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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
七章 商店街編
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八十八話 新店舗

 お久しぶりのノルンです。


 今日、アタシことノルン、それにサイ・ソーマ・トリーさんの4人は、とあるお店にやってきている。


 と言うか、露店から移転したロア商会の新店舗。つまりアタシの店だ。


 急成長を続けるロア商会の商品を売るには露店では手狭になり、こうして大型店舗を構えることになったのである。


「グフフッ。あぁ~、良いわ~。このカウンターとか商品棚とか最高よね~。もう頬ずりしちゃうぞ~。グヒヒヒヒー」


 近日オープンの店内に石鹸やリバーシといったロア商会の生み出した品々や、フィーネ様達が取って来た魔獣の素材とかを並べつつアタシは何度も什器を触る。


 サイとソーマが気持ち悪そうに見てくるけど、そんな事より商品陳列の方が大事だ。そしてアンタらも手を動かせ。


「フフ、自分のお店を持つのはノルンさんの夢だったのにゃ。しばらくは仕方ないにゃ」


 流石トリーさん、わかってるぅ~!


 そう! この店を好きにしていいって言われたアタシの気持ちなんて、鈍感な野郎どもには到底理解できるはずがない!




 ところで、社員寮を管理するはずのソーマとトリーさんが何故『アタシの』お店に居るのか疑問に思う人も居るだろう。


 理由は簡単。


 店の2、3階が社員寮って言うだけ。もちろん単身者お断りの家族専用。



 アタシも最初は「それって今までと同じなんじゃ?」って思ったけど、実際は普通の宿屋より個々の空間がある間取りで、もはや家と言えるレベルだった。


 一家族で2部屋とリビング・ダイニング・キッチンの2LDKがもらえるって言えばわかると思う。それは十分に家だろう。当然、各家族用の風呂・トイレは完備されている。


 『L』とか『K』、これはルークさんから教わった用語。


 一々リビングとかキッチンって言うより確かにわかりやすかったし、『に・える・でぃ・けー』って響きがカッコイイから使うようにしてる。


 ここで共同生活して3日になるけど、ソーマ・トリー夫妻の夜のアレコレとか気付かなかったし、獣人で耳の良いサイにも聞こえないって言ってたから防音は完璧だ。まぁヤッてないだけかもしれないけど・・・・。


 おっと、アタシったら、はしたないですわ。


 店長たる者、皆のお手本になる言動を心掛けなくては。



 さらに驚くべきは、1年近くかけて建築したヨシュア最大規模の店舗って事!


 通常1ヶ月で民家が建つのに、1年掛けるってどれだけ凄い事かわかるかな~? わからないよね~?


 もう屋敷・・・・いや! 城と言っても過言ではないのだよっ!


 その店舗の上部分も当然だけど超巨大。


 入居可能家族はなんと驚きのぉ・・・・10組だっ!


 家族でロア商会従業員って人は少ないし、そもそも家を持ってる人は住めないので十分。



 そんな商店の店長がアタシ『ノルン』であり、副店長のサイ、販売補助の2人が居る。


 とは言え、ここまで大きな店を4人で回すのは不可能だし、そもそもソーマとトリーさんは上の社員寮を管理するのが専門だから、あくまでも補助だ。


 だから従業員を増やす必要があった。


 ヨシュア周辺では知らない者の居ないほど有名なロア商会で働きたいと言う人が殺到して、その中から面接で選んだ10人を採用。


 まぁアタシは面接官として座ってただけで、フィーネ様とユキ様が選んでいったんだけど。ってかフィーネ様が選んだ。


 ユキ様とアタシは・・・・・・なんかボーっと見てた。


 で、でも! どんな人物か事前に知っておくのは大切でしょ!?

 店長のアタシがその場に居ることに意味があるでしょっ!?



 おっほん・・・・は、話を戻す。


 フィーネ様に採用された10人は今、2階で接客や販売の練習中。


 大声を出してるはずだけど、全く聞こえないのはさすがロア商会の新技術だ。フィーネ様が魔術で何かしたって聞いただけで理解は全く出来てないけど、とにかくなんか凄いんだろう。


 商品化したら覚える。魔術は知らん。


「手を動かせって言ったお前がサボるなよ・・・・」


 おっと、改めてこの店の素晴らしさを噛み締めていたら、ついボーっとして手が止まっていたようだ。




「ここは食糧スペースね! サイ、カツサンド取って」


 猫の手食堂が大ブレイクしたお陰で、食事にありつけない人々から非難が殺到してしまったので、この商店でも軽食を販売することになっている。


 もちろん生モノだから腐りやすい。


 でも食品用の冷蔵庫があるから安心!


 扉が無い冷蔵庫だから冷えないんじゃないかって思ったけど、常に冷気が出続けてちゃんと温度管理ができている。


 4日ほどサンドイッチを置いてるけど、まだまだ食べられる鮮度だ。


 完成した食品用冷蔵庫を起動したら、ユキ様が寝転んで涼んでいたけど誰も気にしなかった。



 昔アタシが言った計画が現実のものになるとは・・・・これでアタシは好きな時に美味しい料理が食べられると言うわけだ。


 なんて素晴らしい職場、ロア商会サイコー。


「食堂の反響を見るに、たぶん売り切れるにゃ。私達は食べられないにゃ~」


 突然トリーさんから衝撃の事実が告げられた。


 な・・・・な、なな、なんだと!?


「え? 店長は優先的に食べれるんじゃないの!?」


 店の長なんだから店内のモノを自由にする権力があるはず。


 店の物はアタシの物、アタシの物もアタシの物だ。


「いや、お前・・・・優先するのは金払う客だろうが。バカか?」


「店長あっての店でしょ! ねぇ、なら開店前の朝一で確保するのもダメ?」


「「ダメ」」


 くっそぅ・・・・そうだ! 価格を上げて売れ残るようにするか?


 いや、いっそ賞味期限が切れたことにして撤去するのもありか!?



「ちなみにフィーネ様が売り上げを記録して毎日提出しろってさ」



「「「っ!?」」」


 結婚してから落ち着いて、大人な雰囲気を漂わせるようになったソーマの一言で、色々と画策していたアタシはもちろん、サイとトリーさんも固まった。


「う、売り上げが悪いと・・・・どど、どうなるんでしょうか?」


 聞く必要なんてないだろうけど、それでも責任者のアタシは聞かなければならなかった。


「従業員で初めてフィーネ様の逆鱗に触れるのは店長のノルンか~。お気の毒だね。

 残念ながら僕らは寮の管理で忙しいから手伝えないよ」


「そ、そうにゃ! 私達は寮がメインにゃ。売り上げとは無関係にゃ」


 ですよね~。


 そしてソーマとトリーさんが薄情にも逃げやがった。




 残されたアタシとサイは呆然と立ち尽くしていた。


 とにかく危険な立場だと言うのは理解する。


「どどどど、どうしようっ!? あ、サイ、店長変わらない?」


 我ながら中々の名案だ。最重要責任者でなければきっと、たぶん、おそらく、運が良ければ大丈夫!


 アタシ、あったま良いぃ~。


「ざけんな。自分の店だって散々浮かれてただろうが! 売れりゃいんだよ、売れりゃ」


 たしかに! サイに諭されるのは悔しいけど、儲かれば怒られない。要は石鹸販売してた頃と同じだ。



 そのためには今やってる陳列作業をさっさと片付けて、売り上げアップのために会議をしないと。


 まずは店内のレイアウトからだ!




「ルーク様、新店舗はオープンに向けて順調ですよ。ノルンさんが中心となって頑張っています」


「へぇ~。今度、様子見ついでにからかいに行ってやろう。接客業の元プロを舐めるなよ。絶対に粗を見つけてやる。それこそ姑のようにな。

 フハハハハ・・・・フッハッハッハッハ」


 どこが未熟かな? 陳列か? POPか? 接客態度か? 会計か?


 これ、考え出すと楽しくて仕方ないな。正義は我にあり!


「ア、アンタ・・・・なんて嫌な笑顔を浮かべてるのよ。本当に5歳?」


 アリシア姉が気味悪がってるけど知った事か。


 お姉様だって貴族とは思えないほどドロドロな恰好じゃないですか。どうせまたクロに乗って山を駆けまわったんだろう。


 勝てない魔獣に出会ってもクロなら逃げ切れるから安全だ、とフィーネが保障してからアリシア姉はクロに乗って魔獣退治に出かけるようになった。


 絶大な信頼を得ているフィーネにそう言われては父さん達も何も言えないらしく、アリシア姉はこのように毎日ドロドロになって帰ってくる。どんな戦い方をしたらそんなになるんだか・・・・。



「なぁ、アリシア姉を販売員としてアルバイトさせたら駄目かな? お淑やかさが身に着くかも」


「ルーク様・・・・本気で思っていますか?」


 いや、冗談だけど。ってかフィーネからも見放されてるのか。


「さらば、アリシア姉の女子力。君の事は一生忘れないよ」


 元々存在していたかはさておき、俺は彼女(?)との永遠の別れを惜しむ。


ドスンッ!

「グフッ!」


「余計なお世話よっ! 不愉快だわ! お風呂入る!」


 そんな言葉を聞いたアリシア姉は、日々威力が増していく拳を俺の腹目がけて打ち込んできた。当然回避することも出来ず、俺は床に倒れ込む。


 フィーネは傍に居るのに『家族の触れ合い』だと認識すると助けてくれないんだよ。


 そろそろ洒落にならない破壊力になりそうなんで、来年には助けてもらっていいッスか?



 俺は床に突っ伏しながら商店でノルン店長へ嫌がらせをしてストレス解消することを誓った。

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