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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
七章 商店街編
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八十九話 視察1

 さて食堂、銭湯と連続して大成功を収めたロア商店街、最後の店舗はずばり『雑貨屋』だ。


 わかりやすく雑貨屋とは言ったけど、ここは商店街のメイン『商店』で、石鹸・冷蔵庫・日用雑貨・食料などなど様々な物を買い揃えられる庶民の味方。


 敷地面積40㎡、従業員数14名(内2名は補助)というヨシュア最大規模の商店である。


 そして今日はいよいよ待ちに待った店舗視察の日なのだ。


 今日視察に行くことは伝えてあるので、『容赦ないチェック』をする俺と、『事前準備して全力の接客』をする従業員とのガチバトルの開幕だ。



 ウキウキしすぎて興奮気味な俺は、意気揚々とフィーネ達と共に元スラム街へやってきた。


 食堂近くを買収し、新店舗として更地から大きな建物を次々に造っていくので、いずれはヨシュア最大の商店街になる予定。


 もちろんスラム全部を買収したわけじゃないから、まだまだスラム街は残ってるけどそれ以外にも空き地は一杯あるから何か作りたい。



 さてさて・・・・それでは早速ノルン店長を始め、ロア商会全員が必死に考えた理想の店舗とやらを見せてもらおうじゃないか。


「ふむふむ、まぁ外観は合格だな。しかし問題は中身だぞ」


 合格って言うか、俺とフィーネの設計通りだから不満なんて無い。


 モチーフは『ショッピングモール』だ。


 今はまだ食堂、日用雑貨、銭湯の3店舗しかない小さな商店街だけど、将来的には1つの大きな箱の中に様々な専門店を入れようと思っている。


 きっと完成したら「どこ行くぅ?」「ロア商店街でいんじゃね?」ってJKの会話が行われることだろう。


 高校に通う貴族女子なら女子高生って言えるよな?


 ・・・・金持ちのお嬢様はそんな言葉遣いしないか?



 まぁ現状でも十分に王都とも張り合える商店街だけどな。


 何故ならば!


 各店舗で現代知識をフル活用したので、最新鋭の魔術や魔道具がこれでもかってぐらい存在していた。もちろん商品も超一流、ここでしか買えない品々だぞ。



 ここで必要になったのが『バーコード』、そして『レジスター』だ。


 商品のどこかにある白黒の模様を専用のスキャナで読み取って会計金額を計算するアレ。


 これは豆知識だけど、バーコードの近くにある13桁の番号は国・メーカー・商品を示しているので、番号を知っていると何の商品かある程度わかったりする。そのうち商品の識別番号は作りたいと思う。


 話が逸れたけど、人間の頭で全商品の値段を覚えるなんて不可能に近い。


 かと言って石鹸の1つ1つにバーコード代わりの魔法陣を付ける訳にもいかなかった。


 じゃあどうするか?


 散々悩んだけど、人が覚えられないのならレジに全商品を覚えさせれば良いじゃないって事で解決。


 なので防犯タグを認識してアラームが鳴るシステムを採用して、商品をレジ台に設置しているスキャナに通すと、形と大きさと微精霊で商品を判断して金額が表示される仕組み。


 色々と試した結果、アルディア初のレジスターが完成。


 もちろん冷蔵庫・洗濯機・布団なんかの大型商品もあるから、それには値札を張り付けてる。


 店員も売れ筋や大型商品の値段ぐらいはそのうち覚えるだろうし、今のところトラブルも無いらしい。




 そして今日は、俺自ら来店して商品購入までの流れを最終確認するのだ。


 建前上は『子供相手の接客』の練習のために連れて来られている。


「でもなんで君達まで一緒に来るかな~?」


 フィーネとユキはわかる・・・・だけど、アリシア姉・ニーナ・ユチの同世代女子諸君は何故居る?


 昨日の夕食の時、ユキバカが「明日は新生ロア商店で立派なクレーマーになりますよ~」って家族全員に自慢してたけど、それを聞いたアリシア姉がほくそ笑んだから怪しいとは思ってたんだ。


 きっとあの後、食堂までひとっ走りしてこの2人を呼んだんだろう。


 あ、ちなみにヒカリも来る予定だったんだけど、楽しみにし過ぎて寝不足プラス熱を出したので欠席。オープン間近なので別日にするわけにもいかず、俺達だけで視察に来たのだ。


 俺が家を出る時にヒカリはとても寂しかがっていたけど、


「わたしのせいで皆が楽しみにしてたお買い物が出来なくなる方が嫌」


 と言って送り出してくれた。


 なんて健気! 絶対お土産買って帰ろう。



 そんなわけで同行している少女は3人なわけだが・・・・。


「アリシア姉、武器も防具も売ってないぞ? 日用雑貨だけだから見てもつまらないだろ?」


 だから帰れ。


 でもそんな忠告も虚しく、アリシア姉は俺の肩をバシバシ叩きながら嬉しそうに、こう宣言した。


「バカねっ! 新作魔道具がたくさんあるんだから絶対楽しいじゃないっ!  リバーシは苦手だけど、他の遊具も沢山あるんでしょ?」


 と、いち早く新店舗を体験できる事にワクワクしていて帰りそうな雰囲気じゃない。


 まぁオモチャはたくさんあるけどさ・・・・。



「ならニーナは? 獣人専門店はまだリサーチ不足で品薄だぞ。食堂で新作料理でも作ってなさい」


 いや、実は十分なリサーチは出来ている。ただ『100%満足できない品揃えをするぐらいなら出店しない方がマシ』と言うだけ。


 俺が獣人専門店をオープンするのはアルディア最高にして至高、究極と言う名に恥じない出来栄えになった時だけだ。


 店舗名は、そう『理想郷アルカディア』にしよう。


 で、俺の理想郷はまだ完成していないのにニーナはアリシア姉の付き添いで来たのか?


 俺の質問に対してニーナは自信満々に胸を張って理由を説明し出す。


「成長したわたしには新しい服が必要」


 成長? どこがだよ。身長は全く伸びてないし、最近ヒカリに抜かれたショックでへこんでただろ。


 とにかくニーナは買いたい服があるらしい。



「ユチ。ここに来ても儲からないぞ。散財するだけだ」


 金が大好きなこの少女が欲しい物なんて、金以外にありえないだろ。


 まぁ残念な上2人と違って普通の感性を持つ少女だから、遊具や服を見に来たのかもな。


 でもユチは『ニヤける』や『イヤらしい笑み』と表現するべき笑顔を浮かべて、俺だけに聞こえる小さな声でコッソリと事情を説明する。


「いやいや、ルークさんも人が悪いな~。ここで商品を仕入れて食堂で販売すれば良いじゃないですかぁ~。獣人だから寒い時期には尻尾や耳カバーが必需品だしね。

 美女の脱ぎたて衣服を賭けの対象にすれば男性客が増えるし、賭け金も上乗せできるから2度美味しいじゃん。

 リリさん達に試着してもらって『たまたま』サイズが合わずに捨てる羽目になるかもしれないなぁ~。勿体ないなぁ~」


 ただのゲスだった。


 もちろんこの場で予約した。


 だ、だって獣人美女の脱ぎたてだぞ!? 欲しがらないわけがないっ! し、しし尻尾の毛とかついてるかな? ハアハア・・・・。


 うん、捨てるの勿体ないからな! これも立派なリサイクルだ。リサイクル。




 とにかく3人は帰る気はないってことか。


「俺とフィーネは真面目な視察をするんだから、アリシア姉もニーナもユチも買い物してて良いから邪魔するなよ」


「「「はーい」」」


 買い物するだけなら流石に問題は起こさないだろう。店員たちも居るしな。



「おやおや~? 1人、名前を呼び忘れてますよ~?」


 呼び忘れたんじゃねぇよ。問題を起こすのはお前だ、ユキ。


「ユキ、入店してからお前に不信感を抱く度に貯め込んだマヨネーズを没収していくからな。フィーネにお願いして必ず奪うからな」


「フッフッフ~。『安らぎのユキちゃん』の異名を持つ私が、ルークさんに不信感なんて与えるはずがないじゃないですか~。そんな約束意味ありませんよ~」


 ユキは『何を言ってるんだ?』とでも言うように余裕な顔で俺と約束をする。


 言ったな? 今日でユキの所持するマヨネーズを全部回収してやる。マヨネーズの借金『マヨ借』をする羽目になるだろうな。マヨ狩りの方が語呂いいか?




 そんなわけで俺達は客の居ないオープン前の商店へと足を踏み入れた。


 その瞬間、空気がピリッとしたのは俺の勘違いじゃないはずだ。


 だって会長自ら視察に来たんだ、そりゃ緊張もするだろうさ。



 入店した俺達の目にまず飛び込んできたのは山積みにされた石鹸。


 露店時代から売れ続けているウチの主力商品だ。


「ほほぅ~、色付きとか作ってたのか」


「色々と混ぜ合わせて老若男女、誰でも楽しめるような石鹸を毎晩遅くまで考えていましたよ」


 たしかに子供ならカラフルで匂い付きの石鹸って宝物みたいに思うだろうし、大家族でも自分の肌に合った専用の石鹸を一発で見分けられるようになるから、年頃の娘が「お父さんと一緒の石鹸は嫌!」ってならない。


 小学生時代は消しゴムとか集めてたな~。懐かしい。


 体を洗う以外の目的として色分けされているのも大変グッドだ。


 食器洗いなら茶色、洗濯なら緑色って具合に用途別に特化させた石鹸があった。


「ふむ、立体陳列は完璧で、カラフルだから誰もが立ち止まる場所だ。商品説明POPもわかりやすい。販促用に盗難防止のケースに入った石鹸が直に見えて匂いがわかるのも素晴らしい。

 客が一目でオススメ商品だとわかり、買い物しやすい売り場になっている」


 くそ・・・・指摘する部分が全く無い。



 そんな俺の独り言を聞いた少女達が頭の上に『はてなマーク』を浮かべて変な顔をしている。


「何語?」

「さぁ? ルークってたまにああやって変になるのよね」

「ルークさんは放っておいて私達も見て回ろうよ」

(たぶん店の評価をしてるんだろうな~。まぁそんなことより私は服を買わないと!)


 ユチだけが含みのある笑いをしながらこっちを見てたけど、女心なんて気にしても俺にわかるわけがない。それに3人とも直ぐどこかへ消えたし。


「あれは良いんですか~?」

「一線を越える気はないようなので大丈夫ですよ。賢い子です」


 感の鋭い2人が何かコソコソ話している。


 なんだ? 俺の知らないところで物語が進んでる気がするんだけど。


 まぁいい。今は視察が優先だ。




 インパクトのある山積みの石鹸に目を奪われて気付かなかったけど、出入り口には俺特製のレジが2台あり、そこには見知った顔が立っていた。


「なんだ。ソーマとトリーがレジ専なのか。てっきり販売員として売り場に居るのかと思ってた」


 元石鹸販売のプロのソーマと、武闘派食堂の料理人トリーなら接客も余裕だろうに。レジからでも接客は出来るんだろうけど。


「いやいや、僕らは応援だからね。主戦力に数えられても後々支障が出るだろ?」

「それに盗難に気付きやすいこの場所を守るのも大事な仕事にゃ」


 たしかに。彼らの本来の仕事は寮の管理人だし、いざと言う時に動けるトリーが出入り口に在中しているのは心強い。


 レジの下に何故か鎖を常備しているらしいけど、窃盗犯を捕縛するためだよな?


「まぁゆっくり見て行ってくれよ。みんな必死に考えたんだ」

「とっても楽しかったにゃ」


 わかるわ~。準備の時間が1番楽しいってアレね。


「おう。お前らのレジ打ちもじっくり見るからな」


「・・・・お、お手柔らかに」


 だが断る。



 古参のソーマ達とは仕事以外でも仲が良いので俺は彼らと素の態度で接している。


 たぶん『生意気なガキ』ぐらいにしか思われてないだろうし、フィーネの恐ろしさを知ってるから不用意な詮索もしてこないので話しやすい人たちだ。


 2人が結婚できたのだって俺のお陰なので、前に冗談で「お礼はトリーの耳を触らせてくれたらいいぞ」って言ったら怒られた。


 獣耳って性的な意味合いがあるらしく、きっとその内ニーナもヒカリも嫌がるようになるんだろうな。


 ユチならまだセーフか? 今度触らせてもらおう。


 彼女の場合、条件は・・・・金か?


 『少女に金を渡して身体を触る』。

 完全にアウトだな。


 でも交渉はしてみようと思う。だって俺5歳だし。ムフフ。



「ルーク様がまたイヤらしいお顔に・・・・」

「きっと獣人関係で興奮してるんですよ~。マニアックな少年ですね~」


 おっほん! さ、次行こうか。

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