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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五十八章 ステーション

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千二百二十八話 ステーション3

 文明の発展において最も重要なものは『利便性』だ。


 世間では河川だの気候だの言われているが、それは生きるために必要な食糧やら安全やらを確保する効率が良いか悪いかの話であって、本質ではない。


 例えば、水脈がどこにどれだけあるかわかる上に砂遊び感覚で噴水化させられる異能や機械を持っていれば、ン百mも離れた河川まで水を汲みに行くより早いし楽だし災害の影響も受けづらいので、内地に根を下ろすだろう。


 1人2人ならともかく一族の大半がそれなら下ろすと断言しても良い。


 それが出来ない劣等種が「俺達には必要なんだ!」と、まるで実力不足を自慢するようにそれ等の条件を出しているだけ。押し付けているだけなのだ。


 しかも倣ったら倣ったで「お前等は出来るんだからこっち来んな」と邪険に扱われる。どうしろというのか。不快にさせない程度に同情すれば良いのか? それとも力を与えろと? 相手側の善意なのでプライドは傷付かないし、何かあっても責任を擦り付けられるから?


 まぁ状況や相手によるだろうから一概には言えないし、ここで議論する意味もないので、脱線はこの辺にしておいて――。


 とにかく、利便性の一角を担う『移動力』を確保したリニア&地下鉄付近には人が集まるし、そこに仕事があればさらに集まり、それ等を効率的にするためには土木作業や工場が必要不可欠なので社会の組織化が推進される。


 つまり町が生まれる。


 元々町がある場所はさらなる発展を遂げ、人の手が加えられていない大自然もダムや農業のための町が出来る。もちろん自然破壊しない程度に。むしろ守るぐらいの勢いで。適度に手を加えることで動植物や魔獣が棲みやすい環境を作るわけだ。


 共存関係サイコー。




「次はその中枢をなす『駅』に着目していきましょう」


 エネルギーから観光資源まで、ステーションによって生み出されるであろう力と施設について語った俺は、最後に乗り降りする場所のことを記者達に話していく。


 が、その前に――。


「退屈しのぎイベント第二弾! 車両販売、解☆禁! ここでしか買えない物も売ってるよ! もちろん飲み食いも自由!」


「「「うおおおおおおおおおおッ!!!」」」


 という雄叫びが発せられたかは知らないが、そろそろ1号車に売り子さんが現れたはず。自己紹介がてらの売り文句も口にしているので、それを聞いた客達が狂喜乱舞していても不思議ではない。


 単純な移動時間に加えて混雑もあるので俺達の現れるまでしばらく掛かるだろうが、品物の補充は車両ごとなので忙しいのも売り切れるまでだし、到着1時間前までに全車両まわれれば良いので多少の遅れは気にしない。


 在庫はあるけど売らない。


 特売や転売ヤー対策でよく使う手だ。


 俺もその昔、某オムツを買いに来た客達と激しい戦争を繰り広げたものだ。あいつ等積み下ろし場所を見張って「今入荷したな?」とか言うんだぜ。流石に「お前等に売るオムツはねえ!」なんて言えないから「今日の分はこれだけです。売上対策です」で対応するわけよ。


 同じ車両でも前に行くほど高額に設定したのはそのためだしな。乗り心地や娯楽(画面スクロールとかこの後のイベントとか)もあるけど、一番は早い者勝ちに勝ちやすいこと。


 地下鉄ではグリーン車と普通車、さらにその上のVIP車両の3つに分ける予定だ。比率は便によるだろうな。利用者の客層を見たり意見を聞いてって感じ。


「今言わなくても車内販売が来てからで良かったのでは?」


「……そうですね」


 記者の言う通り、同じ車両に乗っていた人々は俺の宣言を聞いた途端、このイベントに参加(?)しようと駆け出していった。


 通路はギリギリすれ違える程度の広さしかないので一瞬で詰まる。申し訳ない。


 でも1つ言わせてもらいたい……。


(後で来るんだから大人しく待ってろよ!! 最初の協調性どこいった!?)


(あ~。二言いった~)


 黙れ。俺は一言なんて言ってない。1つと言ったんだ。我を忘れてはしゃぐ連中への注意と理由確認を一連のものとしただけ。これは凹凸ぐらい一緒に使うものだ。


 王都で待機しているはずのユキからの念話に答え、改めて説明開始……する前に、


「さらに第三弾! 魔道具の使用も解禁! カメラで写真撮ったり、ケータイで友人と通話したり、遊具で遊んだり、運行に影響が出ない程度に好きにして良いよ!」


「「「うおおおおおおおおおおッ!!!」」」


 今度はハッキリ聞こえた。なにせ発したのは周りの連中だ。1号車に駆けていった者達や後方車両から駆けてきた者達による情報バケツリレー、さらにアナウンスによってその情報は車内全域に拡散される。


 そこら中で魔道具の利用が横行し始める。


(ククク……愚かな者達よ……面白いほど想定通りに動いてくれるわ)



「コンビニエンスストアや飲食店、衣料品店、コンサートや展示会等のイベント会場など、駅構内に出店する企業や施設に関しては運営側に任せているのでここでは触れません。それはどちらかと言えば地下鉄を取り巻く環境……『ステーション』ですし、事前説明会でも少し話しましたしね。これからするのは駅の話です」


「建築途中の乗り場ということですか?」


「それ以外にも色々と」


 言いながらシャッターのような頑丈なカーテンを下ろす。実はこれタッチパネルになっている。お絵かきからちょっとした会議まで自由自在だ。


 これについては車内販売が落ち着いた頃にアナウンスが入ることになっているし、皆忙しそうなので、標準装備ではなく持ち込んだ魔道具ということにして話を進めよう。


「馬車や飛行船もそうですが、一言に乗り場と言っても、雨風を凌ぐ建物や効率良く乗り降りするためのチケット販売所、停留所など様々なもので構成されていますよね。駅も同じです」


 俺は画面にいくつもの名称を書いていく。


「まず『駅舎えきしゃ』。これは言うまでもなく建物全体のことです。駅は地上と地下を繋ぐだけではなく、階層や場所ごとに役割を持つ施設。強度や利便性などを考えなければなりません」


「利便性?」


「はい。それは次に説明する『乗降場』でおわかりいただけると思います」


 事前説明会では出てこなかったワードに首を傾げる記者。俺は構わず次の要素を指差す。


「『乗降場』またの名を『プラットホーム』は、車両への乗降、または貨物の積み下ろしをおこなうために線路に接して設けられた場所です。

 プラットホームと線路の数を表現する方法として『○面○線』という呼び方をします。簡素な駅なら線路とプラットホームが1つずつということもあり得ますが、リニアと併設していれば自然と規模も大きくなるので、プラットホームの数を『面』、それに接する線路の数を『線』として、単式ホームなら1面1線、島式ホームが1つで線路が2つなら1面2線、相対式ホームが2つで線路が1つなら2面1線と呼んだりします」


 小学生が描いたよりはマシな棒人間と鉄道を秒で描き上げる。


「え~……単式ホームより島式ホーム、島式ホームより相対式ホームの方が本数が多いということでよろしいでしょうか?」


「ちなみに判断基準はどこでしょう? まさかとは思いますが描かれている人間の数とか言いませんよね?」


「ギクゥ!」


 まともな記者(尋ねてきた方)はポーカーフェイスで乗り切るが、勘違いされやすいタイプの記者はこれ以上ないほどに動揺を露わにした。


 辿り着いたところは一緒でもここまで違うかね。実は面白くて可哀想なヤツなのかもしれない。親しくなりたいとは思わないが。


「フィーネ、頼む」


 まぁ自分の画力の無さは自覚……してはいないが、こんなところに時間をかけるのもアレなので、こういう時は慌てず騒がず有能メイドに任せるのが一番。


「「「ああ……なるほど……」」」


 画面がスライドして実写のような画像が映し出された瞬間、記者達はさきほどまでとは打って変わって納得し、これは記事になると言わんばかりに手元のメモ帳にペンを走らせる。


 全員俺より上手い……。


 まぁいいや。相手はプロだしな。勝ち負けとかないしな。



 重要なのはここから。


 貨物の積み下ろしをおこなうための線路なのだが……次回に続く!

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