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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五十四章 プロジェクトZ~研究者達~

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千百五十七話 チーム編成

「――てわけで、俺達はその因子を持つ存在を探すことにした。ま、捜索班と調査班で別れる感じだな」


 ラットとシェリーが覚醒した翌日。


 俺は朝食を取りながら、メンバーで唯一不参加だったヒカリと、別行動だが報連相はしておいた方が良いだろうとイブ達チーム『エリート』に、本日の予定を伝えた。


「それは構わないけど……」


 是非を問う視線を向けられたヒカリは、自分抜きで決められたチームの方針に異論がないことを表明。しかし納得のいっていない表情を浮かべる。


 イブ達は昨日の段階で山の地層を調査することが決まっている。露骨にサボらない限り他チームの行動に口出しはしないと思っていたが、期待通りしたいようにさせてくれるらしい。


「2人とも本当にそんな力、手に入れたの? 強くなったようには見えないけど」


 予想通り。反応も内容もドンピシャリだ。


 自らの千里眼に絶対的な自信を持つ彼女は、いくら視ても昨日までと何も変わらない2人から目を離し、怪訝な顔で尋ねてきた。


「手に入れちゃいないさ。そうなる時もあるってだけ」


「そうなる時って?」


「さぁ? 俺も確認出来たのはその1回だけだし」


 フィーネが去った後も何度か暴力……もといツッコミを入れる機会があったが、あのような惨劇はおこらなかった。


 理解していないものを短期間で制御出来るとは思えない。何かしらの発動条件があると考えるのが妥当だろう。


「ルークはどう考えているんだ?」


「あ~……因子はこの町に昔から住んでる全員が持ってる、かな。

 こんな田舎より都会が良いって好奇心が勝って他の土地に移り住むヤツからはその因子が抜ける。それは別の村人に宿って、ラットやシェリーみたいに一生ここで過ごしたいってヤツが生まれる。

 目に見える形で力が発動したのは事故。因子っていうだけあってどれだけ凄くなっても変わらないことが正しいんじゃないか? 地元が好きって感覚とごっちゃになるのがあるべき姿で、今回はたまたま発動してしまっただけ」


「出たね、ルークの主人公ご都合理論。『世界は俺のために動いてる』『きっと今回も神様か強者か精霊がヒントを出してくれたんだ』って言いたいんだよね?」


 コーネルに頼まれて持論を唱えると、話を聞いたヒカリが馬鹿にしたように溜息を漏らす。彼女ほど露骨ではないがヨシュア組も続く。


「良いだろ、事実なんて誰にもわからないんだから。誰だって主人公は自分だろ。都合良く考えるのは悪いことじゃない。むしろ良いことだ。周りに迷惑掛けないポジティブシンキングは褒められるべきだ。だから褒めろ」


「フィーネちゃんやユキちゃんがやってくれたって事実はあるでしょ。ルークの方こそ感謝してよ。人生チョロいわぁ、って調子に乗らないように指摘してあげるわたしの優しさに」


「じゃあ感謝するから褒めて」


「それは嫌。わたしご都合主義嫌いだし。結果は努力で勝ち取らないとね。誰かに与えられた結果なんてクソ喰らえだよ」


 この分だと、フィーネが2人の調査をさせないようにヒントを出した、という推理も伝えない方が良さそうだ。


 昨日、あそこで彼女が現れなければ、俺は因子の捜索ではなく2人を監視していただろう。イブに至っては非人道的な実験まであり得た。


 それを実行に移していないのはフィーネがヒント(というか答え)をくれたお陰。立派なご都合主義だ。効率厨大歓喜だ。


 まぁそれはそれとして――。


「いい年した女子が食事中にクソとか言うんじゃありません! そして俺の人生全否定するんじゃありません!」


 批難は改善の余地があるという証拠。しかし責めてばかりでは楽しくないので褒めるべきところは褒める。ディスイズハッピーライフ。


 俺はそんな意識高い系でありたい。


 でも世界はいつも俺の邪魔をする……何故だ!? 俺が何をしたってんだ!? 何気ない情報から閃いて試行錯誤して成果を出してるだけじゃないか!


「失敗しない人生はつまらないぞ」


「やかましい! 失敗しとるわ! 成功するまで挑戦し続けてるだけだわ!」


 隣に座っていたラットが同情するように、そして諭すように、優しく肩を叩いてきた。鬱陶しかったのですぐに振り払った。


「大体は見かねたフィーネちゃん達が手を貸してくれてるけどね」


「難しい部分だけだろ! それだって人類に過ぎたものなら無視するし! てか挑戦する前に止められるし!」


「それってつまりレールを敷かれてるってことだよね?」


(……あ、あれぇ~? おかしいな。努力してるつもりなんだけどな。トライ&エラー繰り返してるつもりなんだけどな。ヒント貰わないことも多いんだけどな)


 俺はこの議題について、ポタージュスープがたっぷりと入ったスプーンが口の中に入るまで、悩むことになった。


 言っただろ。大事なのは自分がどう思ってるかだって。誰かに誘導されようが協力されようが俺は今の自分に満足してる。精一杯やってると思ってる。


 成果って1人で出すようなもんでもないしな。



「ところでラット……お前なに朝食の準備手伝わせてんだよ。俺達は金払って泊ってる客だぞ」


 宿屋で出てきた食事と言えば、普通は料理人なり店主なりが作った品と思うはず。しかし今食べているのはフィーネとヒカリが作ったものだ。


 ラット達が働いていないわけではないのだが、客に任せるほど忙しいかと言われたらNOである。つまり甘え。怠惰。


「出た。お客様は神様とかほざくクレーマー」


「ザケんな。これのどこがクレームだ。正当な主張だろうが」


 ヒカリと似た台詞で同じ流れを作り出すラットだが、そこには天と地ほどの差がある。


「正当? ハッ、バカ言うな。町を案内してもらった礼ぐらいしろよ。今日だって山を案内してやるんだ。何かしてもらったら即返す。当たり前のことだ。今後も遠慮なく仕事を回すぞ。手始めに屋根の修理から頼むわ」


「町の案内は宿屋の長期利用でチャラだ。大体暇って言ってただろ。村人たるもの一度ぐらい地元の説明したいって言ってただろ。つまりあれはボランティアだ。

 山は案内じゃない。お前等の巡回についていくだけ。何なら魔獣の討伐に手を貸すんだからお前等が礼をする立場だ。

 にもかかわらず、飛行船に残ってた僅かな食糧を自分達への土産だとほざいて貪り食い、宴会の後片付けをさせ、朝食の準備を手伝わせ、自分がするべき仕事まで押し付けようとする……」


 許せない。


「働いた分は宿代から引け」


 討伐した魔獣の魔石や素材を麓の町にある冒険者ギルドに売りに行ったり、町の人々がおこなっている作業を手伝ったり、冒険者or社会人生活が始ま……りはしないが、泊れば泊るほど貯金が減って行くのはたしか。


 金に困っているわけではないが浪費したいとも思わない。


「良いぞ」


「良いんかいッ!」


 アッサリ提案を受け入れたラットに思わずツッコむ。


 人間はあまりにも有利な条件だと逆に怪しく思ってしまう悲しい生き物だ。まぁ実際怪しいことが多いから仕方ないんだけどさ。


「ああ。こんな辺鄙なところじゃ金なんて使わないしな。宿代も肉体労働や知的労働が苦手だったり、旅行に来てまで働きたくないって連中が居るから設定してるだけで、相応の対価を払ってもらえれば全然オッケーだ」


 たしかに、昨日見て回ってわかったが、ここは金を必要としない完全自給自足の町。物々交換が成り立つド田舎シティだ。


 欲しいものがあれば自分で取りに行くか得意な人間に依頼し、その対価として力なり知恵なり技術なりを提供する。


「でもまだ町を案内した分には足りないから屋根にソーラーパネルつったけ? 魔石に自動でエネルギー貯める魔道具。それを取り付けてくれ」


 なるほど……こうやって共通の価値を持つ通貨は生まれたわけか……。


 ぼり過ぎだろ!!


「それが終わったら農耕用の魔道具製作と遺伝子組み換えて新しい作物づくりな。あるんだろ、雪国用のあれやこれや」


「~~~っ!!」


「ま、まぁまぁ、ルーク落ち着いて。これもこの土地に慣れるための修行だと思えば」


「そうだそうだー。飛行船で寝泊まりすれば良いのに、土地の空気を感じることが大切って言って、ウチに泊ったのはどこのどいつだー。修行する名目つくってやったんだから感謝しろー。礼として風呂場を作っても罰はあたんねえぞー」


 仲介というガーディアンを味方につけたと勘違いしたラットが、調子に乗って次から次へと依頼……いや借金を負わせていく。


(この怒り……ヒカリの尻尾をモフモフしただけじゃ収まりきらな……収まり……収まったぁー)


 おっぱいは世界を救うけど獣人はケモナーを癒すよ。ホッコリ。


「…………そういった、債務者の身動きをとれなくして骨の髄まで吸い尽くす、あくどいやり口はどうかと思うぞ」


 まぁ俺なんかよりコーネルの方が大変そうだけどな。


 借金にトラウマのあるコーネルが、ラットの冗談なのか本気なのかわからないが取り合えず色々押し付ける態度に、激おこぷんぷん丸だ。


 本当にフィーネは良い感じにチームを分けたと思う。


 ご都合主義アンチのヒカリの手前言わないけど。こっちは同じチームだし。

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