表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五十九章 ステーションⅡ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1513/1659

千二百五十二話 嵐の前の静けさ

「……え? 一緒に行かない? なんで?」


 車両基地で出会ったアホ貴族のせいと言うかお陰と言うか、ステーション建設でも悪意のある地上げや妨害がおこなわれているのではないかと不安になった俺は、旅行の傍ら調査してみることを提案。


 このまま直行するか、一旦王都で祭りを楽しんでから向かうか、意識調査をおこなうと全員が口を揃えて同行を拒否してきた。


 何故だ。


「お前等、リニアに乗る前も車両基地でも工事現場楽しそうに見てたじゃん。ステーションは町づくりみたいなもんだからさらに大規模だぞ? 多種多様だぞ?」


「これ以上のトラブルは御免だよ」


「作業を見てたのもどうしたって生まれる暇な時間を潰してただけだしな。移動中に窓から見る景色と一緒だ。いくら楽しいからって本来の目的を犠牲にしてまで馬車に乗り続けるわけねえだろ。俺達は1000年祭を楽しむために来てんだ」


「そうよそうよ! おんなじ仕事見ててもつまらないわよ!」


「何より今のルークさんの発言は隠してることが多過ぎて信用に値しないニャ。たしかに大規模だし多種多様だニャ。でもそれは資材の運搬や整地の話。さっき自分でリニア駅を優先してるって言ってたニャ。つまり一番進んでる場所でアレだニャ。地下鉄にも資材を取られてる状況なんだから着工に至ってない可能性大ニャ。そんな場所でやることなんて裏を調べるぐらいニャ。全然楽しくないニャ」


「ネガティブが溢れてる可能性も高いな」


 ファイ、サイ、イヨ、ユチ、コーネル。


 関わりが深そうで実は浅いクインテットから理由が告げられる。


「あっ! さてはお前等、俺の知らないところで打ち合わせしたな!? こういうことに積極的な貴族連中が居ないのを良いことに、ノット仕事連合を作りやがったな!? ズルいぞ、意見を合わせるなんて! 洗脳反対!」


 レオ兄達はやらなければならない仕事があると全員基地に残っているため、今ここには、ステーション計画を気に掛ける人間は俺しか居ない。


「旅行なんだから当たり前だよね? ルークも仕事するなら影響ないところでしろって言ってたじゃないか」


「偏向報道もどうかと思いますわ」


「いいや違うね。これは偏向報道じゃない。何が起きるかあえて伝えないことでワクワク感を増幅させるサプライズだ。あとつまらないって断言してるけど楽しいかもしれないじゃん。1000年祭並みに面白イベントがあるかもしれないじゃん」


「『かもしれない』より『に違いない』を信じるのは当然のことじゃないかな?」


 そ、それを言われると……。


 職場と祭りのどちらが見たいか、どちらに参加したいかと聞かれたら、9割は後者だろう。前者を選ぶことで社会的地位に影響を及ぼしたり金銭が発生したり、勉強になるからという理由以外では選ばないと言っても良い。


 だがそれはそれ、これはこれ。


「てかイブ達はどうした! お前等が頑張って作ったリニアが悪事に利用されてるかもしれないんだぞ!」


「そういうのはお姉様に任せてる」


 関係者一同を代表してイブが答えた。


 ファイの言う楽しさと同じく『かもしれない』で面倒臭い調査をするほど暇ではないと。たぶん動くとしても家族に言うとかだ。よっぽどだったら実力行使に出るだろうけど。


 が、それもまた真理。


 適材適所という言葉があるように、物事には往々にして担当者が存在する。


 ヴュルテンブルク侯爵は担当者失格だが、得意な人間に聞いたり任せるのはおかしなことではない。



 プルル……プルル……。


『どうしたの?』


 相手と通話方法を確認するために最低でも2コール、急ぎの用事があったり離席する必要があればそれ以上掛けて通話に出るマリーさんは、今回は手が空いていたらしく最速で出てくれた。


「あ、お疲れ様です。王都周辺のステーション計画でちょっと気になることが出来たんですけど、土地の権利とか物流とか作業員とか、書面だけではわからない部分調べてもらって良いですか? 精霊術師も同行させてください」


『は? え?』


「じゃ」


 用件だけ伝えて俺は彼女の反応も待たずに通話を切った。


 これで俺もお祭り男だ。


 なんかケータイが鳴り止まないし、心なしか着信音に怒気と説明を求める精神が宿っている気がするが、たぶん気のせいだ。


 …………お前も参加しろって言われたよ。たしかに俺も精霊術師だけどさ。




「くっそぉ、こんなことならどんなメンツで王都に行くか伝えておくべきだった。あれ絶対、俺以外に誰が居るかわからないから俺だけ指名したんだぞ」


 いくらフットワークの軽い王女でも「じゃあ今から現場に行くわよ」と言えるほど軽くはなく、抜き打ちであればいつでも構わないので、詳しい日時を決めながら仲間達に『お前等も来るか?』と視線を向けると案の定全員拒否。


 俺から名前を出したら間違いなく恨まれるので、こちらのメンバー構成を尋ねてくれないか期待するも、別の方向で空気を読んだマリーさんは見事にスルー。


 めでたく俺1人が向かうことになった。


「馬車の手配を断ったって言ってたけどその時に伝えてなかったの?」


「ああ。最初から断るつもりだったからな。人数やメンバーを教えると宿とかも手配されそうだったしさ」


 旅の醍醐味は移動時間だ。


 これから何が起きるのか、何をするのか、今のところどうなのか、そういったことを語らってこその旅。時短する必要はない。


 王都まで約10kmの道のりを徒歩で堪能すれば良い。会話を楽しめば良い。


「『その時間に調査すれば良くない?』っていうのは言っちゃダメ?」


「……ヒカリ、そういうことはもっと早く言おうか」


 そうじゃん。全然出来たじゃん。


 フィーネやユキに頼めば秒で運んでもらえるし、断られても「基地は30分も見て回れば十分みゃ。その後は楽しい接待が待ってるみゃ」とほざいてたヴュルテンブルク侯爵を脅は……オッホン! 注意して真面目に仕事させれば移動と情報収集の一石二鳥じゃん。


 これ以上あのデブと関わり合いになりたくなかったので頭の中から排除していたが、仲間達が意気投合する前に誘えば何人かは道連れに出来た。


 でももう手遅れ~。


 話の流れが途切れたから今更馬車に乗せてとは頼めないし、マリーさんに依頼しちゃったし、みんな絶対同行してくれないし、レオ兄達に仕事を手伝わされる可能性もある。


「ま、良いけどさ。俺だけ道中を楽しめないとか寂しくて泣いちゃうから。どうせお前等、トラブルを片付けて合流した時に俺の知らない話とかするんだろ。写真とか見せてくるんだろ。無自覚に傷つけてくるんだろ」


「それは祭りでも同じじゃない?」


「その時間に俺が興味のないイベントを差し込むから問題ない。むさ苦しいオッサン達の殴り合いとか、貴族の子息が作った出来損ないの魔道具の展覧会とか、解決するまで3時間ぐらい掛かりそうなトラブル……詐欺師の粛清とか美味しいのに何故か経営難の店主の救済とか男女の恋愛トラブルが起きた辺りで抜けるから」


「完全に轢き逃げだね」


 そんなつまらなそうなところには行かないというツッコミを期待したのだが、もしかしたら楽しい闘技場や展覧会も俺が原因でそういったトラブルが起きると思われているのかもしれない。


 だとしたら風評被害もいいところだ。


「まさかお前等、世の中のすべてのトラブルを俺のせいにする気か? そんなわけないだろ。いくらなんでも責任転嫁し過ぎだ」


「「「…………」」」


 なんだその『その可能性も無きにしも非ず』みたいな目は。


 自分達の楽しい時間を邪魔する存在を見るような目は。


 もしも今言ったことが全部起きたとしてもそれは俺のせいじゃない。偶然だ。運命の悪戯だ。神の仕業だ。


「「「……………………」」」


 ま、まぁ未来はなるようにしかならないんだから一旦置いといて、移動時間を楽しもうじゃないか。


 はいはーい。俺とお喋りしたい人はこの指とーまれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ