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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五十二章 王女争奪戦

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千九十八話 王女争奪戦Ⅲ

 イブは現状に色々と不満があるらしいが、武闘大会……もとい技術力お披露目会はそれを穏便に片付けるのためにおこなわれるイベントなわけで、前回は冗談で手を出すようなことを言ったが、正直助けを求められても「もうすぐ解決するからそれまで我慢してくれ」としか言えない。


 こういう輩は力で解決しても意味がないのだ。


 ゴキブリと一緒。住みやすい環境である限り、空いた途端に次の軍団が押し寄せてくる。王女で美人で有能とか三種の神器過ぎるだろ。


 寄り付かなくするためには地域一帯を綺麗にするしかない。


 まぁ我が婚約者からの依頼はそれを武力でやれというもので、ロア商会の手に掛かれば苦も無く出来るのだが……。


「断る? どうして?」


「穏便に済ませたいっていうセイルーン王家の意志を尊重したいからな。俺達が介入したせいでアルフヘイム王国の研究者やら技術者と疎遠になってもアレだしさ。

 会場に居るっていうセクハラ王子を俺なりにチェックしてみて、よっぽどだったらやるけど、たぶん注意やけん制して終わりになると思う」


「つまり向こうの人達と交流が終われば用済み?」


「そゆこと」


 話の意図を汲み取って納得するイブ。


「ほら、フィーネさん。ツッコまないと。若人が腐ったミカンを取り除こうとしてますよ。一国の王子を闇討ちしようとしてますよ」


「人聞きの悪いことを言うな。改善を求めてダメだったらって話だ。それと俺は無関係な人間の生き方に口出しするほど暇じゃない。相手が俺の知り合いでなければ放置するつもりだ。あちらさんの好きなようにしてもらう」


 部外者ヅラで話を聞いていたユキが、同じく部外者ヅラをしていたフィーネを急かす。俺は彼女が動き出すより先に答えた。


「…………」


 そんな目をしてもダメです。話にはテンポがあります。これはフィーネのことを蔑ろにしているのではなく、流れを優先しているだけです。


「イブさんがルーク様に声を掛けた理由はもう1つあります」


「お、おう……無理やり話繋げたな……」


「この程度のことで挫けていてはルークハーレムの一員にはなれませんので」


 フィーネさんはメンタルの強い御方。


 本来説明するべきイブの仕事を奪っておいて図々しく話せるのも、それを確かなものとしている。まぁ最初ユキに託した時点で本人も諦めてたっぽいけど。


「現在王城に集まっている優勝候補は言わば騒動の元凶。争奪戦の発端となった者達です。そして国や一族を代表する彼等のチームは精鋭揃い。参加するチームの多くはルーク様と同じく『前半アピール・後半勝利』の形式を取っておりますが、当然ながら彼等のチームにも一流の技術者や研究者が属しているのです」


「なるほどね。そいつ等との交流も目的の1つってわけか」


 いくらアピール必須とは言え、相手の準備が整うまでチンタラ待つわけがない。実践で重要なのは発揮出来るか否か。すべてを出し切る前に倒される可能性は十分ある。


 ならこうして知識や技術を推し量る機会は大切だ。手の内は晒さないだろうが話を聞くぐらいは出来る。如何に権力者嫌いな俺でも未知の技術を知るためなら例え火の中水の中。社交界だろうと食事会だろうとある程度は我慢して出席する。


 狙うは、指示された通りのことを実行するだけの傀儡や、他人の手柄を自分のもののように自慢するクソ野郎ではなく、その場で説明&披露出来る有能くん!


 というわけで、よほどのことがなければ口も手も出す気がない状態で、セイルーン王家主催の食事会にやって来たわけだが……。



「俺も魔道具作ってみたんだ。良かったら感想聞かせてくれない? 一般受けするようなわかりやすいものじゃないけど、俺と同じ価値観を持つキミならこの素晴らしさを理解してくれると思うんだよねぇ。ほら、なんていうの? 庶民向けって所詮は誰でも作れるオモチャじゃん? そういうのと違って、俺のはもっと高貴で才能ある人にだけ使ってもらいたいわけ」


 指示された通りのことをするだけの傀儡や、他人の手柄を自分のものにするクソ野郎より酷い、指導者を上回ったと勘違いしているゴミクズ野郎と出会ってしまった。


 男の差し出している魔道具はお世辞にも出来が良いとは言えないし、抱いている想いは見るに堪えないもの。自らの力で作り出したこと以外褒めるところが見つからない。


 開始時刻より早めに会場入りして出席者の格付けをしていたので、魔道具の出来を一瞬で見抜ける者達が少し離れた場所に集まっていることは把握しているが、口出しを禁止されているのか全員が見て見ぬ振りをしている。


 社交界での言動は雇い主、果てはその一族の問題に直結するのだろう。


 ――と、他人事のように語っているのは、絡まれているのが俺ではなくイブだから。そもそも名乗ってもないのに『感想聞かせて』だの『同じ価値観』だの上級国民様が同じ目線で話し合おうとするわけがない。


「…………」


 イブの目からスッと光が消える。


 俺にはわかる。イブの奴かなりイラついてる。というか俺がイラついてる。


 ただでさえ権力者との食事会を嫌っている子だ。テンプレ挨拶の連続にウンザリしている中で、こんな子供から純粋無垢を除いたような作品を見せられた彼女の心中はお察しする。


(何が『庶民向け』だ。1人でも多くの人を幸せにするために作った魔道具だっちゅーに。それをテメェ等が勝手にパクってドヤってるだけじゃねえか。

 さぁ怒れ、怒るんだイブ! 魔道具という物について一から語り、そいつの存在そのものを否定してしまえぇぇ~~っ!)


 個人的な感情も混じってしまった気もするが、俺は研究者達の集団に紛れてその様子を見守った。


「よくわからない」


(……あれ?)


 しかし出てきたのはあり触れた感想。そこに愛だの熱だの人生だのという感情は存在していなかった。


「そ、そう……まぁちょっと難解だったかな……ははは」


「? 面白くなかったから解析しなかっただけ」


「なっ!?」


「貴方はそう言って自分を上に見せようとしてるだけ。素材集めも魔法陣の構築も魔力付与も、魔道具作りに関するすべてのことに本気で取り組んでいない。他の人は騙せても私は騙せない。これは最低な作品」


 おおっと、愛するが故に片手間で生み出した作品に苛立ちを感じていらっしゃった~! 俺はもちろん研究者達も内心ガッツポーズだ~!


「う……うう……」


 反論するほどの知識も実力も持っていない男は、たじろぎながら周囲に助けを求める。が、当然誰も目を合わせない。


 このまま心も体もへし折りたいのは山々だが、コイツのせいで優秀なチームメイトまで成果を披露する機会を奪われるのは御免被るので、そろそろ介入させていただこう。



「あ~、戦闘力もなければ技術もない、そこの少年。悪いことは言わないから登録してるメンバーだけ残して今すぐ王都から立ち去れ。お前のせいで国だか一族だかがセイルーン王国と疎遠になる」



「介入ぅううう~~ッ!!」


 扉の外で様子を窺っていたみっちゃんが飛び込んできた。フィーネとユキもそこに居たが我関せずで様子見続行。暇人どもめ。


「誰も穏便に済ませるなんて言ってない。どうせコイツは監督的な立場で参加しないんだ。居ても居なくても一緒だろ。というか居るだけ邪魔だろ」


「オブラァァァ~~ット!!」


「ん? ああ、そうだな。こういう輩は口で言ってもわからないよな。んじゃ、ま、前哨戦と行くか。ほら掛かってこいよ。お前自身が凄いってことを証明してみろ。もし俺に勝てたら前言撤回してやるし、イブだってきっと見直すはずだ」


 風属性のオーラを纏って挑発。


 わかる人にはわかるが、並の冒険者が用いるような魔力を引き換えに精霊・微精霊の力を借りる『魔術』ではなく、魔力と精霊術を融合させた上位強化術だ。


 精霊そのものを纏っていると言った方がわかりやすいか。放出した力を自ら取り込むバトル漫画でよくあるアレみたいな感じ。


 ザワッ――。


 離れた場所から動揺が広がってくる。技術者や戦士達だ。


「「「…………」」」


 さらにそれを見た監督(笑)連中がソッと俺から離れていく。今、誰の感覚を頼りにするべきかわかっているらしい。ただの無能ではないようで一安心だ。




「か、覚悟しておけ!」


「ああ。楽しみしてるよ。もちろんお前じゃなくてお前のチームにな。報復は関係者一同が迷惑するだけだからやめておけ」


「~~~っ!」


 お決まりの捨て台詞を吐いて退散しようとした男に追い打ちを掛け、それでも何もやり返してこない無能を見送った後。


「悪いねー。あいつちょっと空気読めなくてさ。連れてくる予定無かったんだけど、どうしてもって言うからさー」


 チャレンジ精神しか取り柄のない無能を踏み台にして、次なるチャレンジャー『チャラ男』が一般的には正攻法、しかしイブには通用しない方法で好感度アップを狙ってあれこれ話し掛けてきた。


「イブちゃんってガード固めだよねー」


 そりゃ魔道具のことしか考えてませんし、それで名を馳せた方ですからね。


 恋愛トークが苦手な(嫌いではないが相当仲良い連中にすら話せない口下手な)イブにとって、この定番口説き文句は意味を成さない。


(ってかコイツさっきから随分絡んで来るな)


 ナンパするヤツってなんであんなにグイグイ行くわけ? 行けるわけ? いや数打ちゃ当たる作戦なら良いよ? でも無理とわかったら早々に諦めろよ。ましてや今後の付き合いを大切にしたい相手だぞ。粘るなよ。まさか本当に迷惑掛けてることに気付いてない?


「そんなに警戒しなくても平気だって」


 お~っと、これはマジっぽいです。ある意味羨ましい性格! 私も時々同じことになっているような気がしますがそこはスルーの方向で。


「消えて」


 出ました、消えて! 拒絶です! 紛うことなき拒絶の言葉が炸裂ぅ! チャラ男は謝罪してスゴスゴ退散だぁぁぁ!


(てかこれ俺要る? 俺に頼まなくても無双出来てんじゃん。国家間の繋がりとか、王女としての立場とか、全然考えてないように見えるけど? これ以上ないぐらいズバズバ発言してるけど?)


 もしかしてこっちを制御するために呼ばれたのかなぁ、と思う今日この頃。

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