からトイレへ放流しているのである。でも流石にトイレで流した水を再利用はしなかった。


 浄化してるから衛生面では問題ないし、一応『飲まないでください』って注意書きもある。


 まぁトイレの水を飲むぐらいなら川までひとっ走りすると思う。




 男子トイレはこんなもんかな。


「・・・・よし! 異常なし! あとは掃除のオバチャンでも雇って問題があればその都度連絡もらえばいいよな」


 今のところ綺麗に使われてるみたいだし、もしかしたら領民が定期的に掃除しているのかもしれない。


 これが無くなったら誰が困るって、ここに住んでいる人達なのだから。



「問題ありませんでしたか?」


「あぁ、綺麗に使われてたよ」


 男子トイレから出るとフィーネが出迎えてくれた。と同時に数人がトイレに駆け込んでいった。


 ・・・・誰も来なかったけど、案外フィーネが入るのを止めていたのかもしれない。


 子供が点検してるって奇妙な光景だもんな。


 さて、この調子で女子トイレもパパッと片付けるか。



「あ、清掃用にこんな物を用意しました」



 そう言ってフィーネが取り出したのは『清掃中 立ち入り禁止』と言う看板。


 ・・・・何故さっき出さなかった? 本当は男子トイレに入りたくなかっただけだろ?


 そんな乙女なフィーネはさて置き、俺達は(たぶん)誰も入ってこない女子トイレへと足を踏み入れた。


 あと数年もしたら「お前女子トイレに入ってやんの~エンガチョ~」とかくだらない遊びが学生達の間で流行るんだろうか?


 そっちは良いけど、「お前学校でうんこしてただろ!」って犯罪者扱いするのは絶対許さない・・・・絶対にだ!



「・・・・ク様、ルーク様!」


 おっと別の事に集中してしまっていたらしい。


 さっきからフィーネが呼びかけていた。


「どうしたフィーネ」


「落書きがあります」


 フィーネの指さす方を見ると『トイレに住みたい』とか『ウォシュレットが気持ちいいの私だけ?』とか『彼女募集中 住所〇〇〇』とか結構な数の落書きがあった。


 まぁ男子トイレにもあったけど、用を足してる最中は暇だからどうしても書いてしまうんだろう。


 ってかいくつかは男が侵入して書いただろ。



 唯一の懸念事項がこれだった。


 誰でも気軽に使えるトイレだからこそ、犯罪意識が低くなり、平気で異性のトイレに入って来る輩が現れると思っていた。


 そして俺の予感は的中してしまったようだ。


 対策として魔術で出入りを制限しようにも俺みたいな小さな男の子を連れた母親が女子トイレに入れるかもしれないし、監視カメラを設置するわけにもいかない。何なら子供の悪戯や度胸試しで入って来るなんてことも有り得る。


 つまり対処のしようが無いのである。



ゴゴゴゴゴッ!

「舐められたものです・・・・これは我がロア商会に対する挑戦ですね?」



 しかし何としても対策をしようとフィーネが燃えている。


 いかん、ちょっとした遊び心が悲劇を生みそうな雰囲気だ。


「か、看板で注意を促せばきっと大丈夫だって!」


 今や最強無敵なロア商会に喧嘩を売るバカは居ない。


 俺は早速木の板を購入してきて『落書きは犯罪です。悪意を持ってトイレに入った人はロア商会の敵です』という看板を作った。


 普通ならこの看板にも落書きされるのがオチなんだけど、それこそ犯罪者意識の違いで、『ロア商会の敵』っていうあまりにも大きなデメリットの前では多少の悪戯すらする気が起きなかったらしい。



 その後、トイレへの落書きは一切無くなった。


 流石のフィーネ様。犯罪撲滅に非常に役立つお方だ。


 そもそも他の事でももっとペナルティを重くするべきだと思う。それなら最初から落書きなんてされなかったんだ。


 俺も内心、激おこである。

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