表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五十七章 プロジェクトZ~研究者達~Ⅳ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1476/1659

千二百十九話 真剣にやってても周りからは遊んでるって言われます

「だああああああ! だからそうじゃねえよ!」


 大まかな流れは全体を捉えられる俺が操作し、細かな部分はイブ達に任せる作業は、指揮官と現場の意志疎通の難しさに加え、一方的なアイコンタクトという絶望的な条件の中で進んでいく。


 コーネルが引き起こした力場の乱れを直しつつ、カカカッ、と画面を連続タップ。地面から乳白色の木が生えるが落ち着いて消滅させる。


 取り返しがつく範囲なら法則を崩して間違っていることを伝えて、軌道修正させるのが一番手っ取り早くて確実な方法だと、装置に触れている内に気付いたのだ。


 まぁ創造の前には破壊が必要みたいなもんだ。


 毒々しい見た目をした塊が弾けて洞窟内に衝撃波と異臭を発生させた時は流石に焦ったが、フィーネとユキが対処してくれたお陰で無事だったし、彼等も命懸けで作業した方が研究者冥利に尽きるというもの。


 ……はい。ごめんなさい。以後気を付けます。というか気を付けてます。でも失敗しても許してください。この装置自由自在に扱えるわけじゃないんです。操作メッチャ難しいんです。


「きゃっ、うっかり溢しちゃった~」


 ササッ――。


 大惨事一歩手前となった原因の1つ。神様の生み出すゴミ(お菓子の粉)を繊細さと大胆さを両立させたテクニックで秒で片付け、なおもドジっ子アピール(額のメガネに気付かず床を手探り)を続けるバカ野郎を無視して画面向こうの現世に注目する。


「そうそう……そこを通して……あ、違う、その隣を繋げるんだ……」


「秘技、花びら大回転食いィ!」


 シュバババッ――。


 宮本武蔵が箸でハエを捕まえたように、某ボクサーが落ち葉10枚をジャブで掴み取ったように、宙を舞う煎餅の破片をキャッチし手元のゴミ箱に入れ、仲間達にエールを送る。


「パッキーゲームやりましょ、パッキーゲーム。負けた方はこの袋の粉全部撒き散らす係ね」


「誰がやるか」


 時に風のようにはやく、時に水のようにしずかに、時に火のように激しく、時に大地のように不動に、俺は神様の猛攻を凌いでいく。


 このやり取りはやれることがない時だからこそ成立したもの。無理矢理に助言する方法を見出した今の俺には邪魔以外の何物でもないが、神様はその助言が出来ない時を見計らってチョッカイを掛けてくるので如何ともしがたい。


 休む暇がない。無駄のない無駄な動きをしている。というかさせられている。



「フフフ~。本当に無駄ですかね~」


「……なんだと?」


「隙あり! 森羅万象、一切合切波動砲!」


「ズルい、それはズルい。属性は1人5つまでって決めたじゃん。こっちは風林火山……じゃなくて風水火土と、最終奥義の光しか使えないのに、アンタだけ全部って反則だろ。ルール守れよ。それで勝って嬉しいのか」


 意味深な台詞に気を逸らした瞬間、神様は両手を合わせて何かを放つポーズを取り、液体を画面上に撒き散らした。


 情報収集に余念のない俺の純情な感情を悪用するのもズルいし、その使い方もズルい。液体を丸々というのもズルい。これは苦言を呈さざるを得ない。


「ルーク君が残した力を取り込んだだけなので問題ありませ~ん。力を敵に利用されたあるある展開で~す。そんなことより早く取り除かないと現世の皆さんが困りますよ~」


「クソッたれがぁぁ!」


 俺は自分の力の無さに絶望しながら、なんちゃら波動砲によって荒らされた画面上の液体を取り除いて……、


「ってこれ『●るねるねるね』じゃねえか! 水分と固形物の合わせ技じゃねえか! たしかに全属性混ぜたみたいな雰囲気あるけど! 色変わったり形変わったり味が変わったりなんか色々凄いけど! 確信犯だろ!?」


 微妙に粘着質な薄紫色の物体は懐かしの知育菓子。


 そう簡単には取り除けない。


 しかし早くしなければ現世がエライことに。こうしている間にも刻一刻と第二の毒霧が発動しかけている。


「ヘイ、どうしたんだい、ジェニファー。そんな困った顔をして……あぁ、なるほど、頑固な汚れに悩んでいるんだね。そんなキミに良い物がある。これだ。

 万能クリーナー『アルディアX』! なんと旦那のギャンブル癖から世界丸見えにこびりついた●るねるねるねまで、綺麗サッパリ落とすことが出来るんだ! お値段、なな、なんと、無料!!」


「買います」


 突然通販番組を始めた神様。


 意味はわからないが神を理解しようとする方が間違っている気がするのでスルーして、現状を打開すべく話に乗る。時間稼ぎの可能性があるので掃除しながら。


(てか、この装置『世界丸見え』って名前だったんだ……そのまんまじゃん。ただ神様が道具頼りってどうなん?)


(普段はドギャーン、ズゴゴゴー、と自力でやってますぅー。これはいつか来るであろう神以外のために作ったものですぅー。練習用ですぅー)


 なるほど。だからコタツとして利用して錆付かないようにしてたんだな。表面が汚れてたらアレだし。ワンチャン身近にあることでエネルギーが溜まる的な。


 まぁそれはそうとやっぱり●るねるねるねだったんだ……言われてみれば作っていた気がする。粉も処理した気がする。


 というか遅い。神速ならそろそろ届くはずなのに。


「お届けには3日掛かります」


「やっぱキャンセルで」


 そんなに待ってられるか。


 あとまだ注文段階だったんかい。話に割り込んで来る前に終わらせとけや。すぐ他のことに意識を向けるヤツは仕事が出来ないヤツだぞ。優先順位ハッキリさせとけ。脱線なんて最低なおこないだよ。


「あ~。残念ながらこちらの商品キャンセル不可となっております。到着後、送料の金貨1枚をお支払いください」


 しかも詐欺じゃねえか。本体価格安いのに他で儲けようってプリンターとか教材でよくある手法じゃねえか。




「良いよ、良いよぉ~。スタッカートをサジェストでエビデンスしていこう」


 知育菓子を片付け終わった直後に届いたアルディアXをパイ投げのように神様の顔面に投げつけようかとも思っただが、今後役に立つかもしれないので脇に置き、次の作業工程ではお菓子攻撃がなくなったのでやっぱり投げつけてから、10分。


 クリーナーの効果で浄化されたかは不明だが、神様が一切邪魔しなくなったことを喜びつつ、俺は画面に手を突っ込んで指揮者気取りで世界を掻きまわしていた。


「え? なんですかそれ? 意味がわかりません。まさか面白いと思ってるんですか?」


 バカにするのを通り越した感情『心底不思議』を前面に押し出して尋ねてくる神様。むしろ辛辣だ。残念ながら、善と悪、両方の心を持ったままだったようだ。


「わからなくて結構。こういうのはパッションだって言ったの自分でしょ。それに間違ってはないはずですよ。ほら、次はタンタタ~ンッタッタですよね?」


「流れはそうですね。でも私はそこはデクレッシェンドをシュレッターしてフレイムハート派です」


「え~? 絶対スタッカートをサジェストでエビデンスですよ。百歩譲ってグラビティバインド」


「それこそ『え~?』ですよ~」


 どちらが伝わるかは帰還してから全員に聞いてみることにして、とにかく真プラズマタイト・改を含むリニアモーターカー製作は順調に進んでいく。


 イブ達もこちらの意図を読むことに慣れてきて、何も言われずとも高確率で正しい道に向かうので指示厨になることが減ってきた。


「まぁ進んだ先に何があるか理解してくれてないのがネックですけどね……」


 操作こそ出来ないものの、この装置なら相手の思考や感情を読める。バリアを解除しなければならないフィーネやユキは無理だが、イブ達なら普通に読める。


 それによると仲間達の中に完成系が見えている者は1人も居ない。一歩一歩確実に進んでいるだけだ。崖があったら引き返しているだけだ。


「まぁまぁ。あまり高望みしちゃダメですよ。意思疎通が上手になっただけで満足してください。大進歩じゃないですか」


「……それって喜んで良いんですか? 希望の象徴としてはバレないことが至高なんじゃないんですか?」


 言って俺も目の前のことで手一杯でそんなことを考える余裕などないが、出来ることならやった方が良いのでは、とは思う。


「隠匿はもっと上の段階。ルーク君は意思疎通が出来たら100点です。そしてそのためには世界をどこまで壊して平気か理解することが大切ですね~」


「おおっ、なんか神っぽい!」


「フフ~。そうでしょうそうでしょう。理の外……特殊五行もその応用ですし、実はルーク君も一度自力でやってるんですよ」


「それって、もしかして王女争奪戦の時に使った力のことですか?」


 俺達がプラズマを引き出せるようになったのは最近だが、引力は大昔から存在していた。そしてあの時の俺はそれを引き出すことが出来た。変換することが出来た。だから雷の力が使えた。


 完全に理を破壊し、創造している。


 何を今更と思うかもしれないが、自分自身のことは案外わからないものだ。人生初という印象深い場合でも夢中過ぎて気付かないことは多い。


 例えるなら、思春期の頃に好きになった女子のパンチラ……は10年後でも余裕で脳内再生可能だから違うな。夢だ。夢でいこう。体験したはずなのに覚えていない。フワフワとした記憶すらない。


 俺にとってあの時間はそんな感じだ。


 使おうと思ったから使えた。


 それ以外の説明なんて出来ない。


「当たり~。無意識ですけど、肉体がないと使用出来ない『世界丸見え』を介さずに世界の流れを感じ取って、自分の使いやすいように作り変えたんです~」


「苦戦しましたけどね」


 いくら素の実力差があったとしても、神の代行者が人間に負けかけたのはどうなんだろう。しかも全力を出して。


「逆ですよ~。破壊するだけなら誰にでも出来ます。難しいのは相手に合わせること。お豆腐を崩さずに食べるようなものですね~。無意識に神の力を調整したルーク君は凄いです~。その感覚を忘れていなければもっと凄いです~」


「……すいません」


 上げて下げる精神負荷のプロめ……。


 はいはい、どうせ奇跡ですよ。もう一度やれって言われても絶対出来ないし、補助輪使ってもコケますよ。前後左右、世界丸見えと強者の二重サポートでようやくってレベルですよ。


「拗ねないでくださいよ~。神界に来る度にプラズマを感じて、私とゲームして操る感覚を掴んで、ベルフェゴールさんと大地を学んで、仲間の皆さんと特殊五行という類似した力を学んで、地球再転生と宇宙に飛び出した時に引力操作のお手本まで見せてもらって、プラズマタイトという舗装された道路があってそれですか~って感じですけど、気にしなくて大丈夫ですよ。これからです、これから」


 ……泣いて良い? あと精神的ダメージが現世に影響出しちゃってるんでけど責任取ってくれますよね? 龍脈が噴火しそうですけど?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ